カタカタと、室内にキーボードを叩く音が響く
それは時折止まり、さらさらとサインを書く音や、ぽんぽん、とハンコを押す音に代わる
それは時折止まり、さらさらとサインを書く音や、ぽんぽん、とハンコを押す音に代わる
突然現れたカラミティが、姿を消した後
セシリアは、いつも通り、仕事に戻っていた
…もやもやとした感情を抱えながらも、仕事をこなす様子はいつも通りだ
感情と行動を、彼女はある程度は、切り離せる
切り離せなくなるのは、恋愛感情を抱いてしまった翼に対してと………あともう一人は、カラミティの前くらいだろうか
それ以外は、徹底して、感情と行動を切り離せる
だからこそ、彼女は優秀なのだ
………なお、例外として、時々サンジェルマンというかFNo相手に盛大にキレているが、周囲が誰も止めないし突っ込まないので良しとする
セシリアは、いつも通り、仕事に戻っていた
…もやもやとした感情を抱えながらも、仕事をこなす様子はいつも通りだ
感情と行動を、彼女はある程度は、切り離せる
切り離せなくなるのは、恋愛感情を抱いてしまった翼に対してと………あともう一人は、カラミティの前くらいだろうか
それ以外は、徹底して、感情と行動を切り離せる
だからこそ、彼女は優秀なのだ
………なお、例外として、時々サンジェルマンというかFNo相手に盛大にキレているが、周囲が誰も止めないし突っ込まないので良しとする
カタカタ、カタカタ
小さな音が響く室内に……こんこん、と軽いノックの音が響いた
小さな音が響く室内に……こんこん、と軽いノックの音が響いた
「セシリアさん、いらっしゃるかしら~♪」
「…ローゼか?」
「…ローゼか?」
自分と同じNo.0であるローゼの声に、セシリアは作業の手は止めないままに顔を上げた
仕事用の上司や部下に対する口調ではなく、己と対等な存在への口調で答える
仕事用の上司や部下に対する口調ではなく、己と対等な存在への口調で答える
「入っても、かまわないかしら?」
「あぁ、かまわない」
「あぁ、かまわない」
がちゃr、扉が開き、赤い髪の可愛らしい少女が入ってくる
手には、報告書らしきものを持っていた
……それと、ついでに、紅茶の茶葉が入った瓶も
手には、報告書らしきものを持っていた
……それと、ついでに、紅茶の茶葉が入った瓶も
「「教会」メンバーに関する報告書ですわ」
「ありがとう、そこに置いておいてくれるか?」
「ありがとう、そこに置いておいてくれるか?」
えぇ、と指された机に報告書を置いたローゼ
そして、いつも通りの、どこかほんわかとした笑みを浮かべてくる
そして、いつも通りの、どこかほんわかとした笑みを浮かべてくる
「ついでに、少し、休憩なさったらどうかしら~♪いい茶葉が手に入りましたのよ♪」
「ん、だが…」
「あまり根を詰めすぎては、逆に作業効率が悪くなりますわよ?」
「……それを言い訳に休憩しすぎも、いけないとは思うがな」
「ん、だが…」
「あまり根を詰めすぎては、逆に作業効率が悪くなりますわよ?」
「……それを言い訳に休憩しすぎも、いけないとは思うがな」
苦笑しつつ、作業の手を止めたセシリア
立ち上がり、戸棚からティーポットとティーカップを取り出す
茶菓子は、前の休憩時間に作っておいたクッキーがあったので、それを出すことにした
立ち上がり、戸棚からティーポットとティーカップを取り出す
茶菓子は、前の休憩時間に作っておいたクッキーがあったので、それを出すことにした
ソファーに腰かけたローゼ
テーブルの上にティーポットやカップを並べ、ローゼから受け取った瓶から、ティーポットに茶葉を入れていく
テーブルの上にティーポットやカップを並べ、ローゼから受け取った瓶から、ティーポットに茶葉を入れていく
「水の精霊よ、ほんの少し、お前の体を分けておくれ。火の精霊よ、お前の力で、これをほんの少し温めておくれ」
短く、二つの呪文を続けて唱えるセシリア
蓋を開けたティーポットの真上に、水が出現
それは瞬時にお湯に代わり、ティーポットへと入っていった
蓋を開けたティーポットの真上に、水が出現
それは瞬時にお湯に代わり、ティーポットへと入っていった
「便利な魔法ですわね~♪」
「まぁ、本当ならこの程度の些細な事に、魔法を使ってはいけないのだろうがな」
「まぁ、本当ならこの程度の些細な事に、魔法を使ってはいけないのだろうがな」
ローゼの感心したような声に、セシリアは苦笑して見せた
それでも、自分は「魔法」に飲まれた魔法使い
