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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 首塚-06

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 …そこは、血の海だった
 一歩足を踏み入れると、ぴちゃり、どうしても血溜まりを踏んでしまう
 …これは、この靴はさっさと捨てた方が良さそうである
 いくら洗っても、このしみこんだ血の色は消えてはくれまい

「将門様ったらぁ。ご機嫌が良さそうねぇ」

 くすりと、スーツに身を包んだキャリアウーマンが呟く
 彼女はハイヒールを履いており、血溜まりに足を下ろしていても、特に問題はなさそうだ
 彼女が契約している都市伝説は、目の前で起きている惨劇が恐ろしいのか、彼女の背後に隠れてぷるぷると震えている

「だなぁ。やっぱ、暴れてぇのかな?」
「たまには自分で戦わないと、勘が鈍ってしまうのよ」

 くすり、微笑んだのは、キャリアウーマンとは別の、20代前半と思われる女性
 びちゃり!飛んでくる血飛沫を浴びないよう、青年たちよりも少し離れた位置にいる

「うー…」
「ん?どうした?怖いか?」
「うー…ちょっと」

 …にじにじ
 少年は、青年の背後に隠れた
 ……それは、そうだろう
 この光景は、まだ10代に達していない少年には、刺激が強すぎる
 彼らの主が、その辺りを配慮してくれるかどうか…
 …微妙である
 大変と、その辺りは微妙である
 何せ、時代の感覚が、イマイチズレている事もあるのだから
 はたして、配慮してくれているかどうか、微妙すぎる
 青年の背後に隠れた少年
 腕には、怪我でもしていたのか、痛々しく包帯が巻かれている
 …そもそもが、これがこの、惨劇の原因なのだが

「……くかかかかかかかかかかかかかか!!!」

 主の笑い声が響き渡る
 ひゅん!と刀が振るわれ、武士の首が飛んだ

「…どうした、どうした!?貴様らの力はその程度かぁ!?弱い、弱いぞぉ!!その程度の力で、貴様らは主の仇討ちに挑んだとでも言うのかぁ!?」

 向かってくる武士たちに、武者はそう声をかける
 武士たちは、腹を裂かれたおどろおどろしい姿のまま、武者に襲い掛かっていく

 …しかし、武者には敵わない
 武者は、迫ってくる武士たち相手に刀を、槍を振るい、一対多数の戦いで、互角以上の戦いを繰り広げていた
 …決して、武士たちが弱い訳ではない
 武者が、強いのだ

 武者と武士たちは、生きた時代が違う
 そして、互いに「呪い」と言う本質を持ってはいるが…その力量が、違いすぎるのだ

 武者は、平将門
 武士たちは…赤穂浪士

 聞いたことあるだろうか?
 あの有名な、赤穂浪士たちの討ち入り
 自分たちの正義を信じ、仇討ちを果たした者達は…しかしその後、切腹を命じられた
 無念の思いを抱き、死んでいった武士たち
 その無念の想いが染み込んだ地…そこに、近代的な、セレブを象徴するような建築物が建てられた
 この地が、そんな呪われた地である事を、その建物を使用している者たちの、何人が知っているだろうか?
 その建築物で不幸が続き…その建築物は呪われている、という都市伝説が生まれた
 それは、赤穂浪士たちの無念と混ざり合い

 …新たに生まれた、呪いの都市伝説
 それが、どうして、首塚と戦っているか、といえば

「………」

 ちらり
 青年は、自分の背後に隠れている少年を見つめた
 腕を怪我した少年
 その建築物を訪れた際、この少年は怪我をしてしまった
 幸い、この少年が契約している都市伝説の力で、命は落とさなかったが…見ての通り、腕に怪我をしてしまった
 だが、都市伝説の力がなければ…きっと、この少年は命を落としていただろう
 以前、その建物で命を落とした、幼子のように

 それに激怒したのが、将門だった
 己の部下を傷つけられたのが気に食わない
 子供に被害をもたらしたのが、気に食わない

 …将門とて、首塚を汚されれば、相手が子供であろうと容赦はしない
 ……しかし
 この少年は、ただ、あの建築物を訪れただけだった
 あの建物の建築に携わった訳でもなく、赤穂浪士たちを侮辱した訳でもない
 …それなのに、命を危うくするような目に合わされた

 将門はそれに激怒して、刀を取った

「小童共に仕置きをしてくる」

 と、そう言って


「…あ~、そろそろ終わるな」

 残り、後一人
 残った武士は一人だけだ
 しかし、その最後の一人も、決して、逃走などしようとせず、将門に刀を構え、攻撃の機会を窺っている

「……くくくくっ、引かぬか。我を前にして、恐怖もしないか」

 くっくっく、と
 将門は、さも面白そうに、笑っている
 …もしかしたら、当初の目的を見失っているんじゃないだろうか
 若干、心配になってきた

「ならば、来るがいい!我に一矢報いて見せよ!!我は将門!首塚に祭られし祟り神、平将門であるぞ!!貴様ら程度の、ほんの数百年程度しか生きておらぬ小童でも!!!我に立ち向かうと言うならば、せめて一撃を加えてみせよ!!」

