「・・・私の名前は、ナユタ。地獄でたくさん教えてあげてね?」
先手を取ったのは少女――ナユタだった
黄金の柄のその剣で、裂邪とミナワに斬りかかった
黄金の柄のその剣で、裂邪とミナワに斬りかかった
「地獄に行くのは―――――っと、こりゃ死亡フラグになるからやめた!」
その刃を、裂邪は左手に携えた金色の鎌を以って受け止めた
甲高い音を鳴らしながら、ぱっと火花が散る
ナユタはそのまま押し返そうとしたが、裂邪の後方から振り下ろされる武器を見た
その先端には、虹が渦巻く空気の詰まった透明な球体が付着していた
甲高い音を鳴らしながら、ぱっと火花が散る
ナユタはそのまま押し返そうとしたが、裂邪の後方から振り下ろされる武器を見た
その先端には、虹が渦巻く空気の詰まった透明な球体が付着していた
「やれミナワ!」
「はいご主人様――――――」
「“この人達の動きを止めて”」
「はいご主人様――――――」
「“この人達の動きを止めて”」
少女が呟くと、それは眼前でピタリと止まってしまった
それだけでなく、2人の身体が凍ったかのように一寸たりとも動かない
隙を突いて、ナユタは軽く背後に向かってジャンプする
彼女が着地すると同時に、裂邪達は謎の束縛から解放された
それだけでなく、2人の身体が凍ったかのように一寸たりとも動かない
隙を突いて、ナユタは軽く背後に向かってジャンプする
彼女が着地すると同時に、裂邪達は謎の束縛から解放された
「・・・え? い、今の・・・「金縛り」、でしょうか?」
「いや、何か違う・・・決定的な、何かが・・・例えばぁ!!」
「いや、何か違う・・・決定的な、何かが・・・例えばぁ!!」
裂邪が鎌を振り上げると、それは金の水となり、瞬時に弓へと変わった
煌びやかな弦を引き、彼はナユタを捉えて強く弾く
見えない矢が風を切って飛んでゆくが、
煌びやかな弦を引き、彼はナユタを捉えて強く弾く
見えない矢が風を切って飛んでゆくが、
「“あの人の攻撃から私を守って”」
その矢は、ナユタに届くことなく、見えない壁に防がれたかのように掻き消えた
驚くミナワだったが、逆に裂邪は何かを確信したのか、にっと笑った
驚くミナワだったが、逆に裂邪は何かを確信したのか、にっと笑った
「今度は守り・・・一体、何なんでしょう・・・」
「分かったぞ、マジックの種はあの剣だな」
「剣、ですか?」
「北欧神話に登場する、3つの願いを叶えるとされる剣・・・
あの金ピカの柄と言い、「ティルヴィング」で間違いないだろ?」
「あらら、やっぱりお兄ちゃん凄いんだ
まぁ「レイヴァテイン」を持ってる時点でちょっと疑ったけど」
「好きなんだよ、北欧神話」
「なら・・・これは知ってる?」
「分かったぞ、マジックの種はあの剣だな」
「剣、ですか?」
「北欧神話に登場する、3つの願いを叶えるとされる剣・・・
あの金ピカの柄と言い、「ティルヴィング」で間違いないだろ?」
「あらら、やっぱりお兄ちゃん凄いんだ
まぁ「レイヴァテイン」を持ってる時点でちょっと疑ったけど」
「好きなんだよ、北欧神話」
「なら・・・これは知ってる?」
少女に似合わぬ怪しい笑みを浮かべ、ナユタは切っ先を空に向けた
刃が反射する日の光に、裂邪もミナワも思わず目を覆う
刃が反射する日の光に、裂邪もミナワも思わず目を覆う
「さぁ、照時間 だよ」
その光が、尚一層強さをを増した
「―――――――――理夢!!」
弓をベルトに翳すと、突如として現れる白い獣
その穢れない毛並みに、刃が照らす眩い光が降り注いだ
焦げた臭いと襲う熱さに獣――理夢は顔を顰めた
その穢れない毛並みに、刃が照らす眩い光が降り注いだ
焦げた臭いと襲う熱さに獣――理夢は顔を顰めた
「あっつぅ!? テメェ、まともなタイミングで呼び出しやがれ!!」
「悪ぃ! でもあんなもんとまで契約するなんて・・・
「アレクサンドリアの大灯台」か!?」
「残念でした、あれはもっと高威力だよ
私のは、あれをモデルに製造されたとされる「エルクレスの塔」っていうの」
「なっ・・・「エルクレスの塔」にはそんな伝承ねぇぞ!?
