【不思議少女シルバームーン~第四話 第四章「かくて絶望の鐘は鳴る」~】
皆さんこんにちわ。
私は霧雲霙、不思議少女シルバームーンのもう一人の主人公です。
今日の私は先日起きた事件について自らボスに報告をしているところです。
普段なら居る先輩の彼方さんや橙さんは新しい事務所の設立のために奔走していて居ないので今の事務所には私と所長の二人きり。
恋に恋する女の子である私として気になる人と二人っきりでちょっぴりテンションが上がっていたりします。
私は霧雲霙、不思議少女シルバームーンのもう一人の主人公です。
今日の私は先日起きた事件について自らボスに報告をしているところです。
普段なら居る先輩の彼方さんや橙さんは新しい事務所の設立のために奔走していて居ないので今の事務所には私と所長の二人きり。
恋に恋する女の子である私として気になる人と二人っきりでちょっぴりテンションが上がっていたりします。
「……という訳で、葵社長は無事で、間一髪で所長の大好きな朔夜ちゃんも少々吸血鬼の怪力で殴られただけで済みました。
やはりネバーランドについてはスバル君がなにやら知っているみたいです。」
「ご苦労。やはり天野スバルも只の小学生ではなかったか。
あと念の為に言っておくが俺は朔夜が大好きって訳じゃあない。」
「じゃあなんで私にわざわざ彼女を襲わせてみたり、
逐一様子を報告するように言ったりしているんですか?」
「それはあれだ、あいつはだな……。」
「なんなんです?」
やはりネバーランドについてはスバル君がなにやら知っているみたいです。」
「ご苦労。やはり天野スバルも只の小学生ではなかったか。
あと念の為に言っておくが俺は朔夜が大好きって訳じゃあない。」
「じゃあなんで私にわざわざ彼女を襲わせてみたり、
逐一様子を報告するように言ったりしているんですか?」
「それはあれだ、あいつはだな……。」
「なんなんです?」
所長は口を濁す。
そう、正直なところを言うと私は朝月朔夜という少女に嫉妬していた。
私の大好きな所長がなんであんなにも彼女に関心を注ぐのだろうかと。
私は所長のために毎日一生懸命頑張っているのに。
そもそも私は所長のために働くなんてあり得なくてむしろ彼に害をなしても良いような存在なのに。
そうまでして彼のために頑張っているのになんで彼はあの子のことばかり気にするのだろうか。
それが辛くて悲しくて、大好きな筈の友人にまでどす黒い感情を抱いてしまうことが幾度も有った。
そう、正直なところを言うと私は朝月朔夜という少女に嫉妬していた。
私の大好きな所長がなんであんなにも彼女に関心を注ぐのだろうかと。
私は所長のために毎日一生懸命頑張っているのに。
そもそも私は所長のために働くなんてあり得なくてむしろ彼に害をなしても良いような存在なのに。
そうまでして彼のために頑張っているのになんで彼はあの子のことばかり気にするのだろうか。
それが辛くて悲しくて、大好きな筈の友人にまでどす黒い感情を抱いてしまうことが幾度も有った。
「あいつは……娘なんだ。」
「え?」
「え?」
おっと、ここで予想外の回答だ。
「いや、だから……さ。茜と友美以外に色々女性関係が、だなあ……。
霙みたいな年頃の女の子にこんな話するのも非常に恥ずかしいというか申し訳ないんだけど……。」
霙みたいな年頃の女の子にこんな話するのも非常に恥ずかしいというか申し訳ないんだけど……。」
年頃の女の子……照れるなあ。
しかしまあなんだ、そういうことならむしろ良いのだ。
いや当然驚いているのだが。
驚いてはいるのだがそういうことなら私は友人になってしまった朔夜に黒い感情を持たなくて済む。
しかしまあなんだ、そういうことならむしろ良いのだ。
いや当然驚いているのだが。
驚いてはいるのだがそういうことなら私は友人になってしまった朔夜に黒い感情を持たなくて済む。
「彼方にも橙にもまだこの件は黙っていてくれ。黙っていてください。
これ以上色々有ると彼方と橙にまた物凄い顔されかねない。」
「は、はぁ……。」
「お前には俺の知っているこの事務所の裏と表を全部まとめて教え込むつもりだからこれもその一環だと思って許してください。」
「あ、頭上げてください所長。」
「はーい。」
これ以上色々有ると彼方と橙にまた物凄い顔されかねない。」
「は、はぁ……。」
「お前には俺の知っているこの事務所の裏と表を全部まとめて教え込むつもりだからこれもその一環だと思って許してください。」
「あ、頭上げてください所長。」
「はーい。」
所長が深々と頭を下げていたのをなんとか上げさせる。
ここで私はすこし悪いことを思いついてしまった。
ここで私はすこし悪いことを思いついてしまった。
「黙っているのでその代わりに一つお願いがあります。」
そう、この前茜さんや友さんや在処さんやらとお茶をしたときにアドバイスしてもらったのだ。
弱みを握ればこちらのものだと。
弱みを握ればこちらのものだと。
「なんだ?この前のテストの点数も良かったし、聞いてやらないでもない。」
「ふふふ、目をつぶっていてください。」
「お、おう……。」
「ふふふ、目をつぶっていてください。」
「お、おう……。」
所長が完全に目をつぶる。
普段は隙のないデキル男な彼だが今に限っては完全に無防備だ。
こっそりと忍び寄る。
すでに心臓は早鐘を打っている。
意を決して私は所長の唇を奪うことにした。
妻子有る人に不意打ちでこんなことするなんて私ってなんていけない子なんでしょう。
日曜朝八時半の子供番組とかだと絶対こんなこと許されない!
