ギザ十と幽霊少女とご先祖様と組織の狗 24
チクチクと体を何かが這い回る感触で目を覚ます。
クラクラとする頭を振りながら、左手の腕時計を見ると、突入してから1時間以上たっていた。
おかしい、たしか俺は底の見えないほど深い巨大穴を命綱も無しに落下してしまった筈だが…未だ生きている自分に対し首を傾げる。
いくら深い穴だと言っても、流石に一時間も落ち続ければ今頃、俺は潰れたトマトのようになっているはずだが、さてどういうことだ……と、辺りを見回した俺は、驚愕した。
何千匹、いや何万匹だろうか、トゲの生えた小さな虫の群れがウゾウゾと壁に張り付き落ちそうになっている俺の体を支えていたのである。
「うおぉぉ、なんじゃこら!?」
体全体に鳥肌が走り、口から情けない悲鳴が出る。
と、そんな俺に近くから声を掛ける存在があった。
「あ、おきたー? こんにちわー」
慌てて声のした方向を見ると、そこには黒服を纏った小さな幼女。
その幼女も、俺と同じように大量の小虫の群れに抱かれるように、この巨大な縦穴の壁面に張り付いている。
「なっ……お前、何ものだ?」
「はーい、B-No.005でーす」
「びーなんばー……なんだそりゃ?」
「イッちゃんのー、忠実なー、配下だよー」
「……イッちゃんって、いや、もういい……お前は俺の敵か?」
なんともホエホエっとした言葉に脱力しながら問いかける俺に、目の前の黒服幼女はにっこりと満面の笑顔で答える。
「うんそうだよーボクはー十円玉のお兄ちゃんの敵ー」
ゾワリ、と何か言いようのない悪寒が全身に走る。
目の前の笑顔の幼女が、その姿に似合わぬ、強烈な殺気を俺に向けてきたのだ。
「何故、敵が…俺を助けた?」
「だってー、ボク自身で侵入者を殺さないと、イッちゃんに褒めてもらえないでしょー」
つまり、俺が勝手に死んでしまえば自分の手柄が無くなる為、あえて命を助けた後で改めて自分の手で始末しようと、そういうことか。
「じゃ、そろそろ死んでね?」
クラクラとする頭を振りながら、左手の腕時計を見ると、突入してから1時間以上たっていた。
おかしい、たしか俺は底の見えないほど深い巨大穴を命綱も無しに落下してしまった筈だが…未だ生きている自分に対し首を傾げる。
いくら深い穴だと言っても、流石に一時間も落ち続ければ今頃、俺は潰れたトマトのようになっているはずだが、さてどういうことだ……と、辺りを見回した俺は、驚愕した。
何千匹、いや何万匹だろうか、トゲの生えた小さな虫の群れがウゾウゾと壁に張り付き落ちそうになっている俺の体を支えていたのである。
「うおぉぉ、なんじゃこら!?」
体全体に鳥肌が走り、口から情けない悲鳴が出る。
と、そんな俺に近くから声を掛ける存在があった。
「あ、おきたー? こんにちわー」
慌てて声のした方向を見ると、そこには黒服を纏った小さな幼女。
その幼女も、俺と同じように大量の小虫の群れに抱かれるように、この巨大な縦穴の壁面に張り付いている。
「なっ……お前、何ものだ?」
「はーい、B-No.005でーす」
「びーなんばー……なんだそりゃ?」
「イッちゃんのー、忠実なー、配下だよー」
「……イッちゃんって、いや、もういい……お前は俺の敵か?」
なんともホエホエっとした言葉に脱力しながら問いかける俺に、目の前の黒服幼女はにっこりと満面の笑顔で答える。
「うんそうだよーボクはー十円玉のお兄ちゃんの敵ー」
ゾワリ、と何か言いようのない悪寒が全身に走る。
目の前の笑顔の幼女が、その姿に似合わぬ、強烈な殺気を俺に向けてきたのだ。
「何故、敵が…俺を助けた?」
「だってー、ボク自身で侵入者を殺さないと、イッちゃんに褒めてもらえないでしょー」
つまり、俺が勝手に死んでしまえば自分の手柄が無くなる為、あえて命を助けた後で改めて自分の手で始末しようと、そういうことか。
「じゃ、そろそろ死んでね?」
そう言いながら無邪気に笑う幼女、その言葉に反応するように、俺にまとわりついていた小虫たちが蠢き始める。
「いや、ちょっとまった、死ぬ前に、せめて冥土の土産に教えて欲しいことがある!」
