「あーぁ、つまんなーい・・・」
8月1日
夏休み真っ盛りで主に若年者で賑わうファミリーレストランのとある席で、
溜息混じりに呟いたのはショートケーキを頬張る少女だった
少し癖のついた黒く長い髪を左右で縛って腰までのツインテールにしていて、
薄めの胸に小さな花の杖のペンダントを提げた、小柄な少女
紅坂 百花(コウサカ モモカ)、16歳
中央高校に通っている花の女子高生である
そして、彼女がこの物語の主人公だ
夏休み真っ盛りで主に若年者で賑わうファミリーレストランのとある席で、
溜息混じりに呟いたのはショートケーキを頬張る少女だった
少し癖のついた黒く長い髪を左右で縛って腰までのツインテールにしていて、
薄めの胸に小さな花の杖のペンダントを提げた、小柄な少女
紅坂 百花(コウサカ モモカ)、16歳
中央高校に通っている花の女子高生である
そして、彼女がこの物語の主人公だ
「ははは、百花、お前『つまんない』と言ってる割にはもう5皿目を平らげてるぞ?」
「だってここのショートケーキ美味しいんだもん、はむっ」
「だってここのショートケーキ美味しいんだもん、はむっ」
百花が話しているのは、相席に座っている黒の短髪の男らしげな人物
しかし“彼”ではなく“彼女”だ。その証拠に、バストはCカップである
百花の親友、萌黄野 風音(モエギノ カザネ)。百花とは同い年であり、クラスメイトでもある
しかし“彼”ではなく“彼女”だ。その証拠に、バストはCカップである
百花の親友、萌黄野 風音(モエギノ カザネ)。百花とは同い年であり、クラスメイトでもある
「ま、気持ちは分かるぞ。折角の誕生日に想い人がいないなんてそんな寂しいこt」
「わわわ、わ、違う違う、あいつとはただの幼馴染なだけだから、そんなんじゃないってば!」
「ほら、顔真っ赤だぞw」
「風音のバカ!」
「わわわ、わ、違う違う、あいつとはただの幼馴染なだけだから、そんなんじゃないってば!」
「ほら、顔真っ赤だぞw」
「風音のバカ!」
むすっとした顔を作る百花を見て、風音は高らかに笑った
百花も釣られて笑うが、すぐに表情が曇ってしまった
百花も釣られて笑うが、すぐに表情が曇ってしまった
「・・・そりゃ、さ。確かにあいつにも来て欲しかったけど
でも北海道に里帰りなら仕方ないじゃん」
「言ってる事と顔色が反比例してるぞ」
「そう?」
「うん。それに白鷺だって、お前の誕生日祝ってやりたかったと思うぞ
きっと、帰って来た時にプレゼントとか持ってくるって」
「え、そ、そうかなぁ? そこまでされてもなー」
「すっごく嬉しそうだぞ;」
「からかわないでよもう!///」
でも北海道に里帰りなら仕方ないじゃん」
「言ってる事と顔色が反比例してるぞ」
「そう?」
「うん。それに白鷺だって、お前の誕生日祝ってやりたかったと思うぞ
きっと、帰って来た時にプレゼントとか持ってくるって」
「え、そ、そうかなぁ? そこまでされてもなー」
「すっごく嬉しそうだぞ;」
「からかわないでよもう!///」
再び朗らかに笑いあう2人
今度は百花も楽しそうで、胸のペンダントも踊っていた
今度は百花も楽しそうで、胸のペンダントも踊っていた
「・・・そういえば、」
「ん?」
「百花のそのペンダント。中学の時は見なかったけど、何なんだ」
「あ、これ? 可愛いでしょ。高校入学決まった時にお婆ちゃんから貰ったの
「蓮の杖」っていうお呪いの道具なんだって」
「お呪い・・・何かちょっと怖いぞ;」
「大丈夫大丈夫、ただのペンダントだもんこれw」
「いや気をつけた方が良いぞ、世の中何が起こるか分かんないし」
「風音ってば、おじさんみたいなこと言わないでよ」
「ん?」
「百花のそのペンダント。中学の時は見なかったけど、何なんだ」
「あ、これ? 可愛いでしょ。高校入学決まった時にお婆ちゃんから貰ったの
「蓮の杖」っていうお呪いの道具なんだって」
「お呪い・・・何かちょっと怖いぞ;」
「大丈夫大丈夫、ただのペンダントだもんこれw」
「いや気をつけた方が良いぞ、世の中何が起こるか分かんないし」
「風音ってば、おじさんみたいなこと言わないでよ」
と、2人が話している途中で、携帯電話からメロディが流れた
どうやら風音の物らしい、開いて画面を確認し何度かボタン操作をしている
どうやら風音の物らしい、開いて画面を確認し何度かボタン操作をしている
「・・・あ、やばい、百花ごめん、用事が出来た」
「用事? ううん気にしないで、今日はご馳走様」
「おう、じゃあまた明日―――って、百花、『ご馳走様』って何だ?」
「え? 今日はあたしの誕生日だよ? だからこれは風音からあたしへのプレゼントって事で」
「それでやたらと食べまくってたのか!? お前意地汚いぞ!」
「おーっほっほっほ、何と言われようとあたしが正義よ! じゃ、バイビィ♪」
「用事? ううん気にしないで、今日はご馳走様」
「おう、じゃあまた明日―――って、百花、『ご馳走様』って何だ?」
「え? 今日はあたしの誕生日だよ? だからこれは風音からあたしへのプレゼントって事で」
「それでやたらと食べまくってたのか!? お前意地汚いぞ!」
「おーっほっほっほ、何と言われようとあたしが正義よ! じゃ、バイビィ♪」
後ろ手に手を振り、「この店の制服相変わらず派手ねぇ」などと呟きながら、
百花は財布を覗きこむ風音を背にして店を出た
百花は財布を覗きこむ風音を背にして店を出た
† † † † † † †
「あーぁ、つまんなーい・・・」
本日二度目のこの台詞が吐かれたのは、かんかん照りの住宅街だった
ファミレスからの帰り道なのだが、百花は暑さと退屈が重なって酷い顔をしていた
ファミレスからの帰り道なのだが、百花は暑さと退屈が重なって酷い顔をしていた
「暑い、つまんない、暇、超暇・・・あぁ帰ったらどうしよっかなぁ・・・
宿題まだだけど、あいつが帰ってくるまでやるの嫌だし・・・」
宿題まだだけど、あいつが帰ってくるまでやるの嫌だし・・・」
ところで、先程から散々百花が零している“あいつ”とは、風音の発言の通り彼女の幼馴染の少年である
百花はその少年に想いを寄せているようだが、真相は定かではない・・・かも、知れない
彼についてはまた追々語っていくとしよう
さて、あぁでもないこうでもないとぶつぶつ呟きながら炎天下を歩いていた時だった
百花はその少年に想いを寄せているようだが、真相は定かではない・・・かも、知れない
彼についてはまた追々語っていくとしよう
さて、あぁでもないこうでもないとぶつぶつ呟きながら炎天下を歩いていた時だった
「・・・ん?」
ふと前の方に目をやると、道路の脇で蹲っている小学校低学年程の少女が見えた
―――こんな暑い日にどうしたんだろう?
百花は少女に近づき、身を屈めて尋ねた
―――こんな暑い日にどうしたんだろう?