でもそういうのが燃える!
普段は隙のないデキル男な彼だが今に限っては完全に無防備だ。
こっそりと忍び寄る。
すでに心臓は早鐘を打っている。
意を決して私は所長の唇を奪うことにした。
妻子有る人に不意打ちでこんなことするなんて私ってなんていけない子なんでしょう。
日曜朝八時半の子供番組とかだと絶対こんなこと許されない!
でもそういうのが燃える!
「てえええええええい!」
私は全力で所長に襲いかかった。
ガツッ
だが、思い切り歯と歯がぶつかってしまった。
ガツッ
だが、思い切り歯と歯がぶつかってしまった。
「”$"%"#&%"%$#&%##"!!!!!」
言葉にならない激痛が口の中に走る。
一瞬煙草の香りがという名のストロベリーフレーバーが口の中に漂った気がした。
一瞬煙草の香りがという名のストロベリーフレーバーが口の中に漂った気がした。
「い、今何が……。一瞬ガチで俺を殺しにかかったのかと……。」
所長もだいぶ痛そうにしている。
腕とかちぎられても平気そうな顔してるのにこういうのは痛いらしい。
腕とかちぎられても平気そうな顔してるのにこういうのは痛いらしい。
「えと、その……ごめんなさい。」
「そういうのが頼みなら先に言ってくれると助かるかな……。」
「でも断るじゃないですか……痛ぅ……。」
「いやまあそれはその……。」
「嘘でもいいから女性として愛してると言って欲しかった……。
気まぐれでもいいから私を求めて欲しかった……。
それだけだったんです、それだけで良かったんです。」
「うぅん……。」
「そういうのが頼みなら先に言ってくれると助かるかな……。」
「でも断るじゃないですか……痛ぅ……。」
「いやまあそれはその……。」
「嘘でもいいから女性として愛してると言って欲しかった……。
気まぐれでもいいから私を求めて欲しかった……。
それだけだったんです、それだけで良かったんです。」
「うぅん……。」
所長が困ったような顔をしている。
そう、いつも私がアプローチするたびに逃げまわったり、ごまかしたりするのだ。
私はこんなにも真面目なのに。
頑張っているのに。
そう、いつも私がアプローチするたびに逃げまわったり、ごまかしたりするのだ。
私はこんなにも真面目なのに。
頑張っているのに。
「所長、いいえ明成さん、私は貴方の事がすごく好きです。」
「知っている。」
「だから……。」
「まあちょっと座りなさい。」
「知っている。」
「だから……。」
「まあちょっと座りなさい。」
仕方ないので所長の膝の上に座る。
えっそこ!?みたいな顔されたが気にしない。
えっそこ!?みたいな顔されたが気にしない。
「俺は君にもう許されないことをしている。」
「はい。」
「でもそれは俺としてはやらねばならないことだったし、
君の両親もまた生活のためにそういうことをしていたのだろう。」
「はい。」
「どちらも褒められないことをしていた。」
「はい。」
「だからせめて君には普通に幸せに生きていて欲しかったんだ。
君の両親が最期に俺に言ったことだしね。
俺だって人の子であり子の親だ。ほだされるさ。」
「はぁ……。」
「なのに君は何故そこから外れようとするんだい?」
「それは……。」
「はい。」
「でもそれは俺としてはやらねばならないことだったし、
君の両親もまた生活のためにそういうことをしていたのだろう。」
「はい。」
「どちらも褒められないことをしていた。」
「はい。」
「だからせめて君には普通に幸せに生きていて欲しかったんだ。
君の両親が最期に俺に言ったことだしね。
俺だって人の子であり子の親だ。ほだされるさ。」
「はぁ……。」
「なのに君は何故そこから外れようとするんだい?」
「それは……。」
私が力を求め、普通の社会から外れて契約者として生き続けようとする理由。
それはやっぱり……。
それはやっぱり……。
「できるだけ、いいえ、ずっとあなたの側に――――!」
ふいに後ろから抱きしめられる。
暖かな腕、赤に染まった腕、この腕で抱きしめてはいけないと思っていたのだろう。
でもこの温かい腕に救ってもらった人もいるのだ。
その腕はただ血に染まったわけじゃなくて
その手はただ欲望にまみれただけじゃなくて
その原因になった痛みも怒りも苦しみも憎しみも嘆きも弱さも
貴方の人間らしい迷いや感情が全て詰まっているが故に一欠片の優しさがあって
暖かな腕、赤に染まった腕、この腕で抱きしめてはいけないと思っていたのだろう。
でもこの温かい腕に救ってもらった人もいるのだ。
その腕はただ血に染まったわけじゃなくて
その手はただ欲望にまみれただけじゃなくて
その原因になった痛みも怒りも苦しみも憎しみも嘆きも弱さも
貴方の人間らしい迷いや感情が全て詰まっているが故に一欠片の優しさがあって
「でも駄目だよ、俺にはお前より年上の息子がいる。」
いまさらどの口が言うのだろう。
いまさらどの口が言うのだろう。
小学生だった友さんに手を出しておいてそれはあんまりじゃないか。
しかしまあ素直にそんなこと言っては空気ぶち壊しだ。
いまさらどの口が言うのだろう。
小学生だった友さんに手を出しておいてそれはあんまりじゃないか。
しかしまあ素直にそんなこと言っては空気ぶち壊しだ。
「そんなこと構いません。明尊兄さんのことなんてどうでも良いんです!
