厄介な事は、どうしてこうも重なるのか
セシリアは、今の状況に軽く頭痛を覚えていた
セシリアは、今の状況に軽く頭痛を覚えていた
「「教会」の……よりによって、エイブラハム・ヴィシャスと、その部下が、学校町に入り込んできただと……しかも、ここまで堂々と……っ!」
調査課経由で、セシリアの下に回ってきた情報
エイブラハム・ヴィシャスとその部下の「13使徒」が、正体を隠しもせずに、学校町にひりこんできたという事実
……今までも、エイブラハムの子飼いと思われる下っ端の下っ端な「教会」所属の人間や契約者の存在は、ちらほらと確認されてきてはいたが
「13使徒」クラスとその上司がここまで堂々とやってくるなど、今まで例がない
エイブラハム・ヴィシャスとその部下の「13使徒」が、正体を隠しもせずに、学校町にひりこんできたという事実
……今までも、エイブラハムの子飼いと思われる下っ端の下っ端な「教会」所属の人間や契約者の存在は、ちらほらと確認されてきてはいたが
「13使徒」クラスとその上司がここまで堂々とやってくるなど、今まで例がない
…目的は、何だ?
正体を、隠そうともしていない
何かに、誰かに、自分達の存在をアピールしている?
そうだとしたら、何の為に?
そもそも、これは「教会」上層部がすべて関わっているのか?
それとも、エイブラハムの独断か?
どちらにせよ、非常に厄介な事態だ
エイブラハムは、かつて積極的に魔女狩りをおこなっていた、強硬派の筆頭だ
とうに都市伝説に飲まれた男であり、数百年は生きている
しかも、飲まれた直後に「奇跡」を行ったとして、「教会」の救世主候補の一人でもあるのだ
そんな男が、学校町に…
正体を、隠そうともしていない
何かに、誰かに、自分達の存在をアピールしている?
そうだとしたら、何の為に?
そもそも、これは「教会」上層部がすべて関わっているのか?
それとも、エイブラハムの独断か?
どちらにせよ、非常に厄介な事態だ
エイブラハムは、かつて積極的に魔女狩りをおこなっていた、強硬派の筆頭だ
とうに都市伝説に飲まれた男であり、数百年は生きている
しかも、飲まれた直後に「奇跡」を行ったとして、「教会」の救世主候補の一人でもあるのだ
そんな男が、学校町に…
「…「教会」からの返答はまだ、か……あぁ、エーテルの奴が、また忙しくなりかねんな。大門 大樹も、確実に胃痛を抱えているだろうな……」
小さく、ため息をつく
本当、どうして……学校町という場所は、ここまで厄介事ばかりを引き寄せるのか
本当、どうして……学校町という場所は、ここまで厄介事ばかりを引き寄せるのか
「呪われているのではあるまいな」
独り言のように呟きながら、セシリアは現時点で分かっている情報から、連中の戦力と目的を割り出そうとする
そうしていると………ひらり
彼女の視界に、漆黒の蝶が入り込んできて
がたん!と、セシリアは思わず立ち上がる
そうしていると………ひらり
彼女の視界に、漆黒の蝶が入り込んできて
がたん!と、セシリアは思わず立ち上がる
「……っ貴様、どこから入り込んだ!?」
防音が整ったその室内で、叫ぶセシリア
初めは一頭だけだったはずの蝶は、いつの間にやら群れを成していて……それが、一か所に集まっていき、散った時には、そこに人影がある
初めは一頭だけだったはずの蝶は、いつの間にやら群れを成していて……それが、一か所に集まっていき、散った時には、そこに人影がある
…カラミティ・ルーン
セシリアにとって特別な因縁のある、その魔法使いの、いつもの出現パターンだ
……そこまでは、百歩譲ってよいとしよう
だが、厳重なセキュリティで囲まれているはずの、「組織」上層部の執務室まで、どうやって入り込んできた!?
セシリアにとって特別な因縁のある、その魔法使いの、いつもの出現パターンだ
……そこまでは、百歩譲ってよいとしよう
だが、厳重なセキュリティで囲まれているはずの、「組織」上層部の執務室まで、どうやって入り込んできた!?
「どこから、って、俺様は大魔法使いのカラミティ・ルーン様だぜ?そこがどれだけ厳重に守られていようが、関係ねぇ。俺様の素敵な魔法をもってすれば、鍵も何もかも自由自在なんだからな」
その高い身長よりまだ長い杖を手に、カラミティは笑う
ぶかぶかのローブの下では、じゃらじゃらと魔法的価値の高い装飾具が音を立てている……どこで手に入れたやら、また、数を増やしたな
カラミティが所有している魔法的都市伝説の数を考え、セシリアは頭痛が強まった錯覚を覚えた
いや、実際、強まったのかもしれないが
ぶかぶかのローブの下では、じゃらじゃらと魔法的価値の高い装飾具が音を立てている……どこで手に入れたやら、また、数を増やしたな
カラミティが所有している魔法的都市伝説の数を考え、セシリアは頭痛が強まった錯覚を覚えた
いや、実際、強まったのかもしれないが
「……何をしに来た」
警戒を強めながら、セシリアはカラミティをはっきりと睨み付けた
何をしに来たのか、知らないが…どうせ、ロクな事ではあるまい
セシリアは、そう考えた
何をしに来たのか、知らないが…どうせ、ロクな事ではあるまい
セシリアは、そう考えた
だから、こそ
「何って、手伝い」
と
カラミティが口にした、その言葉に………あっけにとられる事になる
カラミティが口にした、その言葉に………あっけにとられる事になる
「………は?」
「だから、手伝い。手間取ってんだろ?エイブラハムと「13使徒」に関する情報について」
「だから、手伝い。手間取ってんだろ?エイブラハムと「13使徒」に関する情報について」
手伝ってやる、と
カラミティは、当たり前のように言ってきた
カラミティは、当たり前のように言ってきた
手伝う、だと?
カラミティが?
…なぜ、何の為に?
カラミティが?
…なぜ、何の為に?
「何を企んでいる」
「何だよ。俺様、何も企んでないぞ」
「何だよ。俺様、何も企んでないぞ」
心外だ、とでもいうようにカラミティは言ってくるのだが
セシリアは、それを信じることができない
相手は、カラミティ・ルーンという魔法使いなのだ
その言葉を、鵜呑みにするわけにはいかない
セシリアは、それを信じることができない
相手は、カラミティ・ルーンという魔法使いなのだ
その言葉を、鵜呑みにするわけにはいかない
「この混乱に乗じて、何かしでかすつもりか?……それとも、報酬でも要求するか?」
「だから、何も企んでないって。セシリアが大変そうだから、手伝ってやるだけだぞ」
「だから、何も企んでないって。セシリアが大変そうだから、手伝ってやるだけだぞ」
再び、否定の返事
…だが、セシリアは警戒を解かない
いつでも、カラミティの動きに対応できるように
いつ、カラミティが魔法を使ってきても対応できるように
……いつでも、カラミティを攻撃できるように
最大限の警戒心をあらわにする
…だが、セシリアは警戒を解かない
いつでも、カラミティの動きに対応できるように
いつ、カラミティが魔法を使ってきても対応できるように
……いつでも、カラミティを攻撃できるように
最大限の警戒心をあらわにする
「…この状況でお前が動くなら、こちらにも考えがあるぞ?」
「っ何も企んでないって、言ってるだろ!」
「っ何も企んでないって、言ってるだろ!」
警戒を解こうともしないセシリアの態度に、カラミティが声を荒げだした
怒っている…というよりは、癇癪を起こした子供ような、そんな様子
だが、セシリアは、それに気づけない
怒っている…というよりは、癇癪を起こした子供ような、そんな様子
だが、セシリアは、それに気づけない
「信じられるとでも、思っているのか?」
「信じないのかよ!?」
「今まで、お前はこちらに信じてもらえるような事をしてきたか!?」
「信じないのかよ!?」
「今まで、お前はこちらに信じてもらえるような事をしてきたか!?」
自然と、セシリアも声を荒げてしまう
そんなセシリアの様子に、カラミティはうー、とますます癇癪を強めたような様子を見せるのだが……セシリアは、まだ、気づけない
そんなセシリアの様子に、カラミティはうー、とますます癇癪を強めたような様子を見せるのだが……セシリアは、まだ、気づけない
