「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 那由多斬-10

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一閃

一閃

また一閃

「っく・・・懲りないね君も」
「お互い様だろ? いい加減、成仏しちまえ!!」

黒と金の鎌が交差する
X字を描くように振るわれた2つの刃を、小柄な少年は背後に跳び退いた

空は明るいが既に酉の刻を過ぎた街角だった
少年に憑依していたナユタが「神出鬼没」によってその姿と気配を殺しながら、
次の獲物を求めて徘徊していたところ、
偶然にも裂邪と鉢合わせになり、そのまま戦闘に突入したのだ
裂邪自身、ローゼと協力体制を取っている程にナユタを狙っていたのだが、
この出会いは、彼にとっては大きな誤算だった

(くっそ、常に気配を探っておけばよかったか!?
  ローゼちゃんに連絡したいけど、なかなか手が空きそうにねぇな・・・!)

以前は「シャドーマン」の異空間に引きずり込み、ナユタの能力を抑制することで有利に運んだが、
あの能力は同一の敵には1度しか使用できない為に、同じ手は食わない状況だ
それに、ローゼと2人で挑んだ時でさえ苦戦した相手である
裂邪だけで敵う相手であるとはお世辞にも言えない
ミナワ達を呼ぶという選択肢もあるが、今までの経験から、逆上して『ラグナロク』を使ってしまう場合がある
そうなると、繋がりが切れかけて隙だらけになった彼女達が狙われる可能性も低くない
思考を繰り返しながら、彼は小さく舌を打った

「ギハハハハハ、どうしたの? 一人じゃ何にもできないんだ、ねぇっ!!」

ナユタが「ティルヴィング」を振るう
その一太刀を「レイヴァテイン」で防ぎ、代わりに裂邪は『シャドーサイス』で斬り裂こうとする
が、ナユタは金の鎌を弾くことで大きく背後に跳んだ

「馬鹿野郎、俺は一人なんかじゃねぇ! 俺には大切な仲間が・・・家族がちゃんとついてくれてんだ!!」

離れた位置にいるナユタに向けて、裂邪は勢い良く金色の鎌を振るった
斬撃が大地を抉りながら、真っ直ぐに少年の方へ飛んでゆく
だが、その攻撃を受けたのは少年ではなく、紫の炎だった
「レイヴァテイン」の斬撃は炎に触れた瞬間、壁にぶつかったかのように四方八方へ飛散する
轟々と燃える怪しい炎の中から小さな人影が出てくると、炎は何事もなかったかのように消えた

「家族、ね・・・下らない、気に入らない。その塵芥(ゴミ)特有の考え方が愚かしくて堪らないね」
「何とでも言え。お前には一生分からないだろうからな
  寧ろ分かる前に存在を消してやるぜ・・・シェイドぉ! 『シャドーズ・アスガルド』!!」
「了解シタ」

裂邪の右手の黒い鎌が、形を失い影に溶ける
そして、影から伸びた無数の腕が彼の身体を包み込んだ
長い触角、黒い4枚の翅、鋭い手足の爪、紅く輝く眼

「ん?・・・へぇ、そんなこともできたんだ」
「まぁな。今度こそ、お前を消せるように・・・俺、君臨!!」
「ッギハハハハハ! 楽しそうだね、やってごらんよ!!」

互いに距離を一気に詰め、刃が交錯した

「レイヴァテイン」と「ティルヴィング」
北欧神話に語られる武器同士が火花を散らし、激しくぶつかり合う
互角とも言える戦いだが、僅かばかりナユタが押されていた

「ッ、なるほど、変わったのは外見だけじゃなさそうだね」
「当たり前だ! 「シャドーマン」達を直接纏ったからな!
  人間に憑依しただけのお前が、力で俺に勝てる訳がないだろ!!」

力を篭め、裂邪は黄金の刃の鎌をナユタの黄金の柄の剣に強く叩きつけた
ナユタが利用している身体は裂邪よりもかなり年下の少年の物だったが故に、僅かに隙が出来てしまった
その機を逃す程、裂邪も馬鹿ではない