だからこのまま私を…………。」
だからこのまま私を…………。」
流石に気恥ずかしくてこの先が言えない。
が、所長もここまで女の子に言わせるような男でもない。
なんだかんだで流されやすい質なのだ。
が、所長もここまで女の子に言わせるような男でもない。
なんだかんだで流されやすい質なのだ。
「解ったよ。眼を瞑っていろ。」
所長の心臓の音が伝わってくる。
私を抱きしめる力が強くて苦しいくらいだ。
でもそれはなかなかどうして悪くない苦しみで。
私を抱きしめる力が強くて苦しいくらいだ。
でもそれはなかなかどうして悪くない苦しみで。
「ん…………。」
唇と唇が触れ合う。
私の中に舌が入ってきて、私の舌を撫で回すように絡みつく。
やっていることはすごくイケナイことなのに、
その所作はいつも頭を撫でてくれる時のように優しいのが少しおかしかった。
でもそれはやっぱり心の何処かで私のことを子供としてしか見ていないからなのだろうか。
唇が離れる。
これでお終い?
そう思っていたら所長は私をだきかかえて向かい合うように座らせた。
もう一度彼の顔が近くまで迫ってくる。
悲しそうな瞳をしている。
こんな眼をする人なのだと何人が知っているのだろう。
少しだけ優越感だった。
私は彼が欲しい。
欲しくて欲しくて堪らない。
彼も私が欲しい。
でもそれはダメだと我慢している。
我慢して、私に何かを与え続けていた。
私は私を欲しがるということをして欲しかった。
普通に与えてもらうだけじゃもう我慢できなくて。
奪われてみたくなった。
欲望に晒されてみたくなった。
壊されてみたくなった犯されてみたくなった。
やはり私は人を不幸にしかできないんだ。
でもそれでも、口では幸せになれと言いながら一緒に不幸になろうとしてくれるあなたの事を私は……
私の中に舌が入ってきて、私の舌を撫で回すように絡みつく。
やっていることはすごくイケナイことなのに、
その所作はいつも頭を撫でてくれる時のように優しいのが少しおかしかった。
でもそれはやっぱり心の何処かで私のことを子供としてしか見ていないからなのだろうか。
唇が離れる。
これでお終い?
そう思っていたら所長は私をだきかかえて向かい合うように座らせた。
もう一度彼の顔が近くまで迫ってくる。
悲しそうな瞳をしている。
こんな眼をする人なのだと何人が知っているのだろう。
少しだけ優越感だった。
私は彼が欲しい。
欲しくて欲しくて堪らない。
彼も私が欲しい。
でもそれはダメだと我慢している。
我慢して、私に何かを与え続けていた。
私は私を欲しがるということをして欲しかった。
普通に与えてもらうだけじゃもう我慢できなくて。
奪われてみたくなった。
欲望に晒されてみたくなった。
壊されてみたくなった犯されてみたくなった。
やはり私は人を不幸にしかできないんだ。
でもそれでも、口では幸せになれと言いながら一緒に不幸になろうとしてくれるあなたの事を私は……
「親父ー、久しぶりに遊びに…………。」
ガラスのコップが割れる音。
聞き覚えのある声、所長の息子で私のお兄さん的ポジションの明尊兄さんだ。
聞き覚えのある声、所長の息子で私のお兄さん的ポジションの明尊兄さんだ。
「うわやべっ。」
久々に所長が焦ってる。
仕事で野生の都市伝説百体以上に囲まれながら私を守りきった時以上に焦っている。
仕事で野生の都市伝説百体以上に囲まれながら私を守りきった時以上に焦っている。
「…………俺の、俺の家庭を壊すなああああああああ!」
明尊さんが悲鳴のような声をあげながら彼の契約する都市伝説の能力を発動する。
赤い光と共に彼の体は一瞬で伝説上の鎧である“日数”に身を包まれた。
伝承と違い流線的な形状をとっているのは高速移動に特化している為だ。
中身がもう少しオトナの余裕とか人間的魅力を持っていれば日曜朝七時半の正義の味方でもおかしくないのだが……
赤い光と共に彼の体は一瞬で伝説上の鎧である“日数”に身を包まれた。
伝承と違い流線的な形状をとっているのは高速移動に特化している為だ。
中身がもう少しオトナの余裕とか人間的魅力を持っていれば日曜朝七時半の正義の味方でもおかしくないのだが……
「うわああああああああああああ!」
私に向けて殴りかかってくる明尊兄さん。
養豚場の豚でも見るかの如き眼でそれを見つめている所長。
あえて言いたいのだが実の息子に向ける眼ではない。
養豚場の豚でも見るかの如き眼でそれを見つめている所長。
あえて言いたいのだが実の息子に向ける眼ではない。
「――――――――俺の女に手を出すな!」
先に言っておこう。
明尊兄さんの鎧は元来高速移動に長けた強化服みたいなものだ。
だからといって防御力が低いかというとまったくもってそんな事はない。
具体的に言うと手榴弾や拳銃弾くらいは楽勝で防ぐし、
