「あーぁ、つまんなーい・・・」
彼女の一日はこの一言で始まる
時は8月も半ばに差しかかった頃、彼女――紅坂 百花は、南区の繁華街をぶらぶらと散歩していた
本当なら友人の萌黄野 風音と共にショッピングの予定があったのだが、
向こうの都合で中止になってしまい、行き場が無くなったのでこうして歩いているのだ
時は8月も半ばに差しかかった頃、彼女――紅坂 百花は、南区の繁華街をぶらぶらと散歩していた
本当なら友人の萌黄野 風音と共にショッピングの予定があったのだが、
向こうの都合で中止になってしまい、行き場が無くなったのでこうして歩いているのだ
「むー、風音のバカ・・・そりゃまぁ予定が入ったなら仕方ないけどさぁ・・・」
溜息混じりに「ドタキャンはきつい」と呟き頭を垂れる
と、ふと己の胸できらりと光る物に視線が行った
と、ふと己の胸できらりと光る物に視線が行った
「あ、」
何気なくそれを手に取って見つめる
小さな蓮のペンダント―――彼女の契約都市伝説、「ロータス・ワンド」である
これと契約してから、彼女はこの町の怪奇に巻き込まれるようになった
「口裂け女」、「赤マント」、「モスマン」―――幾多の都市伝説に襲われ、
もしくは誰かを襲っている光景に出くわして、戦って、撃退する
いつの間にかそれが彼女の日課になっていった
計らずも自分の誕生日に、つまらなかった毎日が充実した毎日に変わったのだ
小さな蓮のペンダント―――彼女の契約都市伝説、「ロータス・ワンド」である
これと契約してから、彼女はこの町の怪奇に巻き込まれるようになった
「口裂け女」、「赤マント」、「モスマン」―――幾多の都市伝説に襲われ、
もしくは誰かを襲っている光景に出くわして、戦って、撃退する
いつの間にかそれが彼女の日課になっていった
計らずも自分の誕生日に、つまらなかった毎日が充実した毎日に変わったのだ
「都市伝説・・・契約・・・まだ分からないことだらけだけど」
ペンダントから手を離し、「よし!」と声を張り上げ気合を入れる
「今日も一仕事、やっちゃおう!」
そう言うと、彼女は元気良く、悪しき都市伝説を討伐するべく駆け出した―――
「百花!」
―――と、後ろから誰かが呼ぶ声がした
声色から察するに、どうやら若い男性のようだ
途端に百花のテンションが一気に下がると同時に、ストレスが一気に上昇した
くるりと繰り返り、そこに立っているであろう男性に怒鳴りつけた
声色から察するに、どうやら若い男性のようだ
途端に百花のテンションが一気に下がると同時に、ストレスが一気に上昇した
くるりと繰り返り、そこに立っているであろう男性に怒鳴りつけた
「ちょっとぉ! 人が折角やる気になったところなのに何で邪魔するのよ―――――」
「あ、ご、ごめん、何か邪魔しちゃった?」
「―――――って、うそ、つ、玄鳥!?」
「あ、ご、ごめん、何か邪魔しちゃった?」
「―――――って、うそ、つ、玄鳥!?」
彼女の目の前にいたのは、オーソドックスな楕円形の眼鏡をかけた、割と大人しそうな少年だった
だが、彼女は心底驚いていた
彼こそが、北海道に里帰りしていた為に百花の誕生日を祝えなかった、彼女の幼馴染―――白鷺 玄鳥(シラサギ ツバメ)なのだ
だが、彼女は心底驚いていた
彼こそが、北海道に里帰りしていた為に百花の誕生日を祝えなかった、彼女の幼馴染―――白鷺 玄鳥(シラサギ ツバメ)なのだ
「久しぶりだね百花。時間が空いてたら話があったんだけど・・・」
「え、あ、その、や、やっぱりまた今度頑張るわ! 焦っててもどうせ失敗するだけだし!