「――――――――っか、は・・・!?」

少年の腹部に、黒い足がめり込んだ
小柄なその身体は、蹴られた勢いでボールのように飛んでいった
空中で身を翻し、着地する寸前に剣をアスファルトに突き立てて態勢を立て直すナユタ
よろめく身体を支え、乱暴に口元を拭う
それでも、彼は笑っていた

「・・・何が可笑しい?」
「何がって、全てだよ。君のその姿、その力。そして君がしつこく僕をつけ狙う意味
  何もかもが可笑しくて愚かしくてね・・・ギハハハハハハハ」

それと、と彼は付け加え、同時に突き立てた「ティルヴィング」を引き抜き、歩み寄る

「「シャドーマン」は“影”だよね? なら“光”を当てるとどうなるのかな?」

白銀の切っ先を天に向けた瞬間、刀身が眩く煌めいた
「まさかっ!?」と言った時は既に遅かった
「エルクレスの塔」――簡易縮小版「アレキサンドリアの大灯台」の熱線が放たれた
その白い閃光は、裂邪を纏う黒い鎧を、まるで汚れを落とすかのように払い除け、
彼の腹を容赦なく貫いた

「っあ゙あぁ!?」
「さっきのお返しだよ」

血と肉の焼き焦げた臭いが漂う
多量の血を吐き出しながら、裂邪は撃たれた己の腹部を押さえた
ぽっかりと穴の空いた腹からは、生焼けになった内臓が今にも零れそうになっていた

「んっにゃろぉ・・・弱点突いて、くるとはな・・・」

「シャドーマン」のシェイドは、裂邪との契約によって“光”への耐性を手に入れた
だが、ナユタが放ったような“強過ぎる光”だと話は別だ
太陽光をレンズで凝縮したような光を浴びると、流石にシェイドもその姿を留めるのは困難になる
それを知ってか知らずか、ナユタは「エルクレスの塔」を発動したのだ

「相手の弱みを握るのは殺しの基本でしょ? この間君が僕にやったようにね・・・
  あぁそうだ、前回のお礼もしてあげないと」

立ったまま動けぬ裂邪の目の前に立ち、
薄らと笑みを浮かべ、「ティルヴィング」を振るった

「――――――――――――――ッ!?」

どさり、音を立てて裂邪の身体が崩れ落ちた
突然の激痛に、彼は咄嗟に“左足のあった場所”を触れた
太腿の中程から、彼の左足がすっぱりと斬られており、傍に力無くそれは転がっていた

「て、めぇ・・・このズボン、気に入ってた、んだぞ・・・」
「ギハハハハハ! 良い気味だねぇ!! 今度は右足かな・・・いいや、右腕かな?」
「っぁ!?」

仰向けに倒れている裂邪の右肩を、「ティルヴィング」が貫通した
鮮血が、アスファルトを真っ赤に染め上げる

「ただ斬るだけじゃダメだね・・・このまま一気に引き千切っちゃおうか
  その方がきっと痛いと思わない?
  君には散々邪魔されてきたから、ゆっくり殺してあげるよ・・・苦しんで死ね、ギハハハハハハハハ!!」

剣を持つ手に、力を入れた直後だった

「っ消える、のは、お前だ!!!」

残った左腕を使って、「レイヴァテイン」の鎌を思い切り振るう
甲高くも鈍い金属音と共に、「ティルヴィング」の刃とぶつかると、
その秀麗な刃は、脆くもぱきん、と2つに折れた
刹那に、異変は起こる

「っな・・・あ、ぅ、あ、ああああああ゙ぁっ!?」

頭を抱え、少年は苦しげに叫び声をあげる
ちいさな身体から、仄かに紫色の煙のようなものが溢れ、立ち昇る
にぃっ、と裂邪の顔に笑みが生まれた

「ヒハ、ハハハハ・・・「ティルヴィング」、ぶっ壊して、やったぜ・・・
  これ、で・・・お前も、お終い、だ――――――――――――」
「ふざけるな! こんなところで・・・終わるものか!!」

