これは、[黄昏 正義(たそがれセイギ)]少年が小学6年生になった頃、屋上で起こった出来事だ。
もう少年の安否を見張る必要も無い上、下手に契約者と接触したくないと思い、俺は屋上で座り、瞑想をしていた。
この瞑想というのは俺にとっての回復方法の1つで、
さらに自己の能力の分析をしたり、敵を察知しやすくなったりと都合が良く、時間があれば瞑想をしている。
もう少年の安否を見張る必要も無い上、下手に契約者と接触したくないと思い、俺は屋上で座り、瞑想をしていた。
この瞑想というのは俺にとっての回復方法の1つで、
さらに自己の能力の分析をしたり、敵を察知しやすくなったりと都合が良く、時間があれば瞑想をしている。
―――その次の瞬間、何が起こるかも知らずに―――
不意に都市伝説の気配を察知する。
その気配は、今までの都市伝説とは比べ物にならないほど大きかった。
いつもなら、詳しい位置を調べてから動くのだが、その必要はなかった。
眼を開けると、その都市伝説の居場所が分かった。
その気配は、今までの都市伝説とは比べ物にならないほど大きかった。
いつもなら、詳しい位置を調べてから動くのだが、その必要はなかった。
眼を開けると、その都市伝説の居場所が分かった。
そう、真後ろだ。突如真後ろに現れたのだ。そして前には、巨大な鎌が首を斬らんとしていた。
大王「・・・まさか、もう出会う事になるとはな。もう少し心構えができてからにしたかったが。」
???「私を知っているのか、『Αμαρτωλοσ(アマルトロス)』。」
大王「あぁ、生まれた時からな!絶対に会わない方がいいと教えられた。」
???「私を知っているのか、『Αμαρτωλοσ(アマルトロス)』。」
大王「あぁ、生まれた時からな!絶対に会わない方がいいと教えられた。」
思えば、あの時かすかに震えていた気がする。初めて恐怖を覚えたからであろうか。
それだけ、あの存在は、全てのものが恐れる存在だった。
それだけ、あの存在は、全てのものが恐れる存在だった。
大王「お会いしたくなかったよ、【Θανατοσ(タナトス)】。」
そう、あの時そこにいたものこそが、神話と呼ばれる都市伝説の1柱【タナトス】だった。
何故か【タナトス】は俺の首にかけていた鎌を下ろす。
何故か【タナトス】は俺の首にかけていた鎌を下ろす。
タナトス「まさかお前にまで私の名が広まっていたとは思わなかったな、【恐怖の大王】。」
大王「ほぅ、俺こそ光栄だな。神まで俺の名を知っていたとは。都市伝説の死神、【タナトス】。
将来有望の俺を狩りに来たのか?」
タナトス「あぁ。その予定だった。」
大王「『だった』?まさかこの俺の強さに怖気ついたのか?」
大王「ほぅ、俺こそ光栄だな。神まで俺の名を知っていたとは。都市伝説の死神、【タナトス】。
将来有望の俺を狩りに来たのか?」
タナトス「あぁ。その予定だった。」
大王「『だった』?まさかこの俺の強さに怖気ついたのか?」
あの時はあえてありえない事を言ってみた。
しかしこれが吉となり、色々な情報を引き出す事となろうとは、思いもよらなかった。
しかしこれが吉となり、色々な情報を引き出す事となろうとは、思いもよらなかった。
タナトス「お前達は私達には絶対に敵わない。お前は『Ταξη(タクシ)』を知っているか?」
大王「『タクシ』?なんだそれは?」
タナトス「まぁ、知らぬものもいるか。都市伝説には強さに応じて『タクシ』、つまり階級がある。」
大王「『タクシ』?なんだそれは?」
タナトス「まぁ、知らぬものもいるか。都市伝説には強さに応じて『タクシ』、つまり階級がある。」
【タナトス】は鎌を背中のホルダーにかけると、大王に背を向け、教授するかのように話を続ける。
タナトス「『タクシ』はΕ(エプシロン)を最低としてΔ(デルタ)Γ(ガンマ)Β(ベータ)
そしてΑ(アルファ)と私達は定めている。」
大王「つまりΑが最高という事か。実に分かりやすいな。」
タナトス「例えば、お前が戦ってきた【ベッドの下の男】はΔ、【口裂け女】【透明警備員】はΓだ。」
そしてΑ(アルファ)と私達は定めている。」
大王「つまりΑが最高という事か。実に分かりやすいな。」
タナトス「例えば、お前が戦ってきた【ベッドの下の男】はΔ、【口裂け女】【透明警備員】はΓだ。」
どのようなものかと思えば、あっさりと数値が出た。そうなれば当然気になるものがある。
大王「そうか、では俺はどこなんだ?常識ではΓ以上か。」
タナトス「お前は、Αだ。」
タナトス「お前は、Αだ。」
【タナトス】が少し溜めてから放った言葉に、流石の俺も驚いた。