だっ、だから話って何よ教えなさいよ!!」
「うわっ!? も、百花、危ないから引っ張るのやめてっ」
「え、あ、その、や、やっぱりまた今度頑張るわ! 焦っててもどうせ失敗するだけだし!
だっ、だから話って何よ教えなさいよ!!」
「うわっ!? も、百花、危ないから引っ張るのやめてっ」
玄鳥の言う事も聞かず、百花は彼の腕を引いていそいそと南区を離れた
† † † † † † †
所変わって閑静な住宅地の多い東区
相変わらず百花が玄鳥の腕を引いている状態が続いていた
男女の立場は逆な気もするが、こうして見るとカップルにも見える気がしないでもない
相変わらず百花が玄鳥の腕を引いている状態が続いていた
男女の立場は逆な気もするが、こうして見るとカップルにも見える気がしないでもない
「百花、何もこんなところまでこなくても」
「ど、どうせなら誰もいないところの方が・・・その・・・ロマンがあっていいじゃない」
「へ? ロマン?」
「っな、何でもないわよ!・・・こ、この辺りなら良いかな・・・?」
「ど、どうせなら誰もいないところの方が・・・その・・・ロマンがあっていいじゃない」
「へ? ロマン?」
「っな、何でもないわよ!・・・こ、この辺りなら良いかな・・・?」
キョロキョロと周囲を見回し、誰もいない事を確認すると、百花はそそくさと電柱の陰に隠れて、
そこでようやく玄鳥を解放したのだった
そこでようやく玄鳥を解放したのだった
「さ、さあ、ここなら良いわよ!」
「どうしたの百花? 何だか顔が真っ赤だけど」
「き、今日は暑いわねぇ、それよりっは、話って何よ!」
「どうしたの百花? 何だか顔が真っ赤だけど」
「き、今日は暑いわねぇ、それよりっは、話って何よ!」
尚も顔を真っ赤に染めながら、照れ隠しするように怒鳴る百花
実は彼女、いつからかは分からないが、玄鳥に対して恋心を抱いているのだ
本人としては認めたくない事象なのだが、自分の心に嘘を吐く事は出来ず
だからと言って誰に相談する事もせず、打ち明ける事もせず、何年間も心の奥にしまい込んでいたのだ
それ故、玄鳥と2人っきりである今この瞬間は、彼女にとって非常に貴重な時間だ
さらに彼が言わんとしている事が自分への想いの告白ならしめたものである
実は彼女、いつからかは分からないが、玄鳥に対して恋心を抱いているのだ
本人としては認めたくない事象なのだが、自分の心に嘘を吐く事は出来ず
だからと言って誰に相談する事もせず、打ち明ける事もせず、何年間も心の奥にしまい込んでいたのだ
それ故、玄鳥と2人っきりである今この瞬間は、彼女にとって非常に貴重な時間だ
さらに彼が言わんとしている事が自分への想いの告白ならしめたものである
「そうそう、君に話したい事、というか、伝えたい事があって」
玄鳥がそう切り出した瞬間に、百花の心臓が高鳴り、耳に全神経を集中させた
「あり得ない、ある筈がない」と言い聞かせるが、心のどこかで期待してしまっている自分に苛立つと同時に、
自分のこの心が嘘ではないと分かった安心感が彼女を満たした
「あり得ない、ある筈がない」と言い聞かせるが、心のどこかで期待してしまっている自分に苛立つと同時に、
自分のこの心が嘘ではないと分かった安心感が彼女を満たした
「それで、実は――――――」
百花のテンションが最高潮に達した時だった
「またダメっしたね・・・」
「うぅん、どうにかならないかしら」
「うぅん、どうにかならないかしら」
どんっ!と百花は玄鳥を押しのけて電柱にピッタリと密着して隠れた
彼女には隠れる理由などない筈なのだが・・・
それはともかく、声の主は2人の男女だった
服装から察するに、この町の役人のようだ
―――何かあったのかな?
