(ローゼ>どうぞですの♪
(日天>む、ありがとう
(日天>む、ありがとう
ローゼから、真っ赤にラッピングされたハート型のチョコを受け取る日天
(日天>でもいいのか? いい加減、オレは渡す側に周りたいものだが
(ローゼ>ん~、そう言われても・・・
(ローゼ>ん~、そう言われても・・・
ちらり、日天の反対側の手を見る
半分ほどになった、別のチョコがしっかりと握られていた
半分ほどになった、別のチョコがしっかりと握られていた
(ローゼ>未だに、貴方に渡す方もいらっしゃるみたいだから;
(日天>・・・それもそうか;
(日天>・・・それもそうか;
残り半分を口の中に放り込み、椅子をくるりと回して、
山積みになったダンボール箱からチョコレートを1つ取り出し、開封してまた食べ始める
山積みになったダンボール箱からチョコレートを1つ取り出し、開封してまた食べ始める
(ローゼ>おほほほほ、いい食べっぷりですわね♪
(日天>まぁ、甘いものには目が無いからな
それに、作ってくれたものを捨てる訳にはいかない
(ローゼ>その心構えは素敵だけれど、お体を大事になさってね?
(日天>だったらチョコを持ってくるな;
(ローゼ>てへっ☆
(日天>まぁ、甘いものには目が無いからな
それに、作ってくれたものを捨てる訳にはいかない
(ローゼ>その心構えは素敵だけれど、お体を大事になさってね?
(日天>だったらチョコを持ってくるな;
(ローゼ>てへっ☆
無駄に可愛く決め、ローゼはそそくさと部屋を出ていった
見送りながら小さく笑い、チョコを食べながら己の仕事に戻る
見送りながら小さく笑い、チョコを食べながら己の仕事に戻る
(日天>・・・ん、しかし今年のチョコも、どれも美味いな――――
ぴたり
彼の身体が、一瞬凍ったように止まる
ペンを走らせる手も、チョコを溶かしている口も、一切の動きを見せなくなった
大きく息を吸い、ハァ、と溜息を吐いて、
彼の身体が、一瞬凍ったように止まる
ペンを走らせる手も、チョコを溶かしている口も、一切の動きを見せなくなった
大きく息を吸い、ハァ、と溜息を吐いて、
(日天>・・・この時期になると、やはり思い出してしまうな・・・
† † † † † †
「R-No.3様、これ・・・召し上がってください」
「お、ありがとう。頂くよ」
「は、はい!ありがとうございます!」
「お、ありがとう。頂くよ」
「は、はい!ありがとうございます!」
顔を真っ赤にして部屋を出ていく女性黒服
今から十数年前―――まだ、日天が男だった頃の、バレンタインデー
この時も、彼は部下から貰った大量のチョコレートを食べていた
今から十数年前―――まだ、日天が男だった頃の、バレンタインデー
この時も、彼は部下から貰った大量のチョコレートを食べていた
「ん、今年はクオリティ高いな・・・」
なんて美食家じみた事を呟きながら、チョコを貪りつつ仕事をしていた時、
「日天さん、そんなに食べてたら本ッ当にディアベーテス(糖尿病)になっちゃうよぉ?」
少女の声を聞き、そちらへ振り返る
黒服の上に白衣を羽織った灰色の髪の少女が、日天の元に歩み寄ってきた
黒服の上に白衣を羽織った灰色の髪の少女が、日天の元に歩み寄ってきた
「あ、お前か」
「『あ』、じゃないってばぁ!」
「分かった分かった; でもな、捨てる訳にはいかないだろう?」
「明日また食べればいいじゃないのぉ! 明後日も、その次の日もぉ!」
「いや、どうもな・・・そこに甘いものがあると、つい・・・」
「ハァ・・・死んじゃっても、知らないよぉ?」
「好きなものを食べて死ねるなら、少しは幸せかもな」
「・・・・・・」
「『あ』、じゃないってばぁ!」
「分かった分かった; でもな、捨てる訳にはいかないだろう?」
