プレダトリー・カウアード 日常編 22
女が押し、彼が押される。
優劣は一時のみを見るならば、女に在るのかもしれない。
だが所詮は一時の推進力。宙に浮く女では、地に足を付けた彼に対して些か分が悪い。
彼の下げた左足へと力が篭る。重心は低く、後方へ。
俗に言う所の溜め。コンマの世界で行われる、動作全体の初期の挙動。
女が気づく。しかし流れは止まらない。
優劣は一時のみを見るならば、女に在るのかもしれない。
だが所詮は一時の推進力。宙に浮く女では、地に足を付けた彼に対して些か分が悪い。
彼の下げた左足へと力が篭る。重心は低く、後方へ。
俗に言う所の溜め。コンマの世界で行われる、動作全体の初期の挙動。
女が気づく。しかし流れは止まらない。
「――――フッ!」
口から小さく息を吐き、彼は力任せに腕を振るった。
平時であれば鉄すら摧する横薙ぎに、女の身体が飛び荒ぶ。
無様に吹き飛ぶ女を横目に、しかし彼の表情は翳った。
軽い。先の攻撃で腕へと得られた反動が、あまりに軽過ぎる。
腕を振るう直前に、自ら飛んで衝撃を緩和でもしていたのだろうか。
漫画やアニメではよく見るそれも、実現させるのは難しい。
況してや相手は吸血鬼。人外の速度と人外の腕力を誇る自分相手に、そんな芸当が出来るのならば、どんなに「楽しい」相手だろうと、彼は思う。
平時であれば鉄すら摧する横薙ぎに、女の身体が飛び荒ぶ。
無様に吹き飛ぶ女を横目に、しかし彼の表情は翳った。
軽い。先の攻撃で腕へと得られた反動が、あまりに軽過ぎる。
腕を振るう直前に、自ら飛んで衝撃を緩和でもしていたのだろうか。
漫画やアニメではよく見るそれも、実現させるのは難しい。
況してや相手は吸血鬼。人外の速度と人外の腕力を誇る自分相手に、そんな芸当が出来るのならば、どんなに「楽しい」相手だろうと、彼は思う。
女が地へと着く直後、彼は次なる動作に入る。
コンクリートの床が抉れる程に地面を蹴り出し、彼はその身を女に向けて駆り立てた。
速度でこそあの吸血鬼に若干劣るものの、その姿はさながら漆黒の矢。
彼の目は女を捕らえて放さない。
視界の女は受身を取って落下の衝撃を中和。彼女の顔に苦痛や疲弊の色は無い。やはり彼の剛力も空しく、女にダメージは与えられなかったらしい。
不敵に笑う女を見て尚、彼は無言で突き進む。
進路は直線。ブラフは必要無し。逃れる間もなく屠り去る――――――つもりだった。
コンクリートの床が抉れる程に地面を蹴り出し、彼はその身を女に向けて駆り立てた。
速度でこそあの吸血鬼に若干劣るものの、その姿はさながら漆黒の矢。
彼の目は女を捕らえて放さない。
視界の女は受身を取って落下の衝撃を中和。彼女の顔に苦痛や疲弊の色は無い。やはり彼の剛力も空しく、女にダメージは与えられなかったらしい。
不敵に笑う女を見て尚、彼は無言で突き進む。
進路は直線。ブラフは必要無し。逃れる間もなく屠り去る――――――つもりだった。
「――――――っ!?」
彼の視界から女が消えた。消えたように「見えた」。
テレポートや縮地等々、契約非契約を問わず無数の移動法が脳裏を過ぎる。
契約で手に入れた力か、はたまた、まさかと彼は思うが「鍛えた」だけで手に入れた力か。
とまれかくまれ、彼の目は女を逃した。
心の中で舌打ちをして、彼は即座に善後策を練り始める。
まず第一に停止は論外。停止に掛かる身体への負荷及び停止後相手に狙い打たれる可能性を考慮するならば、進む意外に道はない。
加えて進むとするのなら、このままの直進は進路を予想され得る点で却下。
残る道は直進除く左右とそして――――上。
再度地面を踏み込んで、速度そのまま彼は宙へと高く舞う。
右にせよ左にせよ、地面の上である以上、女の反撃の可能性は否めない。
であれば上。女の手の届かぬ高みへと昇り、一度体勢を立て直すべきだ――――と、非常に堅実、悪く言えば単純な解を、彼は導き出した。
そして安直は罰せられる事となる。
高速で揺れ動く彼の視界に、一つの異物が入り込む。
壊れた窓から漏れ入る月光に反射して、鈍く艶やかに輝くその影は――――
テレポートや縮地等々、契約非契約を問わず無数の移動法が脳裏を過ぎる。
契約で手に入れた力か、はたまた、まさかと彼は思うが「鍛えた」だけで手に入れた力か。
とまれかくまれ、彼の目は女を逃した。
心の中で舌打ちをして、彼は即座に善後策を練り始める。
まず第一に停止は論外。停止に掛かる身体への負荷及び停止後相手に狙い打たれる可能性を考慮するならば、進む意外に道はない。
加えて進むとするのなら、このままの直進は進路を予想され得る点で却下。
残る道は直進除く左右とそして――――上。
再度地面を踏み込んで、速度そのまま彼は宙へと高く舞う。
右にせよ左にせよ、地面の上である以上、女の反撃の可能性は否めない。
であれば上。女の手の届かぬ高みへと昇り、一度体勢を立て直すべきだ――――と、非常に堅実、悪く言えば単純な解を、彼は導き出した。
そして安直は罰せられる事となる。
高速で揺れ動く彼の視界に、一つの異物が入り込む。
壊れた窓から漏れ入る月光に反射して、鈍く艶やかに輝くその影は――――
「なっ…………っ!」
――――黒錆びた一本の鉄パイプだった。
女が投げたであろうそれは、正確に彼の進路上へと宙を飛ぶ。
回避は不可能。足場無き宙で進路を変える術等、彼は身につけてはいなかった。
女が投げたであろうそれは、正確に彼の進路上へと宙を飛ぶ。
回避は不可能。足場無き宙で進路を変える術等、彼は身につけてはいなかった。
――――――果たして、減速すら叶わずに、見事彼は顔面から鉄パイプへと突っ込んだ。
【Continued...】