…そこの前に立ち
彼女は、小さく深呼吸した
………コートのポケットに入れてきた、漆黒の蝶のブローチに、そっと触れる
冷たい感触のそれに触れていると…緊張が少し和らぎ、気持ちが落ち着いてくる
彼女は、小さく深呼吸した
………コートのポケットに入れてきた、漆黒の蝶のブローチに、そっと触れる
冷たい感触のそれに触れていると…緊張が少し和らぎ、気持ちが落ち着いてくる
………ひらり、と
視界の隅を、その蝶と同じような姿をした黒い蝶が、通り過ぎていった
視界の隅を、その蝶と同じような姿をした黒い蝶が、通り過ぎていった
「………付いて来なくてもいい、というより、ついてこないでくださいね?」
小声でそう告げると、蝶はひらひらと飛んでいって姿を消した
…顔をあげる
そのアパートに、ゆっくりと近づいていった
見張りの気配はない
コンが、約束を護ってくれたのだ
…顔をあげる
そのアパートに、ゆっくりと近づいていった
見張りの気配はない
コンが、約束を護ってくれたのだ
扉の前で、立ち止まり…もう一度、深呼吸する
左手はコートのポケットの中のブローチを握り締め、右手で扉をノックした
左手はコートのポケットの中のブローチを握り締め、右手で扉をノックした
「…影守さん、広瀬です。中に、入れていただけませんか?」
「………美緒、さん?」
「………美緒、さん?」
返って来た声には、張りがない
どこか、無気力とも感じられる、声
どこか、無気力とも感じられる、声
「……でも、今、俺は」
「コンさんが……お時間を、くれました。あまり長い時間ではありませんが……今、あなたを見張っている存在は、いません」
「コンさんが……お時間を、くれました。あまり長い時間ではありませんが……今、あなたを見張っている存在は、いません」
………やや、間をおいて
扉が、そっと開かれる
扉が、そっと開かれる
…憔悴しきった表情
促され、部屋の中に入る
促され、部屋の中に入る
「…ちゃんと、お食事はとっていますか?」
「一応……食料は、支給されているし」
「一応……食料は、支給されているし」
小さく、力なく苦笑してくる影守
…表情が、酷く痛々しい
…表情が、酷く痛々しい
「…美緒さんは………希の最期を、聞きましたか?」
「……兄から、聞きました。もっとも、兄はあの件に直接関わっていた訳ではありませんので、完全に把握しているわけではありませんが…」
「…………そうか」
「……兄から、聞きました。もっとも、兄はあの件に直接関わっていた訳ではありませんので、完全に把握しているわけではありませんが…」
「…………そうか」
ぺたん、と座り込む影守
美緒は、影守の隣に、そっと腰をおろした
美緒は、影守の隣に、そっと腰をおろした
「結局……俺のやったことって、何だったんだろうな」
「影守さん……」
「都市伝説も、取り上げられて……永遠に続くだろう、謹慎状態。俺は、結局何もできなくて……これからも、もう、何も出来ない」
「影守さん……」
「都市伝説も、取り上げられて……永遠に続くだろう、謹慎状態。俺は、結局何もできなくて……これからも、もう、何も出来ない」
俯き続ける影守
深い、深い、後悔の念に支配された表情
目を離せば、今すぐにでも死んでしまいそうなほどに、暗く想いは沈んでいる
深い、深い、後悔の念に支配された表情
目を離せば、今すぐにでも死んでしまいそうなほどに、暗く想いは沈んでいる
少しでも
少しでも、元気付けたくて
少しでも、元気付けたくて
「…影守さんは何もできなかった訳ではありません」
美緒は何とか必死に、言葉を紡ぎだす
影守を救いたい、支えたい
その想いが、美緒を突き動かす
影守が、驚いたように顔を上げた
影守を救いたい、支えたい
その想いが、美緒を突き動かす
影守が、驚いたように顔を上げた
「でも」
「あの時、あなたに見逃された事で、彼女の心は救われていたと思います………確かに、彼女は殺人鬼でした、けれど…まだ、あんな幼い少女でした。救われる道も…あったのだと、思います」
「あの時、あなたに見逃された事で、彼女の心は救われていたと思います………確かに、彼女は殺人鬼でした、けれど…まだ、あんな幼い少女でした。救われる道も…あったのだと、思います」
じっと、影守を見詰める
影守は、自嘲するように、笑う
影守は、自嘲するように、笑う
「……でも。結局、希は死んでしまった。始末されてしまった……それに、今の俺は都市伝説を失ってしまっている……もう、誰も、救えない。誰にも…必要と、されない」
「………っそんな事、ありません!」
「………っそんな事、ありません!」
再び俯いてしまった影守の顔を、さらに至近距離で覗きこむ
…普段の彼女では、決して出来ない行為
けれど、影守を救いたいと言う想いが強いが故に
そして…カラミティから渡された漆黒の蝶のブローチが、それを後押しする
…普段の彼女では、決して出来ない行為
けれど、影守を救いたいと言う想いが強いが故に
そして…カラミティから渡された漆黒の蝶のブローチが、それを後押しする
「たとえ、都市伝説を失ったいたとしても…影守さんは、影守さんです。私は………私、には、あなたが…必要です」
口にして
かぁ、と頬を赤らめる
されど、言葉は止まらない
かぁ、と頬を赤らめる
されど、言葉は止まらない
「わ、私、は………影守さんの、傍にいたい。あなたの力になりたい。あなたを救いたい……あなたを、支えたい」
「美緒、さん?」
「……あ、あなたが戦えないならば……私が、あなたを護ります。私には、あなたが、必要だから」
「美緒、さん?」
「……あ、あなたが戦えないならば……私が、あなたを護ります。私には、あなたが、必要だから」
……つぅ、と
涙が、頬を伝った事実に
今更、気付く
涙が、頬を伝った事実に
今更、気付く
「私は………あなたを、失いたくありません……………本当ならば、ずっと、傍にいたい、離れたくない……!」
こんな事を言っても、影守を困らせるだけだ
彼の謹慎は続くのだ
実現するはずもない
彼の謹慎は続くのだ
実現するはずもない
けれど
もはや、想いは止まらず
言葉を止めることなど、できないのだった
もはや、想いは止まらず
言葉を止めることなど、できないのだった
to be … ?