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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 悪の秘密結社-05

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Elfriede

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悪の秘密結社 05


 鼻歌混じりにハンディカメラをスタンドに固定するヴィッキー
 そのカメラのフレームの中央には、椅子に縛り付けられ、目隠しと猿轡をされた沙々耶の姿

「はーい、これから撮りますからねー。聞こえてますかー?」

 項垂れた沙々耶の頬を、ヴィッキーがぺちぺちと叩く
 だが沙々耶は項垂れたまま反応を見せない

「起きて下さーい、元気なところを見せてあげないと皆が心配しますよー」

 それでも反応を見せない沙々耶に、ヴィッキーはふむと小さく唸り
 椅子ごと沙々耶の身体を仰向けに蹴り倒した

「ぐっ!?」
「死んだふりとかやめてくださいねー、交渉が台無しになっちゃいますから」

 するりと猿轡を解き、近くのテーブルに置いてあったミネラルウォーターのペットボトルを手に取る

「まあ、あなたが私の許可無く死んじゃったりしたら……あのスイッチは脅しに使えない事ですし」

 封を切ったペットボトルを沙々耶の口に捻じ込み、水をごぼごぼと流し込む

「うぶっ! が、ふっ!?」

 むせ返り辺り水を撒き散らすのにも構わず、ペットボトルをぐりぐりと押し込みながら

「私、非力ですからね。次に攫うとしたら……やっぱり戦闘能力が低い順でしょう」
「えっ、げほっ……は……ぁ……」

 口と鼻から水を垂れ流し、ぜいぜいと荒い息を漏らす沙々耶
 濡れてぺたりと額や首筋に張り付いた髪を手櫛で梳き、その耳元にそっと口を寄せて囁く

「接触さえできれば、攫うのは簡単そうですよね、メイちゃん」
「あん、た……何でそんなに……私達について……詳しいのよ」
「さて、何ででしょうね?」

―――

 事が起こる数日程前の、『第三帝国』南極秘密基地
 出口へと向かう通路の真ん中で、どちゃりどちゃりと生々しい音を立てて床にばら撒かれる肉塊

「捻ったり潰したりぐらいは直せるみたいだけど、バラバラにするのはどうかしら?」
「さてどうでしょうね?」

 転げた生首がそう呟くと、切断面を血で汚した腕が床を跳ね、恐ろしい速度で針と糸を躍らせる
 たちまち縫い合わされた身体を、糸をきゅっと引き締めて馴染ませると、何事も無かったかのように立ち上がる白衣の女

「指の一本までバラバラのミンチぐらいにしないとダメみたいね……面倒だわ、血も鮮度が悪いみたいだし」

 やれやれと肩を竦めて、どかどかと音を立てて拷問具の数々を積み上げてるトライレス

「超人兵士やオカルト兵器の研究資料、挙句にうちの人材資料まで……どこに流していたのか吐いてもらわないと困るんだけど」
「そうですねぇ……あなたを殺す間際に、冥土の土産にべらべらと喋ってあげるのが正しいスタイルなんですが」

 微笑むヴィッキーの周辺に、ざわりと湧き上がる十数人の戦闘員
 その手には、ここ『第三帝国』南極基地に配備されていたオカルト兵器の数々が握られていた

「ちっ!?」

 黒服達が扱う光線銃とは毛色の違う、謎の怪光線としか言い表せない曲がりくねった熱線がトライレスの周囲を焼き払う
 拷問具を盾にしてなんとか凌いだものの、その大半がただの鉄屑といった有様にまで破壊されてしまった

「うーん、この手のものはやっぱり命中精度がイマイチですね。悪っぽくて素敵なんですが」
「そりゃまあ研究開発中の代物ばかりですものね」
「でも形になるまでは私も相応に協力してたわけですし。成果は折半でもいいじゃないですか」
「最初っから成果をかっぱらうつもりで潜り込んでたスパイが良く言うわね」
「んもー、ああ言えばこう言うんですね」
「それはこっちの台詞よ」

 とはいえ、トライレスも割と手詰まりではあった
 彼女の拷問具の数々は、痛めつけて血を絞る事に長けた道具ばかり
 殺せば死ぬ相手には充分に有効だが、多少身体を破壊したところで死ぬ様子もないヴィッキーには効果はやや薄いし、ガスも効く様子が無い
 それ以外の手となれば、それなりの無茶が必要になる

