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連載 - プレダトリー・カウアード-23

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uranaishi

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プレダトリー・カウアード 日常編 23



「ふふん」

 吸血鬼が自ら鉄パイプに顔面抱擁、そのまま落下していく様を、女――――狩谷 瑞樹は得意げな顔で眺めていた。
 あの吸血鬼は良くも悪くも素直過ぎると、瑞樹は思う。
 力を持った子供が、粋がって腕を振り回しているだけだ。
 如何に剛力であれ高速であれ、あんな安直な行動では、先を読まれてすぐに詰んでしまう。

 吸血鬼が完全に地面へと落下するのを見届けて、彼女は吸血鬼から目を放した。
 踵を返し、瑞樹は吸血鬼と真逆の方向へと歩みを始める。
 月明かりが仄かに入り込むだけの薄暗い工場内で、けれど瑞樹は迷わず突き進む。
 その進路上には、一人の少年が臥せっている。
 身体中に煤と埃を纏い、その少年は蹲っていた。
 先の戦闘の音が聞こえたのだろうか、何とか首を巡らせようとしているらしいのだが、身体は痙攣するように小さく蠢くだけだった。

 少年の傍らまで来ると、瑞樹はその場で屈みこんだ。
 力無く緩んだ少年の身体の下へと手を入れて、腰を落として引き上げたその体勢は、まさしくお姫様抱っこ。
 その段になって漸くまともな視界を確保した少年は、まず眼球を動かし、瑞樹の顔をそこに納めた。
 少年の顔に浮んだのは、感謝と困惑、そして後悔が少し。
 目まぐるしく変遷する少年の表情を、甘い甘い、慈しみの表情で見守りながら、瑞樹は少年を工場の隅へと運ぶ。
 これから起こる戦闘の戦禍に巻き込まれないであろうその小さなスペースでは、既に白い犬が丸まって怯えていた。
 出口は依然開け放たれて入るのだが、震える犬にはそこまで這う余裕すら無い。
 それを一瞥だけして、瑞樹は少年を犬から数メートル離れた地点へと横たえた。
 脚を折って跪き、未だ動作の叶わない少年の耳元へと口を寄せ、呟く

「あんまり姉ちゃんから離れるなー? 姉ちゃん探しちゃったじゃないか」

 少年の身体がピクリと動く。
 その所作が何を示すのか、瑞樹は深くは考えずに立ち上がる。
 振り返った先は吸血鬼の落下元。
 時折耳をつく粗い息遣いが、吸血鬼がまだ死んでいない事を表していた。
 一度二度、肩を回して息を吐く。

 闘いの幕は上がった。
 役者交代。
 復讐心と闘争心、その二つを滾らせて、瑞樹は舞台へと駆け上がる。

【Continued...】



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