刃の消えた剣を構え、ナユタは狂ったように叫んだ

「“剣よ!! 本来の姿を想起し、ここに再び顕現せよ!!!”」

願いを唱え終えると、失った刃を補うかのように光が集い、
それは「ティルヴィング」の刃として、その形を取った

「ッバカな!? んな、ことがあって――――――」

ざく、と裂邪の右腕が斬り落とされた
続いて、風穴に重ねて腹部を横一文字に斬り裂く
またも紅い血が飛び出たが、あまりの痛みに声は出なかった

「もう、どうでもいい・・・君が苦しもうが楽しもうが、ここで完全に仕留めてあげるよ!!」

ナユタは怒りに任せ、「ティルヴィング」を振り上げ、
裂邪の心臓を狙い、真っ直ぐに刃を突き立てた
眼前にまで迫りくる刃
裂邪ははっきりと、己の死を覚悟した





“第三者”の介入があるまでは





「――――――――――っぐぅ!?」

背後から横っ腹に蹴りを入れられ、短く呻き声をあげて飛ばされ、倒れる
直ぐにナユタは「ティルヴィング」を杖のように扱って早々に立ち上がった

「ちっ、また邪魔が入ったか―――――――ッ!?」

ナユタの目の前、裂邪を守るようにそこに存在していたものを見て、彼は目を見張った
裂邪も、その光景に、血を零しながらも呟いた

「・・・星、か?」

真っ赤に輝く、人間大の光球
蠍座の心臓アンタレスのような輝きを放つそれは、その強い光を次第に弱めていく
そうすることで、ようやくその正体が分かった

「ロー、ゼ・・・ちゃん・・・?」
「ほぅ・・・「組織」の『赤い幼星』か」

真っ赤な長い髪、幼い容姿に合わない黒いスーツ
燃え滾る焔の如く瞳を光らせ、彼女は―――ローゼ・ラインハルトはそこに立っていた
強く、ナユタを睨み、ようやく口を開く

「これ以上、貴方の好きにはさせませんわ。大人しくしてなさい」
「大人しく? 何を言い出すかと思えば、僕がそんなこと受け入れるとでも思ってるのかな?
  もう少しでそのしつこい塵芥を切り捨てられるんだ
  どうしてもというのなら、君諸共この場で葬り去ってあげるけd」
「そう、なら手加減は致しませんわ」

瞬きすら許されなかった
紅光を纏うローゼの腕がナユタの頭を掴み、地面に叩きつけた

「がぁっ・・・!?」
「二度とその減らず口が叩けないよう、お仕置きして差し上げますわ!!」

掴んだままナユタを宙に放り投げると同時に、くるりと身体を一回転させて再び蹴りを狙う
来るその一撃を、ナユタは「ティルヴィング」の刃を以て防いだ
しかし、彼がいたのは空中
衝撃だけをもろに受け、小さな身体はそのまま飛ばされて壁に激突した
小さな声が、僅かに漏れて聞こえる
たらり、頭から首筋を伝って血が流れる

「っこ、こんな・・・以前とはまるで別人だ・・・?
  だけど、僕だってやられてばかりではつまらないからね!」

刀身に光を集め、ローゼに向けて熱光線を放った
闇を祓う純白の閃光は、少女の身体を焼き焦がさんとする

「『フォトン・ストリーム』!!」

対するローゼは、両掌から赤い光条を放ち、閃光を抑えた
いや、抑えるどころではない
圧倒的な力で、徐々に、そして一気にナユタの光を押してゆく

「―――っちぃ! 「ヴァルプルギスの夜」!」

自分の身体に命中するギリギリで、ナユタは紫の炎を発生させる
己に向けられた、あらゆる“悪意”や“殺意”を持った攻撃を無力化する「ヴァルプルギスの夜」
揺らめく炎の壁によって赤い光条を阻止すると、
直ぐに炎を消し、「ティルヴィング」を構えて攻撃態勢に移った

「なかなかに、手強いね・・・けど調子に乗ってもらっては困る――――――――」

ちくり
微かな、痛みとも言い難い感覚を、不意にナユタは感じ取る
小さな痛みを感じた腕にそっと触れる
異変は、ないようだ

「・・・何だ?」

だがそれはまだ序章に過ぎなかった
ちくり、ちくり、ちくりちくりちくりちくりちくりちくり
細い針で刺されたような痛みが、無数に襲いかかる
攻撃が来たのなら、本来は躱せば良い話である
ところが、ナユタにはそれができなかった
理由は簡単である
“攻撃が見えなかった”のだ

