ギザ十と幽霊少女とご先祖様と組織の狗 16
秘密施設の通路を歩く私の元へ駆けてくる者がいた。
聞こえてくる足音で、それがB-No.005であると気付き足を止める。
それと同時に訪れた鳩尾への鈍い衝撃に軽く咽せながら、
突如私に抱きついてきた、涙で顔を濡らした幼い少女の姿の黒服に問いかけた。
「どうしました、B-No.005」
そう聞きながらも、何となく彼女の泣いている理由は分かっていた。
「シーちゃんが、シーちゃんが……」
グスグスと泣きながら全身を使って悲しみを表現しようとする彼女に怒りを覚える。
彼女の言うシーちゃんとは、B-No.004の事だろう、裏切り者のD-No.962いや、
既に一介の都市伝説へと堕ちた者へこの呼称は相応しくない。
黒服D、かつて「夢の国」の黒服でありながら「組織」の黒服でもあったらしい、
イレギュラーを消す為に向かわせた彼は、やはり失敗してしまったようだった、
しかし、失敗するにしても、まさかここまで簡単に消されるとは……これも全ては私の落ち度か。
思い出す、いつも自分に軽口を叩き、しかし忠実に我が命を守ってきた彼。
「組織」の「黒服」として唾棄すべき筈の「何か」が私の胸を締め付ける様に駆け巡るのを
無理矢理押し込めて、目の前の少女に私は声をかける。
「そうですか、B-No.004が死にましたか、それで他の者たちの動きはどうですか?」
何でもない事のように彼女の悲しみの言葉を流し、報告を促す私にB-No.005は困惑した表情を向けてくる。
「イッちゃんは悲しくないの?」
「その様な感情、私は持ち合わせていません…」
そんな私の言葉に、縋り付く少女が腰に回した腕の力を少し強めた気がした。
聞こえてくる足音で、それがB-No.005であると気付き足を止める。
それと同時に訪れた鳩尾への鈍い衝撃に軽く咽せながら、
突如私に抱きついてきた、涙で顔を濡らした幼い少女の姿の黒服に問いかけた。
「どうしました、B-No.005」
そう聞きながらも、何となく彼女の泣いている理由は分かっていた。
「シーちゃんが、シーちゃんが……」
グスグスと泣きながら全身を使って悲しみを表現しようとする彼女に怒りを覚える。
彼女の言うシーちゃんとは、B-No.004の事だろう、裏切り者のD-No.962いや、
既に一介の都市伝説へと堕ちた者へこの呼称は相応しくない。
黒服D、かつて「夢の国」の黒服でありながら「組織」の黒服でもあったらしい、
イレギュラーを消す為に向かわせた彼は、やはり失敗してしまったようだった、
しかし、失敗するにしても、まさかここまで簡単に消されるとは……これも全ては私の落ち度か。
思い出す、いつも自分に軽口を叩き、しかし忠実に我が命を守ってきた彼。
「組織」の「黒服」として唾棄すべき筈の「何か」が私の胸を締め付ける様に駆け巡るのを
無理矢理押し込めて、目の前の少女に私は声をかける。
「そうですか、B-No.004が死にましたか、それで他の者たちの動きはどうですか?」
何でもない事のように彼女の悲しみの言葉を流し、報告を促す私にB-No.005は困惑した表情を向けてくる。
「イッちゃんは悲しくないの?」
「その様な感情、私は持ち合わせていません…」
そんな私の言葉に、縋り付く少女が腰に回した腕の力を少し強めた気がした。
「あのね黒服Dさんは、チャラいお兄ちゃんとはないちんめの女の子が契約して組織から抜けちゃった」
複数人による並列契約、確かにそれをすれば契約者の負担は減るが……なかなか無茶をする。
「首塚さん達はね、十円玉のお兄ちゃんに変な刀をあげてボクたちを邪魔させようとしてるみたい、たぶん「夢の国」対策のせいで人手が足りないんだねー」
なるほど、あの化け物が、こちらに直接干渉してこないだけでもありがたい事です、しかし……彼が来ますか……。
「あとの人はー、ボクたちの事を知らなかったり、知ってても「夢の国」相手のことでいっぱいいっぱいで、あまりこっちを見てる人は少ないみたいだよー」
良い事です、我々の手札は少ない……物量でこられない分、この状況は私たちにとって最良と言って良いでしょう。
「あー、それとね、神さまのお兄ちゃんが、「鮫島事件」の力に気がついたみたい」
「どういう事です? 彼らは、神代の者たちは「鮫島事件」の能力を「消滅」だと考えていたはずなのでは?」
「わかんなーい、でも今は本当の「鮫島事件」を知ってるみたいだよー、当日にも何かする気みたいなのー」