「お前はいつもいつも!余計な事か厄介な事ばかり起こして!!昨年より、学校町に執着しているようだが……たとえお前が何か企もうとも、あの街はそう簡単に思うようにはならんぞ!!」
感情的に叫ぶセシリア
……その直後に、ようやく気づく
……その直後に、ようやく気づく
カラミティの、癇癪を起こしたような表情に
……カラミティの、傷ついたような、表情に
……カラミティの、傷ついたような、表情に
その、表情に
かつて、無数の屍の上に立って泣いていた、弟の表情を、思い出して
かつて、無数の屍の上に立って泣いていた、弟の表情を、思い出して
「…ぁ………すまん、言い過ぎ………」
「っ何だよ!!俺は、ただ、セシリアを手伝ってやりたかっただけなのに!お前達の言うような悪い事なんて、するつもりなかったのに!!」
「っ何だよ!!俺は、ただ、セシリアを手伝ってやりたかっただけなのに!お前達の言うような悪い事なんて、するつもりなかったのに!!」
ひら、と
漆黒の蝶がカラミティの周囲に出現しだす
うーうーと、癇癪を起しているカラミティの姿が、蝶の群れで隠されていく
漆黒の蝶がカラミティの周囲に出現しだす
うーうーと、癇癪を起しているカラミティの姿が、蝶の群れで隠されていく
「ッカラミティ、待て……」
「どうして、セシリアはいつも俺の事を信じないんだよ!あの時から、ずっとずっと……っ!!」
「どうして、セシリアはいつも俺の事を信じないんだよ!あの時から、ずっとずっと……っ!!」
『---っ何でだよ、俺は、皆を護ったのに、助けたのに…!…………どうして、そんな事、言うんだよっ!?』
屍の上で泣いていた弟
向けられる悪意の理由がわからず混乱していた泣き顔が………今のカラミティの様子に、重なって
ずきり、セシリアは、罪悪感を覚える
セシリアが言葉をつづけられずにいる間にも、カラミティの言葉は続く
向けられる悪意の理由がわからず混乱していた泣き顔が………今のカラミティの様子に、重なって
ずきり、セシリアは、罪悪感を覚える
セシリアが言葉をつづけられずにいる間にも、カラミティの言葉は続く
「……セシリアなんか、嫌いだ。大っ嫌いだ!!!」
『………みんな、嫌いだ。父さんも母さんも、セシリアも…………みんな、大っ嫌いだ!!!』
泣きながら、消えてしまった弟
あの時と、同じように
あの時と、同じように
「……ぁ」
正気に戻って、セシリアが手を伸ばした時には……もう、遅い
カラミティの姿は、完全に漆黒の蝶の群れに包まれて……群れが散った時、もう、そこにはカラミティの姿はなかった
カラミティの姿は、完全に漆黒の蝶の群れに包まれて……群れが散った時、もう、そこにはカラミティの姿はなかった
あの時と同じ
弟が、自分の前から消えてしまった時と………まったく、同じように、消えてしまった
弟が、自分の前から消えてしまった時と………まったく、同じように、消えてしまった
「………私、は」
…なぜ
信じてやれなかったのだろうか
カラミティは、彼が言ったように、本当に何も企んでいなかったのかもしれない
本当に、純粋に……ただ、こちらを手伝おうとして着ていただけなのかもしれない
なぜ、信じてやれなかったのか
信じてやれなかったのだろうか
カラミティは、彼が言ったように、本当に何も企んでいなかったのかもしれない
本当に、純粋に……ただ、こちらを手伝おうとして着ていただけなのかもしれない
なぜ、信じてやれなかったのか
もし
もし、あの言葉を信じてやっていたならば……
自分達は……和解、できたのだろうか?
もし、あの言葉を信じてやっていたならば……
自分達は……和解、できたのだろうか?
考えても、答えは出ない
ただ、自分一人だけが、そこに残されて
ただ、自分一人だけが、そこに残されて
…ひら、と
最後まで残っていた漆黒の蝶も、結局、幻のように、消え失せてしまって
結局、言葉をかけることすら、できなかった
最後まで残っていた漆黒の蝶も、結局、幻のように、消え失せてしまって
結局、言葉をかけることすら、できなかった
to be … ?