冷や汗を流しながら俺が叫んだ言葉に、幼女が小首を傾げる。
「なーに?」
「「鮫島事件」についてだ、何故こんなタイミングで発動させようとする? 今はそんなことよりも「夢の国」の侵攻を防ぐ為に団結するべきじゃないのか?」
「んーん、むしろ「夢の国」が現れたからこそだよー? 大丈夫、「鮫島事件」が発動すればぜーんぶ、何もかも良くなるから」
「「夢の国」が現れたからこそ? どういう事だ、「鮫島事件」の能力で「夢の国」を消滅させる気か、この上に存在したビルと同じように、街ごと?」
「んふふー違うよー、「鮫島事件」の能力は、お兄ちゃんがいうような「消滅」なんかじゃないのー、本当の力はー……「嘘を本当にする」力なのー」
嘘を本当に? つまり、発動者の思った事を全て叶える力って事か? なんだ、そのチート能力は……
「それでね、それでね、その力を使ってこの街に居る人間や都市伝説をね、ぜーんぶ、「組織の狗」にしちゃうの!」
「組織の……狗だと?」
「そう! 誰も組織に逆らわない、そんなこと考える感情もない、ただイッちゃんの命令だけ聞く人形になるの、そうしたら誰も喧嘩したりしないし、ずーっと平和になるよね!」
なんだそれは……この学校町の人間を全員、感情のない操り人形にするだと? 巫山戯ている。
「……最後の質問だ、その「鮫島事件」の発動条件はなんだ?」
「えー? えっとねーたしかー「発動範囲内に居る存在の内の、過半数がその嘘を信じる事」だよー」
そうか、そこまで聞ければ、もう良いだろう……
「んー、もう質問は終わり? じゃあ、そろそろ死んで……」
「馬鹿か、それだけの事を聞いて、こんな場所で死ねるかよ!」
下半身に集る虫を払い除けると、ポケットに入れた鏡を取り出し、俺は叫んだ。
「都市伝説「幽霊の映る鏡」との契約を破棄する!」
「いや、ちょっとまった、死ぬ前に、せめて冥土の土産に教えて欲しいことがある!」
冷や汗を流しながら俺が叫んだ言葉に、幼女が小首を傾げる。
「なーに?」
「「鮫島事件」についてだ、何故こんなタイミングで発動させようとする? 今はそんなことよりも「夢の国」の侵攻を防ぐ為に団結するべきじゃないのか?」
「んーん、むしろ「夢の国」が現れたからこそだよー? 大丈夫、「鮫島事件」が発動すればぜーんぶ、何もかも良くなるから」
「「夢の国」が現れたからこそ? どういう事だ、「鮫島事件」の能力で「夢の国」を消滅させる気か、この上に存在したビルと同じように、街ごと?」
「んふふー違うよー、「鮫島事件」の能力は、お兄ちゃんがいうような「消滅」なんかじゃないのー、本当の力はー……「嘘を本当にする」力なのー」
嘘を本当に? つまり、発動者の思った事を全て叶える力って事か? なんだ、そのチート能力は……
「それでね、それでね、その力を使ってこの街に居る人間や都市伝説をね、ぜーんぶ、「組織の狗」にしちゃうの!」
「組織の……狗だと?」
「そう! 誰も組織に逆らわない、そんなこと考える感情もない、ただイッちゃんの命令だけ聞く人形になるの、そうしたら誰も喧嘩したりしないし、ずーっと平和になるよね!」
なんだそれは……この学校町の人間を全員、感情のない操り人形にするだと? 巫山戯ている。
「……最後の質問だ、その「鮫島事件」の発動条件はなんだ?」
「えー? えっとねーたしかー「発動範囲内に居る存在の内の、過半数がその嘘を信じる事」だよー」
そうか、そこまで聞ければ、もう良いだろう……
「んー、もう質問は終わり? じゃあ、そろそろ死んで……」
「馬鹿か、それだけの事を聞いて、こんな場所で死ねるかよ!」
下半身に集る虫を払い除けると、ポケットに入れた鏡を取り出し、俺は叫んだ。
「都市伝説「幽霊の映る鏡」との契約を破棄する!」
メキリッと、まるで魂の半身が剥がれ落ちるような激痛に気が遠くなりそうになる。
手元の手鏡から光が失われ、くすみ色あせていく。
強引に契約を破棄した反動で途切れそうになる意識を賢明につなぎ止め、更に胸ポケットから俺が持つ最後の「契約書」を取り出した。
既に「契約書」に都市伝説の名は書かれている、あとは発動するのみ!
