誘拐と人食い 16
地下深くに存在する、下水道大迷宮を流れる水の為の処理施設
都市伝説に関わるものが多く流れ着くここに、大量の死体が浮かんでいた
「死亡確認を怠るな! 殺人と解体のスペシャリスト達だ、油断すれば一撃で殺られるぞ!」
現場を取り仕切る黒服が繰り返しそう告げるが、それは完全に杞憂であった
事前に報告があった112人から、別働隊が倒した48人と家長の『ソニー・ビーン』を除いた63人の溺死体は滞りなく確認された
地上までの長い道程を経て白日の下に積み上げられた死体は『ソニー・ビーン一家』の伝承に基き、簡略化されてはいるものの裁判の形を取って罪を処理され、四肢を裂き火刑に処されていく
彼らが新たな都市伝説として蘇り、再び罪を犯さぬよう
彼らの犠牲者達を弔えるよう
そんな処理もまた、一般人の目に触れないように
数多の隠蔽工作を経て秘密裏に実行されていた
都市伝説に関わるものが多く流れ着くここに、大量の死体が浮かんでいた
「死亡確認を怠るな! 殺人と解体のスペシャリスト達だ、油断すれば一撃で殺られるぞ!」
現場を取り仕切る黒服が繰り返しそう告げるが、それは完全に杞憂であった
事前に報告があった112人から、別働隊が倒した48人と家長の『ソニー・ビーン』を除いた63人の溺死体は滞りなく確認された
地上までの長い道程を経て白日の下に積み上げられた死体は『ソニー・ビーン一家』の伝承に基き、簡略化されてはいるものの裁判の形を取って罪を処理され、四肢を裂き火刑に処されていく
彼らが新たな都市伝説として蘇り、再び罪を犯さぬよう
彼らの犠牲者達を弔えるよう
そんな処理もまた、一般人の目に触れないように
数多の隠蔽工作を経て秘密裏に実行されていた
―――
「まったく……π-Noの二人が生きていれば、隠蔽工作が楽だったものを」
町外れにある組織御用達の火葬場で、立ち昇る煙を見上げながら黒服の一人が溜息を吐く
「相変わらず面倒な仕事だな。ご苦労なこった」
「『組織』を抜けた奴に言われたくはない」
黒服の傍らで、煙草を咥えて立ち昇る煙を眺めていたサロリアスに、黒服は顔を顰める
「突然いなくなった尻拭いを任される側としては、あの二人もお前も変わらん」
「違い無ぇ」
「やけに素直だな。『組織』に戻ってくる気になったか? 引き抜いていったZ-No.1と共にな」
「番号で呼ぶな、味気無ぇ……引き抜いた覚えは無ぇよ、あいつが勝手についてきただけだ」
「お前は『さとり』なんて人材がどれだけ有用か判っているのか」
「知るか」
面倒臭そうに煙草を携帯灰皿に押し込み、口喧しい元同僚に背を向ける
「それにしても、何故お前がわざわざ後始末に出張ってくる。私がこうして噛み付いてくる事ぐらい想像できただろうに」
「ただの気紛れだ」
納得のいかない顔をしている元同僚を置いて、駐車場に停めてある車に乗り込む
「帰るぞ」
「あいあいさ、社長」
運転席に座っていた梨々が、ハンドルにもたれかかりにへらと笑う
「素直に言ったらどうっスか? 流石に一族郎党皆殺しってのは、悪党相手でも心苦しいって」
「……やかましい」
そう言ったきり、助手席で帽子を目深に被り、シートに身を沈めて狸寝入りを決め込むサロリアス
「あと、思ったまんま吹聴しても良いっスよ? 『梨々は俺のものだ、手放す気は無い』って」
「馬鹿野郎、さっさと事務所に戻るぞ」
サロリアスはそれだけ言って、狸寝入りから不貞寝へと移行するのであった
町外れにある組織御用達の火葬場で、立ち昇る煙を見上げながら黒服の一人が溜息を吐く
「相変わらず面倒な仕事だな。ご苦労なこった」
「『組織』を抜けた奴に言われたくはない」
黒服の傍らで、煙草を咥えて立ち昇る煙を眺めていたサロリアスに、黒服は顔を顰める
「突然いなくなった尻拭いを任される側としては、あの二人もお前も変わらん」