『モデルになった』ってだけで発動しやがって・・・シェイド!!」
「了解シタ」
「悪ぃ! でもあんなもんとまで契約するなんて・・・
「アレクサンドリアの大灯台」か!?」
「残念でした、あれはもっと高威力だよ
私のは、あれをモデルに製造されたとされる「エルクレスの塔」っていうの」
「なっ・・・「エルクレスの塔」にはそんな伝承ねぇぞ!?
『モデルになった』ってだけで発動しやがって・・・シェイド!!」
「了解シタ」
裂邪が右掌を開くと、そこに黒い塊が次第に大きくなりながら集まる
やがて黒いボールになると、彼はそれを振りかぶり、
やがて黒いボールになると、彼はそれを振りかぶり、
「行け、『シャドーボール』!」
上空に向けて、それを投げた
この行為によって、ナユタに2つのデメリットが発生する
第1に、投げた黒いボールの所為で太陽の光が遮られ、「エルクレスの塔」が発動できなくなったこと
第2に、空中の黒いボールから伸びた無数の槍が、あまりにも唐突過ぎて避けられそうになかったこと
ミナワと理夢に、勝利笑みが浮かんだが、
この行為によって、ナユタに2つのデメリットが発生する
第1に、投げた黒いボールの所為で太陽の光が遮られ、「エルクレスの塔」が発動できなくなったこと
第2に、空中の黒いボールから伸びた無数の槍が、あまりにも唐突過ぎて避けられそうになかったこと
ミナワと理夢に、勝利笑みが浮かんだが、
「・・・“私を守って”」
黒い槍が、ナユタを避けて地面に突き刺さった瞬間に、表情は曇る
だがやはり、彼だけは
だがやはり、彼だけは
「―――――っぐぅ!?」
裂邪だけは、笑っていた
「え、な、何が・・・!?」
「ヒハハハハハハ!! ナユタとか言ったっけ? 随分下手なドジ踏んだなぁ!?
「ティルヴィング」が叶える願いは3つまで!
そして・・・願いが3つ叶えられた時、持ち主は・・・死ぬ」
「ヒハハハハハハ!! ナユタとか言ったっけ? 随分下手なドジ踏んだなぁ!?
「ティルヴィング」が叶える願いは3つまで!
そして・・・願いが3つ叶えられた時、持ち主は・・・死ぬ」
苦しそうに胸を押さえ膝をつき、息を荒げ、
少女は笑う裂邪を見て絶えかけた命で口を開く
少女は笑う裂邪を見て絶えかけた命で口を開く
「・・・本、当に、厄介だよ・・・
そこ・・・まで、知られてる、なん、て・・・」
「ご苦労さん、地獄でも達者でな」
そこ・・・まで、知られてる、なん、て・・・」
「ご苦労さん、地獄でも達者でな」
裂邪に、冷たい目で見下ろされながら、
紅いワンピースを着た少女は、数回咳き込んで地に伏し、事切れた
最期に、薄っすらと笑みを見せて
紅いワンピースを着た少女は、数回咳き込んで地に伏し、事切れた
最期に、薄っすらと笑みを見せて
「っし、お前らもご苦労」
「・・・何だか、あっけなかったですね」
「全くだ、もやもやしてならねぇ」
「仕方ないよ、相手の自爆も同然なんだし
じゃ、理夢に乗ってさっさと帰るか―――――」
「マダ終ワッテナイカモ知レンゾ」
「・・・何だか、あっけなかったですね」
「全くだ、もやもやしてならねぇ」
「仕方ないよ、相手の自爆も同然なんだし
じゃ、理夢に乗ってさっさと帰るか―――――」
「マダ終ワッテナイカモ知レンゾ」
裂邪が理夢の背に手をかけた時、シェイドが言い放った
疑問の色を浮かべる3人を代表して、裂邪が尋ねた
疑問の色を浮かべる3人を代表して、裂邪が尋ねた
「どういうことだ? たった今あの野郎は目の前で死んだだろ?」
「冷静ニ考エテミロ・・・奴ハ「ティルヴィング」ノ願イヲ“3ツ”使ッタ
我々トノ戦イニ、貴重ナ願イヲ全テ使イ切ルト思ウカ?」
「ッ・・・」
「そ、そういえば・・・」