「ガスも効きませんからね? この身体は、人間の肉体を素材にした高性能のサイボーグか何かだと思ってもらった方がいいですよ」
「あっ、そう。それじゃあ」

 トライレスの手のひらから溢れ出したガスが、一瞬で視界を煙らせる程に通路に充満し

「粉々に吹き飛ばせば、ぶっ壊れるのかしらね?」

 鉄屑となった拷問具が打ち合わされ、火花を散らした
 閃光、爆音、衝撃、熱波
 様々なものがさほど広くない通路を蹂躙し、駆け抜けていく
 瓦礫や砂埃、蛍光灯の破片などが覆い被さった『鉄の処女』が、ぎしぎしと音を立てて開く
 その中からは肌を穴だらけにし血塗れになったトライレスが現れる

「やっぱりこの手はあんまり使いたくないわね。狭いところじゃないとできないし、痛いし」

 自らの血を塗り込めるように肌を撫で、傷を塞ぎ艶やかな肌を取り戻し
 焼けた肉片と化した死肉の中から、比較的大きく残った頭部をつま先で軽く小突く

「さて、流石に個人の活動とは思えないわよね。しっかり調べさせてもらわなくちゃ」
「もう少し施設の被害を考えて活動できんのかね君は」
「でしたら、たまたま挨拶に来ていた私になんか頼むべきではないでしょう?」
「仕方あるまい。あの女めが、超人兵士の命令情報を出鱈目にしていきおったのだから」

 じゃりじゃりと床に散らばった塵を踏み締めながら現れたのは、仏頂面をした『総統』閣下である
 ここ南極の活動拠点にしている『ヒトラー複数存在説』の一人であり、オカルトやロストテクノロジー兵器の蒐集・研究を行っている
 無論、それを使ってあれこれ企てているわけではないが、『総統』の中では最も好戦的な性分ではある

「奴を逃がしては困るからと頼みはしたが、この施設もまた重要な拠点の一つなのだ。長くこの組織に与しているのなら、その辺りの理解はだな」
「はいはい、苦情は後で。今はこれの調査が先ですから。適当な研究室、一つ借りますね」
「超人兵士の研究棟ならいくらでも空きがある、好きに使いたまえ。ただし報告はまず真っ先に私にだ、日本の『総統』よりもだぞ」
「わかってます。まったく、同一人物なくせにどれだけ仲が悪いんですか、あなた達。アドルフと影武者だって、むしろ仲は良かったのに」
「違う人物は理解し合えるだろう。同一人物でもだ。だが私達は、同じ人物の主義主張の異なる部分が独立した存在だ。性に合わん部分はとことん性に合わんのだよ」
「いずれは、人間としての生と死を望んでいるのでしょう? その頃まではには少しはまとまりを持って下さいな」

 溜息混じりに身を屈め、転がっているヴィッキーの首を拾い上げようと手を伸ばした
 その手のひらに、針がぶつりと突き刺さった

「随分と往生際の悪いこと」

 首だけでにたりと笑うヴィッキーの口から、糸を通した針が吹き出されたのだ

「『フランケンシュタインの怪物』をご存知で?」
「あら、自分の冥土の土産に自分語り?」
「いえ、冥土の土産ですよ? あなたの」

 そして、その糸はきらきらと輝いているように見えて

「『フランケンシュタインの怪物』のエネルギー源、ご存知ですよね?」

 その言葉に、トライレスは自らの余裕を悔いながら、手のひらに食い込んだ針を引っこ抜く
 そして、それを投げ捨てるよりも早く
 落雷のような電流が、トライレスの身体を打ち抜いた

「先に爆破されてなければ、もっと派手に自爆できたんですけどね。今はこれが精一杯……あはははははははははははははは!」

 過負荷で焼け落ちながらもけたけたと笑い続けるヴィッキーの声が
 衛生兵を呼ぶ『総統』の声が
 駆けつけたトライレスの元教え子の衛生兵達が何か叫ぶ声が
 ぼんやりと遠ざかって
 消えていくような
 そんな感覚の中で
 トライレスの意識が、ふつりと途絶えた

―――

 時間は戻り、ヴィッキーの襲撃と沙々耶の拉致から一晩が過ぎた朝
 臨時休診の札が掛けられた診療所の前に、12歳ほどの少女が一人現れる
 荷物を抱えて現れたその少女は、先日現れたヴィッキーをそのまま幼くしたような外見をしており

「おはようございます、昨晩は如何お過ごしでしたか?」

 変わらぬ雰囲気で、診療所の面々に笑顔で挨拶をしたのだった


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