息を潜め、今度は2人に向けて聞き耳を立てた
彼女には隠れる理由などない筈なのだが・・・
それはともかく、声の主は2人の男女だった
服装から察するに、この町の役人のようだ
―――何かあったのかな?
息を潜め、今度は2人に向けて聞き耳を立てた
「また上司に怒られちゃうわ、私達が悪い訳じゃないのに」
「でも、あの木が子供達に愛されてるのは分かってた事じゃないスか、仕方ないっスよ」
「貴方はどっちの味方なの? これから木を切ろうっていう立場の人間でしょうが!」
「っす、すいません!」
「でも、あの木が子供達に愛されてるのは分かってた事じゃないスか、仕方ないっスよ」
「貴方はどっちの味方なの? これから木を切ろうっていう立場の人間でしょうが!」
「っす、すいません!」
やけに大声で話しながら、2人はすたこらと歩き去っていった
2人が見えなくなったところで、気を失っていたらしい玄鳥が唸りながら目覚めた
2人が見えなくなったところで、気を失っていたらしい玄鳥が唸りながら目覚めた
「うぅ、い、一体何が・・・」
「木・・・切るって、もしかして・・・! ごめん玄鳥、ちょっと用事できちゃった!」
「え、ちょっ、百花!?」
「木・・・切るって、もしかして・・・! ごめん玄鳥、ちょっと用事できちゃった!」
「え、ちょっ、百花!?」
玄鳥の声に耳もくれず走り出す百花
辿りついた場所は、さっきまでいた地点からそう離れていない公園だった
この公園には樹齢500年相当の巨木が1本聳え立っており、
近所の子供達から、“木のお爺さん”という事で『キノ爺』と呼ばれ、とても慕われていたのだ
その木の周りを囲むように子供達が屯していたことから、彼女は己の予想が概ね当たっていた事を悟る
辿りついた場所は、さっきまでいた地点からそう離れていない公園だった
この公園には樹齢500年相当の巨木が1本聳え立っており、
近所の子供達から、“木のお爺さん”という事で『キノ爺』と呼ばれ、とても慕われていたのだ
その木の周りを囲むように子供達が屯していたことから、彼女は己の予想が概ね当たっていた事を悟る
「やっぱり・・・」
「ッハァ、ハァ・・・も、百花、どうかしたの―――あ、あれは?」
「ッハァ、ハァ・・・も、百花、どうかしたの―――あ、あれは?」
後を追ってきた玄鳥が、息を荒げながら泣いている子供達の群れを見て首を傾げている
その問いに、百花は悲しげに答えた
その問いに、百花は悲しげに答えた
「あの木は、この公園の人気者なのよ
だけど年老いて元気が無くなって、切られる事になっちゃったの
それが嫌だから、あの子達は町の役人が視察に来る度に、公園から追い返してた・・・ってところかな」
「そう・・・可哀想だね、あの木も、子供達も」
だけど年老いて元気が無くなって、切られる事になっちゃったの
それが嫌だから、あの子達は町の役人が視察に来る度に、公園から追い返してた・・・ってところかな」
「そう・・・可哀想だね、あの木も、子供達も」
話を聞いて、玄鳥も悲しげな表情になり、そして吸い込まれるように公園へと踏み入った
百花も、彼に続いて巨木の元へ向かった時だった
百花も、彼に続いて巨木の元へ向かった時だった
「年寄りは死ね!生きる力のない者は死ね!・・・人間は身勝手で残酷な生き物だ
そうは思わないかね、子供達諸君?」
そうは思わないかね、子供達諸君?」
氷のような冷たい、低い男声が、公園一帯に響き渡り、百花を含めたその場にいる子供達に注目させる
黒いマントの、初老間近の男性
声といいその姿といい、百花には見覚えがあった
黒いマントの、初老間近の男性
声といいその姿といい、百花には見覚えがあった
「おっさん!! あんたまた悪さしに来たの!?」
「その失敬な呼び方は止めたまえ・・・ほぅ、あの小娘か
あの時はよくも私の邪魔をしてくれたものだ」