「ソレダケデハナイ、我々ト出会ッタ瞬間ニマダ“3ツ”ダッタ事モ気ニカカル」
「あぁ、確かに俺様達と出会うまでには最低1つは使ってる筈だしな」
「恐ラクダガ、アノ者ニハ何カ策ガアル
我々ニハ想像モツカヌヨウナ何カガ・・・」
「っちぃ、嫌な予感しかしないじゃねぇかよチクショウ!」
「勘の良い奴は好きではないな」
「冷静ニ考エテミロ・・・奴ハ「ティルヴィング」ノ願イヲ“3ツ”使ッタ
我々トノ戦イニ、貴重ナ願イヲ全テ使イ切ルト思ウカ?」
「ッ・・・」
「そ、そういえば・・・」
「ソレダケデハナイ、我々ト出会ッタ瞬間ニマダ“3ツ”ダッタ事モ気ニカカル」
「あぁ、確かに俺様達と出会うまでには最低1つは使ってる筈だしな」
「恐ラクダガ、アノ者ニハ何カ策ガアル
我々ニハ想像モツカヌヨウナ何カガ・・・」
「っちぃ、嫌な予感しかしないじゃねぇかよチクショウ!」
「勘の良い奴は好きではないな」
声に小さく跳び上がり、咄嗟に身構える
そこに立っていたのは、スーツを着た30代ほどの男性だった
右手にしっかりと、先程まで少女が持っていた筈の剣が握られている
その男性の怪しい笑みは、裂邪達に既知感を与えた
そこに立っていたのは、スーツを着た30代ほどの男性だった
右手にしっかりと、先程まで少女が持っていた筈の剣が握られている
その男性の怪しい笑みは、裂邪達に既知感を与えた
「・・・ま、さか・・・何で・・・」
「ふふふ・・・その驚く表情がまた何とも言えない素晴らしい物だ
良いだろう、特別に教えてやる」
「ふふふ・・・その驚く表情がまた何とも言えない素晴らしい物だ
良いだろう、特別に教えてやる」
つい、と足元を切っ先でなぞり火花を散らせながら、彼は語り始めた
「俺は「憑依霊」とも契約し、さらに遥か昔に飲まれていてな
俺の本当の姿と呼べる物はそこの娘でもなければこの男でもない
都合よく傍にいた人間に憑依している実体のない存在なのだよ
残念な事に、都市伝説やその契約者には憑依できないが」
「で、でも・・・「ティルヴィング」の願いを3つ叶えたら・・・」
「それは簡単なトリックだ
願いを唱えたのは俺ではなく、そこの娘だっただけだ」
俺の本当の姿と呼べる物はそこの娘でもなければこの男でもない
都合よく傍にいた人間に憑依している実体のない存在なのだよ
残念な事に、都市伝説やその契約者には憑依できないが」
「で、でも・・・「ティルヴィング」の願いを3つ叶えたら・・・」
「それは簡単なトリックだ
願いを唱えたのは俺ではなく、そこの娘だっただけだ」
切っ先を地面ではなく、息絶えた少女に向ける
顔を歪ませた一同を見て、彼は――ナユタは、狂気に満ちた笑みを浮かべた
顔を歪ませた一同を見て、彼は――ナユタは、狂気に満ちた笑みを浮かべた
「最初は他愛もない願いだった・・・
最後の願いとして、俺は「ティルヴィング」に願ったのだよ
『死んだ後、都市伝説に飲まれたい』と
結果はご覧の通り・・・俺はあの時を境に、人間ではなくなった・・・!」
最後の願いとして、俺は「ティルヴィング」に願ったのだよ
『死んだ後、都市伝説に飲まれたい』と
結果はご覧の通り・・・俺はあの時を境に、人間ではなくなった・・・!」
小刻みに震えるナユタ
直後、閑散としたその場で、彼は天に届く程に高らかに笑った
直後、閑散としたその場で、彼は天に届く程に高らかに笑った
「ギハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!
あの後も笑いが止まらなかったよ・・・『命とはこうも軽い物なのか』とねぇ!!
俺が最期まで捨てるのを惜しんだ命は、この世では簡単に奪われ、簡単に消えてゆく!!
