プレダトリー・カウアード 日常編 10
≪主よ、不思議に思っただろう? 聞きたかっただろう? 何故今主は『生』を持つのか。そもそもあの『光』は何なのか、聞きたかっただろう?≫
「それは、もちろん……」
「それは、もちろん……」
聞きたかった。けれど、その時間がなかった。
「あいつ」との闘いが始まってから、そして気絶するまで、そんな時間を割く余裕は、なかったのだ。
「あいつ」との闘いが始まってから、そして気絶するまで、そんな時間を割く余裕は、なかったのだ。
≪今から話す。全てを話してやろう。主の姉よ、貴様から見て、主はどう見える?≫
「いつもの愛らしい弟だな」
≪そう。そうだ。そう『見える』。外見は全くの普通。誰も、親しい人間すら、そこに何の疑念も抱かない≫
「いつもの愛らしい弟だな」
≪そう。そうだ。そう『見える』。外見は全くの普通。誰も、親しい人間すら、そこに何の疑念も抱かない≫
けれど、そうじゃない。
僕には、分かる。あの時、あの吸血鬼と闘った時、僕の身体は「普通」ではなかった。
殴られても蹴られても、傷一つ残らない身体。
奇怪な光を取り込んで、その分だけ強くなる身体。
そんなものが「普通」のはずなんて、ない。
僕には、分かる。あの時、あの吸血鬼と闘った時、僕の身体は「普通」ではなかった。
殴られても蹴られても、傷一つ残らない身体。
奇怪な光を取り込んで、その分だけ強くなる身体。
そんなものが「普通」のはずなんて、ない。
≪主よ、そなたの考えは正しい。今の主は『人間』では、ない≫
「――――何?」
「――――何?」
姉ちゃんの眉が、僅かに動く。
「外見が人間。中身も今日の検査で不審な所など見つからなかった」
≪で、あろうな≫
「それで人間ではなく、貴様は一体なんだと言うつもりだ?」
≪――――都市伝説だ≫
≪で、あろうな≫
「それで人間ではなく、貴様は一体なんだと言うつもりだ?」
≪――――都市伝説だ≫
再び、姉ちゃんの眉が僅かに動く。ただし、先ほどよりも少しだけはっきりと。
「都市伝説……?」
≪そう、都市伝説だ。主の姉よ。今の主は『狩谷 優』という都市伝説だ。『口裂け女』や『吸血鬼』と同類のな≫
「え? けど、そんなの――――」
≪そう、都市伝説だ。主の姉よ。今の主は『狩谷 優』という都市伝説だ。『口裂け女』や『吸血鬼』と同類のな≫
「え? けど、そんなの――――」
ありえないと、そう思う。
都市伝説とは、とどのつまり「人に噂される者」だ。
口裂け女も、花子さんも、十三階段だってそう。
存在しないはずのもの。けれど人の話題の上でのみ存在できるもの。それが「都市伝説」だ。
その点で言えば、僕は違う。
僕は「存在する者」だ。そして「狩谷 優」は、その存在を「噂」される者ではない。
都市伝説とは、とどのつまり「人に噂される者」だ。
口裂け女も、花子さんも、十三階段だってそう。
存在しないはずのもの。けれど人の話題の上でのみ存在できるもの。それが「都市伝説」だ。
その点で言えば、僕は違う。
僕は「存在する者」だ。そして「狩谷 優」は、その存在を「噂」される者ではない。
≪確かに、そうだ。確かに、主は都市伝説としての『定義』には一見入らない≫
「じゃあ……」
≪しかし考えろ、頭を使え、我が主。では彼奴は何だ。『噂』をされ、そして尚且つ『存在』もした。彼奴は、あの吸血鬼は、何だ?≫
「それ、は…………」
「じゃあ……」
≪しかし考えろ、頭を使え、我が主。では彼奴は何だ。『噂』をされ、そして尚且つ『存在』もした。彼奴は、あの吸血鬼は、何だ?≫
「それ、は…………」
分からない。
都市伝説は「架空」だ。そこに「存在」は伴わない。
けれど、あの吸血鬼はそこに「在った」。嘘でも絵空事でもなく、一つの実体として。
都市伝説は「架空」だ。そこに「存在」は伴わない。
けれど、あの吸血鬼はそこに「在った」。嘘でも絵空事でもなく、一つの実体として。
≪分かるか。分かるだろう。主よ、主の姉よ、都市伝説は確かに『存在』する。都市伝説はその身を『オモテ』に表す事ができる。
ある程度の『噂』を、或いは『信心』を手に入れた都市伝説は、その『義務』が与えられる≫
「都市伝説は、実体化できる……?」
「ほう。だが貴様、今の話と、それで弟が『都市伝説』だなどという世迷言には関連がない」
