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連載 - 仲介者と追撃者と堕天使と-31g

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 飛び立とうとするサイレス
 それを、直希は追いかけようとして……ぐら、と、体が揺らぎ、倒れこみそうになる
 その体を、ザフキエルが慌てて支えた
 ……顔色が、悪い
 もはや、限界なのだ

 サイレスは、そのまま飛び立ってしまう
 一行は、ただ、それを見送ることしかできなかった

「……むぅ、逃げられた、か………不味いな。ここで、仕留めておきたかったのだが…」
「我らが主(マイ・マスター)、今は、それよりも休息を…もはや、あなたは限界のはずです」
「……むぅ」

 ザフキエルの言葉に、直希は不満そうな表情を浮かべる
 …このような状態になって、なお……直希は、まだ、動こうとしているのだ
 それほどまでに、直希が背負い込んでしまった責任は、重い
 早々に事件を解決させ、これ以上、新島 愛美を危険な目にあわせない
 その命を、危険に晒させはしない
 ……間違っても、死なせやしない
 その目的の為に、直希は己の身をないがしろにしている
 だからこそ、ミカエルとルシファーの同時召喚などと、無茶をしでかしたのだ

「………仕方ない。休息、するか……君はどうするのかね?トライ・ミニッツ・ライトニング」

 直希の、問いかけに
 …サイレスの呪詛で作られた結界によって弾き飛ばされていたトライ・ミニッツ・ライトニングが…むくりと、起き上がった
 思ったほど、ダメージを受けている様子はない
 攻撃の瞬間、危険を感じて手加減でもしていたのだろうか

「………」

 起き上がった彼は、静かに直希を見下ろす
 それを庇うように、間にミカエルとルシファーが入った
 強い敵意を纏い、トライ・ミニッツ・ライトニングを睨みつける

「俺様達の主様を、殺すか?「教会」の狗。自分達の都合で天使をも陥れる身勝手野郎共め」
「…私達は、あくまでも「光輝の書」のルシファーとミカエル。「教会」が我らを望もうとも、私達は我らが主に従うだけ。お前達に従う道理などありませんよ」

 「教会」は、「光輝の書」の所有権を主張する
 故に、何度か直希を狙ってきている
 …今回、トライ・ミニッツ・ライトニングは、どうやらサイレスを討伐すると言う任務を負って、このCOA内に入り込んだようではある
 だが、だからと言って、直希を狙わないとは……限らないのだ

 ウムブウルは、考える
 この状況で、どうするべきか
 …どちらに、味方すべきか?
 それを、考えて…

「…むぅ」

 ……と
 ザフキエルに体を支えられている状況だった直希が…小さく、声をあげた
 どこか、納得がいっていないような、表情
 …そして、その考えを告げるように、トライ・ミニッツ・ライトニングに、再び声をかける

「…トライ・ミニッツ・ライトニング。先ほどの件だが……【わざと】サイレスのカウンターを受けたのではないかね?」

 …ぴくり
 直希の言葉に…トライ・ミニッツ・ライトニングは、小さく反応を見せた
 だが、感情が表に出た訳ではなく、考えは読めない

「【わざと】挑発に乗って、【わざと】カウンターを受けたな?…そうでなければ、攻撃をそのまま返されて、生きていられているとは思えんよ。君は、体の丈夫さ加減については、一応人間の限界レベルを少し超えた程度でしかないはずだからな」
「……どう言う事だ?」

 直希の言葉に、疑問を発したのはウムブウルだ
 …「わざと」、だと?

 つまり
 あの、トライ・ミニッツ・ライトニングとか呼ばれている青年は……【わざと】サイレスに負けた事になる
 どう言う事か?

「まぁ、つまり、だ。どうやら、彼はエイブラハムとか言う人物の命令で、今回行動しているようだが……本当は、そんな者の命令など【どうでもいい】。そう言う事なのではないかね」
「………」

 トライ・ミニッツ・ライトニングは、何も答えない
 否定も、肯定もしない
 ……むしろ、それが答えであるかのように

「君は今、何らかの事情でエイブラハムの下についている。だが、本心では、そんな存在になど従いたくない………君を動かしている存在は、本当は、【もっと上】だ。「教会」最強クラスの戦力に直接命令を与えられる存在などとなると、限られてくるがね」
「………」
「このCOA世界に侵入したこと自体、君にとっては不本意なのだろう。だが、エイブラハムから疑われぬ為にも、ある程度従わなければならない。嫌でも、サイレスと戦い……【倒そうとした意思だけでも示さなければならない】そう言う事だったのではないかね?」

 淡々と、告げていく直希の言葉
 ………やがて
 トライ・ミニッツ・ライトニングが……小さく、ため息をついたように思えた
 そして、くるり、直希に背を向ける

「……お前の討伐は、任務ではない」
「ふむ、つまりは見逃してくれるということか。それは嬉しいな。ぶっちゃけ、そろそろ視界がかすんできたのだよ」

 冗談めかして口にした直希の言葉に、ザフキエルがますます慌てる
 ミカエルとルシファーも、慌てて直希の下へと近づいていった
 ……呼吸も、だいぶ荒い
 意識を保てている状態が、奇跡のようなものだ

「あぁ……先ほど、の…僕の、推察だが………恐らく、あの程度、サイレスも……気付いていると思うがね……………気付けていなかったら、彼がよっぽどバカか、傲慢だと言う事になる」
「……そうであれば、こちらも行動しやすいのだがな」

 直希の言葉に……トライ・ミニッツ・ライトニングは、ようやく、かすかに感情をにじませた、ほんの少し、冗談めかしたような声で、答えて
 っふ、と、一瞬の閃光と共に、姿を消した
 それを、見送って……直希は静かに、目を閉じる

「…すまん、少し、眠る…ザフキエル、しばし、頼む。戦闘は、ミカエルとルシファーに…任せ、る」
「………Yes,我らが主(マイ・マスター)」
「りょうかぁい。我らが主に近づく連中、根こそぎぶち殺して、その尻蹴っ飛ばして神の御許に送りつけりゃいいんだろ?」
「…下品ですよ、愚弟………お任せください、我らが主」

 天使三人の返事に、直希は、小さく頷いて
 …一度閉じた瞼を、何とか、押し開けて
 ウムブウルに、視線を向けた

「……ウムブウル、君、に……頼みがある」
「…何だ?」
「君の、主の元へ……………あのサイレスに利用されている、悲劇のプリンセスの、元へ。僕らを…誘っては、くれないかね?どうしても…彼女と、話をして。君と同じ立場の連中を、止めてもらわなければならないのだよ」

 最も、と
 直希は、小さく苦笑し……限界であるかのように、目を閉じて

「………僕の事が、信用できなければ……信頼、できなければ。ここで食い殺せばいいさ」

 と、そう、告げて……その意識を、暗闇の底へと、沈めていったのだった              





to be … ?




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