「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 無垢なる支配者と蜘蛛・C-No.0-06b

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 こつん
 こつん、こつん
 空から、コンペイトウが降り続けている

「痛…っ!?なんで、コンペイトウが?」

 降ってきたコンペイトウを手に、首をかしげる翼
 …セシリアは、ボウゼンと、降ってくるコンペイトウを見つめる

 まさか
 星を降らせる魔法、とは
 …コンペイトウを、降らせる魔法?



『……星に、触りたい。星が降ってくればいいのに』



 刹那
 記憶の底から這い上がってきた、その記憶



『ありがとう。姉さん。姉さんは、魔法使いなんだな』



 …思い出すまいとしていた
 思い出せば、あの子と戦えなくなりそうで
 忘れようとして、しかし、忘れらなかった、記憶

「…セシリア、どうしたんだ?」

 呆然としているセシリアを心配したのだろう
 翼が、顔を覗き込んできた
 セシリアは慌てて、首を左右に振る

「い、いや、何でもありませんからっ」
「そうか?」

 じ、と
 心配そうに、見つめてくる翼

 ……やがて、観念したように、セシリアは口を開く

「…この、コンペイトウが降ってくる現象、何らかの都市伝説の仕業なのでしょうが……少し、昔を思い出して」

 思い出す
 まだ、自分が人間だった頃の事を

「……私には、双子の弟がいました。体の弱い子で、ほとんどベッドから動けないような子だったけれど。好奇心や探究心が強くて…そして、我侭な子でした」

 我侭だったのは、多分、自分達が甘やかしていたせい
 体の弱いあの子が不憫で、家族は皆、弟に甘かった

「その、弟が。星に触りたい、と言った事がありました。星を手に入れたいと。星が降ってくれば良いのに、とそう言ってきた事がありました」
「…ずいぶんと、ロマンチックな我侭を言うんだな」
「子供でしたからね、まだ、年齢が2桁にもならない……とにかく、そんな事は無理だ、と言ったのですが。弟は、どうしても聞きませんでした。どうしても、星が欲しい、と……本人も、本当はわかっていたのでしょうけれどね。星に手が届くはずがない、と。それでも、どうしてもほしいと言って聞きませんでした」

 ……きっと
 あの時、あの子はもう、自分の命が残りわずかなのを悟っていて
 それで、あんな我侭を言ったのかもしれない
 今では、そう思う

「…弟の我侭を、私は、かなえてあげたくて。でも、星を降らせるなんて、できっこなくて………だから、考えたんです。星の代わりになるものを降らせよう、って」
「代わりになるもの?」
「はい………星の形の焼き菓子を作って。それを、弟の部屋で、ばら撒きました。星を降らせる魔法を使ってあげる、って言って。弟が目を閉じると同時に、お菓子を放り投げて、ばら撒いたんです」

 …ずいぶんと、親に叱られたものだ
 けれど、あの子は喜んでくれた
 それが本物の星ではないと知りながらも
 その焼き菓子を作ったのが、セシリアであると、きっと、感づいていただろう
 それでも、セシリアが、願いをかなえてやろうとした、その想いを知ってか、喜んでくれた

 星を降らせる魔法
 星の形の、お菓子を降らせる魔法

 規模は違うし、やり方も違う
 しかし、今宵、カラミティが実行したそれは……人間だった頃、セシリアが弟にやってやった事と、同じだった

「ぁ……すみません。面白くもない事を聞かせてしまって」

 はっ、と正気に戻り、慌てて顔をあげるセシリア
 …何を、自分語りなどしてしまっているのだ

 だが
 翼は、笑ってきて

「いや、いいさ…お前にとっては、大事な思い出なんだろ?」
「………はい」

 そう
 まだ、人間だった頃の、自分達
 まだ、世界の真実を知らなかった頃の、無邪気な思い出
 遠い遠い時代の、記憶

 あの頃と、自分はすっかり変わってしまった
 …カラミティも、変わってしまったと思っていた
 残虐で残酷な、外道に成り果てたのだ、と

 だが
 もし、本当に、そうなっていたのなら

 ……何故、今宵あの時、自分は殺されなかったのか
 殺す事だって、できたはずなのに
 なぜ、コンペイトウを降らせる魔法なんて、使ってきた?
 本当に、星を…流星を降らせ、街を壊滅させることも出来ただろうに


 もしかしたら
 カラミティの、心は
 あの頃と……子供だった頃と、何も変わらぬままなのだろうか?


