…ひら、と
視界の端に、銀色の蝶が、見えたような
そんな錯覚を覚えたエーテル
…いや、錯覚では、ない
視界の端に、銀色の蝶が、見えたような
そんな錯覚を覚えたエーテル
…いや、錯覚では、ない
ひらひら、ひらひらと
銀色に光る蝶の群れが、ユグドラシル内のエーテルの執務室に、姿を現していた
やがて、それらは一箇所に集まり、人の姿を作り出す
銀色に光る蝶の群れが、ユグドラシル内のエーテルの執務室に、姿を現していた
やがて、それらは一箇所に集まり、人の姿を作り出す
「…すまんな、エーテル、このような入り込み方で」
「セシリアか、どうしたんだ?」
「セシリアか、どうしたんだ?」
セシリア・クロンクヴィスト
…それが、現れたこの女性の、人間としての名前
「組織」でのナンバーは、C-No.0
エーテルの、同僚だ
…それが、現れたこの女性の、人間としての名前
「組織」でのナンバーは、C-No.0
エーテルの、同僚だ
エーテルの言葉に、セシリアはすたすたと、彼に近づく
「相変わらず、お前が死にかけていると言うのでな。作ってきた。飲め」
ことん、ことん
仕事用の部下への口調ではなく、素の口調で話しながら、机の上に小瓶を置くセシリア
液体が満たされたそれを見て、エーテルは苦笑した
仕事用の部下への口調ではなく、素の口調で話しながら、机の上に小瓶を置くセシリア
液体が満たされたそれを見て、エーテルは苦笑した
「栄養剤か、ありがとう」
「あぁ、こっちは栄養剤で…こっちは、胃薬だ。あの方のお役に立つ行動をするのは素晴らしい。だが、無理をするなよ。書類は、多少、私の部署に回してくれても構わん」
「あぁ、こっちは栄養剤で…こっちは、胃薬だ。あの方のお役に立つ行動をするのは素晴らしい。だが、無理をするなよ。書類は、多少、私の部署に回してくれても構わん」
セシリアは、エーテル同様、書類仕事に関しては優秀だ
なおかつ、エーテルのように他人の仕事まで請け負う事はめったにない為、かなりの余裕がある
なおかつ、エーテルのように他人の仕事まで請け負う事はめったにない為、かなりの余裕がある
「いざとなったら、頼む」
できれば、迷惑はかけたくないが…と、そう言いつつ、コーヒーを口にしたエーテル
カップを、机に置こうとして
カップを、机に置こうとして
「…あ!?」
疲れのせいか、手が滑った
がちゃん!とカップは床に落ちて、砕けてしまう
がちゃん!とカップは床に落ちて、砕けてしまう
「大丈夫か?」
「あぁ…予想外に、疲れが溜まっていたらしい」
「…本当に、無理をするな」
「あぁ…予想外に、疲れが溜まっていたらしい」
「…本当に、無理をするな」
小さく、ため息をついたセシリア
カップを見つめ……その美しい唇から、旋律を紡ぐように、声が漏れ出す
カップを見つめ……その美しい唇から、旋律を紡ぐように、声が漏れ出す
「…思い出して御覧なさい、あなたの元あった姿を」
ぽう、と
カップが、光に包まれる
カップが、光に包まれる
「思い出して御覧なさい、あなたが、本来あるべきその姿を」
光に包まれていくカップ
…砕けた、それが
完全に、再生した
…砕けた、それが
完全に、再生した
カップを手にとり、エーテルはしみじみと口を開く
「…これが、セシリアの力か。万能の力、って言うのは本当なんだな」
「……万能。だからこそ、みだりに使うものではない、と考えているがな。節制なき万能は、何も生み出さない」
「……万能。だからこそ、みだりに使うものではない、と考えているがな。節制なき万能は、何も生み出さない」
それでも、たまには使わなければ、力はさび付いてしまう
…だから、こうやって、今回のようにささやかな力として振るうのだ
…だから、こうやって、今回のようにささやかな力として振るうのだ
己の力は、みだりに振るってはならない
…時折、感情のまま、振るってしまう事がある、それが、自分の欠点であるとセシリアは感じていた
恥ずべきことである
「組織」に役立つためにも、もっと自分を律せねば
…時折、感情のまま、振るってしまう事がある、それが、自分の欠点であるとセシリアは感じていた
恥ずべきことである
「組織」に役立つためにも、もっと自分を律せねば
「それでは、私はこれで。一般の黒服に見つかっては、面倒だからな」
「あぁ、それじゃあ」
「あぁ、それじゃあ」
上層部は、みだりに一般の黒服の前に姿を現すべきではない
己が、C-No.0であると把握しているのは、ほんの一部でいい
エーテルは、たまたま、その一人、それだけだ
己が、C-No.0であると把握しているのは、ほんの一部でいい
エーテルは、たまたま、その一人、それだけだ
セシリアはその身を銀色に光る蝶の群れへと変えて、そこから姿を消した
残された、その栄養剤を口にして
「…苦い」
と、エーテルは思わず、ぽつりと呟いた
fin