ある程度は、魔法を使わないと、その存在意義が揺らいでしまうのだ
それでも、自分は「魔法」に飲まれた魔法使い
ある程度は、魔法を使わないと、その存在意義が揺らいでしまうのだ
しばしの、穏やかなティータイム
…そんな、中
…そんな、中
「セシリアさん」
「ん、何だ?」
「…何か、悩み事が、おありですの?」
「ん、何だ?」
「…何か、悩み事が、おありですの?」
と
ローゼが、そんな事を訪ねてきた
ぴたり、思わずセシリアは動きを止める
ローゼが、そんな事を訪ねてきた
ぴたり、思わずセシリアは動きを止める
「…いや、そんな、事は」
「なんだか、いつもより暗いお顔をしていますわ~」
「……そう、見えるか?」
「なんだか、いつもより暗いお顔をしていますわ~」
「……そう、見えるか?」
えぇ、と頷いてくるローゼ
まいったな、とセシリアは小さく苦笑した
まいったな、とセシリアは小さく苦笑した
「…どうにも、お前には見抜かれてしまうらしい」
「あら、だって、お友達の事ですもの。気づくに決まっていますわ♪」
「あら、だって、お友達の事ですもの。気づくに決まっていますわ♪」
ころころと微笑むローゼ
可愛らしいその笑みに、セシリアは控えめに笑って見せた
可愛らしいその笑みに、セシリアは控えめに笑って見せた
…かたん、と、ティーカップを下す
「……ローゼ。もし、今まで敵対していた者が……顔を合わせる度、殺しあってきたような相手が。突然、見返りもなしにこちらの手伝いをする、と言ってきたら、信じるか?」
「…状況次第かしら~?互いに利害が一致すれば、手を組んでも問題ない、ということもあると思いますの」
「…状況次第かしら~?互いに利害が一致すれば、手を組んでも問題ない、ということもあると思いますの」
やや考え、小首を傾げながら答えたローゼ
ふと、セシリアに視線を向けてくる
ふと、セシリアに視線を向けてくる
「どなたか、そのような相手がいらっしゃいましたの?」
「あぁ……そして、私は信じなかった。信じてやる事が、できなかった」
「あぁ……そして、私は信じなかった。信じてやる事が、できなかった」
視線を落とすセシリア
きれいな色の紅茶が揺れて、小さく波ができる
きれいな色の紅茶が揺れて、小さく波ができる
「…ローゼ。もし、弟がいたとする」
「………?」
「双子の、弟だ。片時も離れず、そばにいた………それが、ある事をキッカケに、相手がこちらを嫌って離れてしまって………長い間、会うこともなく。そして、久々に再会できたそれが、自分が覚えていた弟と、まったく変わってしまっていたように見えたならば。お前は、それを弟だと信じられるか?」
「…セシリアさん?」
「………?」
「双子の、弟だ。片時も離れず、そばにいた………それが、ある事をキッカケに、相手がこちらを嫌って離れてしまって………長い間、会うこともなく。そして、久々に再会できたそれが、自分が覚えていた弟と、まったく変わってしまっていたように見えたならば。お前は、それを弟だと信じられるか?」
「…セシリアさん?」
どこか、か細い声
自分が、いつの間にか小さく震えていたことに、セシリアは気づき
軽く頭を振って、苦笑した
自分が、いつの間にか小さく震えていたことに、セシリアは気づき
軽く頭を振って、苦笑した
「…あぁ、すまんな、おかしなことを聞いて。忘れてくれ」
「………」
「………」
自分は、信じる事ができなかった
弟だった男の言葉を
弟だった男の言葉を
自分は、認められなかった
悪魔達に囲まれ、あの時のように平気で残虐なことをして見せるそれが、自分の大切な弟であるなどと
悪魔達に囲まれ、あの時のように平気で残虐なことをして見せるそれが、自分の大切な弟であるなどと
……自分は
あの時、手を差し伸べられなかった
あの時、手を差し伸べられなかった
あの時、自分は
無数の屍の上に立つ、弟を前に
両親からすら畏怖の眼差しを向けられ、困惑していた弟に、自分は
無数の屍の上に立つ、弟を前に
両親からすら畏怖の眼差しを向けられ、困惑していた弟に、自分は
両親と同じ、他の者達と同じ
畏怖の眼差しを、向けてしまった
突き放してしまった
畏怖の眼差しを、向けてしまった
突き放してしまった
(………もう、戻れぬのだろうな)
きっと、すべては自分が悪いのだ
自業自得
もう、弟は帰ってはこない
自業自得
もう、弟は帰ってはこない
セシリアは小さく自嘲して、ぬるくなった紅茶に口をつけたのだった
to be … ?