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連載 - 花子さんと契約した男の話-22

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「はぁ……」

 ゆっくりと、私は帰り支度をはじめる
 夏休みが終ってすぐ、新学期
 また、今までと変わらない日常が始まる

「………」

 ふと、自分の腕を見た
 自分では意識していなかったけれど、確かに、少し日に焼けたかもしれない
 …と言っても、プールとか海とかに遊びに行ったせいではなくて
 毎日、塾の夏期講習を受けるために、外に出ていたせい
 ただそれだけの、面白味のない理由

 そんな面白くもない理由で、日焼けしていたから、自分では気付かなかったし
 多分、他の皆と比べれば対して日焼けしていなかったから、誰も指摘してくれなかったのだろう

 …けれど
 彼は、気付いてくれた
 私以上に、ほとんど日焼けをしていなかった彼
 焼けたな、とそう指摘してくれて

 ほんの、些細とも言える変化に、気付いてくれたのが
 ………とても、嬉しかった

 夏休みの期間中、特に予定はなかった、と彼は言っていた
 …それを、夏休みに入る前に知りたかった、と私は思う
 確かに、塾の夏期講習は毎日のようにあったけれど、それでも、まったく休みがなかったわけではなく 
 私だって、予定のない日もあった

 …だから
 彼に、予定がないのだと、わかっていたら
 プールとか、海に、誘ったり…

「……って」

 何を考えているのだろう、私は
 これでは、まるで恋でもしているようで
 そんな訳はないだろう
 多分、違う
 自分は、恋なんてするような……面白味のある人間ではないのだ
 小さく首を振る
 教室には、自分一人
 他には誰も居ない
 …さっさと、帰ろう
 一人だと、余計な事ばかり考えてしまう
 鞄を持って、帰ろうとして

「………?」

 ぷぅん、と
 蟲が飛んでいるような音が、聞こえてきた

 …蝿か、何かか
 いや、この季節だったら、蚊だろうか?

 ……蚊には、刺されたくないな
 そう考えて、私はますます、早く帰ろうとする


 ぷぅん
 ぷぅぅぅん

 耳障りな虫の羽音
 それは、ゆっくりと、私に近づいてきて…


 その、羽音に
 思わず、私は振り返った
 私の視界に、一瞬……黒く焦げた、蝿のような生き物が、入り込んできて


 っばん!!

「きゃっ!?」

 どこからか振り下ろされた、何かに
 その蝿は、あっさりと潰された

「…びっくりさせたか?」
「え、あ…」

 突然、彼の顔が、すぐ傍までやってきて
 ぽ、と私は頬を赤らめてしまった

 …頬を赤らめる?
 な、何故、そんな事を?

「…どうした?」
「い、いえ、な、なんでもないわ」

 小さく首を振る
 気のせいだ
 頬が赤く染まったような気がしたのも、全て気のせい

「ど、どうしたの、急に…まだ、帰ってなかったの?」
「忘れ物取りにきたんだよ。そしたら、委員長が蚊に刺されそうになってたから」

 …蚊?
 一瞬、視界に入ってきたのは、蝿だったような…
 ………
 …でも…
 思えば、黒く焦げた蝿なんて、いる訳がない
 黒く焦げた状態なんて、普通では死んでいるだろうから、飛べる訳もない
 気のせいだったのだろう

「そう、ありがとう…でも、びっくりするから、一言声をかけてね?」
「ん、ごめんな」

 素直に謝ってきた彼
 私は、そんな彼にさよなら、と言って、教室を出た

 ……彼の後ろに、おかっぱ頭の、白いブラウスに真っ赤なつりスカートの女の子の姿が見えたような気がしたけれど 
 これも、何もかも……きっと、気のせいなのだ



「…いやぁ、危なかった」
「み?危なかった?」
「あぁ」

 うん、危なかった
 スパニッシュフライめ、まだこの辺りをうろちょろしていたのか
 あともうちょっとで、委員長の口に入ってしまうところだった

 …正直、人体模型相手じゃないのだから
 ぶん殴って気絶させて、口から出す訳にもいかないだろう
 忘れ物をして良かったと、心から思う

「…んじゃあ、花子さん。俺、帰るな」
「うん、ばいばい」

 無邪気に笑って、手を振ってくる花子さん
 その花子さんの頭を軽くなでて、俺も家に帰る事にしたのだった









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