百花は少女に近づき、身を屈めて尋ねた
「お嬢ちゃん、どうかしたの? こんなところにいたら熱中症になっちゃうよ?」
百花の声に反応し、少女が顔をあげた
少女は目を真っ赤に腫らして、頬を涙で濡らしていた
少女は目を真っ赤に腫らして、頬を涙で濡らしていた
「ッ!! な、何があったの!?誰かに虐められたの!?」
「・・・ううん、違う、の・・・お人形、さん、無くしちゃっ、て・・・」
「人形?」
「うん、すごく、すごく、大事なお人形・・・どこに行っちゃったのか、分からないの・・・ひっぐ」
「・・・ううん、違う、の・・・お人形、さん、無くしちゃっ、て・・・」
「人形?」
「うん、すごく、すごく、大事なお人形・・・どこに行っちゃったのか、分からないの・・・ひっぐ」
また顔を膝に埋めて泣き始める少女
百花は、何かを決心したかのように頷くと、少女の頭をぽん、と優しく撫でた
百花は、何かを決心したかのように頷くと、少女の頭をぽん、と優しく撫でた
「大丈夫、絶対見つかるから。お人形さんも、お嬢ちゃんの事、何処かで待ってるよ」
「・・・何処かで?」
「そう、だから迎えに行こうよ。お姉ちゃんも一緒に行ってあげるからさ」
「本当?」
「えぇ本当よ。あたしは百花。貴方は?」
「ミミ・・・私、深美って言うの」
「そっか。じゃ、行こう深美ちゃん!」
「うん!百花お姉ちゃん!」
「・・・何処かで?」
「そう、だから迎えに行こうよ。お姉ちゃんも一緒に行ってあげるからさ」
「本当?」
「えぇ本当よ。あたしは百花。貴方は?」
「ミミ・・・私、深美って言うの」
「そっか。じゃ、行こう深美ちゃん!」
「うん!百花お姉ちゃん!」
こうして、2人の大捜索が始まった
道路の脇や排水溝、塀の上
民家の隙間、若しくは敷地内
草むらの中、木の上、電柱の上
ネコやカラスの観察、近隣住民の聞き込み調査
あらゆる所を探しまわり
あらゆる方法で調査を進めた
しかし、手がかりになりそうなものは掴めず、
結局、人形が見つからないまま、時間だけが過ぎていった
道路の脇や排水溝、塀の上
民家の隙間、若しくは敷地内
草むらの中、木の上、電柱の上
ネコやカラスの観察、近隣住民の聞き込み調査
あらゆる所を探しまわり
あらゆる方法で調査を進めた
しかし、手がかりになりそうなものは掴めず、
結局、人形が見つからないまま、時間だけが過ぎていった
「う~ん、何処にあるのかなぁ・・・」
「・・・ごめんね、百花お姉ちゃん。私の為に・・・」
「そんな、謝らなくても良いってば
それより深美ちゃん、何か思い出せそうなこととかない?」
「思い出せそうなこと?」
「ほら、最後に遊んだところとか、小さなことでも良いから」
「・・・・・・あ! 公園!」
「よし、急ごう!」
「・・・ごめんね、百花お姉ちゃん。私の為に・・・」
「そんな、謝らなくても良いってば
それより深美ちゃん、何か思い出せそうなこととかない?」
「思い出せそうなこと?」
「ほら、最後に遊んだところとか、小さなことでも良いから」
「・・・・・・あ! 公園!」
「よし、急ごう!」
深美の手を引き、百花は公園に向かって走り出した
5分程で目的地に着いたが、風は涼しく月が輝きを増し、鳥は一日の終わりを告げながら空を飛んでいた
既に誰もいなくなった公園内を、舐めるように探し回る百花と深美
夏の夕方は明るく、足元が見難いことはないのだが、それでも探し物は見つからなかった
5分程で目的地に着いたが、風は涼しく月が輝きを増し、鳥は一日の終わりを告げながら空を飛んでいた
既に誰もいなくなった公園内を、舐めるように探し回る百花と深美
夏の夕方は明るく、足元が見難いことはないのだが、それでも探し物は見つからなかった
「参ったわねぇ・・・ここでもなかったか」
「ぐすん・・・やっぱり、怒って何処かに行っちゃったのかなぁ・・・」
「元気出して深美ちゃん、貴方のお人形さんは絶対見つかるから」
「ぐすん・・・やっぱり、怒って何処かに行っちゃったのかなぁ・・・」
「元気出して深美ちゃん、貴方のお人形さんは絶対見つかるから」
泣きじゃくる深美を、百花はそっと撫でて宥めていた
と、その時
と、その時
「君達が探しているのはこれかね?」
生気の感じない、冷たく低い声が聞こえた
振り向くと、そこには夏だというのに黒いマントを羽織った、30代前後の男性が立っていた
その手には金髪の西洋風の女の子を象った人形が掴まれていた
振り向くと、そこには夏だというのに黒いマントを羽織った、30代前後の男性が立っていた
その手には金髪の西洋風の女の子を象った人形が掴まれていた
「あ、あれは・・・」
「お人形さんだぁ!!」
「お人形さんだぁ!!」
一気ににこやかな表情を作り、夢中で駆け寄る深美
百花も、ほっと胸を撫で下ろした
が、男は深美が近づくと、ひょい、と人形を頭上に掲げた
百花も、ほっと胸を撫で下ろした
が、男は深美が近づくと、ひょい、と人形を頭上に掲げた
「え・・・?」
「ッ! おいおっさん、どういうこと!?」
「おっさんとは失礼な・・・何、私は一言もこれを返すとは言ってないと思うが」
「返してよぉ、私のお人形さん返してぇ!!」
「ッ! おいおっさん、どういうこと!?」
「おっさんとは失礼な・・・何、私は一言もこれを返すとは言ってないと思うが」
「返してよぉ、私のお人形さん返してぇ!!」
涙声で必死に手を伸ばすが、当然その手は人形に届かない
男はにやにやと不気味な笑みを浮かべ、くるりと回ってマントを翻しながら深美から逃げるように後ろに下がった
男はにやにやと不気味な笑みを浮かべ、くるりと回ってマントを翻しながら深美から逃げるように後ろに下がった
「おっさん! その人形は深美ちゃんのものよ! 返しなさいよ!」
「はっはっは、なら少女よ、この人形は本当にその子の元に帰りたがっていると思うかい?」
「・・・え? ど、どういう意味よ?」
「そのままの意味だよ。私には分かるのだ、この人形の気持ちが
今まで愛し愛され、信じてきた持ち主に、突然忘れ去られた悲しみが、怒りが・・・憎しみが」
「はっはっは、なら少女よ、この人形は本当にその子の元に帰りたがっていると思うかい?」
「・・・え? ど、どういう意味よ?」
「そのままの意味だよ。私には分かるのだ、この人形の気持ちが
今まで愛し愛され、信じてきた持ち主に、突然忘れ去られた悲しみが、怒りが・・・憎しみが」
男の見せる怪しい笑みが、どす黒いものに変貌した
と同時に、百花は公園内の空気が、一層寒く、重いものに変わったような気がしていた
と同時に、百花は公園内の空気が、一層寒く、重いものに変わったような気がしていた
(な・・・何なの、これ・・・?)
「人形にとり憑いた「付喪神」よ・・・持ち主の愛を憎しみに変え、今その憎悪の念を解き放て!!」
「人形にとり憑いた「付喪神」よ・・・持ち主の愛を憎しみに変え、今その憎悪の念を解き放て!!」
男が叫び、人形を頭上にひょう、と投げた
瞬間、人形から漆黒のオーラが溢れ出し、人形全体を包み込む
瞬間、人形から漆黒のオーラが溢れ出し、人形全体を包み込む
「ッ!?」
「お人形さぁん!!」
「お人形さぁん!!」
オーラが晴れ、中から現れたのは、深美の人形ではなかった
いや、“元は”そうだったのかも知れない
5メートルはあろう巨大な身体、両手には鋭い爪が伸び、
美しかった金髪は振り乱れ、可愛らしかった笑顔は邪悪な笑みへと変わり果てた
それは、正しく化け物になってしまっていたのだ
いや、“元は”そうだったのかも知れない
5メートルはあろう巨大な身体、両手には鋭い爪が伸び、
美しかった金髪は振り乱れ、可愛らしかった笑顔は邪悪な笑みへと変わり果てた
それは、正しく化け物になってしまっていたのだ
「う、うそ・・・あたし、夢でも見てるの?」
「残念ながらこれは正真正銘ノンフィクションだよ!
さぁ往け、私のしもべよ! お前が最も憎む者に復讐してやれ!!」
「モエルゥゥゥゥゥゥゥゥワァァァァァァァァァァァ!!!!」
「残念ながらこれは正真正銘ノンフィクションだよ!
さぁ往け、私のしもべよ! お前が最も憎む者に復讐してやれ!!」
「モエルゥゥゥゥゥゥゥゥワァァァァァァァァァァァ!!!!」
人形の化け物は咆哮をあげ、爪を立てて深美に向けて振りかぶった
「深美ちゃん!!」
間一髪、百花が深美を抱きしめ飛び退いた
爪は地面を穿ち、辺りに砂塵を撒き散らす
爪は地面を穿ち、辺りに砂塵を撒き散らす
「ほぅ、邪魔をするのか小娘?」
「逃げるよ深美ちゃん!」
「え、あ、待tt」
「逃げるよ深美ちゃん!」
「え、あ、待tt」
深美が何か言おうとしたが、百花は聞かずに走り出し、公園から脱出した
「折角の獲物を逃がすものか。追え!」
「モエルゥゥゥゥゥワァァァァァァァァァァ!!!」
「モエルゥゥゥゥゥワァァァァァァァァァァ!!!」
男が化け物の肩に飛び乗ると、化け物は遊具を蹂躙しながら公園を出た
己が最も憎い人間を殺す為に
己が最も憎い人間を殺す為に
† † † † † † †
塀と塀の間の狭い道
声を押し殺すような小さな2つの息切れが、闇の中に漏れていた
声を押し殺すような小さな2つの息切れが、闇の中に漏れていた
「っはぁ、はぁ・・・な、何なのよあれ・・・」
「私のお人形さん・・・大事なおにんぎょうさんがぁ・・・」
「深美ちゃん・・・」
「私のお人形さん・・・大事なおにんぎょうさんがぁ・・・」
「深美ちゃん・・・」
話しかけようとした寸前に、化け物の奇抜な咆哮が耳に届いた
それに続いて、あの男の声が聞こえる
それに続いて、あの男の声が聞こえる
「小娘共ぉ! 隠れても無駄だ! この一帯を破壊してでも見つけ出すぞ!
言っておくが、人を傷つけようが殺そうが私には造作もない事だ!
だがお前達が自分から出てくれば、誰も死ななくて済むんだがなぁ? はっはっはっはっは!!」
言っておくが、人を傷つけようが殺そうが私には造作もない事だ!
だがお前達が自分から出てくれば、誰も死ななくて済むんだがなぁ? はっはっはっはっは!!」
ぎり、と百花は強く歯を食いしばった
深美を死なせたくない
しかし、大勢の関係のない人達を死なせるなんて・・・
百花は深美と目線を合わせるように姿勢を低くして、肩をそっと掴んで語りかけた
深美を死なせたくない
しかし、大勢の関係のない人達を死なせるなんて・・・
百花は深美と目線を合わせるように姿勢を低くして、肩をそっと掴んで語りかけた
「深美ちゃん、貴方だけでも逃げて」
「そんな、お姉ちゃんは」
「私のことは良いから。早くしないと貴方も殺されちゃう」
「だって、私が逃げてもお姉ちゃんが」
「早く逃げて!!」
「そんな、お姉ちゃんは」
「私のことは良いから。早くしないと貴方も殺されちゃう」
「だって、私が逃げてもお姉ちゃんが」
「早く逃げて!!」
思わずきつく言ってしまい、ふと我に返る百花
深美は今にも泣きそうだったが、彼女はシャツの裾を引っ張り、ぐしぐしと涙を拭った
深美は今にも泣きそうだったが、彼女はシャツの裾を引っ張り、ぐしぐしと涙を拭った
「・・・ヤダ。ずっと、お姉ちゃんと、一緒にいる」
「深美ちゃん、どうして・・・」
「私の所為なの。私の所為で、お姉ちゃんや、知らない人達を危ない目に遭わせて・・・
だから、ここにいる。それに、お人形も返して欲しい!」
「深美ちゃん、どうして・・・」
「私の所為なの。私の所為で、お姉ちゃんや、知らない人達を危ない目に遭わせて・・・
だから、ここにいる。それに、お人形も返して欲しい!」
一生懸命、涙を堪えて訴える
―――この子、強い
百花は少し強めに、深美を抱きしめた
―――この子、強い
百花は少し強めに、深美を抱きしめた
「・・・分かった。深美ちゃんはここで待ってて」
「え・・・?」
「大丈夫だから。お姉ちゃんが、お人形さんを取り返してあげる」
「っだめ、お姉ちゃん!」
「え・・・?」
「大丈夫だから。お姉ちゃんが、お人形さんを取り返してあげる」
「っだめ、お姉ちゃん!」
深美の声も聞かず、百花は陰から飛び出した
「やい、おっさん!!」
「だから誰がおっさんだ・・・む、もう一人は何処だね?」
「あんたには関係ないでしょ? それより、その人形を返しなさい!」
「は? はっはっはっはっは!! しつこいねぇ君も
これはもうあの少女の人形ではない。憎しみに溺れた殺戮マシーンだよ!」
「違う! 例えどんな姿になっても、それは深美ちゃんのお人形さんなんだよ!
あの子の、大切な宝物・・・ううん、友達なのよ!!」
「だから誰がおっさんだ・・・む、もう一人は何処だね?」
「あんたには関係ないでしょ? それより、その人形を返しなさい!」
「は? はっはっはっはっは!! しつこいねぇ君も
これはもうあの少女の人形ではない。憎しみに溺れた殺戮マシーンだよ!」
「違う! 例えどんな姿になっても、それは深美ちゃんのお人形さんなんだよ!
あの子の、大切な宝物・・・ううん、友達なのよ!!」
その時、誰が気付いただろうか
彼女の胸のペンダント―――「蓮の杖」が、僅かに震えた事に
彼女の胸のペンダント―――「蓮の杖」が、僅かに震えた事に
「宝物、友達・・・下らない、そんなことを言いにのこのこ出てきたのか?
見たところ、お前はあの少女と何の接点も無いようじゃないか
見ず知らずの人間の事に、何故首を突っ込むのだ?」
「理由なんて無いわ! ただ・・・あたしが正義だからよ!!」
見たところ、お前はあの少女と何の接点も無いようじゃないか
見ず知らずの人間の事に、何故首を突っ込むのだ?」
「理由なんて無いわ! ただ・・・あたしが正義だからよ!!」
百花の、強い想い、願い、信念が
胸に提げた「蓮の杖」に共鳴し、凄まじい光を放った
胸に提げた「蓮の杖」に共鳴し、凄まじい光を放った
「ぐあっ!?」
「は、「蓮の杖」が・・・光って・・・?」
「は、「蓮の杖」が・・・光って・・・?」
―――――――――『 』
「ッ! こ、声?」
―――――――――『 』
「ケイ、ヤク・・・うん、分かった、契約する。だから、私に力を貸して!
「蓮の杖」――――いいえ、「ロータス・ワンド」!!」
「蓮の杖」――――いいえ、「ロータス・ワンド」!!」
ぶちっ、とネックレスを引き千切ると、彼女の手に握られた「蓮の杖」が眩い光を放ち、
それは長く、そして大きくなり、ペンダントの10倍、いや20倍以上、百花の身長程にまで巨大化した
全体的に銀色の杖であり、その先端には赤を主としたカラフルな蕾の装飾がなされていた
それは長く、そして大きくなり、ペンダントの10倍、いや20倍以上、百花の身長程にまで巨大化した
全体的に銀色の杖であり、その先端には赤を主としたカラフルな蕾の装飾がなされていた
「ば、馬鹿な・・・契約者だとぉ!?」
「暗闇より出でし者達を、閃光の力を借りて掻き消さん!
紅き花、ここに咲く! 我が名は魔導少女クリムゾンブロッサム!!」
「暗闇より出でし者達を、閃光の力を借りて掻き消さん!
紅き花、ここに咲く! 我が名は魔導少女クリムゾンブロッサム!!」
くるくると杖を回し、両手で杖を持って構える
直後、先端の蕾が展開し、可憐な蓮の花が咲いた
直後、先端の蕾が展開し、可憐な蓮の花が咲いた
「ええい、戯言を! やれ!」
「モエルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥワァァァァァァァァァァァ!!!」
「モエルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥワァァァァァァァァァァァ!!!」
男が肩から飛び降りると、化け物はどす、どすと地を響かせながら接近し、
鋭い爪を立てて百花に襲いかかった
鋭い爪を立てて百花に襲いかかった
「闇より生れし者、光に触れるべからず
さすれば闇は消え去り、光に満ち溢れるだろう
邪悪なる者から我を護れ、『スィギア・レウォルフ』!」
さすれば闇は消え去り、光に満ち溢れるだろう
邪悪なる者から我を護れ、『スィギア・レウォルフ』!」
蓮の花の装飾が強い光を放ち、光の花を出現させ、
化け物の爪を弾き返し、そのままよろけさせた
隙を狙い、百花は助走をつけて跳び上がる
化け物の爪を弾き返し、そのままよろけさせた
隙を狙い、百花は助走をつけて跳び上がる
「光よ、命の輝きよ、世を覆う闇を振り祓え! 『トゥキャプミィ・レウォルフ』!!」
呪文を唱え、七色に輝く杖の先端を、化け物の顔面に殴りつけた
魔力の込められた一撃は爆発的な威力を生み出し、化け物を一瞬宙に浮かせ、直後に地面に叩きつけた
魔力の込められた一撃は爆発的な威力を生み出し、化け物を一瞬宙に浮かせ、直後に地面に叩きつけた
「モエ゙ッ・・・・ワァ・・・・」
「なっ、こ、こんなことが・・・ふ、ふざけるなぁ!!」
「ふざけてるのはあんたの方でしょ! 一気に終わらせてあげるから覚悟しなさい!」
「なっ、こ、こんなことが・・・ふ、ふざけるなぁ!!」
「ふざけてるのはあんたの方でしょ! 一気に終わらせてあげるから覚悟しなさい!」
くるりと杖を一回転させ、蓮の花を天に向けるように止める
「聖なる光よ、善なる輝きよ
憎悪、怨恨、悲哀、殺意、邪悪なる意思を全て討ち祓い、その者の心を清め洗え!」
憎悪、怨恨、悲哀、殺意、邪悪なる意思を全て討ち祓い、その者の心を清め洗え!」
七色に輝く装飾を、今まさに立ち上がろうとしている化け物に向けて構え、
蓮の花の中央部に光を凝縮し、巨大な光弾を作り出す
蓮の花の中央部に光を凝縮し、巨大な光弾を作り出す
「百花繚乱! 『グナブ・ギブ・レウォルフ』!!」
光弾を射出した瞬間に、それは大きな光り輝く花となり、
巨大な花弁が人形の化け物を包み込み、ぱぁんっ!!と煌びやかな爆発を起こした
破壊ではなく、浄化の爆発
悪しき物のみを滅ぼし、正しき物は一切害を与えない力
巨大な花弁が人形の化け物を包み込み、ぱぁんっ!!と煌びやかな爆発を起こした
破壊ではなく、浄化の爆発
悪しき物のみを滅ぼし、正しき物は一切害を与えない力
「んっと・・・おっとっと」
空を眺め、落ちてきた物を見事キャッチする
それは、ついさっきまで化け物に姿を変えられていた、深美の人形だった
それは、ついさっきまで化け物に姿を変えられていた、深美の人形だった