アンチマテリアルライフルでも二発くらいまでなら中身は無傷だ。
だが
明尊兄さんの鎧は元来高速移動に長けた強化服みたいなものだ。
だからといって防御力が低いかというとまったくもってそんな事はない。
具体的に言うと手榴弾や拳銃弾くらいは楽勝で防ぐし、
アンチマテリアルライフルでも二発くらいまでなら中身は無傷だ。
だが
メゴッ
とでも形容するしかない音と同時に明尊兄さんは所長に殴り飛ばされていた。
先程まで装着していた筈の鎧が砕けて顔の一部が露になっている。
先程まで装着していた筈の鎧が砕けて顔の一部が露になっている。
「重みが無いんだよ、重みが。」
中学生男子にむけてヒドイ話だ。
「く……そっ!」
「お前の心が弱いから、お前が纏う鎧も弱くなる。
都市伝説の強さとはすなわち心の強さ、お前はお前を信じきれていないんだ。
自分の行動に微塵も疑うところが無いのならば俺の力で殴った程度ではその鎧は壊れん。
解ったらさっさと帰れ、これから先は大人の時間だ。」
「――――そこまでよ!」
「お前の心が弱いから、お前が纏う鎧も弱くなる。
都市伝説の強さとはすなわち心の強さ、お前はお前を信じきれていないんだ。
自分の行動に微塵も疑うところが無いのならば俺の力で殴った程度ではその鎧は壊れん。
解ったらさっさと帰れ、これから先は大人の時間だ。」
「――――そこまでよ!」
聞き覚えのある声、突如室内に風が吹き始める。
それに伴って割れたガラスの破片が明成さんに向けて殺到した。
私は咄嗟に爆風を起こして他所に破片を逸らす。
それに伴って割れたガラスの破片が明成さんに向けて殺到した。
私は咄嗟に爆風を起こして他所に破片を逸らす。
「誰!?誰なの!?」
この風を操る都市伝説に私は見覚えがある。
「スバルにも内緒で貴方のボスを探らせてもらっていたわ!」
「朔夜……ちゃん!」
「朔夜……ちゃん!」
そう、朝月朔夜だ。
彼女は箒を片手に威風堂々と事務所のど真ん中に立っていた。
やはりというかなんというか、私のような悪人にとって最悪のタイミングで現れる子である。
これも一種の才能だ。
彼女は箒を片手に威風堂々と事務所のど真ん中に立っていた。
やはりというかなんというか、私のような悪人にとって最悪のタイミングで現れる子である。
これも一種の才能だ。
「貴方が霙を操っていた悪の親玉ね!
しかもロリコンだったなんて許しがたいわ!
今日は私が貴方を成敗しちゃうんだから!」
「ゲゲッ!?」
しかもロリコンだったなんて許しがたいわ!
今日は私が貴方を成敗しちゃうんだから!」
「ゲゲッ!?」
所長が何時になく驚いている。
当然だ、実の娘からロリコン呼ばわりだ。
その心の傷たるや思わず私がケアしたくなるレベルに違いない。
当然だ、実の娘からロリコン呼ばわりだ。
その心の傷たるや思わず私がケアしたくなるレベルに違いない。
「必殺魔法!メーガスライド!」
箒の後ろで大量の風が渦巻いている。
おそらくあれを使って箒ごと体当りする気なのだろう。
おそらくあれを使って箒ごと体当りする気なのだろう。
「やめて!この人を傷つけないで!」
しかしその前に服に仕込んでいたビーズを爆弾に変えて朔夜の前で吹き飛ばす。
彼女には悪いが少し気絶しててもらおう。
どうせ都市伝説とのハーフだから丈夫だし。
彼女は華麗に吹っ飛んで明尊兄さんと同じ壁に叩きつけられた。
彼女には悪いが少し気絶しててもらおう。
どうせ都市伝説とのハーフだから丈夫だし。
彼女は華麗に吹っ飛んで明尊兄さんと同じ壁に叩きつけられた。
「やったか?」
実の息子と娘相手に『やったか?』とか言い出す親なんてこの世にいるのだろうか。
この人の子供じゃなくて良かったかもしれない。
この人の子供じゃなくて良かったかもしれない。
「やったかと言われて……。」
「やられる奴が居るか!」
「やられる奴が居るか!」
やだもうこの主人公体質共。
明尊兄さんも朔夜もなんでサクサク立ち上がっちゃうの?
明尊兄さんも朔夜もなんでサクサク立ち上がっちゃうの?
「あ、何時かの鎧の男。」
「あ、何時かの魔法少女。」
「敵は同じみたいね。」
「あ、何時かの魔法少女。」
「敵は同じみたいね。」
しかも共闘始めそうな雰囲気だし!
「どうだろうな、お互い少し狙いが違うぞ。」
「霙に意地悪したら許さないわよ。」
「一番悪いのはあいつだ、俺はあいつから潰す。
そこの男はただの色ボケした爺だ。そいつも俺が潰す。」
「そこの男がろくでもないのは同意だけど霙が悪ってどういうことよ?」
「あとから話す。」
「納得行かないわ。」
「霙に意地悪したら許さないわよ。」
「一番悪いのはあいつだ、俺はあいつから潰す。
そこの男はただの色ボケした爺だ。そいつも俺が潰す。」
「そこの男がろくでもないのは同意だけど霙が悪ってどういうことよ?」
「あとから話す。」
「納得行かないわ。」
即座にモメるし!
