「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 我が願いに踊れ贄共・彼は閃光のごとく-03

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 それは、昨年末の出来事
 学校街北区……とある、診療所にて

 手術室の前で、祈りを捧げている女性が居る
 静かに、しかし、必死に
 名前も知らぬ相手の為に、祈り続けている
 その様子を、トライレスは少し離れたところから観察していた

 つい10分ほど前、この診療所に急患が運び込まれた
 運びこまれたのは、妊婦
 運んできたのは、今、この手術室の前で祈りを捧げている女性

 産気づいていた妊婦
 早産で……流産の、危険があった
 道に座り込んでしまっていたところを通りすがった女性が見つけ、すぐ傍にあったこの診療所に運んできたのだ

 ……母子共に、危険な状態
 どうか、どうか
 母子共に、助かりますように
 女性は、そうやって祈り続けている


 ………ぽぅ、と
 かすかに、都市伝説の力が試行された、事実を
 トライレスは、見逃すことはなかった


 診療所を任せられている、ドクターの努力の甲斐もあり、妊婦も赤子も、無事、助かった
 妊婦の家族に連絡を……と、診療所の中は、まだバタバタ忙しい状態
 …女性は、妊婦と赤子が助かった事にほっとして
 そっと、診療所を後にしようとしていた

「あら、お帰りになるの?」

 …と
 そんな女性に、トライレスが声をかけた

 ぴたり、女性は足をとめ、振り返る

「私は、部外者ですから」
「あらあら、あなたは、あの妊婦さんと赤ん坊の命の恩人よ?部外者、とも言い切れないんじゃない?」

 ころころ微笑む、トライレスの言葉に
 いえ、と女性は首を左右に振った
 ちゃら、と首元から下がる十字架のペンダントが、揺れた

「いえ…私は、あの方をここへ運んで…後は、祈る事しかしておりません」
「あらあら…」

 微笑む続けるトライレス
 ゆっくりと、告げる

「よく言うわね。都市伝説の力で、妊婦と赤ん坊を護っていたくせに」
「…気付かれていたのですね」

 トライレスの言葉に、ちょっと困ったような表情を浮かべる女性
 まぁ……お互い様だろう
 女性も、この診療所に都市伝説契約者や都市伝説がいる事が
 …それも、「第三帝国」所属である事が、わかっていたようだったから

「「教会」所属の方が、この国の…しかも、この街にいるなんて、珍しいんじゃない?」
「…そうでしょうね。本来、「教会」はこの街に、この国に、不介入の立場をとっていますから」

 一応は、と
 …今は、少し、そう言う状況ではなくなっている…と言った様子をにじませてくる、女性
 トライレスは、わずかに警戒を強める

「…あなたは、「第三帝国」のトライレスさん、ですよね……悪い事は言いません。近いうちに…この街を、離れた方がいいです」
「あら、どうして?」

 微笑は崩さぬまま
 女性の動きを監察する事に、トライレスは集中する

「……「教会」内で、強行的な姿勢を貫いている者達が…そう、遠くない未来。この街に…やってくる事に、なると思います」
「「教会」内では、それをどうにかできないのかしら?」
「…無理、だと思います。だからこそ、その時に備えて、私が派遣されましたから」

 正直に話してくる女性
 …嘘をついているようには、見えない
 いや、むしろ、嘘をつくのが苦手な性分なのだろうか

「あの者達は…恐らく、あなたにも、危害を加えてくるかもしれません。ですから、どうか、この街を離れてください」
「あらあら…どうして、「教会」の人間が、討伐対象の私に、そんなに優しく警告してくれるのかしら?」
「…彼らは、神の教えを曲解し、言いがかりでもって魔女狩りを、異教徒狩りを進めています…それは、許される事ではありませんから」

 あらあら、と
 さてどうしようか、トライレスは考える

 …嘘を言っているようには見えない
 だが、逃げろ、といわれても
 ……可愛い教え子達を置いていくと言うのは、御免である

「念のため、お名前、伺ってもよろしいかしら?」
「あ、はい……チェリー。チェリー・ハーヴィーです」
「チェリー、ね」

 …この名前、一応、覚えておこう
 その容姿共々、しっかりと

「…すみません。私は、これで」
「ふふ、本当なら、私達「第三帝国」とは関わってはいけないのでしょう?………それでも、あなたは、あの妊婦を助ける事を優先したのね」

 正体がバレるリスクを背負いながら
 チェリーは、あの妊婦と赤子を助ける事を優先したのだ
 …人としては素晴らしいかもしれないが、潜入捜査員などとしては、向いていない事は確かだ

 そうです、と少し困ったように、頷いてきたチェリー
 診療所を後にする彼女を、トライレスは今度は引き止めず、見送った

「……面倒な事に、なりそうかしら?」

 嫌ねぇ、と
 どこか他人事のように、彼女は呟いたのだった






to be … ?






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