 刀を手に、将門は挑発する
 その挑発に、乗るように……武士は、刀を構え、将門に突進した
 将門は、それをよけようともしない
 ただ、ニヤリ、笑って


 ずぷりっ、と
 武士の刀が、脇腹に刺さる…
 …はず、だったのだ


「………くかかかかかかかかかかかかかかかかか!!!」

 笑い声が響きわたる
 将門の胴体が、消えた
 ふわり、首が浮かび上がる

「……やばっ!?」

 青年は、慌てて少年を抱えて背後に下がる
 きょとん、としている少年に、怒鳴るように声をかけた

「目ぇ閉じてろっ!!いいって言うまであけるなよ!?」
「…?う、うん」

 ぎゅう、と目を閉じる少年
 キャリアウーマンも、自身が契約している都市伝説と共に後ろに下がり…フィラルディア計画と契約しているあの女性など、さっさと自身の能力で安全圏まで避難していた


 ふわり
 浮かび上がった、将門の顔
 はらはらと、髪が落ち武者のように乱れだし、その顔に狂気が宿る

「褒めてやろうぞ。我に一矢報いんとした事を…だが、貴様らでは、我には敵わぬ。貴様らでは、まだ足りぬ。恨みも!怒りも!!憎しみも!!!我には到底及ばぬわぁっ!!!!!」

 将門が目を見開くと、そこから血の涙が溢れ出した
 口から漏れ出す声は怨霊の呻き声へと変わり、空間を揺らす

 最後に残った武士一人
 そんな将門に、じろり、睨まれて…

 ……ごきりっ
 首が折れて……どさり、血溜まりの上に、倒れこんだ


「…将門様、やりすぎっすよ」
「む?そうであったか?」

 ふわり
 生首姿のまま浮かび、将門はくくくくっ、と笑う
 不気味な姿ではあるが、これが本来の「首塚」将門の姿である
 何せ、将門は首だけで、首塚のある場所まで飛んで来た、と言い伝えられているのだから

「我と同じ、呪いを司りし者共だ。全力で戦ってこそ、礼儀であろ?」
「…そーいうもんっすか」
「ふふっ、駄目ねぇ?男の子なんだから、そこら辺の心境はわかってあげなくちゃぁ」

 くすくす、キャリアウーマンに笑われて、青年は臍を曲げる
 じゃらり、身につけているシルバーアクセサリーが音をたてた

「…む?ふぃらでるふぃあ計画の女子はどうした?」
「あー、将門様の呪いの力から逃れるために、こっから離脱したっすよ。先に戻ってるんじゃないすか?」

 全力で戦うのが礼儀
 それは、いいのだが
 …できれば、ギャラリーの事も少しは考えて欲しいものである

「ふむ、そうか。宴の準備でもはじめてくれていれば良いのだがな。勝ち戦の後は、宴に限る」
「あ、それじゃ、連絡しときますね~」

 キャリアウーマンが携帯電話を取り出す
 フィラデルフィア計画の女に、酒やつまみを用意するよう、連絡するつもりなのだろう
  青年は、あの女性には嫌われているから、自分が連絡するよりはいいだろう…と、青年はそう考える

「…む?どうした、そこの童は何故、目を閉じ続けている」
「将門様の今の姿、こいつには刺激強すぎっす。ショックで心臓止まりかねません」

 ふわふわと、生首の姿のまま浮かぶ将門
 これが、本来の姿であると…この少年も、わかっているだろうが
 しかし、刺激が強すぎる
 都市伝説と関わっているくせに若干怖がりなこの少年、ショック死は言い過ぎとしても、多分気絶する

「む、そうか。では…」

 っふ、と
 将門に、胴体が戻った
 落ち武者のようになっていた顔も、端整な武者の者へと戻る

「目ぇ、あけて大丈夫だぞ」
「ぁ……」

 恐る恐る、少年が目をあける
 将門はすたすたと少年に近づき…その頭を、やや乱暴に撫でた

「お前の怪我の借りは、返したぞ」
「………!」

 ぱぁ、と
 強張っていた少年の顔に、ようやく笑顔が浮かんだ
 将門は、ようやく笑顔を取り戻した自分の配下の様子に満足すると
 青年たちを従え、その場を後にした

 後には、首を切り落とされた武士たちの死体が、ごろごろと転がっていたが…

 都市伝説でしかなかったそれらは、やがて、消えた
 あれだけあった血溜まりすらも、まるで、何事もなかったかのように、消えうせ


 …後には、ただ元のままの、建築物の綺麗なロビーだけが、残ったのだった




 終






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