「おいおい、二人がかりでも色ボケした爺を倒せないと思うんだがどうなんだい?」
煽るし!
ろくな親じゃないって言ったけど訂正します。
この親にしてこの子ありです。
ろくな親じゃないって言ったけど訂正します。
この親にしてこの子ありです。
「来いよクソガキ共、大人の味を教えてやる。」
浮気現場抑えられて修羅場なだけなのに決めポーズ決めないでくださいよ……。
【不思議少女シルバームーン~第四話 第四章「かくて絶望の鐘は鳴る」~】
【不思議少女シルバームーン~第四話 第四章「かくて絶望の鐘は鳴る」~】
【不思議少女シルバームーン~第四話 第五章「あたしってほんとバカ」~】
「やってやるわ!」
「待てシルバームーン。」
「なによ?あんたも敵なんだからね!」
「そうじゃない、あの男は普通に攻撃しただけじゃダメージを与えられないんだよ。」
「待てシルバームーン。」
「なによ?あんたも敵なんだからね!」
「そうじゃない、あの男は普通に攻撃しただけじゃダメージを与えられないんだよ。」
妙なことになってしまった。
私に霙を刺客として差し向けた謎の男の正体を探っていたところ、
霙を敵として付け狙う赤い甲冑の男と、霙を操っているらしい白いスーツの男に出くわしてしまったのだ。
赤い甲冑の男は霙を狙い、私は黒幕っぽい男を狙い、霙は黒幕っぽい男を守り、黒幕っぽい男は霙を守っている。
とてつもなく訳の分からない状況だ。
私に霙を刺客として差し向けた謎の男の正体を探っていたところ、
霙を敵として付け狙う赤い甲冑の男と、霙を操っているらしい白いスーツの男に出くわしてしまったのだ。
赤い甲冑の男は霙を狙い、私は黒幕っぽい男を狙い、霙は黒幕っぽい男を守り、黒幕っぽい男は霙を守っている。
とてつもなく訳の分からない状況だ。
「なにこれ?なんでおーいお茶のペットボトルなの?」
「教会でもらった聖水だ。魔法少女だかなんだか知らんが触れるくらい大丈夫だろう?」
「まあそれくらい大した問題じゃないわ。」
「教会でもらった聖水だ。魔法少女だかなんだか知らんが触れるくらい大丈夫だろう?」
「まあそれくらい大した問題じゃないわ。」
一応目の前の男にかけてみる。
うん、毒薬じゃないらしい。
うん、毒薬じゃないらしい。
「てめえ!」
「よそ見してていいのかクソガキども。」
「よそ見してていいのかクソガキども。」
重たい金属音が鳴る。
白いスーツの男はいつの間にやら片手に小型の銃を持っていた。
撃つ気なのか。
屋内であんなもの撃つ気なのか。
白いスーツの男はいつの間にやら片手に小型の銃を持っていた。
撃つ気なのか。
屋内であんなもの撃つ気なのか。
「半人半魔のてめえらには丁度いいくらいだ。
霙、伏せてろ。」
「うっそ……!?」
「おい魔法少女、伏せてろ。」
霙、伏せてろ。」
「うっそ……!?」
「おい魔法少女、伏せてろ。」
鎧の男が咄嗟に私の前に立つ。
次の瞬間、鳴り響く銃声。
大量の弾丸が男の赤い甲冑にぶつかっては跳ね返る。
次の瞬間、鳴り響く銃声。
大量の弾丸が男の赤い甲冑にぶつかっては跳ね返る。
「一、二、その銃はフルバーストなら三秒が限界だ。弾切れだぜ。
まずはお前からだバカ親父!」
まずはお前からだバカ親父!」
銃声が止む。
それと同時に赤い甲冑の男はスーツの男に再び跳びかかる。
それと同時に赤い甲冑の男はスーツの男に再び跳びかかる。
「だからなんでお前はそうやって正直なんだろうかな?」
赤い影が空中に浮かんだ瞬間を狙い、男の手に握られた銃が再び火を噴く。
弾数を誤認させていたの?
弾数を誤認させていたの?
「うぉお!?」
貫通こそしていない物の強烈な衝撃を受けて空中で姿勢を崩す甲冑の男。
私はその隙にペットボトルの中の聖水とやらを男に向けて浴びせかけようとする。
液体による面の攻撃は回避がしづらい。
これでどのみち防御のためにあの男には隙ができる。
その隙に霙を連れて一旦逃げてしまえばこっちのものだ。
私はその行動を先読みして霙の居る位置まで一瞬で辿りつけるように箒を発進させる。
私はその隙にペットボトルの中の聖水とやらを男に向けて浴びせかけようとする。
液体による面の攻撃は回避がしづらい。
これでどのみち防御のためにあの男には隙ができる。
その隙に霙を連れて一旦逃げてしまえばこっちのものだ。
私はその行動を先読みして霙の居る位置まで一瞬で辿りつけるように箒を発進させる。
「動きが丸分かりなんだよ。」
「ひゃん!?」
「ひゃん!?」
男は開いた片手で咄嗟に霙の首根っこをつまみあげ、……霙を聖水から身を守るための盾にした!?