「百花、あの人と知り合い?」
「そんな事より玄鳥、あの子達を連れてどこか遠くへ――――」
「残念だが、今回こそはこの憐れな老木の無念を晴らさせてやる」
「その失敬な呼び方は止めたまえ・・・ほぅ、あの小娘か
あの時はよくも私の邪魔をしてくれたものだ」
「百花、あの人と知り合い?」
「そんな事より玄鳥、あの子達を連れてどこか遠くへ――――」
「残念だが、今回こそはこの憐れな老木の無念を晴らさせてやる」
ばっ、とマントを翻し、男は巨木に左手を向ける
マントから露出した左腕には、10の真円が何らかの規則によって配置されており、
その中の1つ、青く塗り潰された丸が、激しく輝き始めた
マントから露出した左腕には、10の真円が何らかの規則によって配置されており、
その中の1つ、青く塗り潰された丸が、激しく輝き始めた
「老木にとり憑いた「付喪神」よ・・・人々の愛を憎しみに変え、今その憎悪の念を解き放て!!」
呪詛の詠唱が終わった瞬間、巨木から禍々しいオーラが放たれ、
根っこが地面から飛び出して脚のようになり、幹から新たな枝が成長して腕のように変化し、
さらにその幹に化け物の顔が出現し、恐ろしげな口が大きく開かれる
根っこが地面から飛び出して脚のようになり、幹から新たな枝が成長して腕のように変化し、
さらにその幹に化け物の顔が出現し、恐ろしげな口が大きく開かれる
「モエルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥワァァァァァァァァァァァ!!!!」
「きゃああああああ!!」
「か、怪獣だぁ! キノ爺が、キノ爺が怪獣になっちゃったぁ!!」
「きゃああああああ!!」
「か、怪獣だぁ! キノ爺が、キノ爺が怪獣になっちゃったぁ!!」
目の前で、慕っていた木が化け物に変貌し、子供達はパニックになっていた
距離にして僅か2メートル
――――まずい!
百花はペンダントを手にとったが、男はにやりと笑った
距離にして僅か2メートル
――――まずい!
百花はペンダントを手にとったが、男はにやりと笑った
「さあ、お前の憎む人間を―――そうだな、まずはそのガキ共に復讐してやれ!」
「っダメえええええええええええ!!!」
「っダメえええええええええええ!!!」
百花の悲痛な叫びも空しく、振りあげられる化け物の腕
そんな時に、ピィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!と、甲高い指笛の音が空高くへ響いた
そんな時に、ピィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!と、甲高い指笛の音が空高くへ響いた
「・・・む? 何の音だ―――――――なっ!?」
男は驚愕した
子供達に振り下ろされた化け物の腕が、光り輝く壁によって遮られていたのだ
それだけではない
子供達に振り下ろされた化け物の腕が、光り輝く壁によって遮られていたのだ
それだけではない
「ッッッッッモエルゥゥワァァァァァァァァァァ!!??」
突風が吹き荒れ、全長50メートルはあろう巨大な化け物が軽々と浮き上がり、
子供達とは正反対の、離れた位置まで吹き飛ばされた
子供達とは正反対の、離れた位置まで吹き飛ばされた
「えっ、え? な、何が起こったの?」
「またしても邪魔者・・・誰だ!?」
「またしても邪魔者・・・誰だ!?」
脅えて蹲っていた子供達が顔をあげる
そこには、自分達を救ってくれた者の姿があった
そこには、自分達を救ってくれた者の姿があった
「少年達よ、怪我は無いか?」
「もっけけけけけけけけけけけ!! 感謝しろよォクソガキ共ォ!
この俺がテメェ等を派ァ手に助けてやったってんだからなァ!!」
「もっけけけけけけけけけけけ!! 感謝しろよォクソガキ共ォ!