「ど、どこから、攻撃が・・・?」
「見える訳ありませんわ、都市伝説とはいえ、その身体はただの人間ですもの」
「それはどういうことだ?」
「今から教えて差し上げますわ!」

ローゼが宣言した直後、ようやくナユタの身体に変化が現れた
熱い
身体中が、焼けるように熱い
正確には『ように』ではなく、真の意味で『焼かれ』ている
ナユタの身体の至る所に、黒く焦げた個所が幾つも出来ていた

「ッ!? なっ・・・何だこれは!?」

その様子を、辛うじて見ていた裂邪も、驚きを隠せなかった
見えない何かによって身を焼かれてゆくナユタの様子より、それを引き起こしている元凶に、だ

「う、そだろ・・・やめろ、ローゼちゃ・・・」

声はローゼには届かない
見る見る焦げ痕が増え始める少年を、ローゼは胸倉を掴んで壁に押さえつける
何とか抜け出そうとするナユタだったが、身長と体力が無く、抜けるに抜けられない
もがくナユタを差し置いて、ローゼは彼を掴んでいる手に赤い光を溜める
次第にそれは周囲に赤い稲妻を撒き散らした

「これまで、多くの人間を殺し、裂邪さんまで傷つけるなんて・・・
  貴方を許してはおけません! ここで、貴方は終わりですわ!!」
「待・・・て・・・ガハッ、放・・・せ・・・」
「そうやって命乞いをしてきた人間を、貴方は気にもせずに、
  それこそゴミを捨てる程度にしか考えもせずに殺し続けたのでしょう!?
  なのに、どうして今ワタクシに命乞いをなさるの?
  貴方にも命が惜しいという気持ちがあるなら、どうして今までその命を無駄に消し続けてきたというの!?
  貴方は、ずっと・・・家族や、大切な人の笑顔を、奪い続けて・・・!!!」

赤い稲光が瞬き、赤い雷がうねる
ナユタがいよいよ、苦しげな声をあげ始めた

「貴方のような悪魔は・・・この世から、消えて無くなってしまえばいいのよぉ!!!!」
「目を覚ませ!!」

ぴたり、ローゼの動きが止まり、赤い光が弱まった
左腕の肘、右足の膝、そして槍状になった「レイヴァテイン」で何とか身体を支えながら、
裂邪はゆっくりと、その身体を起こし、口からも腹からも血を吐き出しながら、言葉を紡ぐ

「ケホッ・・・ローゼ、ちゃん・・・君が、今、ここで殺そうとしてるのは・・・“ナユタじゃない”
  ナユタに乗っ取られた、何の罪もない子供だ
  その子を、殺せば・・・君も、その馬鹿と同rオ゙エッ・・・同類に、なっちまうだろ・・・
  気持ち、は、分かるよ・・・でも、もう・・・やめて、くれ・・・」

言葉が止まった瞬間、彼女の手の力が抜け、そこから咄嗟にナユタは脱出すると、
「ティルヴィング」に自らの身体の傷を治させた
きっ、とローゼと裂邪を睨むと、ナユタは、

「・・・ギハハハ、愚かだ、本当に愚かだよ君達塵芥は
  君達が殺さなくとも、結局は助けられずに消える命じゃないか
  そうやって命が大切だとほざく鬱陶しい塵芥にはうんざりだ
  ・・・だけど、今は分が悪い・・・次こそは必ず、君達を切り捨ててみせる!」

捨て台詞を吐いて、ナユタは忽然と姿を消した
それに代わるかのように、ローゼを纏っていた強く赤い光も消え、
そして彼女は力尽きた様に、ふらりと倒れた

「っシェイド!!」

裂邪の影から無数の腕が伸び、倒れる少女の身体を支えた

「・・・安心シロ、気ヲ失ッテイルダケダ」
「そう、か・・・良かった」
「ソレヨリ、先程ハ済マナカッタ・・・私ノ力量不足ダ」
「ッハハ、らしく、ねぇな・・・ゲフッ、っと、そんなことは、良いからよ」

裂邪はちら、と右のズボンのポケットを目で示した

「右手がないから、携帯が取れなくて、な・・・取ってくれない、か?」

   ...続

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