「ひ、ひどいです!」
「あとで新しい服買ってやるから許せ。」
「あとで新しい服買ってやるから許せ。」
私の進行方向から霙の存在を消しつつ自分も致命的な攻撃は防いだ!?
どんだけ戦い慣れているのよこの男!
どんだけ戦い慣れているのよこの男!
「おいおい、屋内で乗り物にのるなよ。」
あれ、いつの間に私こんな所に!?
まだ壁までは十分距離が……
まだ壁までは十分距離が……
「壁にぶつかるぜ。」
私は正面から壁に衝突してしまった。
「短い人生、そんなに急いで何処へ行く?」
霙を優しく抱き抱えながら床に下ろす男。
いちいち無駄に余裕を見せる態度が気に食わない。
なぜだか知らないがこの男の一挙手一投足に腹が立って仕方ないのだ。
いちいち無駄に余裕を見せる態度が気に食わない。
なぜだか知らないがこの男の一挙手一投足に腹が立って仕方ないのだ。
「とりあえず、あんたをぶちのめしてから考えてやる!」
甲冑の男が背後からスーツの男に踵落としを放つ。
「やっちゃえ!やっちゃえ!」
眼には確実にその踵落としが当たったように見えた。
が、おかしい。
床を砕く音しかしない。
が、おかしい。
床を砕く音しかしない。
「所詮、凡人だなあ我が子よ。」
「くそっ、離せ!」
「くそっ、離せ!」
いつの間にか赤い甲冑の男は顔面を掴まれたまま片手でスーツの男に持ち上げられていた。
「今なら素直に謝れば許してやる。」
「嫌だ。」
「その独善を我がエゴで罰しよう。」
「嫌だ。」
「その独善を我がエゴで罰しよう。」
再び気味の悪い機械音がする。
甲冑の男は派手に吹き飛ばされて天井にめり込んだ後、死んだカエルのような姿で床に落ちてきた。
甲冑の男は派手に吹き飛ばされて天井にめり込んだ後、死んだカエルのような姿で床に落ちてきた。
「ふん、他愛ない。」
うわ、こっち見るな。
「今のはパイルバンカーって奴でね。
最短距離最大威力の素敵な武器なんだ。
まあ近代兵器で武装した人間と戦う機会なんてないだろうから驚くのも仕方ないか。」
最短距離最大威力の素敵な武器なんだ。
まあ近代兵器で武装した人間と戦う機会なんてないだろうから驚くのも仕方ないか。」
男が首をコキリと鳴らす。
「さあ、かかってこいよ。独善者B。」
男が言い終わる前に箒に風をまとわせて男に殴りかかる。
霙を庇いながらだというのにゆらりぬらりと捉えどころのない動きでまるで攻撃が当たらない。
霙を庇いながらだというのにゆらりぬらりと捉えどころのない動きでまるで攻撃が当たらない。
「なんで霙に私を襲わせたのよ!」
「俺の好奇心。」
「なんで霙があなたみたいな悪いヤツの指示に従ってるのよ!」
「金で雇われてるんだ。これ以上は霙から聞いてくれ。」
「霙!あなたさっきみたいなことされて嫌じゃないの!?
なにか困ってることがあるなら……」
「ごめん朔夜ちゃん、……こればかりは関わってこないで。
今逃げれば所長も許してくれるから……。」
「逃げてと言われて逃げるなんてことしないわよ!
助けてって言ってよ!友達じゃなかったの?」
「俺の好奇心。」
「なんで霙があなたみたいな悪いヤツの指示に従ってるのよ!」
「金で雇われてるんだ。これ以上は霙から聞いてくれ。」
「霙!あなたさっきみたいなことされて嫌じゃないの!?
なにか困ってることがあるなら……」
「ごめん朔夜ちゃん、……こればかりは関わってこないで。
今逃げれば所長も許してくれるから……。」
「逃げてと言われて逃げるなんてことしないわよ!
