「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 正義の鉄槌-05

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正義の鉄槌 日常編 05


 皆様お久しぶりです。
 お元気にしていましたか? 体調は崩していませんか? 今年の冬はまたノロウィルスが流行しているそうです。気をつけていきたいですね。
 え? お前は誰だ? いやいや冗談がおきつい!
 俺、俺ですよ。ああいやオレオレ詐欺なんかではなく。
 2009年の冬、ちょうどマッドガッサーが騒ぎを起こした当時にやってきた「正義の味方」ですよ!

 覚えてない方、いらっしゃると思います。
 俺が登場したのは僅か5回ほど。しかも最後は「同族殺しの口裂け女」編へのかませ役ときたものです。
 同じ新連載の「プレダトリー・カウアード」が一週間も立たずに10回の投下を超えるのに比べて、こちらはなんと乏しい事でしょうか。
 ……ああいや、いいんです。いいんですよ。
 別に俺は愚痴を零したいわけじゃありません。ありませんとも! こうしてまた連載も再開しましたしね。

 皆様にこうしてまた会えたことを非情に嬉しく思います。
 俺の活躍はまだまだ紹介しきれていませんし、何よりアリスの魅力も語り尽していませんからね、はい!
 俺たちの物語は始まったばかり。
 長い長い俺たちの物語を、気に入っていただければご一緒に、いただけませんでしたらちょっとショック。その気になったらご一緒に、過ごしていただけましたなら、これ以上の悦びはありません。
 今回のお話はまたまた俺たち正義の味方のお話。
 どうかご賞味、下さいませ。

************************************

 都市伝説の力とは、便利なものです。
 空を飛ぶことも、水面を駆けることも、巨大化することも。
 無限大、夢想を現実へと変える力を、彼らは与えてくれます。
 そんな中で俺が選んだのは、「人間にはリミッターがかけられている」という都市伝説です。
 あくまで「人」と言う括りの中での限界を求めるこの都市伝説は、その代償にこそ憂慮がありますが、俺個人としては非情に気に入っています。
 ですが、そんな都市伝説といえど「万能」ではありません。
 選択には棄却が伴いますから、どんなに「無敵」の都市伝説を実現しようとしても、そこには何らかのこぼれが出てきてしまうわけですね。
 ……え? なんでいきなり説教くさいことを言っているのか?
 決まっているではありませんか。なぜなら今まさに――――俺がそれを、実感しているからですよ。

 俺が今いるのはとある「食人」植物の「中」です。
 ええ、ええ、そうなんです。そうなんですよ! 俺は今まさに絶賛捕食中なわけです。ただし受身での。
 消化液のようなものが周囲の壁、植物の胃袋的な所から滲み出ています。
 ためしに俺の洋服の一部をそれに付けてみました所、あら不思議!
 あっという間すらなく溶けては消えてしまいました。
 最早、酸やアルカリの次元ではありません。
 都市伝説としての力が生み出した新しい物質。きっと学会にでも発表すれば大騒ぎになる事間違いないでしょう。

 いえいえ、そんなことはどうでもいいのです。
 問題はつまり、俺は壁に「触れることが出来ない」というただ一点にあるのです。
 俺の契約都市伝説は、先ほども言いました通り「人間にはリミッターがかけられている」
 名前からして想像がつくでしょうが、この都市伝説は肉体強化系です。
 男は拳で、を信条としている俺としましては好ましいことこの上ないのですが、いかんせんこのような「不可触」のモノ相手には滅法弱いんです。当たり前の話ですが。
 これが口裂け女のように刃物をもつか、人体発火現象のように炎を扱えるのであれば、このような壁、一思いに切り裂けるのでしょうね。羨ましい限りです。

 現状はアリスの救出待ちとなります。
 ヒーローがヒロインに助け出されると言う、なんとも締まらない物語ですいません。
 また次回こそは、俺の活躍の場面をお見せできればと、そう思います。
 ああですが、ただこのままアリスを待っていると言うのもつまらないでしょう。
 そうですね……ここは一つ、アリスと僕の昔話でもしてみましょうか。

「そう……あれは八年ほど前の話でした――――」
「…………ストップ」

 ……あらら、うちのお姫様は過去を振り返りたくない主義のようで。
 外から声。聞き間違えるはずもありません。俺の愛しの人、アリス。
 いや、助かりました。正直に言ってしまうと、なんと今、内容構成全く不明の液体が、俺の足へといざかからんとしている真っ最中です。
 愛情と根性と腕力だけには自身のある俺も、回復系の能力は持ち合わせていません。
 下手したら残りの一生を義足で過ごさなければならないところでした。いやはや危うい。

「………………今、助ける」

 ああなんと心強く頼もしい言葉なんでしょうか!
 気分はまさに赤い土管工を待つお姫様そのものです。
 なるほど。彼女は毎回こんな気分で彼を待っていたのですか。
 コレは確かに何度でも味わい楽しみたいもの。
 懲りずに亀に捕まりたくなる理由も分かると言うものです。

「マウンテンゴリラさん」

 アリスの掛け声と共に、薄い壁の向こうに、太陽で照らされた巨大な何かのシルエットが現れます。
 彼女の契約している都市伝説は「原発周辺の巨大生物」という所謂召還系のものです。
 この都市伝説によって召還される生物の体長は通常の数倍、このゴリラさんで言えば8メートル弱ほどの大きさでしょうか。
 …………ふむ。マウンテンゴリラですか。
 俺個人としましては、カマキリあたりでこの壁を裂くのが最良ではないかと思っていたのですが、いかがでしょう。
 いえいえ、きっと思慮深いアリスのことです。きっとなにか考えがあるのでしょう。
 俺は助けられる側。とやかく言う筋合いはありません。

 シルエットのゴリラさんが、腕を振りかぶります。
 その影は黒で塗りつぶされているので分かりませんが、きっとグーでしょう。
 当たったら痛そうですね、はい!
 ゴリラさんの振りかぶりが止まりました。
 ほうほう。あそこからこの食人植物をその拳で打ち抜くと。
 さすがアリス。これではこの植物も一たまりも無いでしょう。
 ………………ふむ?