まさか神に最高の称号を与えられるとは。だが。
まさか神に最高の称号を与えられるとは。だが。
大王「待て、どういう事だ?『敵わない』事についてこの話題を出したなら、お前がΑとなるんじゃないのか?」
タナトス「勘違いするな。私達は、Αではない。」
タナトス「勘違いするな。私達は、Αではない。」
【タナトス】は振り返り、不敵に笑いながら、こう告げた。
タナトス「その上の、Ω(オメガ)だ。」
大王「ッ!もう一つ、上、だというのか・・・。」
タナトス「都市伝説は信じられ、語られる事によって強さや能力を得る。
なら信仰され、生贄まで捧げられてきた神の方が、
人を怖がらせるためだけに生まれたお前たちより、上だという事だ。」
大王「ッ!もう一つ、上、だというのか・・・。」
タナトス「都市伝説は信じられ、語られる事によって強さや能力を得る。
なら信仰され、生贄まで捧げられてきた神の方が、
人を怖がらせるためだけに生まれたお前たちより、上だという事だ。」
所詮、神は絶対に越えられない存在だったのであろうか。
次の階級への道の遠さは目の前にある気迫が伝えてくれた。
次の階級への道の遠さは目の前にある気迫が伝えてくれた。
大王「・・・。それで、改めて訊ねようか。何故俺を狙いに来た?そして何故殺せないんだ?」
タナトス「『Μοιρα(モイラ)』を歪め、悲しませるアマルトロスを消すためだ。」
大王「【モイラ】?神の名か?」
タナトス「『Μοιρα(モイラ)』を歪め、悲しませるアマルトロスを消すためだ。」
大王「【モイラ】?神の名か?」
【タナトス】は呆れたかのように溜め息をつき、説明を始める。
タナトス「『モイラ』は『運命』、それを司る神だ。主に人間の運命を定めている。」
大王「人間の運命、そんなものを決めている神を悲しませる?運命を歪める?俺にはそんな事、不可能だ。」
タナトス「いや、可能だ。『モイラ』には元々存在するべきではない都市伝説に関する事は含まれていない。」
大王「それで俺が暴れればその分変わる、か。しかしまだ1人も殺してはいないぞ?念のためか?」
大王「人間の運命、そんなものを決めている神を悲しませる?運命を歪める?俺にはそんな事、不可能だ。」
タナトス「いや、可能だ。『モイラ』には元々存在するべきではない都市伝説に関する事は含まれていない。」
大王「それで俺が暴れればその分変わる、か。しかしまだ1人も殺してはいないぞ?念のためか?」
【タナトス】はまた背を向けて、俺に重大な事実を告げた。
タナトス「いいや、お前は歪めた。お前の契約者の『モイラ』を。」
大王「なに、少年の運命?どういう事だ?契約してから少年の寿命が縮んだとでも言うのか?」
タナトス「お前の契約者は、本来とうの昔に死んでいる。死因は自殺だ。」
大王「なに、少年の運命?どういう事だ?契約してから少年の寿命が縮んだとでも言うのか?」
タナトス「お前の契約者は、本来とうの昔に死んでいる。死因は自殺だ。」
自殺?ふざけるな!少年がそんな事をする理由は―――その発言を止めたのは自分自身だった。
心当たりがあった。
[心星 奈海(しんぼしナミ)]少女とケンカをした時、あの時なら餓死、あるいは自殺しかねない、そう思ったのだ。
しかし俺は、それを止めた。つまり少年の寿命を延ばした。
それが神に抗うという罪か。
心当たりがあった。
[心星 奈海(しんぼしナミ)]少女とケンカをした時、あの時なら餓死、あるいは自殺しかねない、そう思ったのだ。
しかし俺は、それを止めた。つまり少年の寿命を延ばした。
それが神に抗うという罪か。
タナトス「さらに、その後を追い自殺するはずだった者も、お前の契約者が生きている所為で生きている。」
大王「あの少女か、確かに少年が死ねばそうなりかねん。
で、このアマルトロス、『罪人』か、何故殺せないんだ?上からの命令か?」
大王「あの少女か、確かに少年が死ねばそうなりかねん。
で、このアマルトロス、『罪人』か、何故殺せないんだ?上からの命令か?」
俺はまたありえない事を口にした、つもりだった。
【タナトス】より上があるなどと、その時は思いもしなかった。
【タナトス】より上があるなどと、その時は思いもしなかった。
タナトス「その通りだ。『お前及びその契約者を殺してはならない』という命令を受けている。」
大王「お前より上がいる、のか?」
タナトス「あぁ、神にもタクシがある。上位達が決めた命令は絶対だ、だが!
大王「お前より上がいる、のか?」
タナトス「あぁ、神にもタクシがある。上位達が決めた命令は絶対だ、だが!
