アットウィキロゴ

「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 那由多斬-12

最終更新:

Retsuya

- view
だれでも歓迎! 編集
「っい、嫌だ、まだ死にたく―――――――」
「はいはい分かった分かった」

闇の中、真っ紅な華が咲き乱れる
月の光のみが照らす、学校町西区の廃工場地帯
鮮血の絨毯の上にただ一人、剣を片手に持った少年が不服そうに立っていた

「あーぁ、この町は契約者の強弱がはっきりしすぎてるなぁ・・・
  強い奴はとことん強いのに、弱い奴は準備運動にもなりゃしない」

苛立ちの矛先を足元の骸に向ける
力強く蹴飛ばせば、びちゃりと血の飛沫を散らしながら、それはごろんと転がった

「やっぱり、あの「組織」の小娘と生意気な小僧じゃないと満足できないや」

頬についた血を舐め、少年は―――ナユタは不気味に笑う
そして、彼は新たな獲物を、否、以前から狙っていた獲物を求め、
黄金に輝く深紅の海をゆっくりと、渡り始めた









――――――――――――――――“我早已換過花的香氣”



「ッ!?」


呪文のような声が、どこからともなく聞こえた瞬間、
ナユタは頭を抱えて、その場にしゃがみ込んだ



――――――――“為何融釀記憶汚染自己”



「こっ、れは・・・何なんだ・・・っ!?」


声は彼の耳から侵入し、彼の脳を侵食する
激痛は外からではなく、中から襲いかかってくる



――――――“祝我”



その時だ


『――――――――――――――――――――――――――――なっ!?』


ナユタの目の前で、少年が血の海に倒れた
自分は、その様子を“自分の目で”見ていた
そう、彼は少年の身体から引きずり出されたのだ


『馬鹿な!こんなことある訳が―――――――っがぁ!?』


だがそれだけに留まらなかった
ナユタの霊体は「ティルヴィング」ごと、その場を早々と立ち去った
まるで、何者かによって引っ張られるかのように






    †    †    †    †    †    †






「“和誰走到下世紀”・・・」

工場地帯に響く、澄みきった少女の声
右手に水の入った小瓶を持つその声の主は、白い髪と豊満な胸が特徴の少女であった
「組織」の構成員の一人にして上位ナンバー、R-No.4――レクイエム・リッケンバッカーだ
その隣には、険しい表情で彼女を見守るローゼが立っている

レクイエムの契約都市伝説の一つ、「お憑かれ様」
これは降霊術の一種であり、暗い部屋で水の入った容器を用意し呪文を唱える事で、
水の中に周囲の霊を溶け込ませる、というものだ
彼女は、その閉じ込めた霊を召喚し、使役することができるのだが、
ローゼが着目したのは“閉じ込める”という行為だった

都市伝説に飲まれているナユタは、「憑依霊」と契約していた所為か、普段は霊体で行動している
霊体だということは、「お憑かれ様」の対象範囲だという事
レクイエムの能力で小瓶に閉じ込め、蓋を開けられないようにして永久的に“封印”しようというのだ
これは、裂邪と共にナユタと幾つかの戦闘を重ね、その度に失敗してきたローゼが導き出した、最後の手段

「レクイエムさん、どうですの?」
「今は、順調だ・・・もうすぐ、見えてくるだろう」

心配そうに問いかけたローゼに、『順調だ』とはっきり言ってみせた彼女だが、
その額には薄らと汗が流れ始めていた
恐らく、都市伝説に飲まれた多重契約者であるナユタを呼び出すとなると、相当体力が必要となるようだ
ローゼも、そのことを把握しているようで、表情の曇りは消えないままだ

「頼んだワタクシが言うのはおかしいけれど・・・あまり、無茶はなさらないで」
「安心しろ、これくらい、如何という事はない。それに・・・見ろ、来たぞ」

彼女に促されそちらを見ると、ふわふわと宙を舞う剣が途轍もない速さでこちらに向かってきた
剣はローゼ達の目の前で、その動きを止めた

『やはり――達か・・・今度は何を企んでいる?』
「貴方にそんな口の聞き方をされるのはちょっと心外ですわ
  これ以上犠牲者を出さない為に、貴方にはほんの少しの間だけ、眠って頂こうと思いますの」
「そういう、ことだ・・・“從頭能頌讚”」