ふむ、どういった経緯で、真の「鮫島事件」にたどり着いたのかは分かりませんが、彼らの力は強大……少し警戒しておくべきですね。
「B-No.005、彼に貴女の虫を付けておきなさい、もし、仮に彼がこの場所へと来ようとするようなら、アレの使用も認めます」
私のその命令に「はーい」と元気よく返事をする。
彼女が腕を一振りすると、その袖口からポロポロとこぼれ落ちた多数の「虫」が何処かへと向かう。
都市伝説「トゲアリトゲナシトゲトゲ」
その何とも自己矛盾し尽くした名称を持つ架空の昆虫はB-No.005の持つ能力であり、この学校町に幾数万匹も解き放たれ、数々の情報を我らへ運ぶ貴重な情報源である。
「そうだ、ねー、イッちゃん、今日は神社の方でお祭りがあるんだってー」
「トゲアリトゲナシトゲトゲ」を放ち終え、一仕事終えたとばかりに此方に笑顔を向けてくる少女。
「そうらしいですね」
「そのお祭りにボクも行ってもいい?」
可愛らしくこちらを上目遣いで問いかけてくる少女に苦笑しながら頷いてやると、B-No.005はその眼をキラキラと輝かせる。
「イッちゃんも、一緒に行こーよー」
「いえ、私はまだ仕事があるのでね、それにB-No.002を放っておく訳にもいけませんし」
そう言った、私の言葉に少し肩を落とす目の前の少女の頭を優しく撫でる。
「だから我々の分も貴女が楽しんできてください、お土産、楽しみにしていますよ」
私の言葉に笑顔で大きく頷き、施設の外へと駆けていくB-No.005を眺めて大きく溜息を吐く。
「楽しむ、というその感情も作戦が終われば無くなるのだから、せめて最後だけでも存分に楽しんできてください」
そんな私の呟きだけが、ただただ暗い静寂に満ちたこの地下施設の中で小さく消えていった。
複数人による並列契約、確かにそれをすれば契約者の負担は減るが……なかなか無茶をする。
「首塚さん達はね、十円玉のお兄ちゃんに変な刀をあげてボクたちを邪魔させようとしてるみたい、たぶん「夢の国」対策のせいで人手が足りないんだねー」
なるほど、あの化け物が、こちらに直接干渉してこないだけでもありがたい事です、しかし……彼が来ますか……。
「あとの人はー、ボクたちの事を知らなかったり、知ってても「夢の国」相手のことでいっぱいいっぱいで、あまりこっちを見てる人は少ないみたいだよー」
良い事です、我々の手札は少ない……物量でこられない分、この状況は私たちにとって最良と言って良いでしょう。
「あー、それとね、神さまのお兄ちゃんが、「鮫島事件」の力に気がついたみたい」
「どういう事です? 彼らは、神代の者たちは「鮫島事件」の能力を「消滅」だと考えていたはずなのでは?」
「わかんなーい、でも今は本当の「鮫島事件」を知ってるみたいだよー、当日にも何かする気みたいなのー」
ふむ、どういった経緯で、真の「鮫島事件」にたどり着いたのかは分かりませんが、彼らの力は強大……少し警戒しておくべきですね。
「B-No.005、彼に貴女の虫を付けておきなさい、もし、仮に彼がこの場所へと来ようとするようなら、アレの使用も認めます」
私のその命令に「はーい」と元気よく返事をする。
彼女が腕を一振りすると、その袖口からポロポロとこぼれ落ちた多数の「虫」が何処かへと向かう。
都市伝説「トゲアリトゲナシトゲトゲ」
その何とも自己矛盾し尽くした名称を持つ架空の昆虫はB-No.005の持つ能力であり、この学校町に幾数万匹も解き放たれ、数々の情報を我らへ運ぶ貴重な情報源である。
「そうだ、ねー、イッちゃん、今日は神社の方でお祭りがあるんだってー」
「トゲアリトゲナシトゲトゲ」を放ち終え、一仕事終えたとばかりに此方に笑顔を向けてくる少女。
「そうらしいですね」
「そのお祭りにボクも行ってもいい?」
可愛らしくこちらを上目遣いで問いかけてくる少女に苦笑しながら頷いてやると、B-No.005はその眼をキラキラと輝かせる。
「イッちゃんも、一緒に行こーよー」
「いえ、私はまだ仕事があるのでね、それにB-No.002を放っておく訳にもいけませんし」
そう言った、私の言葉に少し肩を落とす目の前の少女の頭を優しく撫でる。
「だから我々の分も貴女が楽しんできてください、お土産、楽しみにしていますよ」
私の言葉に笑顔で大きく頷き、施設の外へと駆けていくB-No.005を眺めて大きく溜息を吐く。
「楽しむ、というその感情も作戦が終われば無くなるのだから、せめて最後だけでも存分に楽しんできてください」
そんな私の呟きだけが、ただただ暗い静寂に満ちたこの地下施設の中で小さく消えていった。