「…………うん、だって僕は『架空』じゃないから」
ある程度の『噂』を、或いは『信心』を手に入れた都市伝説は、その『義務』が与えられる≫
「都市伝説は、実体化できる……?」
「ほう。だが貴様、今の話と、それで弟が『都市伝説』だなどという世迷言には関連がない」
「…………うん、だって僕は『架空』じゃないから」
都市伝説は実体として「在る」。
あの吸血鬼の事も含め、それはもう間違いないのだろう。
けれど、それでもまだ問題がある。
先ほどの「声」の口ぶりを見る限り、都市伝説が「存在」を勝ち得るためには、ある程度の「噂」をされる必要があるらしい。
十人か、百人か、千人か、或いはもっと。
具体的な数は分からないけれど、少なくともそれなりの頻度で話題に上るくらいの知名度はなければならないはずだ。
そして、僕は存在していると同時に、そんな噂を惹きつける程の名前も、持たない。
あの吸血鬼の事も含め、それはもう間違いないのだろう。
けれど、それでもまだ問題がある。
先ほどの「声」の口ぶりを見る限り、都市伝説が「存在」を勝ち得るためには、ある程度の「噂」をされる必要があるらしい。
十人か、百人か、千人か、或いはもっと。
具体的な数は分からないけれど、少なくともそれなりの頻度で話題に上るくらいの知名度はなければならないはずだ。
そして、僕は存在していると同時に、そんな噂を惹きつける程の名前も、持たない。
≪都市伝説が顕現する際に必要な『力』を、我は『マナ』と呼んでいる≫
僕の疑問に答えず、「声」は話を進める。
≪都市伝説の存在は『マナ』に依存し、それは絶えず『噂』をする、或いは『信心』を持つ人間から無意識の内に供給される≫
……それでは、僕も何らかの都市伝説の「生」に関わっているのだろうか。
人狼、UFO、ネッシー、トイレの花子さんに、そして――――吸血鬼。
それら都市伝説の存在に、僕も多少なりとも関与しているの……だろうか。
人狼、UFO、ネッシー、トイレの花子さんに、そして――――吸血鬼。
それら都市伝説の存在に、僕も多少なりとも関与しているの……だろうか。
≪『マナ』の供給が途絶えた時、即ち誰の口上にも上らず、誰の心にも浮ばなくなった時、都市伝説はその存在を消滅させる≫
そして、と「声」は、無機質な「声」は、続ける。
≪――その『マナ』は、我には『青い光』として認識される≫
――――まさか。
≪そう。分かっただろう。理解しただろう。『ソレ』だ。主が吸血鬼から剥ぎ取り、そして内へと取り込んだ『ソレ』が『マナ』だ≫
「…………けど」
≪分からぬか。分かるだろう。我が主よ。確かに『狩谷 優』などという都市伝説はこの世のどこにも存在しない。
だが、その『都市伝説』としての存在の源を、『マナ』を、『本物』の都市伝説から奪い去る事なら、できる。
奪い、喰らい、消化して、『狩谷 優』の、全く存在しない都市伝説の糧とすることなら、出来るのだ≫
「…………けど」
≪分からぬか。分かるだろう。我が主よ。確かに『狩谷 優』などという都市伝説はこの世のどこにも存在しない。
だが、その『都市伝説』としての存在の源を、『マナ』を、『本物』の都市伝説から奪い去る事なら、できる。
奪い、喰らい、消化して、『狩谷 優』の、全く存在しない都市伝説の糧とすることなら、出来るのだ≫
「――――ほう。それで? 理屈は理解できなくもない。だがそれを『行える』貴様は何だ?」
都市伝説からの「マナ」の剥奪。
それは人に即して言えば、人の「魂」だけを抜き取る事と同じ所業だ。
ただの人間が人間に。都市伝説が都市伝説に実行し得るものでは、ない。
そんな事が出来るのは神か、それとも悪魔か。
それは人に即して言えば、人の「魂」だけを抜き取る事と同じ所業だ。
ただの人間が人間に。都市伝説が都市伝説に実行し得るものでは、ない。
そんな事が出来るのは神か、それとも悪魔か。
≪我に名はない。我は単一である。我は集合である。そこに名などは存在しない≫
――――しかし、と名も無き「声」は、言葉を進める。
≪時折呼んだ。人は呼んだ。我を、名を持たぬ我を、こう呼んだ――――≫
吸って、吐いて、「声」は宣ふ。
己の名を、恐怖と共に飾られてきたその名を、宣言する。
己の名を、恐怖と共に飾られてきたその名を、宣言する。
≪――――『対抗都市伝説』と≫
【Continued...】