「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 魔法少女銀河-08

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【不思議少女シルバームーン~第五話 第五章「正義の味方と正義の味方」~】

「うわーすごい!」
「でしょ?チケット用意した甲斐があったぜ。」

 とまあそういうわけで最近塞ぎこみな朔夜を水族館に連れてきてみた。
 学校町にあるこの水族館は日本一イルカが多いことで有名なのだ。
 まあなんだかんだでイイトコのお嬢様であらせられる彼女は庶民の楽しみには意外と疎くて、
 水族館やら遊園地やらに行ったことがないらしいのだ。
 ヨツバさんも(残念ながら)僕達二人を快く送り出してくれたので、
 今はこうして水族館を色々見て回っている。
 いやーヨツバさんと水族館行きたかった。
 あんな美人なお姉さんと二人でデートなんて考えただけで心がはずむぜ。
 ランチは二人で洒落たレストランなんかに行ったりして、
 『あら、口にソースついているわよ?』
 とかいって拭いてもらっちゃったりして
 うひょう!たまんねえや!
 オラテンション上がってきたぞ!

「スバルスバルーイルカショーまであとどれくらい?」
「えーっと、あと二十分はあるね。」

 しかしまあ現実はツルペタでウルサイ只の友人との普通の休日である。
 できれば霙ちゃんくらいのおっぱいのある子と遊園地にでも行って
 『キャー!こわぁ~い!』
 とか叫んじゃう霙ちゃんにお化け屋敷で抱きつかれたい。
 普段は喋らないいし喋ると止まらない彼女もそこでは普通の女の子だ。
 無論、おっぱい以外。
 あれ絶対誰か揉んでる奴居るだろう。
 誰か揉まないとあそこまで成長しないから。
 まったくもって羨ましい奴だ。
 ん、待てよ? 
 つまり彼女にはすでに彼氏が居る……
 うわあああああああああああああああ!
 くそっ!くそっ!死ね!くたばれ!くたばっちまえ!
 人類の宝を一人で独占しやがってどこの悪魔だ!
 いや、待てよ。
 もしかしたら女の子に揉まれているのか?
 するとそれは即ち“男子禁制百合色庭園(イマジナリリーユートゥーピュア)”の顕現に他ならない……!

「じゃあ仕方ないわね、もう一度ナマココーナー行きましょう。」
「好きだねナマコ。」
「今度生まれ変わるならナマコにでもなろうかしらね。」
「この年でそんな事言うなんて生意気だこと。」
「おばあちゃまのマネ?そっくりね。」

 まあ確かに他人の声マネは得意である。
 昔ちょっと事情があって練習したのだ。

「バカにしないでよ!」

 パチン、と小気味いい音が水族館に木霊する。
 なかなか上等なスーツを着たイケメンのお兄さんが若いお姉さんに派手にビンタを食らっていた。
 ……ってあれ?
 あのイケメンのお兄さん……彼誰飯店で良く会うホストのお兄さんじゃないか。
 大変そうだなあ。

「ま、待ってよミホちゃん!こないだのことは謝るからぁ~!」
「ウルサイわね!付いてこないで!」
「そんなぁ!悪かったと……」

 二発目。
 左右の頬に真っ赤な痣ができている。
 イケメンのお兄さんが悲鳴を上げてうずくまる。
 その間に女性はどこかに行ってしまった。
 騒ぎを見ていた人たちは何事もなかったかのように動き始める。

「いてててて……。」
「大丈夫ですかおにいさん。」

 とりあえず声をかけてみる。

「ん、大丈夫大丈夫慣れているから。
 …………あれ?」

 向こうも気づいたようだ。

「少年、こんな所でなにしてるんだ?」

 彼は朔夜の方をチラリと見ると納得したかのように頷いて

「なるほどなるほど……彼女か。
 最近の小学生はませているな。」
「いえいえ、違いますよ。只の友達です。」
「スバルー、その人知り合いなの?」
「うん、この人は……。」
「久慈灸、この町のホストクラブでホストやってるの。
 お嬢ちゃんも大きくなったらたまに遊びに来てね。
 はいこれ名刺。それまでに自分の店持てるように頑張るからさ。」
「え、はあ……。
 あれ?この名刺名前間違えてますよ?」
「ああ、そっちは源氏名って言って芸名みたいなものなの。」
「へぇー……。」