「違い無ぇ」
「やけに素直だな。『組織』に戻ってくる気になったか? 引き抜いていったZ-No.1と共にな」
「番号で呼ぶな、味気無ぇ……引き抜いた覚えは無ぇよ、あいつが勝手についてきただけだ」
「お前は『さとり』なんて人材がどれだけ有用か判っているのか」
「知るか」
面倒臭そうに煙草を携帯灰皿に押し込み、口喧しい元同僚に背を向ける
「それにしても、何故お前がわざわざ後始末に出張ってくる。私がこうして噛み付いてくる事ぐらい想像できただろうに」
「ただの気紛れだ」
納得のいかない顔をしている元同僚を置いて、駐車場に停めてある車に乗り込む
「帰るぞ」
「あいあいさ、社長」
運転席に座っていた梨々が、ハンドルにもたれかかりにへらと笑う
「素直に言ったらどうっスか? 流石に一族郎党皆殺しってのは、悪党相手でも心苦しいって」
「……やかましい」
そう言ったきり、助手席で帽子を目深に被り、シートに身を沈めて狸寝入りを決め込むサロリアス
「あと、思ったまんま吹聴しても良いっスよ? 『梨々は俺のものだ、手放す気は無い』って」
「馬鹿野郎、さっさと事務所に戻るぞ」
サロリアスはそれだけ言って、狸寝入りから不貞寝へと移行するのであった
―――
ベッドの上に転がされた、包帯で腕をぐるぐる巻きにした男
ベッドの脇に置かれた椅子に座る、病院の一室にはそぐわない高級感溢れるブランドものの服を纏った美女
その顔はテレビや雑誌でよく見かける有名な女優のものだった
「いやー、僕が怪我をするとか意外でしょ。心配した?」
「荷物の受け取り以外で会わないくせに何言ってんだか」
女はそう言って、ベッドの傍らに分厚く大きな封筒を置く
「いやー、久々に娘の顔を見たらなんか人恋しくてさぁ」
「誘拐組織のリーダーが何言ってんだか」
「蜜深ちゃんは手厳しいなぁ」
「私は忙しいの。スケジュールの合間と旦那の目を掻い潜って、こんな辺鄙な町まで来てる私の気にもなって欲しいわ」
そう言うと女は『交通標識のモデル』から、分厚く小さい封筒を受け取る
「それにしても、旦那の書いたものなんて何に使うの? とっくに本にした論文だし、直筆だからってこれだけの金になるような有名人じゃないわよ。私のサインの方がまだ高く売れるわ」
「使い道なんて色々さ。僕らにとってはとても有用だってだけ」
「ふぅん……私には判らない世界だわ」
そう言うと蜜深は椅子を立ちコートを羽織る
「それじゃあ帰るわ。仕事があるの」
「娘に会っていかないの?」
「旦那との? それともあなたとの?」
「僕の」
「嫌よ、子供なんて顔を合わせるだけで面倒臭いもの」
「じゃあ旦那さんの子は?」
「もう十年以上も会ってないもの、顔も憶えてないわ」
そう言うと女、宮定蜜深は別れの挨拶の一つも無しに個室から足早に出ていってしまった
「契約してようがしてまいが、人間って都市伝説より酷い奴が多いよね」
『交通標識のモデル』はベッドの上で肩を竦めながら携帯電話を取り出す
「あ、もしもし? うん、例のもの届いたから。そう、都市伝説封印素材の材料。都市伝説存在が触ると危ないのは相変わらずだから、回収要員はちゃんと人間を寄越してね」
ベッドの脇に置かれた椅子に座る、病院の一室にはそぐわない高級感溢れるブランドものの服を纏った美女
その顔はテレビや雑誌でよく見かける有名な女優のものだった
「いやー、僕が怪我をするとか意外でしょ。心配した?」
「荷物の受け取り以外で会わないくせに何言ってんだか」
女はそう言って、ベッドの傍らに分厚く大きな封筒を置く
「いやー、久々に娘の顔を見たらなんか人恋しくてさぁ」
「誘拐組織のリーダーが何言ってんだか」
「蜜深ちゃんは手厳しいなぁ」
「私は忙しいの。スケジュールの合間と旦那の目を掻い潜って、こんな辺鄙な町まで来てる私の気にもなって欲しいわ」
そう言うと女は『交通標識のモデル』から、分厚く小さい封筒を受け取る
「それにしても、旦那の書いたものなんて何に使うの? とっくに本にした論文だし、直筆だからってこれだけの金になるような有名人じゃないわよ。私のサインの方がまだ高く売れるわ」
「使い道なんて色々さ。僕らにとってはとても有用だってだけ」
「ふぅん……私には判らない世界だわ」
そう言うと蜜深は椅子を立ちコートを羽織る
「それじゃあ帰るわ。仕事があるの」
「娘に会っていかないの?」
「旦那との? それともあなたとの?」
「僕の」
「嫌よ、子供なんて顔を合わせるだけで面倒臭いもの」
「じゃあ旦那さんの子は?」
「もう十年以上も会ってないもの、顔も憶えてないわ」
そう言うと女、宮定蜜深は別れの挨拶の一つも無しに個室から足早に出ていってしまった
「契約してようがしてまいが、人間って都市伝説より酷い奴が多いよね」
『交通標識のモデル』はベッドの上で肩を竦めながら携帯電話を取り出す
「あ、もしもし? うん、例のもの届いたから。そう、都市伝説封印素材の材料。都市伝説存在が触ると危ないのは相変わらずだから、回収要員はちゃんと人間を寄越してね」
―――
「この仕事とかどうだろう」
「うーん、私ってばサーカス以外知らないからどうかなぁ」
「接客はできると思うけど、元々が客を喜ばせる仕事なわけだし」
「そう言う大さんはどうなんですか? 私は戸籍とか偽造するまで時間掛かりそうですし」
「出来れば末永く勤められるところが良いんだけど、正社員の中途採用ってなかなか無いんだよな」
「難しいですね、就職活動……」
「不況だしな」
顔を突き合わせ、就職情報誌に見入る壱岐大と『人攫いサーカス』の軽業師
まぐろは一人だけ仲間外れにされたようで、なんだか二人が妙に仲良く見えて、部屋の隅っこで不貞腐れてしまう
かと言って二人の間に割り込んだりするのは、大事な話を邪魔するようで憚られてしまう
だがそれがしばらく続くと、やはり我慢できず
「ねー」
「さて、あんまりまぐろの相手をしてあげられないのもな。とりあえず夕飯の買出しと、切られた代わりの服を買ってくるか。元締めと爺さんから報酬は貰えたし」
声を掛けようとしたのと同時に、大が部屋の隅でごろごろ転がっていたまぐろを引き起こして頭を撫でる
「まぐろには色々助けてもらってるからな。楽しい生活をしてもらわないとな」
「んふー」
頭を撫でられているうちに、不満も不安も霧散して
「まさるー、大好きー」
にへと口元を緩めて大に抱き付くまぐろ
その姿を見て軽業師の女は悪戯っぽく微笑む
「私も大好きー」
正面からまぐろに抱きつかれている大の背中に、楽しそうに抱きついてくる軽業師の女
「だめー! まさるはわたしの契約者ー!」
「契約者としてはまぐろちゃんのだけど、私も好きだっていいじゃない?」
「だめー! 絶対だめー!」
「よく判らん話してないで、買い物行くぞ。二人の着替えとかは俺だけじゃ買いに行けないんだからな、ほら支度しなさい」
ぎゃいぎゃいと喚きあう二人を引き剥がし、玄関へと向かったその時
ばたんと勢い良く扉が開き、こんな場所に来るはずのない老人が息を切らせて飛び込んできた
「どうしたんですか、突然こんなところまで」
「い、いやな? ちょっと匿ってくれんかの!?」
いつも飄々としていた老人とは思えない慌てっぷりで、ばたばたと返事も聞かずに部屋に上がり込み隠れられそうなところを物色している
その姿がトイレの中へと消えると同時に、今度はきちんとチャイムを鳴らしてから静かに扉が開いた
そこに立っていたのは、物静かな外見にそぐわない『何か』を内面に湛えた外国人の女性
「突然の訪問、失礼致します。今こちらに私の旦那が逃げてきたようなのですが」
「旦那さんですか」
大は一瞬の迷いも無くトイレの扉を指差していた
女性はぺこりと頭を下げると、静かに部屋に上がり込み
「あなた、今日こそはきちんとお話をしましょうね?」
「ちょ、待て!? そんなあっさりバラすか普通! 戦友じゃろ、儂ら!?」
「それはそれ、これはこれ、です」
そう言うと大は玄関に座り込んで靴を履き、まぐろと軽業師の女を手招きする
「鍵は玄関の靴箱の上に置いておきますんで、帰りは鍵を掛けて郵便受けに入れておいて下さい」
「あらあら、ごめんなさい。できるだけ早く済ませますから」
トイレからひょいと顔を出し申し訳無さそうな笑顔を浮かべて、またすぐに引っ込む
「話せば、話せば判るからの!? だから少し落ち着けヘラ!」
「うふふ、今日という今日はきっちりと片付けさせていただきますからね?」
「さて、今日の晩御飯は何にしようか」
「はんばーぐー」
「あ、お肉良いですね。でも野菜もちゃんと食べないとダメですよまぐろちゃん」
「うえー」
トイレの騒動を気にした様子も無く、揃って部屋を出ていく三人の後ろで
「お前ら意外と薄情じゃの!? たーすけてー!?」
悲痛な老人の叫び声が響き渡っていたのだったとさ
「うーん、私ってばサーカス以外知らないからどうかなぁ」
「接客はできると思うけど、元々が客を喜ばせる仕事なわけだし」
「そう言う大さんはどうなんですか? 私は戸籍とか偽造するまで時間掛かりそうですし」
「出来れば末永く勤められるところが良いんだけど、正社員の中途採用ってなかなか無いんだよな」
「難しいですね、就職活動……」
「不況だしな」
顔を突き合わせ、就職情報誌に見入る壱岐大と『人攫いサーカス』の軽業師
まぐろは一人だけ仲間外れにされたようで、なんだか二人が妙に仲良く見えて、部屋の隅っこで不貞腐れてしまう
かと言って二人の間に割り込んだりするのは、大事な話を邪魔するようで憚られてしまう
だがそれがしばらく続くと、やはり我慢できず
「ねー」
「さて、あんまりまぐろの相手をしてあげられないのもな。とりあえず夕飯の買出しと、切られた代わりの服を買ってくるか。元締めと爺さんから報酬は貰えたし」
声を掛けようとしたのと同時に、大が部屋の隅でごろごろ転がっていたまぐろを引き起こして頭を撫でる
「まぐろには色々助けてもらってるからな。楽しい生活をしてもらわないとな」
「んふー」
頭を撫でられているうちに、不満も不安も霧散して
「まさるー、大好きー」
にへと口元を緩めて大に抱き付くまぐろ
その姿を見て軽業師の女は悪戯っぽく微笑む
「私も大好きー」
正面からまぐろに抱きつかれている大の背中に、楽しそうに抱きついてくる軽業師の女
「だめー! まさるはわたしの契約者ー!」
「契約者としてはまぐろちゃんのだけど、私も好きだっていいじゃない?」
「だめー! 絶対だめー!」
「よく判らん話してないで、買い物行くぞ。二人の着替えとかは俺だけじゃ買いに行けないんだからな、ほら支度しなさい」
ぎゃいぎゃいと喚きあう二人を引き剥がし、玄関へと向かったその時
ばたんと勢い良く扉が開き、こんな場所に来るはずのない老人が息を切らせて飛び込んできた
「どうしたんですか、突然こんなところまで」
「い、いやな? ちょっと匿ってくれんかの!?」
いつも飄々としていた老人とは思えない慌てっぷりで、ばたばたと返事も聞かずに部屋に上がり込み隠れられそうなところを物色している
その姿がトイレの中へと消えると同時に、今度はきちんとチャイムを鳴らしてから静かに扉が開いた
そこに立っていたのは、物静かな外見にそぐわない『何か』を内面に湛えた外国人の女性
「突然の訪問、失礼致します。今こちらに私の旦那が逃げてきたようなのですが」
「旦那さんですか」
大は一瞬の迷いも無くトイレの扉を指差していた
女性はぺこりと頭を下げると、静かに部屋に上がり込み
「あなた、今日こそはきちんとお話をしましょうね?」
「ちょ、待て!? そんなあっさりバラすか普通! 戦友じゃろ、儂ら!?」
「それはそれ、これはこれ、です」
そう言うと大は玄関に座り込んで靴を履き、まぐろと軽業師の女を手招きする
「鍵は玄関の靴箱の上に置いておきますんで、帰りは鍵を掛けて郵便受けに入れておいて下さい」
「あらあら、ごめんなさい。できるだけ早く済ませますから」
トイレからひょいと顔を出し申し訳無さそうな笑顔を浮かべて、またすぐに引っ込む
「話せば、話せば判るからの!? だから少し落ち着けヘラ!」
「うふふ、今日という今日はきっちりと片付けさせていただきますからね?」
「さて、今日の晩御飯は何にしようか」
「はんばーぐー」
「あ、お肉良いですね。でも野菜もちゃんと食べないとダメですよまぐろちゃん」
「うえー」
トイレの騒動を気にした様子も無く、揃って部屋を出ていく三人の後ろで
「お前ら意外と薄情じゃの!? たーすけてー!?」
悲痛な老人の叫び声が響き渡っていたのだったとさ
―――
学校町の遥か上空
雲の上に浮かぶ巨大なパスタが絡み合ったような物体の上で、二人の黒服が寝転がっていた
「意外と無茶するよね、君も」
「ぼーだーらいんー」
陽光を遮るもののない場所で、それでも空気は冷たい
「そりゃまあ都市伝説に飲まれた『黒服』だから、理論上契約も可能だし実際やってる人も居るけど。一蓮托生で消えちゃう可能性もあったのに」
「ちゃれんじゃー」
「なんだかんだで、結局二人で一人の存在になっちゃったね」
「かるてっとー」
「ん、まあ厳密に言えば存在は四つか。まいったなぁ、ユニコーンの事を考えたら僕はずっと禁欲生活だよ?」
「のーぷろぶれむー」
「え、別に契約と乙女である事って関係無いの? そりゃまた、『ソニー・ビーン』もお気の毒に。知識なんて下手につけるもんじゃないね」
「でぃすてぃにー」
「ま、そうなのかもね。さて……寒いしまだ傷が痛むし、しばらく温泉でも行ってゆっくりしようか。『組織』の仕事はもういいよね」
「えんでぃんぐー」
「『ソニー・ビーン一家』は倒したし、僕らの目的は終わったから。僕らの存在は隠蔽して、表舞台から退場しようか」
そう言うとピーターは、ポーラを抱き寄せてそっと唇を重ねる
「これからは仕事も過去も関係無く、ずっと一緒だ」
「あいらぶゆー♪」
二人を乗せた『フライング・スパゲッティ・モンスター』は、のんびりと静かに
ゆっくりと学校町から離れていった
雲の上に浮かぶ巨大なパスタが絡み合ったような物体の上で、二人の黒服が寝転がっていた
「意外と無茶するよね、君も」
「ぼーだーらいんー」
陽光を遮るもののない場所で、それでも空気は冷たい
「そりゃまあ都市伝説に飲まれた『黒服』だから、理論上契約も可能だし実際やってる人も居るけど。一蓮托生で消えちゃう可能性もあったのに」
「ちゃれんじゃー」
「なんだかんだで、結局二人で一人の存在になっちゃったね」
「かるてっとー」
「ん、まあ厳密に言えば存在は四つか。まいったなぁ、ユニコーンの事を考えたら僕はずっと禁欲生活だよ?」
「のーぷろぶれむー」
「え、別に契約と乙女である事って関係無いの? そりゃまた、『ソニー・ビーン』もお気の毒に。知識なんて下手につけるもんじゃないね」
「でぃすてぃにー」
「ま、そうなのかもね。さて……寒いしまだ傷が痛むし、しばらく温泉でも行ってゆっくりしようか。『組織』の仕事はもういいよね」
「えんでぃんぐー」
「『ソニー・ビーン一家』は倒したし、僕らの目的は終わったから。僕らの存在は隠蔽して、表舞台から退場しようか」
そう言うとピーターは、ポーラを抱き寄せてそっと唇を重ねる
「これからは仕事も過去も関係無く、ずっと一緒だ」
「あいらぶゆー♪」
二人を乗せた『フライング・スパゲッティ・モンスター』は、のんびりと静かに
ゆっくりと学校町から離れていった