レクイエムが呟くように呪文を唱えれば、
「ティルヴィング」に憑き纏うナユタの霊体が、見えない手に引っ張られるかの如くぐらりと歪む
小さく呻き声をあげつつ、ふふっ、と笑った

『なるほど・・・どういう能力かは知らないが、――をその中に閉じ込めるつもりのようだね
  「組織」とも在ろう者が、そんな姑息な真似をして事件を解決に導こうなど、情けないとは思わないのかね?』
「何も存在を消すことが全てではありませんわ
  都市伝説事件の被害者を最小限に留める事こそが、ワタクシ達「組織」の役目ですわ!」
『ギッハハハハ、そうか“命”か
  殺人鬼の始末よりこの先消えるかも知れない“命”を優先するか』

刹那に、

「“人的優美―――――ッ!?」

レクイエムの持っていた小瓶に異変が起こった
かたかたと、独りでに震えだしたのだ

『この世界には60億以上の塵芥共が生きている
  息を吸って吐くだけの怠惰な者もいれば、
  ただひたすら戦争と犯罪を繰り返すだけの狂気に溺れた者も、
  それらに手をかけられる憐れな者もいる
  そうやって“命”というものは、遅かれ早かれ失われていくのだよ
  分かるか? 例え今その“塵芥(イノチ)”を護ったところで、結局その努力も無駄になる
  ならば最初からそんなもの、無かった方がいいのではないか?
  どうせ消えゆく“命”なんて、全て焼き払えば良い!全て斬り捨てれば良い!!
  それこそが真の平和、完全なる静寂、地球の本当の姿だと思わないか!?』

ナユタが言葉を紡ぐ毎に、小瓶の震えが大きくなる
既に、レクイエムの呪文の詠唱も途切れていた

「違いますわ! この世に“命”がある事こそ、地球が存在している証ですの!
  この星から命が・・・人間だけじゃありません、鳥や魚、植物も、
  多くの生命が消えてなくなったら、この美しい青い星は死の星に変わってしまいますわ!
  だからこそ、一つでも多くの命を救ってみせる!
  それは「組織」だからというだけではありません!
  ワタクシが・・・ワタクシ達が、“命”を持ってるから!!」
『・・・ギハハハハハ・・・ギハハハハハハハハハハハハ!
  愚かしい! そして醜く憎らしい!!
  そんな巫山戯た考えを持った塵芥(ゴミ)如きが・・・この――を封印(コロ)せるものか!!』

ぱきんっ!!
甲高い破裂音が響いた

「っく・・・馬鹿な!?」

怒鳴るように嘆いたのはレクイエムだった
嫋やかな右手から小瓶が消えており、代わりに無数の細かな傷と流れる血があった

「ッ! レクイエムさん!」
「私は大丈夫だ・・・すまない、失敗した」
「お気になさらずですわ、貴方の所為ではありませんの」
『呆気なかったね、作戦失敗かな? さぁどうする? ――を殺すか?』

