「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 那由多斬-06

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「・・・うーん、やっぱりもうちょっとバラバラにした方が良かったかなぁ」

夜、少ない街灯だけが道を示す暗い時間
血塗れになった剣を振り回しながら、無邪気な少年を装って呟くナユタ
先刻、人間を1人その得物で切り捨て、さらに契約者らしい青年をも切り裂いたところだったが、
どうもその青年の力が強大で、長期戦闘していると危険だと感じ、
折角手に入れたこの身体を失うのも惜しい、と引き下がったのだ
それでも、やはり思い残すことがあるらしい

「厄介な奴から切り刻んだ方が、後々楽だったかもね
  あー、でも、あの女の子の叫び声は聞いててうっとりしたなぁ、刺したらどんな声になったんだろう」

後悔しているのか、それとも楽しんでいるのか分からない声色で呟き、歩いていると、

「随分と物騒なことを仰るお子様ですわね?」

突如聞こえた声に固まり、携えた剣――「ティルヴィング」を構える
彼の前に歩み寄ってきたのは、夜風に赤い髪を揺らす黒いスーツの少女だった
切っ先を向けながらも、にっこりと笑みを浮かべ、ナユタは少女に尋ねた

「・・・お姉さん、こんな夜中に、僕に何か用?」
「えぇ、ありますわ・・・あ、申し遅れましたわね
  初めまして。 ワタクシはローゼ・ラインハルト・・・「組織」のR-No.0ですわ」

ぺこり、と律儀に軽くお辞儀をしてみせる少女――ローゼ・ラインハルト
ナユタは、彼女の言ったある言葉に、小さく反応した

「うん? 「組織」?・・・おっかしいなぁ、そういう団体さんには見つからないようにやってたのに
  それもトップに立つ人が直々になんて」
「ある方に情報を提供してもらいましたのよ・・・ナユタ、さん?」

ローゼの瞳が、優しげな紫から激しい赤へと変わる
思わず一歩退くナユタだったが、彼に一つの疑問が沸いた

「・・・変だなぁ、確かに僕はナユタと名乗ったけど
  それを知るのは、この町のたった一人の契約者の筈―――――」
「呼んだかクソガキぃ!?」

聞こえたのは、この場にいる誰の物でもない新たな声
どうやら背後から聞こえたらしいそれに反応し、咄嗟にナユタは「ティルヴィング」を振るう
甲高い音と細かい火花を散らして剣と漆黒の鎌がぶつかり、鎌の持ち主は大きく後ろに跳んだ

「っく・・・あぁ、やっぱり」
「久しぶりだな幽霊野郎! あン時の決着をつけに来たぞ!」

黒い鎌が、黒いローブを被った人影に変わる
人影を下がらせ、表情に怒気を浮べる少年――黄昏 裂邪

「なるほどね、「組織」の人だったんだ」
「違う、少なくとも今はな」
「違うの? ふーん、ただのお友達なんだ・・・
  ねぇ、お姉さーん、「組織」なのに民間人の言いなりになってても良いの?」
「言いなりなんかじゃありませんの
  それに、貴方が危険な存在であるのなら、ワタクシ達「組織」は、貴方を止めなければなりませんわ!」
「そういう訳だ。早い話・・・ここで終わりだ、幽霊野郎!」

裂邪の黒い影が大きく揺れ動く
ローゼを赤い光が小さく包み込む
双方に挟まれ、身動きができなくなったナユタ

「・・・ハァ、仕方ないなぁ」

溜息を吐き、彼は「ティルヴィング」の剣先を天に向ける
街灯の光を浴びた刀身は、強い光を放ち――――

「させるか! シェイドぉ!『闇誘拐』!!」
「了解シタ」

と、その時
黒い腕がナユタの足元に出現し、足首をがっしりと掴んだ

「ッ!?」

訳の分からぬままナユタは足を引っ張られ、ずぶり、地の中へと沈んでいった





    †    †    †    †    †    †    †





目の前の風景が、一瞬にして変わる

「ここは・・・」

常闇の夜から、眩い白昼のような風景に
言い方を変えれば、光と影が逆転したかのような感覚

「・・・異空間、かな?」
「お察しの通りですわ。ここは「シャドーマン」の異空間ですの」

気がつけば、裂邪とローゼもそこにいた
ナユタは再び「ティルヴィング」を構える

「ふふふ、考えたね・・・光があるように見えるけど、ここは影の中・・・」
「あぁその通り、「エルクレスの塔」は使えない。それともう一つ・・・その身体は持ち主に返してもらうぞ」
「それはできないよ、僕だってこの身体は気に入って―――――――あ、がっ!?」

得物を落とし、頭を押さえ、その場に蹲るナユタ
苦悶の表情を浮べながら、怒りを篭めた視線と強い怒声を裂邪にぶつけた

「ぼ、くに・・・何をしたぁ!?」
「ヒハハハハハハ!! いやな? 「シャドーマン」のある噂の拡大解釈でねぇ?
  お前の都市伝説としての力を封じさせてもらったんだよぉ!」
「なっ・・・まさか!?」
「そのまさかですわ!」

瞬間、ローゼが目にも止まらぬ速さで動きだし、
ナユタが落とした「ティルヴィング」を奪って彼から離れ、投げ捨てた
それを切欠に、彼は尚一層苦しみ始め、終には、

「―――――あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁあぁああああぁぁぁぁああああ゙ぁ!!!!????」

断末魔ともとれる叫び声を上げる少年の身体から、紫色の煙のようなものが湧き出る
それは次第に量を増し、捨て置かれた「ティルヴィング」の元へ伸びていき、
紫が剣を包み込むと、黒い空間に剣が浮遊し始めた
空っぽになったのか、煙が出なくなった少年は力無くその場に倒れた――直後、黒い何かに包まれ、空間から消えた

「これで、貴方は身体を失った・・・剣だけだと戦い難いですのよね?」
『っち・・・最初からそれが狙いだったのか!』
「弱体化させれるし、余計な被害も出さなくて済む・・・一石二鳥だ
  これでお前を仕留められたら、一石三鳥になる!」
『ほぅ、――を見縊ってもらっては困るな・・・子供の1人や2人、身体が無くても問題ない』
「ウヒヒヒヒヒ、なら・・・遠慮なくやらせてもらうぜぇ?」
「裂邪さん、無理はなさらないでね?」
「分かってるさローゼちゃん・・・ヒハハハハハハ!!『シャドーズ・ラグナロク』!」
「早速ですのね・・・でも油断は出来ませんわ、『フォトン・デュアルエッジ』!」

裂邪の身体が黒に飲まれ、空間の中に溶け込んでゆく
ローゼの両腕に、赤く輝く刃が作り出される

『・・・仕方ない、少々本気を出させてもらうよ』

ナユタの紫の霊体が腕を形作り、「ティルヴィング」の柄を掴み取った
先に動き出したのは、ローゼだ
左右の刃を交差させながら、ナユタに切りかかる
ナユタはその2本の刃を「ティルヴィング」1本で制した

『ぐっ・・・なるほど、No.0の名は伊達じゃないようだ』
「ワタクシとしては、地位と力量は関係ないと思うのだけれど」
『珍しいね、トップに立つ者にしては謙虚・・・む? あぁ思い出した、――が噂に聞く『赤い幼星』かね?』
「お言葉ですけど、その二つ名は好きではありませんの!!」

ナユタの剣を押し、右、左と交互に刃をぶつけるローゼ
一撃一撃を受け流し、ナユタは彼女から距離を取った

「流石に、しぶといですわね・・・」
『お褒めの言葉と受け取っておくよ
  しかし妙だね、もう一人の子供の姿が見当たらないのだが』
【当然だな。『シャッテン・レーゲン』】

声に反応した瞬間には既に遅かった
「ティルヴィング」に向けて無数の見えない攻撃が集中する
あるものは刺すような、あるものは殴るような、あるものは斬るような一撃
ナユタは全ての攻撃を抑える、というよりは、全て剣に命中させてしまった
刃毀れが目立ち始めた己の剣を見て、ナユタは何かに気づく

『・・・っく、――達、まさかこの「ティルヴィング」を破壊する気か!?』
「当然ですわ! 実体のない「憑依霊」である貴方に、一切の攻撃は通らない
  なら、実体のある都市伝説である「ティルヴィング」を破壊すれば、
  既に都市伝説に飲まれている貴方の器のバランスが崩れる・・・」
【その方が手っ取り早いのでな・・・さて、】

闇の中から、人の形をした何かが現れる
その身を包んでいた黒が流れるように消えると、裂邪の姿がそこにあった
彼は今度は金色の鎌を携え、構え、

「あとはその剣を叩き折るだけだ!」

黄金の刃と真紅の刃が振り下ろされる
裂邪とローゼの2人が繰り出す斬撃の嵐をひらりと躱していくナユタ
とはいえ、端から見れば「ティルヴィング」が避けているも同然なのだが

「ちょこまかと・・・動くんじゃねぇよ!」
『どんな塵芥(ゴミ)だって命が惜しくて逃げることくらいあるだろう?
  まだ斬り足りないし、こんなところで易々と眠らされては堪らない』
「たったそれだけのことの為に・・・起きていて欲しくもありませんわ!!」

裂邪とローゼが作る金と赤の一閃を、
ナユタは余裕そうに縫うように回避し、そして2人から距離を取る
離れる「ティルヴィング」を見据える2人だが、幾らか疲労の色が見え始める

