「………むぅ」
サイレスの猛攻を防いでいるミカエルとルシファーの様子を見ながら、直希は考え込む
…逃げ出そうとする気配はない
そもそも、直希の中でその選択肢はない
…逃げ出そうとする気配はない
そもそも、直希の中でその選択肢はない
ここで逃亡すれば、いつ、またこの黒幕と遭遇できるかわからない
そして、ここでサイレスをどうにかしなければ…ひかるの身が、危うくなる可能性がある
ウムブウル以外のひかるの契約都市伝説に対し、サイレスがまた何か吹き込んでは厄介だ
そして、ここでサイレスをどうにかしなければ…ひかるの身が、危うくなる可能性がある
ウムブウル以外のひかるの契約都市伝説に対し、サイレスがまた何か吹き込んでは厄介だ
「ウムブウル、動けるか?」
「…少しは」
「…少しは」
ザフキエルの治癒により、多少は傷が回復したウムブウル
だが、まだ完全では、ない
だが、まだ完全では、ない
「…むぅ。ラファエルを呼び出せれば、完全治癒も可能なのだろうが」
「我らが主(マイ・マスター)、今、あなたがこれ以上、光輝の書での召喚を行うのは危険です」
「我らが主(マイ・マスター)、今、あなたがこれ以上、光輝の書での召喚を行うのは危険です」
直希の呟きに、ザフキエルがそう告げる
その通りだ
ミカエルとルシファーと言う存在を呼び出した事で、直希の精神力はかなり削れている
いかに、このCoA世界で光輝の書の力を扱いやすくなっているとはいえ、流石に限度と言う者がある
その通りだ
ミカエルとルシファーと言う存在を呼び出した事で、直希の精神力はかなり削れている
いかに、このCoA世界で光輝の書の力を扱いやすくなっているとはいえ、流石に限度と言う者がある
「わかっているさ、ザフキエル。まぁ、僕は君達にこそ好かれてはいるが、光輝の書には嫌われている故、飲まれる、と言う事はないだろうがね。ただ、ぶっちゃけ僕の体力と精神力が限界点に近い故、これ以上誰かを呼ぶのが不可能だな」
そうでなければ、いっそ、メタトロンかサンダルフォンの召喚にチャレンジしたいところではあるのだが
このような状況でも、直希は感情薄く、淡々としている
…その顔に、声に
恐怖は、ない
このような状況でも、直希は感情薄く、淡々としている
…その顔に、声に
恐怖は、ない
「…呆れたもんすね。この状況で、恐怖すら感じないとは」
「ふむ、では、君は、僕に死を恐れろ、と?……幼少期に死と隣り合わせの状況が続いていた僕に、今更死を恐怖しろと?僕にとっては、死は、何よりも近く、だが、できれば接触はノーサンキューな友人なのだよ」
「それは、友人とは言わないと思うっす」
「ふむ、では、君は、僕に死を恐れろ、と?……幼少期に死と隣り合わせの状況が続いていた僕に、今更死を恐怖しろと?僕にとっては、死は、何よりも近く、だが、できれば接触はノーサンキューな友人なのだよ」
「それは、友人とは言わないと思うっす」
軽口を叩きながらも、サイレスの攻撃は止まらない
飛び散るミカエルとルシファーの羽が攻撃を受け止め続けており、時折その隙をかいくぐって攻撃をしかけてはいるのだが…致命傷には、至らない
否
致命傷を与えても、すぐに再生してしまう
飛び散るミカエルとルシファーの羽が攻撃を受け止め続けており、時折その隙をかいくぐって攻撃をしかけてはいるのだが…致命傷には、至らない
否
致命傷を与えても、すぐに再生してしまう
さて、どうしたものか、と直希は考える
限界点に近づいている体力と精神力と言う状況でなお、思考をいつも通り働かせる事ができるのは、そのような状況に慣れているからなのか
…そして、表面上、淡々とはしているが…一応、直希はこれでも焦っているのだ
普段の直希ならば、ウムブルウを連れての、一時退却も視野に入れる
だが、今は、それを視野に入れる余裕すらない
愛美の身の安全を確保する為にも、これ以上、ひかるの周囲のガードを固められては困るという心境
そして、何よりひかる自身の命や精神面の危険を危惧している
己の身よりも他人の身を優先するが故だ
限界点に近づいている体力と精神力と言う状況でなお、思考をいつも通り働かせる事ができるのは、そのような状況に慣れているからなのか
…そして、表面上、淡々とはしているが…一応、直希はこれでも焦っているのだ
普段の直希ならば、ウムブルウを連れての、一時退却も視野に入れる
だが、今は、それを視野に入れる余裕すらない
愛美の身の安全を確保する為にも、これ以上、ひかるの周囲のガードを固められては困るという心境
そして、何よりひかる自身の命や精神面の危険を危惧している
己の身よりも他人の身を優先するが故だ
ぶつかりあう力と力
それを眺めつつ、直希は周囲を観察する
自分達以外、ここに誰か来そうな気配はあるか?
