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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 悪の秘密結社-04

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Elfriede

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悪の秘密結社 04


《ふむ……ヴィクトリアと名乗る女性、かね》

 ドクターからの連絡を受け、電話の向こうで総統が思案を巡らせるように唸る

《思い当たる名前ではある。個人ではなく契約者としての存在ではあるがね》
「契約者ですか」
《ああ。ヴィクトリアというのは、ヴィクターの女性名だ。死体を扱うというのならほぼ確定だろう》
「ヴィクター・フランケンシュタイン。『フランケンシュタインの怪物』の製作者の名ですね」
《『フランケンシュタインの怪物』の契約者が好んで名乗ったり、『フランケンシュタインの怪物』がその名に執着して契約を迫ったりする場合が多いと聞くな》
「なるほど……所属や目的が判明するまでは警戒が必要ですね」
《こちらでも調査は進めよう。君達は身内の安全を最優先に活動したまえ》
「判りました。今日、こちらに来ていたメイちゃんはどうしましょうか」
《それがだな……君からの連絡の前に、いつもの調子で沙々耶くんが迎えに行ってしまったので、二人の回収に運転手を向かわせているところでな》

―――

「こんにちは、はじめまして」

 出会い頭、笑顔でそう挨拶してきたヴィッキーに対して、沙々耶が抱いた印象は「胡散臭い」だった
 生まれてからの年月は短くとも、元は『悪魔の囁き』という存在
 悪意というものには非情に聡い

「何処の誰、ですか」

 じりと後退りながら、牽制するように訊ねる沙々耶

「悪い人です」

 沙々耶の反応を察してか、前置きを無しに笑顔で歩を進めるヴィッキー

「あなたの関係者から譲っていただきたいものがありまして。その交渉材料になっていただきます」
「はっ、私にそんな価値なんかあるもんですか。精々、捨てるのには体裁が悪い実験動物程度のものよ」
「そう自分を安く見積もらせて逃げようったってそうはいきませんよ?」

 ヴィッキーはそう言うと、ごそごそと懐から小さな箱のようなものを取り出す
 黒と黄色のストライプで彩られたボディに、アクリルのカバーで覆われた毒々しい赤色のボタンという配色の、危険物という自己主張があまりにも激しい一品だ

「何よ、自爆装置か何かのスイッチ?」
「似たようなものですよ?」

 ヴィッキーはうふふと笑い、両手でぽんぽんとスイッチを弄ぶ

「このスイッチを押すか、スイッチが一定時間一定距離私から離れると……仕掛けた爆弾が大爆発を起こします」
「何処に仕掛けたってのよ」

 この町で爆弾など仕掛けたところで、様々な組織が何らかの状況を察知してとっくに回収、解体してしまっているだろう
 偶然にせよ必然にせよ、学校町という場所は多大なる影響に対してはあまりにも過敏なところがあるのだ

「教えてあげた方が盛り上がりますよね、やっぱり」

 だがヴィッキーは楽しそうに笑う

「仕掛けたのは、学校町『以外』の日本中あちこちの幼稚園、小学校、病院、駅、旅客機、線路、ダム、発電所などに総計500個ほど。ボタンを押したり、スイッチが私から離れて一定時間経つ毎に、ランダムで1つが爆発します」
「……はぁ?」

 あまりにも桁の外れた状況に、沙々耶の顎がかくんと落ちる

「嘘だと思います? じゃあボタンを押してみましょうか。今の時間だと……そうですねぇ、夜のニュースぐらいには速報が入るかもしれませんよ?」

 ぱくんとカバーを開けて、指先でくりくりとボタンを撫でまわす

「十六連射とかしてみます? スイカを割るより派手に吹っ飛びますよ」
「あ……頭おかしいんじゃないの?」
「よく言われます」

 誇らしげに胸を張ってそう答えるヴィッキー

「ただの脅し、与太話かもしれませんよ? そんな爆弾を作ったり仕掛けたりするのに、凄い手間が掛かりますもんね。第一、悪人の私の言う事なんて信用できませんよね」
「……私を連れていきたいなら好きにしなさいよ。その代わり、間違ってもそのスイッチを押したりするんじゃないわよ」

 多少の迷いはあったものの、あっさりと白旗を揚げた沙々耶の反応を見て、ヴィッキーからすぅっと笑顔が引けていく

「随分と話が早い……いや、察しが良いですね?」
「あんた……そのスイッチを押したくて押したくてたまらないって、顔に書いてるわよ」
「どこまで本気なのか判り難いというのが、密かな自慢だったんですけどね」

 カバーをぱたんと閉じて、スイッチを懐に仕舞い込むヴィッキー

「スイッチと爆弾の話、全部本当だって察してました?」
「一回ぐらいは押すために、わざと嘘っぽく言ってるでしょ、あなた」

 沙々耶の頬を冷や汗が伝う
 この女、手段と目的の境目が非情に曖昧だと察したからだ

「ま、結果オーライです。大人しくついてきてもらえそうですけど、趣味なんで誘拐らしく拘束させて下さいね」

 いつの間にか周囲に現れた戦闘員が、ロープや目隠し、猿轡を手に沙々耶の身体に手を伸ばしてくる
 沙々耶は内心で安堵する
 自分が捕まったところで、切り捨てられるよう上手く立ち回れば被害は最小限に抑えられる
 お人好しの馬鹿ばっかりな連中だが、既にこいつと接触しているのならば、こいつが欲しがるようなものを渡すよりはマシだと察してくれるだろう

「笑っていられるなんて、随分と余裕ですね」
「常に最悪を考えてる性分なの。まあ、あんた程度の存在なんて最悪のうちにも入らないけどね」

 そう、最悪は全てを察して差し向けられる悪意ではない

「……っ!」

 獅子の咆哮を思わせるエンジン音が沙々耶の耳に届く
 それは『ロールス・ロイスは壊れない』の契約者、『第三帝国』お抱えの運転手
 アスファルトを切り裂いているかのような音で車体を揺らし、寸分違わずヴィッキーにだけ狙いを定めたロールス・ロイスの車体が、自動追尾のミサイルのように突っ込んできたのだ

「へぇ」

 だがヴィッキーはまるで動じない
 殺すような勢いで車を人体に突っ込ませる輩がいるのだと、関心するような声を上げただけである
 逆に沙々耶の顔から血の気が引く
 思い出されるのは、先程のスイッチの話
 最悪は、時として
 何も知らずに差し伸べられる善意である事がある

「ばっ……か!」

 沙々耶は戦闘員を押し退け、ヴィッキーを守るように両手を広げ、猛スピードで迫り来るロールス・ロイスの前に立ちはだかった
 これには流石の運転手も避けるのは容易ではない
 強引にブレーキを踏み車体を沈み込ませ、次の瞬間にハンドルを切りながら月面宙返りにように跳ね上がり、ヴィッキーの髪を掠めるような軌道で反対側の道路に着地する

「沙々耶様?」

 軋むロールス・ロイスの運転席から、運転手が降り立つが

「ごめん、事情があるの。あなたは他の皆をお願い」

 言葉を遮るように、先んじて

「私に構わないで……そう伝えて」

 告げられた言葉に、運転手は押し黙る

「なかなか楽しげなシチュエーションになってきましたね」

 ヴィッキーは薄ら笑いを浮かべ、沙々耶の腕を捻り上げ強引に抱き寄せる

「そういう事です。彼女についての交渉は、後日連絡すると伝えて下さいな」

 事情が掴めないまま、それでも追う事が出来ないという事だけ察するしかない運転手を残し、ヴィッキーは沙々耶を戦闘員に抱えさせ悠然とその場を歩み去る

「そのスイッチ、他の連中の交渉に使えるとは思わない方がいいわよ」

 電波や暗号の扱いに長けたエニグマ姉妹に掛かれば、事情を察すればすぐになんらかの対応を取れるだろうから
 もっとも、そこまで教えてやる義理は無いので、それ以上は語らない

「つまり交渉はあなたの身柄だけで行う事になると」
「さっきも言ったでしょう、私にそんな価値は無いって。断言してあげるわ、あなた達の目論見なんてあっさり破綻する」
「さて、どうなる事でしょうかね」

 ヴィッキーはくすりと笑うと、曲がり角の先に停めてあった乗用車のトランクをがぱりと開き、そこへ沙々耶を放り込む

「一応、中からは開かないように細工してありますので。騒ぐのは構いませんが、あなたに気付いた一般人が近付いてきた場合……私、手っ取り早く処分しますので」

 抵抗らしい抵抗もしない沙々耶の様子を確認して、ばたむとトランクを閉じる
 そのまま運転席へ乗り込むと、おかしな配線だらけになったハンドル周りに取り付けられたボタンを押し、エンジンを動かす

「自分で運転すると、途中で寝れないから困ります……戦闘員も寝ている間は複雑な操作はできませんし」

 あふ、と小さく欠伸をして
 ヴィッキーは車を走らせた
 彼女はこの町で人質と潜伏するつもりは無い
 この町の『組織』の網に引っ掛かるわけにはいかないし、その他にも厄介な集団が多々存在するからだ

「あ、そうそう」

 ヴィッキーはカーステレオの場所に取り付けられた怪しい無線機のボタンを押す
 音声はトランクに居る沙々耶の元へ繋がっているようだ

「あなたのお仲間、ハンバーグとソーセージ、どっちが好きですかね? ドイツ系の人が多いみたいですしやっぱりソーセージでしょうか」
《……どういう意味?》
「深い意味はありませんよ。交渉が失敗した場合、ちょっと贈り物をして空気を和ませようかと」
《失敗した後に和ませてる余裕があるなら、私の身柄でも解放しなさいよ》
「ええ、それはもう」

 ヴィッキーの声が、楽しそうに弾む

「それも兼ねてますから、わざわざ聞いてるんですよ」

 楽しそうに
 楽しそうに
 とても楽しそうに


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