そんな無駄な物が、この星の上を堂々と居座っているのだよ?
塵芥 同然の生命など、跋扈していい筈がない!
ならばどうする? これも簡単だ、俺が斬り捨てればいい!!
ありとあらゆる“那由多”の生命をこの剣の下に斬り捨て、この星を、あるべき姿に戻す!!
例え新たな生命が誕生しようと、管理者となった俺が殺せば――――――」
「ゴチャゴチャうるせぇ!!!」
あの後も笑いが止まらなかったよ・・・『命とはこうも軽い物なのか』とねぇ!!
俺が最期まで捨てるのを惜しんだ命は、この世では簡単に奪われ、簡単に消えてゆく!!
そんな無駄な物が、この星の上を堂々と居座っているのだよ?
ならばどうする? これも簡単だ、俺が斬り捨てればいい!!
ありとあらゆる“那由多”の生命をこの剣の下に斬り捨て、この星を、あるべき姿に戻す!!
例え新たな生命が誕生しようと、管理者となった俺が殺せば――――――」
「ゴチャゴチャうるせぇ!!!」
裂邪はウィルを呼び出しながら、理夢と共に襲い掛かる
赤い炎を纏った裂邪の拳が、黒い影を纏った理夢の爪が、ナユタに向けて振り下ろされた
ナユタはいとも簡単にそれらを避けてみせ、拳は地を焦がし、爪は風を切る
余裕綽々なナユタだったが、周囲の状況を確認した直後にそれは途切れた
ふわふわと浮かぶ、無数のシャボン玉
赤い炎を纏った裂邪の拳が、黒い影を纏った理夢の爪が、ナユタに向けて振り下ろされた
ナユタはいとも簡単にそれらを避けてみせ、拳は地を焦がし、爪は風を切る
余裕綽々なナユタだったが、周囲の状況を確認した直後にそれは途切れた
ふわふわと浮かぶ、無数のシャボン玉
「『ブレイカブル』!!」
ナユタを囲んで、それらは同時に爆発した
だが彼は既に願いを唱えていたようで、全くの無傷だった
だが彼は既に願いを唱えていたようで、全くの無傷だった
「おい幽霊野郎、つまんねぇ演説しやがって
良い事教えてやる・・・この世にはな、水素より軽い物なんてねぇんだよぉ!!」
良い事教えてやる・・・この世にはな、水素より軽い物なんてねぇんだよぉ!!」
裂邪は黄金の三叉の槍を構える
シェイドは頑丈な亀の姿を取る
ミナワはシャボン玉を龍のように連ねる
理夢はその虎の足に力を篭める
ウィルは燃え盛る鳥になって舞い上がる
目標はただ一つ、彼等は一斉に、ナユタに向かって攻撃を仕掛けた――――
シェイドは頑丈な亀の姿を取る
ミナワはシャボン玉を龍のように連ねる
理夢はその虎の足に力を篭める
ウィルは燃え盛る鳥になって舞い上がる
目標はただ一つ、彼等は一斉に、ナユタに向かって攻撃を仕掛けた――――
「悪いが、もうお前達に用はない」
ぶわっ!!とナユタと裂邪達の間に、激しく燃える炎が隔てた
突然現れた壁に、一同は立ち往生してしまった
突然現れた壁に、一同は立ち往生してしまった
「熱っ・・・く、ない?」
「チクショウ、まだ契約してんのか!?」
「俺はこの町の契約者と一戦交えたかっただけだ
よく分かった、確かにこの町の契約者達は・・・面白そうだ」
「あっしらは上から行けやすぜ!」
「っち、面倒だぜ、ったくよぉ!!」
「また何処かで会えるといいな。さらばだ」
「チクショウ、まだ契約してんのか!?」
「俺はこの町の契約者と一戦交えたかっただけだ
よく分かった、確かにこの町の契約者達は・・・面白そうだ」
「あっしらは上から行けやすぜ!」
「っち、面倒だぜ、ったくよぉ!!」
「また何処かで会えるといいな。さらばだ」
炎に阻まれ策を練る裂邪を見て最後まで笑いながら、
ナユタは、その場から忽然と消えた
後には炎と、骸と、少年の無念の想いだけが残った
ナユタは、その場から忽然と消えた
後には炎と、骸と、少年の無念の想いだけが残った
...続