…今のところ、困った事にそれはなさそうだ
では、どうするか…
それを眺めつつ、直希は周囲を観察する
自分達以外、ここに誰か来そうな気配はあるか?
…今のところ、困った事にそれはなさそうだ
では、どうするか…
だが
直希のその考えは
直後、覆される
直希のその考えは
直後、覆される
光が
一瞬の、閃光が走った
直希には、そのようにしか、見えなかった
一瞬の、閃光が走った
直希には、そのようにしか、見えなかった
「っぐ!?」
サイレスには
どのように、感じられただろうか?
どのように、感じられただろうか?
時間にして、ほんの数秒
その間に……数十回もの死を経験させられたような、ダメージ
それを、サイレスは自覚した
その間に……数十回もの死を経験させられたような、ダメージ
それを、サイレスは自覚した
「……むぅ?」
邪竜の姿をとったサイレス
その、頭が、心臓が
力任せにぶち抜かれ……しかし、その傷口は焼かれていて、血すら、流れない
与えられたその致命的ダメージを、サイレスは高速で再生させていく
その、頭が、心臓が
力任せにぶち抜かれ……しかし、その傷口は焼かれていて、血すら、流れない
与えられたその致命的ダメージを、サイレスは高速で再生させていく
…戦場の、真ん中
そこに、いつの間にか……黒尽くめの男が、立っていた
西洋系の顔立ち…で、あると思われる
目深にかぶった黒い帽子のせいでよくは見えないが、それは間違いなさそうだ
軽く、握られた拳
そこに、かすかにバチリ、と、電流が走ったようにも見える
そこに、いつの間にか……黒尽くめの男が、立っていた
西洋系の顔立ち…で、あると思われる
目深にかぶった黒い帽子のせいでよくは見えないが、それは間違いなさそうだ
軽く、握られた拳
そこに、かすかにバチリ、と、電流が走ったようにも見える
「………まだ、死なないのか」
ぽつり、男がサイレスを見上げ、呟く
直希以上に無感情な声
まるで、人形を思わせる気配
直希以上に無感情な声
まるで、人形を思わせる気配
サイレスは、突如現れたその男を、睨みつけた
「…何者っすか?人払いはしてあったはずなんすけどねぇ…」
「……神のご加護の前に…そのようなものは、無意味だ」
「……神のご加護の前に…そのようなものは、無意味だ」
サイレスの言葉に、ぼそり、答えるその男
男の出現によって、サイレスの攻撃が、一度止まる
ミカエルとルシファーは、サイレスへ攻撃する構えを見せながらも、突如現れたそれに対し、警戒を解かない
ミカエルとルシファーは、サイレスへ攻撃する構えを見せながらも、突如現れたそれに対し、警戒を解かない
「…天使の力、ですね」
「っち、「教会」かよ」
「っち、「教会」かよ」
この二人には
そして、ザフキエルには、わかる
突如現れたこの男が、何と契約しているのか
性質的に近い存在であるからこそ……天使と悪魔、すなわち堕天使だからこそ、わかる
この男が、とある天使と契約している事が
そして、ザフキエルには、わかる
突如現れたこの男が、何と契約しているのか
性質的に近い存在であるからこそ……天使と悪魔、すなわち堕天使だからこそ、わかる
この男が、とある天使と契約している事が
「「教会」?それと、先ほど、閃光が走ったように見えたが………おぉ」
ぽん、と
場の緊迫感など考えず、直希は手を打った