俺の意志に反応するかのように契約書が青白い光を放つ、その光に反応するように、手に持つ薄汚れた鏡に光が戻っていく。
「契約! 都市伝説「鏡はあの世への通り道」!」
その言葉と共に、目映い閃光を発する鏡の中へ手を突っ込む。
柔らかい小さな掌の感触、掴んだ手を離さないまま、俺は「彼女」を力任せに引き寄せた。
「おそいわよ、この馬鹿!」
鏡の大きさを無視するように、かつて俺の都市伝説「墓場で転ぶと死者に連れて行かれる」によって
「生きたまま身体ごと」死者にあの世へと連れて行かれた少女が、連れて行かれた当時のままの姿でこの世へと戻ってくる。
小悪魔的な笑顔を表情に張り付かせ、俺の首元に抱きついてくる生き返った少女を抱き留めながら、俺は叫ぶ。
「やっちまえ、糞ガキ!」
「オッケー、久しぶりにいっくわよ! さあ蹴散らしなさい、スカイフィッシュ!」
どこからともなく現れ出でた、全長2m程の棒状の身体に四対のヒレ、まるで空中を泳ぐ魚のような姿をした都市伝説が目にも止まらぬ速度で周りで蠢いている虫達を蹴散らしていく。
「な、なんで、スカイフィッシュのお姉ちゃんはずっと前に死んだはずじゃ……あ」
唖然と呟く黒服幼女にスカイフィッシュが音速を超えるスピードで突撃しその身体を貫くと、その衝撃でバラリと幼女の姿が崩れていく。
「ちっ、変わり身かよ……」
黒服幼女の姿を模していた虫達の塊が落ちていくのを忌々しく眺めながら、俺たちは周りの虫の大群を蹴散らし終えたスカイフィッシュの背に乗り深い縦穴を降りていった。
手元の手鏡から光が失われ、くすみ色あせていく。
強引に契約を破棄した反動で途切れそうになる意識を賢明につなぎ止め、更に胸ポケットから俺が持つ最後の「契約書」を取り出した。
既に「契約書」に都市伝説の名は書かれている、あとは発動するのみ!
俺の意志に反応するかのように契約書が青白い光を放つ、その光に反応するように、手に持つ薄汚れた鏡に光が戻っていく。
「契約! 都市伝説「鏡はあの世への通り道」!」
その言葉と共に、目映い閃光を発する鏡の中へ手を突っ込む。
柔らかい小さな掌の感触、掴んだ手を離さないまま、俺は「彼女」を力任せに引き寄せた。
「おそいわよ、この馬鹿!」
鏡の大きさを無視するように、かつて俺の都市伝説「墓場で転ぶと死者に連れて行かれる」によって
「生きたまま身体ごと」死者にあの世へと連れて行かれた少女が、連れて行かれた当時のままの姿でこの世へと戻ってくる。
小悪魔的な笑顔を表情に張り付かせ、俺の首元に抱きついてくる生き返った少女を抱き留めながら、俺は叫ぶ。
「やっちまえ、糞ガキ!」
「オッケー、久しぶりにいっくわよ! さあ蹴散らしなさい、スカイフィッシュ!」
どこからともなく現れ出でた、全長2m程の棒状の身体に四対のヒレ、まるで空中を泳ぐ魚のような姿をした都市伝説が目にも止まらぬ速度で周りで蠢いている虫達を蹴散らしていく。
「な、なんで、スカイフィッシュのお姉ちゃんはずっと前に死んだはずじゃ……あ」
唖然と呟く黒服幼女にスカイフィッシュが音速を超えるスピードで突撃しその身体を貫くと、その衝撃でバラリと幼女の姿が崩れていく。
「ちっ、変わり身かよ……」
黒服幼女の姿を模していた虫達の塊が落ちていくのを忌々しく眺めながら、俺たちは周りの虫の大群を蹴散らし終えたスカイフィッシュの背に乗り深い縦穴を降りていった。