「あのアリス。これでは俺も一たまりもないような――――」
「やっちゃえ」
「恋人崩壊の危機っ!!??」

 なんと過激な愛情表現でしょうか。
 ゴリラの拳が放たれました。
 壁の黒がその面積を増していきます。
 きっと後数秒で植物に直撃。そのコンマ数秒後にあたりに俺にも直撃する事でしょう。
 さて、愛に死ぬのは本望ですが、さすがにゴリラに殴られて死ぬ趣味はありません。
 そして尚且つ、こんな所で主人公が死ぬわけにもいかないでしょう。
 せっかくの連載再開。俺の雄姿を皆様に見ていただくまでは、少なくともこんな呆気なくは死ねません。
 ではそろそろ黒い拳さんが迫ってきたので始めましょう。本日二度目、僕の第二の契約都市伝説をご紹介。

「――――九死に一生!」

 呟いた直後、ダンプカーにでも撥ねられたような衝撃が俺を襲いました。
 軽く数百メートルは飛ばされる俺。
 ここが山の中でよかったです。町中でしたらきっと二次災害が起きていたことでしょう。いやはや、本当によかった。
 ……俺ですか? いえ、全く以って大丈夫ですよ、はい!
 殴られた瞬間に付着した謎の液体のせいで服の一部がさらに酷い事になってしまったのが残念ですが、身体に別状はありません。

 これが俺の契約した二つ目の都市伝説、「九死に一生」の効果です。
 効果対象を思い浮かべながらその言葉を口にする事で、当面の「死」から逃れる事のできる、なんとも敵泣かせな都市伝説ですね。

「…………大丈夫?」
「ええ、ピンピンしてますよ」

 巨大ゴリラに乗ってやってきたアリスに、笑顔で答えます。
 ここで何も問わないのが愛と言うものです。
 いえしかし、先の一撃にしてはいささか重かったのも事実。
 きっと生身で受け止めていましたなら、人肉のたたきが一つ完成していたことでしょう。

「…………ヤンデレー、出来てた?」

 ……アリスの口から、おかしな単語が漏れ出しました。
 はて。やん・でれー? どこのお国の方でしょうか。
 ああいえ待ってください。頭の中で何かがひらめきそうです。
 いといずおんざちっぷおぶまいたんぐ! あと少しです。

「――――ああ、やんでれですか」
「………………それ」

 なるほどなるほど「やんでれ」。
 聞いたことがあります。
 なんでも自分が殺されるのを楽しむ新感覚のゲームだとか。
 ……ああいえ、間違えました。
 男性を殺したいほど愛している女性のことですね。
 いやはやなんと男冥利に尽きる事でしょうか。「やんでれ」のことはよく知りませんが、男の理想ですよね、はい!

「なるほど。確かに最近流行していると俺も聞きました」
「うん」
「ですが、俺としましてはもっとマイルドなほうが好みですね」
「…………マイルド?」

 首をかしげ、アリスが天へと両手をバンザイします。
 これは降参の合図などではもちろんなく、彼女の能力発動時のポーズです。

「ニシローランドゴリラさん」

 ずん、と虚から現れたのは、体長約3メートルほどのニシローランドゴリラと呼ばれるゴリラの一種です。
 ほうほう、確かに先ほどのマウンテンゴリラよりはマイルドですが…………。

「できれば『殺す』方をマイルドにしていただきたいな、と」
「………………?」
「いえいえそこで首を傾げられてしまうと俺のこれからの人生が非情にスリリングなものになってしまうのですよ、ええ!」
「ヤンデレー、嫌い?」
「そうですね……理想としましては愛の境地かと思いますが、死んでしまっては元も子もありませんからね」
「…………そう」
「ああそう肩を落とさないで下さい。アリスの愛は嬉しいですよ」
「…………そう」

 今度は少し明るく。
 ええ、ええ、やはりアリスは笑顔が一番ですとも。
 ロリコンなどという不名誉な称号を拝している俺ですが、愛に年齢など関係が無いと思うのですよ、はい!
 いえもちろん、アリスは一応十四歳とそこそこの年齢です。どうしてか小学生と混じっても全く違和感の無いプロポーションをしていますが、十四歳です。

「はて、それで? そのやんでれをアリスに教えてくださったのはどこのどちら様で?」
「クラスの■■」

 なるほど。その方には後で感謝のボディブローを差し上げましょう。

「ではアリス。都市伝説も退治し終えたことですし、そろそろ帰りましょうか」
「……うん」

 ぱん、とアリスが両手を合わせると、召還された巨大生物も消えていきます。
 彼らは一体どこからやってきて、一体どこへと消えるのでしょうね。
 いつか調べて見たいものです。
 その後手と手を繋いで、その日、俺とアリスは下山しました。

************************************

 今回の話はこれでおしまい。特に山もなく谷もなくオチもなく、この物語はただの平凡な正義の味方のお話です。
 もし少しでも興味を持っていただければこれ幸い。こんなつまらない俺たちの物語を必要としてくださる人がいるならば、それが明日への活力となるでしょう。
 それでは皆様、また次回。
 次こそは俺の活躍するお話でも。

 ではでは皆様、ぐっどな~いと!

【Continued...】




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