 小学生相手に宣伝とは悲しすぎるぞお兄さん。
 ていうか初めてこの人の本名聞いた気がするな。

「朔夜、その人はあれだぞ。
 夜はホスト、昼は正義の味方、その正体は学校町中、否、日本中のチャーハンを食べ歩くチャーハンマニアなんだ。」
「正義の……味方?」

 朔夜が鼻で笑う。
 その理由を彼女がませた子供だからと捉えた灸さんは真面目な顔で語り始める。

「おいおい、男の子の夢だぜ?
 変身!とか合体!とか。
 しかも誰かを守ることまでできるんだから素晴らしいじゃないか。
 夜は女性の夢を守り、昼は子供たちの夢を守っているわけだ。
 女子供に優しい灸ちゃん素敵ー!」
「灸さん普段はウザキャラなんですね。」
「ひ、ひどい!?
 まあ良いや、朔夜ちゃん、君も何時か解るぜ。
 そういうガキ臭い思い出とか夢とか理想とかがさ。
 真っ暗闇の中で一番輝いてくれるんだ。
 持ってた物全部無くなったと思った時、そういう夢とか理想は意外と残っている物なんだよ。」

 あら、朔夜ちゃんの表情が曇ってらっしゃる。
 これは話題変えたほうが良いかな。

「ま、まあその話はそこらへんにして!
 俺たちこれからイルカショー観に行くんですよ!」
「ああ……俺もちょうど見に行く予定だったよ……。」

 灸さんの胸ポケットから出てくる二枚のチケット。
 ……あまりに哀れだった。

「売り物の顔までボロボロにされるしさ……。
 夜までに治るかなこれ……。」

 重ねて言う、あまりに哀れだった。
 そんな彼の姿を見て朔夜がクスクスと笑っている。

「宜しかったら私たちと一緒に見ませんか、イルカショー。」

 隊長、朔夜が陥落しました。
 すげえ、すげえよ。至って自然な流れで誘われたぞ灸さん!?
 プロ、これプロの手口だよ!
 いや彼はプロだけどさ。

「良いのかい?二人の時間を邪魔しちゃうのも悪いと思ったけど……。」
「構いませんよ、あくまで私たち只の友達ですし。」
「そっかー、じゃあそうさせてもらおうかな。
 時に二人ともお昼は決まっているか?」
「いえ」
「まだですね」
「じゃあちょうど海の見えるレストランの席を予約してたんだ。
 俺が奢ってやるから食っていこうぜ。」
「良いんですか?」
「ああ、お嬢ちゃんとは初対面だが少年とは普段から仲良くしてるしな。
 つーか前に借りっぱなしだった小銭を返すついでだよ。」
「あーそういえば五百円しか無くて飯代払えなくなってましたよね。」
「財布落としちゃってねえ。」
「二人とも何処で知り合ったの?」
「中華料理の屋台。」
「今はラーメン屋さんになっちゃってるけどねー。」
「じゃあ私そこに行ってみたいなー。」
「あそこ夕方になってからじゃないと開いてないよ。」
「じゃあ今日はダメね。」
「とりあえずイルカショー見に行こうぜ。」
「さんせー!」

 僕たちはイルカショーを見るために座席につく。
 灸さんがポップコーンと飲み物を買ってきてくれた。
 映画か!

「これ必須じゃない?」

 映画か!

「あ、有ったら有ったで良いですよねー。」

 朔夜あああああああ!
 何時からお前そんなキャラになったあああああ!
 普段のツッコミはどうした!
 そもそもなんか顔が違う!雰囲気的に普段の元気キャラからお嬢様キャラになってる!
 プリキュアで言えば黒から白くらいになってる!

「お、始まるみたいだよー。」

 ブザー音。
 それと共に透明なプールの中に一列に並んだイルカが入ってくる。
 一匹、二匹、三匹、四匹、五匹。
 ん、何かおかしいぞ?