助けてって言ってよ!友達じゃなかったの?」
しばらくの間をおいた後、霙は堰を切ったようにしゃべり始めた。
「朔夜ちゃん、私、この人のことが好きなんだ。愛しちゃってるんだ。
この人の側に居るだけで良いの、もう救われているの、だから邪魔しないで。
朔夜ちゃんから見たら間違ってるし、悪だと思う。
年上の、家庭を持っている人を好きになっているんだもん。
でもね、この気持が悪だって言うなら私は悪で構わない。
助けてなんて言わない。
倒したいなら倒せばいい。
私は今あなたの嫌いな悪人よ、そもそも悪人の両親から生まれてろくでもない生き方しかできなかった人間よ。
知ってる?私の本当の両親って都市伝説使ってケチな商売してたら見つかって所長に始末されちゃったんだ。
親無くして、その親が犯罪者だった子供の扱いなんてアナタにはきっと想像もつかないわよね。
ええ、私なんて生まれながらに貴方に倒されるべき存在よ。弱いから悪でいることしかできなかった人間よ。
あなたが正義を名乗るたびに、嫌じゃなかったけど、むしろあたたかい気持ちになれたけど、眩しかった。
やっぱり悪にしかなれない人間(ワタシ)は正義を掲げる化物(アナタ)になれない。
弱くても愚かでも醜くても人を犠牲にしてでも私は所長に助けてもらえる、愛してもらえる人間でいたい。
拾ってくれた、人間として扱ってくれた、無償の愛をくれたこの人の為に生きていたいの。」
この人の側に居るだけで良いの、もう救われているの、だから邪魔しないで。
朔夜ちゃんから見たら間違ってるし、悪だと思う。
年上の、家庭を持っている人を好きになっているんだもん。
でもね、この気持が悪だって言うなら私は悪で構わない。
助けてなんて言わない。
倒したいなら倒せばいい。
私は今あなたの嫌いな悪人よ、そもそも悪人の両親から生まれてろくでもない生き方しかできなかった人間よ。
知ってる?私の本当の両親って都市伝説使ってケチな商売してたら見つかって所長に始末されちゃったんだ。
親無くして、その親が犯罪者だった子供の扱いなんてアナタにはきっと想像もつかないわよね。
ええ、私なんて生まれながらに貴方に倒されるべき存在よ。弱いから悪でいることしかできなかった人間よ。
あなたが正義を名乗るたびに、嫌じゃなかったけど、むしろあたたかい気持ちになれたけど、眩しかった。
やっぱり悪にしかなれない人間(ワタシ)は正義を掲げる化物(アナタ)になれない。
弱くても愚かでも醜くても人を犠牲にしてでも私は所長に助けてもらえる、愛してもらえる人間でいたい。
拾ってくれた、人間として扱ってくれた、無償の愛をくれたこの人の為に生きていたいの。」
何を言っているのか訳がわからない。
「所長は私にご飯つくってくれた、温かい布団とかベッドを用意してくれた、
学校に行かせてくれた、塾の勉強まで教えてくれる。
私みたいな人間に、これがどれだけ嬉しいことかきっと……。」
「それがどうした!」
学校に行かせてくれた、塾の勉強まで教えてくれる。
私みたいな人間に、これがどれだけ嬉しいことかきっと……。」
「それがどうした!」
白いスーツの男の顔が意地悪そうに歪む。
笑っているのか?
笑っているのか?
誰を?
背中に硬い感触。
私の背後にはいつの間にか赤い影が再び立っていた。
笑っているのか?
笑っているのか?
誰を?
背中に硬い感触。
私の背後にはいつの間にか赤い影が再び立っていた。
「だからなんだって言うんだよ!それとこれとは別だ!」
「そうよ、そうだとしても霙は間違ってるよ!」
「霙、俺から普通の家族を奪うな!」
「そうよね、明尊兄さんにはわからないんだわ。」
「そうよ、そうだとしても霙は間違ってるよ!」
「霙、俺から普通の家族を奪うな!」
「そうよね、明尊兄さんにはわからないんだわ。」
「普通、なあ。俺の一番嫌いな言葉だ。」
男が低く艶やかな声をあげる。
「おいお前ら、何か勘違いしていないか。
今、誰かの愛情を受けていることが普通のコトだと思っていないか?
無償の愛情なんてもの、特別の中でも最たる物なんだ。
お前ら幸せに生まれて幸せに生きてきた子供はそんなこと知らないんだろうけどさ。
だから無償の愛情を踏みにじる。
平気で、残酷に、踏みにじる。
それがお前らが幸せな人間と呼ばれる理由なんだ。
幸福な人間は平気で無償の愛を忘れる。
幸福な人間は残酷な人間なんだ。
霙は愛が無償じゃないことを知っているんだよ。
それだけで、昔は悪魔と呼ばれた筈の俺は泣きそうになったね。
この年で、明尊、お前よりも幼いこの年でだ。
だからせめて俺だけは目の前のこの可哀想な子に何かしてやりたいと思ったんだ。」
「その結果がさっきのあれかよ。」
「彼女が望むならそうしよう。」
「哀れみは愛じゃない。」
「哀れみと愛は共存する。共存して最後は愛に塗りつぶされる。」
「こんなの絶対おかしいよ……。」
「まともな環境で生きてこられた人間の贅沢を押し付けるな。
日曜朝の番組を見られない人間のほうが世の中多いんだぜ?」
「あんたは目の前に可哀想な人間がいたら救い続けるのかよ?
そんなんじゃ何時か限界を迎えるだろうが、おかしいよあんたは。」
「一人で他人の生殺与奪を決めるなんて神様のつもりなの?楽しいの?」
今、誰かの愛情を受けていることが普通のコトだと思っていないか?
無償の愛情なんてもの、特別の中でも最たる物なんだ。
お前ら幸せに生まれて幸せに生きてきた子供はそんなこと知らないんだろうけどさ。
だから無償の愛情を踏みにじる。
平気で、残酷に、踏みにじる。
それがお前らが幸せな人間と呼ばれる理由なんだ。
幸福な人間は平気で無償の愛を忘れる。
幸福な人間は残酷な人間なんだ。
霙は愛が無償じゃないことを知っているんだよ。
それだけで、昔は悪魔と呼ばれた筈の俺は泣きそうになったね。
この年で、明尊、お前よりも幼いこの年でだ。
だからせめて俺だけは目の前のこの可哀想な子に何かしてやりたいと思ったんだ。」
「その結果がさっきのあれかよ。」
「彼女が望むならそうしよう。」
「哀れみは愛じゃない。」
「哀れみと愛は共存する。共存して最後は愛に塗りつぶされる。」
「こんなの絶対おかしいよ……。」
「まともな環境で生きてこられた人間の贅沢を押し付けるな。
日曜朝の番組を見られない人間のほうが世の中多いんだぜ?」
「あんたは目の前に可哀想な人間がいたら救い続けるのかよ?