急に始まったあの怒りの発言は、何故か鮮明に覚えている。
タナトス「あの餓鬼は悪戯ばかり、格闘馬鹿共は修行に明け暮れ、
誰一人とて神の自覚も無く遊びまわり!
挙句に現最高神は訳の分からない戯言を抜かす!何を考えているんだ!」
誰一人とて神の自覚も無く遊びまわり!
挙句に現最高神は訳の分からない戯言を抜かす!何を考えているんだ!」
【タナトス】のまわりが歪んで見える。
本来なら恐れるべきところだろうか、しかしあの時は、恐れとは別の、『足りない物』を感じた。
本来なら恐れるべきところだろうか、しかしあの時は、恐れとは別の、『足りない物』を感じた。
タナトス「だが、【モイラ】様は違った。あの方は神の自覚を持ち、人間の運命を、紡ぎ続けていたのだ。」
急に声の調子が変わり、まるで感傷的になった。
しかし次の瞬間にはまた、その眼は威圧するかのように鋭くなった。
しかし次の瞬間にはまた、その眼は威圧するかのように鋭くなった。
タナトス「その【モイラ】様が定めたものを、歪めるものがあるのなら、
この私がそれを狩る。それが私の、使命だ。」
この私がそれを狩る。それが私の、使命だ。」
その発言の後、背中に掛けていた鎌を手に取り空を斬る。
すると空間が歪み、言葉では表現できない暗い色をした穴が開いた。
すると空間が歪み、言葉では表現できない暗い色をした穴が開いた。
大王「結局、帰るという事か?」
タナトス「『殺さない』という命がある以上、警告が唯一私にできる事だ。」
大王「もし、俺が人を殺したら、どうする気だ?」
タナトス「その時は、奴等の判断と私の判断、どちらが正しかったか分かる時だろう。」
タナトス「『殺さない』という命がある以上、警告が唯一私にできる事だ。」
大王「もし、俺が人を殺したら、どうする気だ?」
タナトス「その時は、奴等の判断と私の判断、どちらが正しかったか分かる時だろう。」
そう言い残し、【タナトス】は自分で開けた穴の中へと入り、穴は何事もなかったかのように閉じた。
残ったものといえば、『神』に関する情報と―――本来沸き起こるはずのない好奇心であった。
残ったものといえば、『神』に関する情報と―――本来沸き起こるはずのない好奇心であった。
【タナトス】については、『鎌の事』『都市伝説狩りをしている事』『死を司る神である事』ぐらいの情報は得ていたが、
この日、新たに『他にも多くの神がいる事』『それは究極の階級を持つ事』
そして『【タナトス】以外は敵意が無いと思われる事』―――。
この日、新たに『他にも多くの神がいる事』『それは究極の階級を持つ事』
そして『【タナトス】以外は敵意が無いと思われる事』―――。
しかし、得た情報の分、謎も生まれた。『何故俺と少年は生かされているのか?』
そして『何故【モイラ】の定めた運命に都市伝説は干渉しないのか?』―――。
神は謎が多い、本来はそれを恐れるべきなのだろう。
そして『何故【モイラ】の定めた運命に都市伝説は干渉しないのか?』―――。
神は謎が多い、本来はそれを恐れるべきなのだろう。
気が付くと、俺の脚はある人物の元へと俺を運んでいた。そこには、俺の契約者である少年がいた。
さらに気付く。俺は少年と共になら神を倒せると思っている事を。
さらに気付く。俺は少年と共になら神を倒せると思っている事を。
昔の、契約する前の俺だったら、【タナトス】をどうしただろうか。
無闇に戦いを挑み散るか、あの心の不安定さから仲間にしようと試みたか?
しかし今では、逆に諦めて逃げるでもなく、むしろ神を超え、自分の限界に挑戦してみたいと思えるようになった。
昔の俺では【口裂け女】を倒せただろうか?【テケトコ】【透明警備員】を倒すための仲間はいただろうか?
少年のおかげで強くなった事は明確だ。
無闇に戦いを挑み散るか、あの心の不安定さから仲間にしようと試みたか?
しかし今では、逆に諦めて逃げるでもなく、むしろ神を超え、自分の限界に挑戦してみたいと思えるようになった。
昔の俺では【口裂け女】を倒せただろうか?【テケトコ】【透明警備員】を倒すための仲間はいただろうか?
少年のおかげで強くなった事は明確だ。
俺は少年に【タナトス】の事を伝えようかと思った。しかし、やめておく事にした。
もし少年が俺のために、いや、これは自意識過剰か。好奇心で神に挑んでしまう可能性があるから、としておこう。
もし少年が俺のために、いや、これは自意識過剰か。好奇心で神に挑んでしまう可能性があるから、としておこう。
正義「どうしたの?大王、行くよ。」
今日から【タナトス】を越えるほど強くなるまで、修行を積む事にするか。
大王「あぁ。少年、今行く。」
―――世界征服への道は遠い。
第7話「狙われた日」―完―