嘲笑い、2人を見下す形で浮遊しているナユタ

「もう一度やる、時間を稼いでくれ!」
「分かりましたわ! 無茶だけはなさらずに!」

レクイエムは再び小瓶を取り出し、呪文を唱え始める
ローゼは右腕に赤く輝く刃を出現させ、ナユタの「ティルヴィング」と激しくぶつかり合った

『何度試そうが無駄だよ! 生きとし生ける者は皆同じ失敗を繰り返す!』
「その失敗をバネにできるから、命は今日まで続いているのですわ!」

火花を散らして打ち合い、互いに距離を取り、
ナユタは剣に、ローゼは掌に、それぞれ光を集める

『さあ、照時間だ!』
「『フォトン・ストリーム』!!」

2つの光条が、轟音と共に衝突する――――――














「『影縛り』」











少年の囁く声が聞こえた瞬間に、幾多の黒い腕が「ティルヴィング」に絡みつく
突然の出来事に双方共に驚き、行動が停止した

「ご苦労シェイド。ローゼちゃんもレクイエムちゃんもお疲れ様」
「あ・・・裂邪さん!?」

月光の中を歩く黒尽くめの少年は、黄昏 裂邪だった
にこにこと微笑みを浮かべ、彼は動けないナユタに近づいた

『誰かと思えば・・・生きていたのか?』
「お陰様でね」
「何をやってる裂邪! そいつから離れろ!」
「悪いけど、それはできないよ
  俺はこいつを永遠に動けなくしに来たんだ」
『ギハハハハ、何だ、――も封印か? どいつもこいつも懲りないね』

ナユタがあしらうと、裂邪は口角を上げ、

「封印、か・・・ちょっと違うな」

ポケットから、あるものを取りだした
携帯電話程の大きさの、紫色をした四角い物体

「・・・な、何ですの、あれ?」
(パス・・・だが金色じゃない?)

ローゼもレクイエムも首を傾げている間に、
裂邪はその物体を、ナユタの「ティルヴィング」に翳した

『ん? 何の儀式だ?』

疑問を漏らすナユタに対して、裂邪はただ不気味な笑い声を零すだけだった
「ティルヴィング」の動きを封じていた黒い腕が、遂に彼は口を開く

「黄昏裂邪が命じる・・・俺と、契約しろ!!」

一瞬、時が止まる

『何っ!?』
「ち、ちょっと、裂邪さ――――――」

停止した時が動き出すかのように、一陣の風が吹く
それは渦を作りながら、「ティルヴィング」を―――否、ナユタを覆った

『正気か小僧! このまま飲まれて消滅するぞ!!』
「残念、俺がやるのは正式な契約じゃなくて言わば仮契約だ!
  このパスは特別でなぁ、仮契約した都市伝説を“閉じ込める”事ができるんだよぉ!」
『ッ!? ば、馬鹿な!? こんな、ところで――――――』
「そうさ! お前の野望は・・・ここで終わる!!」

風が止む
静が来る
数多の命を奪った悪霊が、血塗られた剣が
今、跡形もなく消え去った

「・・・ウヒヒヒ、これで、もうこいつは―――」
「裂邪さぁん!!」

がばっ、と襟元を掴まれる裂邪
そのままローゼは彼の身体を大きく揺すった

「おげっ、っちょ、ローゼちゃ、ぐるじ・・・」
「何て無茶な事を! それに、あれと契約してどうするお積もりですの!?
  まさか、悪魔に魂を売ったなんて馬鹿なことはありませんわよね!?」
「落ち着けローゼ、裂邪に限ってそれは無いだろう」

暴走するローゼをレクイエムが宥め、裂邪は何とか救出された
3回ほど咳をすると、彼はようやく話し始めた

「ごめっ、ローゼちゃん、それにレクイエムちゃん・・・急に、出しゃばっちゃって
  でも、俺はこの方が、手っ取り早いと思って、さ
  パスを捨てられないのは残念だけど、俺が持ってる限り、俺が使わなきゃナユタは出てこられない
  いつか破られるかも知れない封印よりは、確実で、安全だろ?」
「で、でもっ!・・・ハァ、過ぎた事はしょうがないですわ
  ですけど、絶対に使ってはなりませんわよ! それだけはきちんと守って頂かないと!」
「ッハハ、分かってるよ・・・まぁ、何にせよ、」

紫のパスを月に翳して、裂邪ははっきりと呟いた

「・・・ゴミの底力舐めんな、亡霊」






    †    †    †    †    †    †










――――――――――――らない













―――――――――――わらない


















――――――――――――――――――――――終わらない!














―――――まだ、まだだ! まだ意志はある! まだ、野望は潰えない!














――――――いつか、いつかまた、外の世界に脱出して






















―――――――――――――全ての命に、粛清の炎を、裁きの光を、断罪の剣を!!!





















   ...劇終

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー