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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん、エピローグに至るまで-神智学協会-34

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konta

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 千勢とエレナは先刻放たれた草薙で一階の天井から上を破壊された本棟地上階を駆け抜けながら戦闘を続けていた。
 ウィリアムが用意した超能力部隊の最後の一兵が、千勢の視界の端でエレナに撲殺される。
 ≪デリーの鉄柱≫が振られたその隙を狙って叢雲の首を建物の壁を破壊させながら突進させるが、エレナはこれを躱し、≪デリーの鉄柱≫で首を下方に叩きつけた。
 叢雲の首が床を打つ。轟音が響いて建物の床が砕け、その下にあった階段を露出させた。
 千勢とエレナは露出した階段を挟んで睨み合う形になった。
 息が荒いエレナに対して、まだ余裕のある千勢が叢雲を己の背後に呼び寄せる。
 そうしながら階段に目をやって呟く。
「地下への道か……」
 この階段の下にウィリアムの居場所へと続く道があるのだろう。早く加勢に行かねばと思いながらエレナを見る。
 彼女は戦いが始まってからこれまで彼女は絶えず鋭い攻撃を叩き込んで来るが、今では息が随分と上がり、回避よりも≪デリーの鉄柱≫の堅さと彼女自身の剛力に任せた防御が攻撃への対応の中心になってきていた。
 ……戦意は衰えないが、疲労が大きいようだな。
 そう判断し、
 一気に畳みかけて仕留める……!
 千勢は叢雲に指示を出した。意を受けた叢雲は、その一本一本が人を丸のみに出来る大きさの顎を全開にして、エレナを喰らいに押し寄せる。
 空気を圧し、風を巻き起こしながら八方から襲いかかる叢雲に対してエレナは迎撃の構えをとって、
「――!?」
 突然叢雲がその姿を崩した事に愕然とした表情を浮かべた。
 叢雲が≪壇ノ浦に没した宝剣≫と千勢の影響下を離れ、ただの水蒸気に戻されたのだ。
 ≪デリーの鉄柱≫が空を切って、エレナは大質量の相手に対する打ちこみの為に傾けた重心を制御できずに体勢を崩してたたらを踏む。≪デリーの鉄柱≫を地面に突き刺して身体を強引に引き上げ――
 霧を隠れ蓑にした草薙の斬撃が眼前に迫っているのを目撃した。
「――――っ!」
 霧が烈風に吹き流され、全てが薙ぎ払われていく。


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 いい手応えだったが……。
 草薙が通り抜け、建物がほとんど元の外観をとどめない状態になった後、先程までエレナが居た場所がまっさらになっている事を確認して、階段へと向かおうとした千勢は足を止めた。
 月明かりの下、更地のようになった床から何かが這い出して来るのが見えたのだ。
「驚いた。馬鹿力と≪デリーの鉄柱≫があったとはいえ、それなりに草薙をまともに食らっていた筈だが」
 床の下から立ち上がったのはエレナだった。長衣は所々裂け、綻び、胸元から壊れた≪ハムサ≫が落ちた。肌には各所に切り傷がある。
 満身創痍だった。
 霧へと変じた叢雲の水気を吸って泥になった土が長衣の至るところに付着して重みを増し、彼女の挙動によって長衣の裂け目が広がっていく。
 長衣の裂け目から覗いた肌を見て、千勢の柳眉がわずかに上がった。
「それがお前の馬鹿力の正体か……」
「……ええ、そうよ」
 歯噛みしたエレナが中途半端に裂けた長衣の胸元から下腹までを自ら破り捨てる。
 そうして晒された腹部から胸元にかけての肌には、光を放つ文様が刻まれていた。
 その文様とそこから放たれる清浄に過ぎる光。それらを見てとって千勢は正体を看破した。
「≪聖痕≫……どうりで力も耐性もあるわけだ」
 ≪聖痕≫、主にキリスト教で語られる、キリストが磔刑となった際についたとされる傷や、何らかの科学的に説明できない力によって信者らの身体に現れる傷の事だ。奇跡の顕現とも言われるそれは、確かに驚異的な力をエレナに付与しているようだった。
 しかし、千勢はその≪聖痕≫以外にも気になるものをエレナの肌に見い出していた。
 ≪聖痕≫の下にある傷痕はなんだ……?
 エレナの肌に刻まれている≪聖痕≫の下には、≪聖痕≫よりも先にその肌へと刻まれたのだろう種々多様な傷痕があった。それらの傷は多様ではあるが、その一方で似たような傾向を持ってもいた。
 執拗に、痛めつける事を目的としたような痕跡をもつ傷痕なのだ。
 傷の質からして戦闘の際に付いた傷痕では無い……そう、あれは、
「拷問、か?」
 零れた言葉には否定が返って来た。
「両親に付けられたものよ」
 その言葉の意味を吟味し、千勢は僅かに頭を下げる。
「……そうか」
「もう十年前の……古い話よ」
 裂いた長衣の布を体に巻いて、形ばかり肌を隠しながらエレナは言う。
 そうしてエレナは≪デリーの鉄柱≫を携えて千勢へと歩きだした。泥と血に汚れたブルネットの髪の下から覗く目には戦意があり、その戦意に反応してか、≪聖痕≫の輝きがその光量を増して、その下の両親による虐待の跡を覆い隠さんとする。
「≪聖痕≫を与え、私をあの両親の下から解放してくれる奇跡を施してくださったオルコット様を、あの方の理想を、私は全てをもって応援する。――邪魔をしないで!」
 ≪デリーの鉄柱≫が振るわれ、≪壇ノ浦に没した宝剣≫と幾度めかの激突を果たした。




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