「っく・・・「付喪神」の暴走を抑えるとは、驚いたよ」
「何暢気な事言ってんのよ、次はあんたがぶっ飛ばされる番だからね!」
「はっはっは、威勢の良い女性も嫌いではない・・・が、私はそろそろお暇させて貰うよ
出来れば二度と出会いたくないが、近い内に出会ってしまうかも知れないな」
「ちょっ、逃げる気!? 待ちなさい!!」
「何暢気な事言ってんのよ、次はあんたがぶっ飛ばされる番だからね!」
「はっはっは、威勢の良い女性も嫌いではない・・・が、私はそろそろお暇させて貰うよ
出来れば二度と出会いたくないが、近い内に出会ってしまうかも知れないな」
「ちょっ、逃げる気!? 待ちなさい!!」
「ロータス・ワンド」から光の弾を発射するが、時既に遅し
男の姿はいつの間にか、黄昏の闇に消えてしまっていた
男の姿はいつの間にか、黄昏の闇に消えてしまっていた
「あぁんもう・・・ま、いっか。約束は守れたし」
と、持っていた「ロータス・ワンド」が、突如元の小さなペンダントに戻ってしまった
「・・・それにしても、これって一体・・・?」
「お姉ちゃーん!!」
「お姉ちゃーん!!」
隠れていた深美が、百花に駆け寄ってきた
深美の到着に合わせて、百花は姿勢を低くし、人形を差し出した
深美の到着に合わせて、百花は姿勢を低くし、人形を差し出した
「はい、これ。もう無くしちゃダメだからね?」
「ありがとう! お姉ちゃん、すっごくかっこよかったよ!」
「え、あ、そ、そうかな?」
「うん! プリキュアみたいだった!」
「プリッ・・・ほ、ホントに?」
「ありがとう! お姉ちゃん、すっごくかっこよかったよ!」
「え、あ、そ、そうかな?」
「うん! プリキュアみたいだった!」
「プリッ・・・ほ、ホントに?」
百花は心底嬉しそうな表情で深美に詰め寄った
「う、うん」と若干引きながら答えると、百花はデレデレとし始めた
「う、うん」と若干引きながら答えると、百花はデレデレとし始めた
(うわぁ・・・プリキュアみたいだったなんて・・・
憧れのプリキュアになれたなんて感激しちゃうなぁ・・・えへへへへ♪)
「お姉ちゃん?」
「ん、あぁ、あ、あはははは;
おっと、お父さんやお母さんが心配するよ?」
「ホントだ、真っ暗・・・こわい」
「ほらほら泣かないの。お姉ちゃんがお家まで送ってあげるから」
「わぁい♪」
憧れのプリキュアになれたなんて感激しちゃうなぁ・・・えへへへへ♪)
「お姉ちゃん?」
「ん、あぁ、あ、あはははは;
おっと、お父さんやお母さんが心配するよ?」
「ホントだ、真っ暗・・・こわい」
「ほらほら泣かないの。お姉ちゃんがお家まで送ってあげるから」
「わぁい♪」
喜ぶ深美の手をそっと握り、百花は暗がりの道を歩き始めた
「あ、そうそう、このことは誰にも言っちゃダメだよ?」
「えー!?」
「プリキュアだって正体は隠してるでしょ? だから、ね?」
「・・・分かった。約束する!」
「ありがとう深美ちゃん♪」
「えー!?」
「プリキュアだって正体は隠してるでしょ? だから、ね?」
「・・・分かった。約束する!」
「ありがとう深美ちゃん♪」
2人は指切り拳万をすると、
仲良く『スイートプリキュア♪』のオープニングテーマを歌いながら家路を辿っていった
仲良く『スイートプリキュア♪』のオープニングテーマを歌いながら家路を辿っていった
こうして、彼女―――紅坂 百花は、怪奇の世界に足を踏み入れたのだった
...続く