「きゅっ!」
「きゅきゅっ!」
「きゅきゅきゅっ!」
「ギエピー」
「きゅきゅきゅきゅきゅっ!」

 いや鳴き声じゃなくて。
 それも十分おかしかったけどさ。
 イルカがお腹にベルトのような物を巻いているのだ。
 飼育員の人がイルカに向けてしずしずとマイクを差し出す。







「愚かなる人間どもよ」





 え?




「愚かなる人間どもよ、貴様らの天下は今ここより終焉し、終演する。」




 最近のイルカショーはパフォーマンスが派手だなぁ。

「イルカショーってこんな過激なの?」
「おいおい朔夜、最近のはそうなんだぜ?何も知らないんだな。」

 困ったのでとりあえず知ったかぶりしておく。



「我々イルカの時代の幕開けの祝杯として貴様らを血祭りにあげ、
 その血溜まりの中を悠々と泳いでみせよう。」

 何が起きているかよく分からないのでとりあえずメガネをかけてイルカの身につけている物をよく見てみる。
 ……あれは、機関銃じゃないか。

「灸さんあれ!あれ本物の……」
「解ってる!」

 そう言って灸さんは席から立ち上がる。

「ちょ、何する気ですか伏せてください!」
「俺があの店でしていた話が、創作じゃないことを教えてやるよ!
 ――――――変!身!」

 イルカたちがベルトから機関銃を発射する寸前、灸さんはまるで鳥のように宙へ舞い上がる。
 そして彼が空中で透明な赤い光に包まれたかと思うとその直後に虹色の羽根に身を包んだ鳥人が光の中から舞い降りた。

「撃てえ!」

 大量の銃弾が機関中から放たれる。
 だが鳥人は虹色の光を翼のように広げてその銃弾から観客を守る。
 機関銃を撃ち尽くしてからイルカはやっとその異常な事態に気づいたようだった。

「……なんだと?」
「人間様に楯突くとは畜生共!なかなかいい根性しているじゃねえか!
 三枚に下ろしてオーストラリアにでも出荷してやろうか?」
「貴様まさか契約者……!」
「その通り!人間の自由と平和を守る契約者だ!
 てめえらみたいな化物にはとっととおっ死んでもらうぜ!」

 鳥人と化した灸さんは孔雀が羽根を広げるような構えをとってイルカたちと対峙する。

「契約者が相手ならば我々も全力を出さざるをえないな……。」
「くっ、皆さん早く逃げてください!」

 灸さんは驚いて動けなくなっている客たちに避難命令を出す。
 だが冷静に考えてみればすでにこの水族館はイルカが人間の上に君臨している。
 ここで避難させたところでその途中に別の生き物に襲われるだけなのではないだろうか……?

「ドアが閉まっている!開けられないぞ!」
「くそっ!」

 そうだ、朔夜、いくら正義の味方をやめたとはいえ振りかかる火の粉くらいは払いのける筈。
 あいつが今の今まで動いていないなんてあり得ない。
 あいつは何をやっているんだ!?
 そう思って僕は隣を見た。

「…………。」
「おい朔夜、何をやっているんだ?
 このままだと俺達もやばいぜ?」
「…………ないの」
「え?」
「…………使えないの」

 声が小さくてよく聞こえない。

「…………魔法が、使えないのよ!
 この前からずっと使えないの!」

 そう言って泣き崩れる朔夜
 なんてこったい

「これが我々の真の姿だ!」

 大きな声に振り返るとイルカたちが……
 イルカたちが顔だけイルカのマッチョな人間の姿になっていた。

「キモイヨオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
「誰だ!今我々をキモイとか言ったのは!」
「即刻粛清だ!」
「イルカ帝国最初の生贄にしてくれるわ!」
「そうはさせるか!」
「ふはははは!貴様らの相手は我々兄弟がしよう!」
「しまった挟まれた!」

 おっと、ついつい本音が出てしまったようだ。 
 それを聞きつけたマッチョイルカメン数名が俺の元に向けて走り寄ってくる。
 灸さんがそれを止めようとしたが一体だけ逃してしまいその一体が俺の目の前まで迫ってくる。
 ペプシマンがイルカの頭をつけた化物が目の前まで迫ってくる恐怖。
 君に解るだろうか?

「スバルくん逃げろおおおおおおおおおおおお!」
「おっと、」
「お前の相手はこっちだぜ?」
「ぐがあ!」

 灸さんがこっちに気をとられた隙に二人のイルカメンに殴り倒される。
 これはやばい。

「死ねええええええええええええ!」

 朔夜はまだ泣いている。
 イルカ人間の手が俺の目の前まで迫ってくる。
 やばい、死ぬ。
 コマ送りのように時間が流れる。
 まあでも、死んでもいいかな、と冷静に考える自分もそこに居た。
 死のうが生きようがそれほど変わらない。
 普段は明るく馬鹿やって見せているがこの瞬間になって自分の心の底が見えてしまった。
 よし、どうせ無駄な命なんだ。できるだけ朔夜をかばえるような体勢で死んでみよう。
 そう思った時だった。





「そこまでだ怪人共!」







 ひしゃげたドアが僕を襲うイルカ怪人に直撃する。
 封鎖されていた筈のドアが飛んできた方向には骸骨の鎧を纏った男が立っていた。
 男は右手に引きちぎられた魚介類のヒレやら無残極まりないことになっている蛸の腕やらを持って、
 その真っ白だったらしい仮面を赤や青や緑の様々な血の色で染めていた。
 仮面のくぼみに貯まる血は遠くから見るとなぜだか涙に見えた。

「だ、誰だ貴様!」
「イルカ帝国の野望を邪魔する気か!?」

 男は混乱に陥る人々の中をかき分け彼らに避難指示をしつつもイルカたちの前に立ちふさがる。
 そして彼らの前で堂々と某特撮番組よろしくなポーズを決めたかと思うと高らかに名を名乗った。







「警視庁都市伝説犯罪捜査一課明日真警部!
 またの名を……仮面ライダークロム!」





 とりあえず、この非常事態に有名特撮ヒーローの真似をしている時点で……
 たとえどんなに優秀な人間であっても彼はダメな大人に違いないと判断した。

「真!」
「灸さん、いつもご協力ありがとうございます。」
「固いな。」
「仕事中だからね。」

 灸は自らに襲いかかるイルカ怪人を虹色の羽根でなぎ払うと警部さんの隣に降り立つ。

「俺とあんたの仲でしょうに。」
「それもそうか。」
「はっはっは!いくら貴様らが契約者とてこの数のイルカ軍団には叶うまい!

 水槽の奥から次々と人のような姿をしたイルカ達が現れる。

「敵は多いな、灸……」

 クロムと名乗った警察のお兄さんは灸さんの肩に手を置いてポツリと呟く。
 だがすぐに頭を振って顔をあげる。

「いや…………たいしたことはないか。」

 灸さんはだまって頷く。

「今日はお前と俺でダブルライダーだからな」

 灸さんの翼が再び赤く強く輝き始める。

「なにをごちゃごちゃと……!
 貴様ら!やってしまえ!」


 大挙して押し寄せるイルカたちを見て灸さんは少しだけ笑う。


「さあて」
「日曜昼の」



「「スーパーヒーロータイムだ!」」



 灸さんの飛び蹴りがイルカの顔面を捉える。
 刑事さんの正拳突きがイルカを軽々吹き飛ばす。
 圧倒的だった。
 自らの能力におごるばかりのイルカたちに比べて灸さんも刑事さんもおそらく気が遠くなる数の“人類の敵”を屠ってきたのだろう。
 イルカたちの攻撃はいなされ躱され
 灸さん達の技が一閃するたびに何体ものイルカが灰になって消える。
 しばらくするとあっという間にイルカたちは全滅していた。

「さて、これでもう大丈夫だな。」
「あれ、二人とも逃げてなかったのか!?」

 灸さん達がこちらに歩いて来る。
 戦いが終わった安堵感から僕はその場にへたりこんでいた。
 朔夜はまだ泣いている。

「いやすみません……腰が抜けちゃって……。」

 刑事さんが仮面を外す。

「……結構情け無いじゃないか少年。」

 僕はその素顔に見覚えがあった。

「ああああああああ!」

 そう、明日真とは、仮面ライダークロムとは

「彼誰飯店で!」
「なんだよ気づいてなかったのかよー」

 あの店で刑事さんと呼ばれていた男性だったのだ。

「その上恋路の道場に来たらしいじゃん。」
「え、いや、え?」
「え、あいつからお前が会いに来たって聞いたぞ?」
「え?あの刑事さん……」
「真でいいぜ。」
「真さんは恋路さんの……。」
「新婚、なんだ。」
「えええええええええええええええええええええええええ!?」

