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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - プレダトリー・カウアード-17

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uranaishi

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プレダトリー・カウアード 日常編 17


 僕の姉ちゃんは、超がつく不器用だ。
 こと料理に関しては、その才能を遺憾なく発揮する事ができる。
 そして、才能というものは得てして親から子へと受け継がれるものだ。
 姉ちゃんは不器用なお父さんとお母さんの子供。

「姉ちゃん…………乱切りってなに?」

 ――――そして「子」である以上は、僕もそんな遺伝子を受け継ぐ一人なのだ。

「切り方など気にするな。腹に入ればどうとでもなる」
「見た目も重要だと思うよ、姉ちゃん」

 かつて台所でその腕を振るってくれた人は、もういない。
 本当ならその感傷に浸るべきところなのだけれど、日常の茶飯事すらまともにできない僕たちに、その余裕はあまり残されてはいなかった。

 僕たちは今いるのは、あの二階建ての一軒家ではない。
 「事件」が未解決。且つ犯人は逃亡中という事になっている今、あの家の中は、未だに警察の人たちの戦場と化している。
 だからしばらくの間――ひょっとしたらこれからもずっと――僕たちは近くのアパートに住むことになった。
 幸い保険や国からの各種手当てのお陰で、ローンのせいで夜逃げするとか、日々の生活が立ち行かないなどの状態にはなっていない。
 けれども、僕たちの生活に「余裕」があるわけでもない。
 生活は出来る限り切り詰めなければならないし、外食などはもってのほか。財布の敵だ。
 ……そこで、話は冒頭へと戻る。

「きゃーっ!!?? レンジの卵が爆発したよ、姉ちゃん!!」
「誰もが通る道だ。気にする事はないぞ、弟よ」

 とどのつまり、僕たちは自炊しているのだ。
 家庭科以外では包丁にも触れたことの無い、二人が。

*****************************************

「…………これ、何だろうね、姉ちゃん」
「酢豚だろう?」
「僕、黄色い酢豚なんて初めて見たよ…………」

 皿の上に乗っているのは、黄色い何かをかけられた黒いなにか。
 最早前衛アートの一種にしか見えないそれは、残念な事に今日の僕たちの晩御飯だ。
 その他にも赤、青、茶。鮮やか過ぎて目が痛くなるような料理が並んでいる。
 僕は…………明日の日の目を見ることが出来るのだろうか。

*****************************************

「――――今日の学校はどうだった」

 いただきますの後、楽しいけど胃に苦しいご飯が始まる。
 何故か味の薄い味噌汁を啜っていると、姉ちゃんが話を振ってきた。
 おわんから口を外して、答える。

「姉ちゃんも一緒だったでしょ? 時々寝てたけど」

 結局、姉ちゃんはあの後最後まで一緒に授業を受けた。
 英語に始まり、世界史に終わるまで、ずっと。
 ただその間、姉ちゃんがきちんと授業に参加していたかと言えば、そうでもない。
 三回姉ちゃんの方を見たとしよう。
 その内の一回はお休みタイムだ。椅子にもたれて寝ている姉ちゃんを見れるぞ。
 残りの二回は弟タイムだ。視線を向けるとどうしてか僕と目が合うぞ。
 つまり姉ちゃんは、授業の間中は「寝る」か「弟」の二択で過ごしているだけだ。
 これは他のクラスメイトからも証言が取れている。バカップルめ死ね! との言葉と共に。

「ふっ。弟ばかりを見ていたからな。学校の様子など全く頭に残っていない!」

 質問に、キラリと歯を見せて答えられた。
 それは別に、誇れる事じゃないと思うんだけど……。

「それに、だ。私が聞きたいのは『弟から見て』のものだからな。私視点などあてにはならないだろう」
「うーん………………」

 今日一日のことを考える。
 朝五十嵐君と会ってから、夕方この家に帰ってくるまでの、一日を。

「…………楽しかった、かな?」

 振り返って見ると、色々あった。
 五十嵐君が、契約者だった事。
 佐藤君が、その存在を抹消されていた事。
 そして何より、姉ちゃんがクラスに乗り込んできたこと。
 考えなければならない事があった。
 憂うべき事もあった。
 けれど、それら全てをひっくるめて、今日は楽しかったと、そう思う。

「そうか」

 姉ちゃんは微笑んで、食事を続ける。

 ……きっと僕は、姉ちゃんに救われているのだろう。
 ふと唐突に、思う。
 先ほど「日常」に忙しくて感傷に浸る余裕がないと、僕は言った。
 けれど、それは少しだけ違うのかもしれない。
 余裕は無い。それは確かにそうだ。
 ただ、肝心の原因が何かといえば、それは「日常」の中でも極々一部。言い換えれば「姉ちゃん」の存在が大きかったのかもしれない。

 あれ以来、いつだって僕と一緒にいた姉ちゃん。
 その「時」はただ目が回るような緻密さで通り過ぎ、「傷」の痛みを感じる暇なく、過ぎていった。
 今日の学校にしたって、同じ。
 僕は姉ちゃんに振り回されて、けれど、だからこそ、崩れずにここに「いる」。

「あのさ、姉ちゃん…………」

 勘ぐり過ぎかもしれない。
 ただいつも姉ちゃんがやっていることの、延長なのかもしれない。
 けれど、僕は姉ちゃんに感謝しなければならない。
 ……いや、これは義務じゃない。
 僕は、姉ちゃんに感謝したい。そういうただの願望が、胸にある。
 だから、言おう。
 一度でも、一度だって、言っておこう。

「んー?」
「その、姉ちゃん、あり――――」

 ――――運命は残酷だ。
 いつも唐突、いつだって突然、やってくる。

 後たった三文字の言葉が、出てこなかった。
 「つまった」のではなく、「出せなくなった」。
 身体が寒い。凍える。凍えてしまう。
                              何だ。

         これは。
                                     そんな。

                 冷たい。
                                                      寒い。

     一体何が。
                    凍える。

                               何だと――――

≪主よ、『時間』だ≫

 「声」が、告げる。
 今までずっと、静寂を守ってきた、「声」が。

≪主の『マナ』が尽きようとしている。分かるか、分かるだろう、主よ≫

 「声」が発する。「声」が宣言する。
 「日常」から「非日常」への。
 「休息」から、「戦」への、合図を。

≪――――これより、我らの『食事』の時間だ≫

【Continued...】




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