『ふん、もうお疲れかな?』
「ッハァ、ハァ・・・まだ、まだですわ! 裂邪さん!」
「あぁ!」

彼女の呼びかけに答え、「レイヴァテイン」を弓に変え、見えない弦を力強く引く
ローゼも赤い刃を消し、代わりに突き出した右掌に赤い光の弾を生成する

「「『ロット・アーヴェント』!!」」

黄金の矢と真紅の光が同時に放たれ、互いに重なり、一つの光弾となる
地平線に沈む太陽の如き輝きを持つそれは、1ミリもずれることなく真っ直ぐにナユタへと向かっていった

『なっ、馬鹿な――――――――』

直撃
激しい轟音と爆煙、波打つような衝撃が、空間を支配する

「・・・終わった、か・・・」

どさ、と膝をついたのは裂邪だった
ローゼも、ふぅ、と一息吐き、額に流れる汗を拭った

「謎の連続大量辻斬り事件も、これで収束・・・犠牲になった方々も、これで安心してくださるといいのだけれど
  ところで裂邪さん、大丈夫ですの?」
「ま、まぁ、な・・・ウヒヒヒヒ、やっぱ異空間に長時間、しかも戦闘しながらってぇと生身の人間じゃ無理があったか」

伸ばされたローゼの手を取り、裂邪はゆっくりと立ち上がり、
ちら、と未だ晴れぬ煙を見つつ、再び安堵の表情を浮かべる

「・・・けど、ローゼちゃんがいてくれて助かった
  『シャドーズ・アスガルド』使う時は、ミナワ達とは一緒に戦えないんだよなぁ
  それに、能力を無効にするのは時間に限りがある・・・俺一人じゃ、手に負えなかったよ」
「あら、そんなデメリットが御座いましたの?
  セシリアさんからは『迷惑だ』としか聞いておりませんでしたけど」
「あ、またいつか謝らなきゃなぁ」








『―――――――そういうことか』








届いた声に、身体を硬直させる2人
次の瞬間、留まっていた煙が吹き飛ばされ、
代わりに轟々と燃え滾る紫色の炎に包まれた、金色の柄の剣がふわりと空間を浮遊していた

「ッ!?」
「「ヴァルプルギスの夜」!? っくそ、間に合わなかったか!」
『流石の――も終わりかと思ったがね・・・この――が、小僧如きに殺されて堪るか!!』

紫炎を散らし、「ティルヴィング」は邪悪な輝きを以て威圧する
裂邪もローゼも、それぞれ刃を構えた

「本当にしぶといですわね・・・でも今度は―――」
『おっと、悪いけど遊戯はここまでだよ』
「あ?」
『この居心地の悪い空間には長居したくないからね、
  ――はそろそろ御暇させてもらうよ』
「ウヒヒヒヒ、何を言い出すかと思えば・・・ヒハハハハハハハ!!
  お前をこの影の世界に招待したのは俺だぜ? つまり、お前がここから出るには俺の許可が必要になる!
  無理矢理出ようとしたところで、他人の命を犠牲にしなきゃ願いを叶えられねぇ「ティルヴィング」以外に、
  この空間からお前が出る方法なんて―――」
『あるよ』

短く、はっきりと言い放つナユタ
驚く裂邪を無視し、尚も言葉を続ける

『あまり知られたくなかったんだけどね・・・今回は特別だ
  教えてあげよう、――の最後の契約都市伝説を』
「い・・・5つ目の都市伝説・・・!?」
『「組織」である――なら知っているだろう? ――の起こした事件が世界各地に拡散していると
  一箇所で集中的に殺していると足跡が残る可能性があるからね、満遍なくやったつもりだったんだが
  「ティルヴィング」でも良いけど、一々願いを1つ使ってしまうのは惜しい・・・しかし、』

また、炎が揺らめき、「ティルヴィング」を纏い始めた

『そんなことをしなくても、――は世界中を渡り歩けた
  世界各地で――を見た塵芥(ゴミ)共は、――を何だと思っただろうね?
  突然目の前に現れた(ゴッド)か、はたまた突如目の前から消えた(ゴースト)か』
「ゴッド・・・ゴースト・・・っまさか、お前の最後の都市伝説はっ!?」

裂邪が何かに気づいた直後、ナユタは大きく笑ってみせた
殺意と、勝者が纏うオーラに満ちた、醜くも堂々とした笑い

『さようなら、子供達よ・・・また会う機会が来るのを楽しみにしているよ
  何れ、――はこの地に神の如く出ずるだろう・・・だが今は、鬼の如く没しよう』

紫色の炎が、剣を包んで球体になると、それは瞬きする間もなく2人の前から消えた
だが、今この瞬間に、ナユタは何処か違う土地の空気に触れているに違いない
何故ならナユタは、神のように出で、鬼のように没する――――「神出鬼没」の契約者なのだから

   ...続

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