「明日また食べればいいじゃないのぉ! 明後日も、その次の日もぉ!」
「いや、どうもな・・・そこに甘いものがあると、つい・・・」
「ハァ・・・死んじゃっても、知らないよぉ?」
「好きなものを食べて死ねるなら、少しは幸せかもな」
「・・・・・・」
コト、とデスクの上に何かを置く少女
平たい皿の上で揺れるそれはプリンのようだが、一般的なものではなく、真っ黒なプリン
平たい皿の上で揺れるそれはプリンのようだが、一般的なものではなく、真っ黒なプリン
「・・・これは?」
「アタシからの、バレンタイン・・・食べて、くれるぅ?」
「勿論だ、プリンも好きだからな。しかし黒いプリンは初めてだな・・・」
「アタシからの、バレンタイン・・・食べて、くれるぅ?」
「勿論だ、プリンも好きだからな。しかし黒いプリンは初めてだな・・・」
添えられたスプーンを取り、掬って口へと運ぶ
途端に、彼の目は爛々と輝き出した
途端に、彼の目は爛々と輝き出した
「なっ・・・う、美味い」
「ヒャハ☆ 喜んでくれたぁ?」
「こ、こんな美味いプリンは食べたことがない・・・何で出来てるんだ?」
「ク・ロ・ゴ・マ♪ 黒ゴマには糖分の代謝を活発にしてくれるビタミンB1が豊富に含まれてるからぁ、
日天さんみたいな甘党の人には打って付けなんだぁ」
「ヒャハ☆ 喜んでくれたぁ?」
「こ、こんな美味いプリンは食べたことがない・・・何で出来てるんだ?」
「ク・ロ・ゴ・マ♪ 黒ゴマには糖分の代謝を活発にしてくれるビタミンB1が豊富に含まれてるからぁ、
日天さんみたいな甘党の人には打って付けなんだぁ」
スプーンを取り上げ、プリンを掬う
「日天さぁん? あ~ん♪」
日天は少し戸惑うと、誰も見ていない事を確認して、ぱくりと口の中に閉じ込めた
「・・・あ、あまり、こういう事はだな・・・」
「ごめんなさぁい; でも・・・アタシ、日天さんには、ずっと元気でいて欲しいのよぉ?
だから、甘いもの食べて死ねたら本望だなんて、寂しい事言わないでぇ・・・」
「ごめんなさぁい; でも・・・アタシ、日天さんには、ずっと元気でいて欲しいのよぉ?
だから、甘いもの食べて死ねたら本望だなんて、寂しい事言わないでぇ・・・」
涙目になって訴える少女
「参ったな」、と呟き、困り果てる日天
「参ったな」、と呟き、困り果てる日天
「・・・お前に泣かれると、どうも良心が痛む」
「元気でいてくれるぅ?」
「あぁ、そうする。・・・と言わないと、オレが悪者になるだろ?」
「だいじょぉぶ、日天さん、悪いことしそうにないもん」
「それはそれで少し哀しいな;」
「元気でいてくれるぅ?」
「あぁ、そうする。・・・と言わないと、オレが悪者になるだろ?」
「だいじょぉぶ、日天さん、悪いことしそうにないもん」
「それはそれで少し哀しいな;」
互いに微笑みあう2人
「と言う訳でぇ、」
と、一度部屋から出る少女
沢山の黒ゴマプリンが乗ったワゴンを引いて戻ってきた時、流石の日天も目を丸くした
沢山の黒ゴマプリンが乗ったワゴンを引いて戻ってきた時、流石の日天も目を丸くした
「これ、ぜぇんぶ食べてねぇ♪ じゃないと、糖分が身体に溜まって死んじゃうからぁ」
「ハ、ハハ・・・嘘、だろ?」
「ハ、ハハ・・・嘘、だろ?」
少女は無邪気に笑っているが、日天の笑顔は引き攣っていた
† † † † † †
(日天>・・・何だかんだ言って、オレの心配をしてくれていたのは、あいつだけだったな
完全に手を止め、独り回顧してしまっていた日天
(日天>ルート・・・お前、今何処で何してるんだ・・・?
返答の無い疑問を虚空にぶつけ、
彼はチョコレートではなく、黒ゴマプリンを突付いて口に運んだ
彼はチョコレートではなく、黒ゴマプリンを突付いて口に運んだ
...To be Continued