場の緊迫感など考えず、直希は手を打った
「あぁ、父さんから聞いた事がある。「トライ・ミニッツ・ライトニング」、か?」
「………」
「………」
直希の言葉に、男は答えない
それは、肯定とも否定とも、とれる
それは、肯定とも否定とも、とれる
「…「トライ・ミニッツ・ライトニング」?「教会」最速にして白兵戦最強戦力が、どうしてこんな場所にいるっすか?」
「………俺は、任務を果たすのみだ」
「………俺は、任務を果たすのみだ」
ぽつり、呟いた男の姿が、一瞬、消える
本当に、一瞬
消えた事すら気付かぬほどの、一瞬の閃光
サイレスは、次に向けられるであろう攻撃を避けようとしたが…それすら間に合わぬ程の、一瞬
再び、致命傷を叩きつけられ、それでもなお、サイレスはその身を再生させていく
本当に、一瞬
消えた事すら気付かぬほどの、一瞬の閃光
サイレスは、次に向けられるであろう攻撃を避けようとしたが…それすら間に合わぬ程の、一瞬
再び、致命傷を叩きつけられ、それでもなお、サイレスはその身を再生させていく
「……ファシル司祭長を誘惑した悪魔に、天罰を」
「っち……!」
「っち……!」
トライ・ミニッツ・ライトニング
男の正体がそれだろうと推測し、サイレスは攻撃を叩きつける
放たれる呪毒の刃、それは、閃光のように消え、動き回るトライ・ミニッツ・ライトニングに当たっているようには見えない
そもそも、トライ・ミニッツ・ライトニングの動きを捉えるのが、困難なのだが
男の正体がそれだろうと推測し、サイレスは攻撃を叩きつける
放たれる呪毒の刃、それは、閃光のように消え、動き回るトライ・ミニッツ・ライトニングに当たっているようには見えない
そもそも、トライ・ミニッツ・ライトニングの動きを捉えるのが、困難なのだが
「………むぅ」
どうするべきか
直希は、考えて
結局、シンプルな答えに行き着く
直希は、考えて
結局、シンプルな答えに行き着く
「ミカエル、ルシファー。引き続き、あのサイレスと言う男に攻撃を」
「了解っ!我らが主っ!!」
「了解…トライ・ミニッツ・ライトニングの方は、どうします?」
「僕らに対して敵意を向けないなら、どうでもいい。敵意を向けてきたならば、容赦はするな」
「了解っ!我らが主っ!!」
「了解…トライ・ミニッツ・ライトニングの方は、どうします?」
「僕らに対して敵意を向けないなら、どうでもいい。敵意を向けてきたならば、容赦はするな」
直希にとって、「教会」は敵である
が、どうやら、「教会」にとっても、あのサイレスとか言う男は敵らしい
敵の敵は味方
そう判断してもいいだろう
が、どうやら、「教会」にとっても、あのサイレスとか言う男は敵らしい
敵の敵は味方
そう判断してもいいだろう
サイレスが倒れた後に、自分達に敵意を向けてきたならば
その時は、その時だ
それに
その時は、その時だ
それに
「パっとでの奴においしいところを持っていかれる、と言うのは実に癪だしな」
「…我らが主、本音はそれですね?」
「…我らが主、本音はそれですね?」
ザフキエルのその突っ込みは、スルーしつつ
ウムブルウの傷の具合を気遣いながらも
直希は、その戦場から目をそらすことはなかった
ウムブルウの傷の具合を気遣いながらも
直希は、その戦場から目をそらすことはなかった
to be … ?