そんなんじゃ何時か限界を迎えるだろうが、おかしいよあんたは。」
「一人で他人の生殺与奪を決めるなんて神様のつもりなの?楽しいの?」
「救えない未来がそこにあったとして、見過ごせない今を見過ごす理由にはならない。」
一歩、また一歩男が歩いて来る。
何故だろう、怖い。
こんな怖い思いをしたことなんてなかった。
なんでこんな悪の権化のような男がまるで正義の味方のような台詞を言っているの?
何故だろう、怖い。
こんな怖い思いをしたことなんてなかった。
なんでこんな悪の権化のような男がまるで正義の味方のような台詞を言っているの?
「おい、妻子ある身分で小学生に手を出した屑野郎にこんなこと言わせてどうする。」
なんでこの男はここまでぶれないの?
自らのやりたいと望んだことを押し通せるの?
例えるなら意思だ。
意思が人の皮をかぶって歩いてきている。
自らのやりたいと望んだことを押し通せるの?
例えるなら意思だ。
意思が人の皮をかぶって歩いてきている。
「ほら殴れよ、さっきみたく。正義の味方だろ?悪人はここにいる。
お前らには殺されても俺は文句を言えない。
やってもいいんだぜ?精一杯抵抗するけどな。
俺が守るべきものを、俺みたいな男でも守らねばいけないものを、守らなくてはいけない。
そのためならば俺は何処まででも悪になれる。
間違ってようと狂ってようと誤っていようと終わっていようと。
俺が俺であるために俺は俺の意思を以てお前らに敵対し、とびきり不幸だったこの娘を守る。
お前らみたいに幸福な人間と違ってこの子を守れるのは俺だけだ。
俺は半端な情けなんてかけないぞ。」
お前らには殺されても俺は文句を言えない。
やってもいいんだぜ?精一杯抵抗するけどな。
俺が守るべきものを、俺みたいな男でも守らねばいけないものを、守らなくてはいけない。
そのためならば俺は何処まででも悪になれる。
間違ってようと狂ってようと誤っていようと終わっていようと。
俺が俺であるために俺は俺の意思を以てお前らに敵対し、とびきり不幸だったこの娘を守る。
お前らみたいに幸福な人間と違ってこの子を守れるのは俺だけだ。
俺は半端な情けなんてかけないぞ。」
体がすくんで動かない。
もはや老いていくばかりにしか見えない男一人に何故ここまで恐怖しているの?
もはや老いていくばかりにしか見えない男一人に何故ここまで恐怖しているの?
「俺は霙を愛している。そして母さんも愛している。友はまあ……愛しているとか言うとまた面倒になる関係なんだ。
文句は無いだろう?」
「エゴだよそれは。文句しかない。」
「エゴだよこれは。嫌ならねじ伏せてみせろ。」
「でも……。」
「俺から見ればお前の行動こそエゴだよ。
善人面して、正常面して、自分のエゴと大多数の人間のエゴをすり替えて、
数の力で自分を支えて一丁前に反抗して。
だからお前は脆くて軽くて弱いんだ。」
「ねえ霙……。」
文句は無いだろう?」
「エゴだよそれは。文句しかない。」
「エゴだよこれは。嫌ならねじ伏せてみせろ。」
「でも……。」
「俺から見ればお前の行動こそエゴだよ。
善人面して、正常面して、自分のエゴと大多数の人間のエゴをすり替えて、
数の力で自分を支えて一丁前に反抗して。
だからお前は脆くて軽くて弱いんだ。」
「ねえ霙……。」
私は間違っていたというの?
「…………。」
彼女は私の方を見ずに男の背中に隠れたままだった。
私を見てはくれなかった。
私を見てはくれなかった。
霙の気持ちが私には良く分からない。
分からない。
助けたいのに、邪魔なのかな私。
助けたいのに、邪魔なんだな私。
もう助かっているものは助けられない。
霙はもう助かっていたの?
私が私の価値観を押し付けていたの?
正義なんて調子にのって
霙の心の傷口をえぐって
それで友達面して
だとしたら
そうだとしたら
私を見てはくれなかった。
私を見てはくれなかった。
霙の気持ちが私には良く分からない。
分からない。
助けたいのに、邪魔なのかな私。
助けたいのに、邪魔なんだな私。
もう助かっているものは助けられない。
霙はもう助かっていたの?
私が私の価値観を押し付けていたの?
正義なんて調子にのって
霙の心の傷口をえぐって
それで友達面して
だとしたら
そうだとしたら
「あたしって、ほんとバカ」
只の正義感だけで人は救えないんだね。
意識が真っ白に塗りつぶされていった。
意識が真っ白に塗りつぶされていった。
ごめんなさい
【不思議少女シルバームーン~第四話 第五章「あたしって、ほんとバカ」~】
【不思議少女シルバームーン~第四話 第五章「あたしって、ほんとバカ」~】