「……ったた、地味に痛いな、これ」

 こつん、こつん
 降り続けるコンペイトウ
 …確かに、まぁ、殺傷力こそないが…当たると、痛い
 それに、空からコンペイトウが降ってくると言う、異常現象
 ……これは、また…「組織」の仕事が、増えそうだ
 やや、頭痛を覚える

「……すみません、翼さん」
「?どうして、セシリアが謝るんだ?」
「………だって」

 本当なら
 自分が……カラミティの姉である、自分が
 止めなければ、いけなかったのに

 俯いてしまったセシリア
 ぽん。と
 その頭が、優しく撫でられる

「そう、暗い顔するなって。幸い、人死にがでるような事にはならなさそうだろ?」
「…ですが」
「学校街全体に降ってるっぽいし。記憶操作とか隠ぺい工作は案外、「組織」以外も動くんじゃないか?」

 …確かに
 これだけ大規模な、しかし、どこか馬鹿馬鹿しい、ささやかな騒動
 …隠ぺい工作に動くのは、「組織」だけではないだろう
 都市伝説の存在が表沙汰になって困るのは、「組織」だけではないから

「何があったか知らねぇけど、セシリアだけが責任を感じる事はないさ」

 ……それは、気休めにすぎない、慰めの言葉だったかもしれない
 けれど
 今のセシリアにとっては…とても、心強い、慰められる、言葉で

「…ありがとうございます」

 と
 少し力なく笑って、セシリアは礼を述べた

 ん、とセシリアが笑ったのを、確認した翼

「あ、そうだ」

 と、羽織っていたジャケットのポケットを探って

 す、と
 小さな、ラッピングされた箱を取り出した

「ほら、これ。クリスマスプレゼント」
「………え」

 きょとん、と
 その小さな箱を、セシリアは見つめた

「え、あ、その…プ、プレゼント、ですか?」
「そう。セシリアに」

 ……え
 え、え?

 思考が、フリーズしかける
 降って沸いた幸せに、思考がついていかない

「わ、私に、ですか!?」
「あぁ。あの事件の時、世話になったしな」

 ほら、と
 差し出される、それを
 ……セシリアは、恐る恐る、受け取った

「あ、あけても、いいですか?」
「あぁ、別にいいぞ」

 …そっと、蓋を開ける
 中に入っていたのは、ブローチ
 シルバーアクセサリーの……蝶の、ブローチ
 まるで、セシリアの使い魔であり、セシリア自身でもある、銀の蝶のような

「わ、私が受け取って、本当にいいんですか?」
「お前用に作ったんだから。お前以外に受け取られちゃ困るって」

 笑って、そう言ってくる翼

 作った
 お前用に作った
 翼はそう言った
 つまり
 翼の、手作り

「あ、ありがとう、ございます…」

 大切そうに、大切そうに
 ブローチを両手で包み込むセシリア

 こつん、こつん、と
 降り注ぎ続け、頭に当たってくるコンペイトウも、気にならない

「喜んでもらえたなら、良かった……えーと、ちょっと、異常現象はおきてっけど……大きな事件は起きなくて、平和なクリスマスで、良かったな」
「…はい」

 …自分は、ちょっと心臓を貫かれたりもしたが
 だが、そんなこと、些細な事だ
 自分は、今、こうして生きていて
 …翼から、クリスマスプレゼントを受け取る事ができた
 それで、充分だ

 本当なら、カラミティの所に行って、説教の一つでもするべきなのだが
 …今は、そんな気に、なれそうにもなかった

「んじゃあ、俺はこれで。セシリア、いいクリスマスを」
「はい…翼さんも、良いクリスマスを」

 翼を、見送って……空を見上げるセシリア
 雪に混じって、降り続けるコンペイトウ
 掌に落ちてきたそれを、セシリアはそっと、口に含んだ

「………甘い」

 甘い、お菓子の魔法
 カラミティは、あの頃の事を覚えていて、こんな事をしてきたのだろうか?
 ……今度、顔をあわせた時にでも、尋ねてみようか、と 
 セシリアはそう、考えたのだった





to be … ?


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