プレダトリー・カウアード 日常編 08
「…………あのね、姉ちゃん」
「んー?」
「んー?」
すりすりすりすり――――
「どうして、未だに僕に抱きついてるの?」
「それは、弟が可愛いからだよ」
「それは、弟が可愛いからだよ」
すりすりすりすり――――
「もう、泣いてないよね?」
「それは、弟が可愛いからだよ」
「それは、弟が可愛いからだよ」
すりすりすりすり――――
「どうして、姉ちゃんは僕と添い寝してるの?」
「それは、弟が可愛いからだよ」
「それは、弟が可愛いからだよ」
すりすりすりすりすり――――
「どうして――――姉ちゃんはずっと、僕に頬ずりしてるの?」
「それは、弟が可愛いからだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああっっ!!」
「変わってない! さっきから答えが全然変わってないよ!」
「それは、弟が可愛いからだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああっっ!!」
「変わってない! さっきから答えが全然変わってないよ!」
――――あれから約一時間弱。
僕は姉ちゃんと一緒の布団の中で添い寝し、そして頬ずりを受けていた。
どうしてこうなった…………?
分からない。姉ちゃんを抱きしめていたはずが、いつの間にか僕が抱きしめられ、そして気づいたら同じ布団に包まっていた。
頬ずりは確か布団に入って五秒後辺りに始まった気がする。
僕は姉ちゃんと一緒の布団の中で添い寝し、そして頬ずりを受けていた。
どうしてこうなった…………?
分からない。姉ちゃんを抱きしめていたはずが、いつの間にか僕が抱きしめられ、そして気づいたら同じ布団に包まっていた。
頬ずりは確か布団に入って五秒後辺りに始まった気がする。
「あー、もう! いつの間にやらこんなに成長しちゃってお姉ちゃん嬉しいぞぉおおおおおおっ!!」
すりすりすりすりすりすりすりーっ!
ああ、誰か…………僕を助けて…………。
≪――――何をしている、我が主よ≫
…………救いの声が、来た。
いや待て、救いじゃないだろう。これはどう考えても状況が悪化するだろう。
けれど、けれどだ。僕がこの今の状況を一人で乗り越えられるかと聞かれたら、答えは否だ。
どうしよう。ここは素直に救いを求めるか? それともこのまま朝まで姉ちゃんに頬ずりされるか?
進むも地獄。退くも地獄。
なるほど、これが音に聞く「前門の虎、後門の竜」…………あれ? 竜じゃなくて狼だっけ?
いや待て、救いじゃないだろう。これはどう考えても状況が悪化するだろう。
けれど、けれどだ。僕がこの今の状況を一人で乗り越えられるかと聞かれたら、答えは否だ。
どうしよう。ここは素直に救いを求めるか? それともこのまま朝まで姉ちゃんに頬ずりされるか?
進むも地獄。退くも地獄。
なるほど、これが音に聞く「前門の虎、後門の竜」…………あれ? 竜じゃなくて狼だっけ?
「何だ、貴様」
――――が、事態は思わぬ所で推移していたらしい。
頬ずりの感触がない。いつの間にか、姉ちゃんの目が警戒の色を湛えている。
その敵意が向けられた先は虚空。其処は彼となく、周囲に油断なく目を走らせている。
抱きしめる力が強くなった。今度は、今度こそは放さないと言うかのように。
頬ずりの感触がない。いつの間にか、姉ちゃんの目が警戒の色を湛えている。
その敵意が向けられた先は虚空。其処は彼となく、周囲に油断なく目を走らせている。
抱きしめる力が強くなった。今度は、今度こそは放さないと言うかのように。
「……って、えっ? あれ? 姉ちゃんにも聞こえてるの?」
≪ああ。そう。そうだ。我が主。主の姉にも我が声が認識できるよう、我は今、取り計らっている≫
「ほう…………誰だか知らんが、私と弟のイチャラブタイムを邪魔するか。いい度胸だな、貴様」
≪ああ。そう。そうだ。我が主。主の姉にも我が声が認識できるよう、我は今、取り計らっている≫
「ほう…………誰だか知らんが、私と弟のイチャラブタイムを邪魔するか。いい度胸だな、貴様」
やばい。姉ちゃんがマジだ。
しょうもない理由過ぎて涙が出るけど、姉ちゃんの目がマジだ。
しょうもない理由過ぎて涙が出るけど、姉ちゃんの目がマジだ。
≪く、は、は。邪魔? それは貴様の事だろうに。分かるか? 分かるだろう?
『我』が、主と話すことがある。それも主がここに運び込まれるより前からだ。貴様が邪魔でなくて何がならんや?≫
「ふん。醜い嫉妬だな。私は己が生まれた時から弟と語り合うつもり満々だったぞ」
『我』が、主と話すことがある。それも主がここに運び込まれるより前からだ。貴様が邪魔でなくて何がならんや?≫
「ふん。醜い嫉妬だな。私は己が生まれた時から弟と語り合うつもり満々だったぞ」
その頃にはまだ僕生まれてないよ、姉ちゃん。
≪嫉妬、嫉妬か! く、は、は。我と主とは既に心身合一。嫉妬などする必要もない≫
「ふはは、甘い、甘いぞ貴様。私の心は既に弟と共に在り、私の身体も近い内弟と一緒になる予定だ!」
「そんな予定ないよ! 身体の予定なんて皆無だからねっ!」
「何? 子供の頃に指きりしただろうに」
「指きりはしたかもしれないけど、そんな内容だった事はないと思うよ……」
「ふはは、甘い、甘いぞ貴様。私の心は既に弟と共に在り、私の身体も近い内弟と一緒になる予定だ!」
「そんな予定ないよ! 身体の予定なんて皆無だからねっ!」
「何? 子供の頃に指きりしただろうに」
「指きりはしたかもしれないけど、そんな内容だった事はないと思うよ……」
無邪気さ故に本当に約束してそうだけれども。
≪――――さて? そろそろよいか、我が主よ。主には話さねばらん事がある≫
「言ったろう。それは私が許さ――――」
「待って、姉ちゃん、声の人も」
「言ったろう。それは私が許さ――――」
「待って、姉ちゃん、声の人も」
再び繰り返されそうになった論争だか僕を巡る痴話喧嘩だか分からない言い合いを止めるべく、姉ちゃんと声の主との間に声を挟む。
突然中断された会話の結果、部屋に静寂が戻る。これでいい。
話題の中心として、あの空気の中にいるのはあまりに居たたまれなかった。
それに何よりも――――
突然中断された会話の結果、部屋に静寂が戻る。これでいい。
話題の中心として、あの空気の中にいるのはあまりに居たたまれなかった。
それに何よりも――――
「――――僕が姉ちゃんに、話すことがあるんだ」
事の顛末について。吸血鬼について。「声」について。
そして何にもまして、不可解な僕の今の「身体」について。
話さなければならない事が、たくさんある。
それは「声」に語ってもらっても良かったのかもしれない。
けれど、それはどうしても――――卑怯な気が、したのだ。
そして何にもまして、不可解な僕の今の「身体」について。
話さなければならない事が、たくさんある。
それは「声」に語ってもらっても良かったのかもしれない。
けれど、それはどうしても――――卑怯な気が、したのだ。
【Continued...】