 世界はどうやら思ったより狭いようだ。
 真さんは僕と朔夜を軽々抱え起こす。

「とりあえずまあ署まで来てもらうぜ。
 君たちも事件に巻き込まれた人間だし。」

 そう言って刑事さんがイルカショーの会場から僕達と出ようとした瞬間だった。




「はっはっはっは!さすがだなあ!やっぱりすごいや!
 日本の警察は“組織”と手を組んで力を増したと聞いていたけど本当だね!
 僕の“原子力発電所の周囲の奇形生物”による改造を受けたイルカ軍団が手も足も出ないなんて!」




 突如として館内に響く声。
 まだ若い、少年から青年といったところだろうか。

「何処だ!何処からこの声が!?」
「ごめんねーぼかぁ戦闘ができないんで君たちの前には直接出れないんだ。」
「放送室じゃないですかね?」
「よし、俺ちょっと行って……」
「待て真、俺が翼使って行ったほうが早い。」
「任せた。」
「子供たちはお前に任せるぜ。」
「おう。」
「今回はイルカくんたちを騙してちょおおおおっとぼくの能力で改造してみたんだけどさあ!
 いやあすごいね!あれだけの数の改造兵士を倒せるなんて!
 下の階のサメを倒したのも君かな?
 確か十体くらいは居たのになあ……。
 全部一人でしょ?
 迸るほどに強いよね。
 こんな化物抱えているなら警察に対してももっと警戒するように同志に教えないと……」
「お前は何者だ!一体何が目的だ!」
「ぼく?ぼくは仲間からは“医者(ドク)”って呼ばれてるな。
 医者なのに毒とはこれいかにってねwwwwww
 ぼくたちの目的は今の社会の破壊、そして子供の子供による子供のための国の建設。
 ネバーランドと名乗り、すでに世界中で活躍しているんだぜ?」

 遠くで爆発音が聞こえてくる。
 どうやら灸さんがどこかのドアを破壊しているらしい。

「やれやれ、無粋なことするね。
 ところでそこの正義の味方さんよ。質問有るんだけど良いかな?」
「…………。」

 明日さんは何も答えない。
 瞳に怒りの炎を燃やして静かに仮面を付け直している。

「世の中には人身売買やら児童への性的虐待やら武器商人が儲ける為の戦争やら沢山あるけどさ。
 あんた達それを放っておいてぼくたちみたいな善良なテロリストをおっかけまわしてるっておかしくない?
 それとさ、あんたが誰かを守ったり救ったりしたとしても多分その間にその倍の人間が絶望したり悪に染まるんだぜ?
 なんでそんな無駄なことをやれるの?
 あんたぐらい強いなら世の中全部壊して作り直した方が早くない?」





「たとえ救えない未来が有ったとして……それが見過ごせない現在を見過ごす理由にはならない!
 俺は契約者である前に一人の人間として、救えるだけの人を救い、守れるだけの未来を守るだけだ!
 その邪魔はお前らのような悪人には絶対させない!」





 朔夜の涙が止まる。
 様子が気になって顔をあげさせた。
 涙が止まったから落ち着いたと思ったのだ。
 でもそれは違った。
 なぜかは知らないが彼女は泣くより酷い、それはそれは虚ろな顔をしていた。
 解ったよネバーランド。
 解ったよジャック。
 どうやらお前らのしていることは今の俺にとって邪魔みたいだ。
 放っておこうと思っていたけど……
 お前らの相手はこの俺だ。
 事情は分からないが友達を泣かされて黙ってられない程度の人間性は俺だって回復できているんだ。
 今目の前で絶望に打ちひしがれている友達のおかげで。

【不思議少女シルバームーン~第五話 第五章「正義の味方と正義の味方」~】

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