この俺がテメェ等を派ァ手に助けてやったってんだからなァ!!」
子供達は、羽を散らすその小さな英雄達を見て、口々に呟いた
「・・・フクロウ?」
その光景は百花達に目にもしっかり届いていた
「ふ、フクロウ? 何で学校町に・・・」
「コロ! モッケ! 有難う、助かったよ!」
「え、つ、玄鳥?」
「ごめんね百花、さっき言おうと思ってたんだ
僕も君と同じ―――都市伝説の契約者だ、ってね」
「コロ! モッケ! 有難う、助かったよ!」
「え、つ、玄鳥?」
「ごめんね百花、さっき言おうと思ってたんだ
僕も君と同じ―――都市伝説の契約者だ、ってね」
盛大に驚く百花、その声は女の子にあるまじき声色だった
その後、2羽のフクロウは次々に百花の元に飛んできた
その後、2羽のフクロウは次々に百花の元に飛んできた
「玄鳥のご友人だな? 私は「コタンコロカムイ」。契約者からはコロと呼ばれている」
礼儀正しく自己紹介したのは、子供達をその優しき翼で守ったシマフクロウ
「コタンコロカムイ」は北海道にて伝わる守護神であり、魔を払い村や国を守ったとされる
「コタンコロカムイ」は北海道にて伝わる守護神であり、魔を払い村や国を守ったとされる
「もっけけーぇ! めっちゃ可愛いじゃねェか、あァん? 俺は「たたりもっけ」のモッケってんだ、宜しくな姉ちゃんよォ!」
コロと違って下品に自己紹介をこなしたのは、先程突風を起こしたワシミミズクだ
青森県を始めとした東北地方に伝わる「たたりもっけ」は、祟りを起こしたり怪火や怪音を操ると言われている
青森県を始めとした東北地方に伝わる「たたりもっけ」は、祟りを起こしたり怪火や怪音を操ると言われている
「小僧、もっと女性に配慮した言動は取れないのか?」
「うるせェよクソ爺、テメェにとやかく言われる筋合いは無ェ!」
「ふ、2人とも落ち着いて、まだ敵はいるんだから!」
「うるせェよクソ爺、テメェにとやかく言われる筋合いは無ェ!」
「ふ、2人とも落ち着いて、まだ敵はいるんだから!」
そう言って玄鳥が指差した方向には、モッケの攻撃から立ちあがった化け物と、
ことごとく妨害を受けて怒り心頭に発した男の姿があった
ことごとく妨害を受けて怒り心頭に発した男の姿があった
「またしても契約者・・・ならばまとめて殺すまでだ!!」
「そうはいかないわ! 今度はあたしの番よ!」
「そうはいかないわ! 今度はあたしの番よ!」
ペンダントを手に取り、強くそれを握りしめ、そっと目を瞑る
「光の力を秘めし杖よ、真の姿を我の前に示せ。契約の下、百花が命じる・・・封印解除!!」
どこかのカードキャプターのような台詞をのたまった後にペンダントを投げると、
ペンダントは本来の姿――「ロータス・ワンド」に変化した
ペンダントは本来の姿――「ロータス・ワンド」に変化した
「暗闇より出でし者達を、閃光の力を借りて掻き消さん!
紅き花、ここに咲く! 我が名は魔導少女クリムゾンブロッサム!!
今日こそ叩きのめしてあげるから覚悟しなさいおっさん!」
「・・・あ、相変わらずだね、百花は;
っと、コロ!あの子達を守って! モッケは百花の援護を!」
「心得た!」
「もっけけけけ! 殺っちゃうよォ? 殺っちゃうってばよォ!!」
紅き花、ここに咲く! 我が名は魔導少女クリムゾンブロッサム!!
今日こそ叩きのめしてあげるから覚悟しなさいおっさん!」
「・・・あ、相変わらずだね、百花は;
っと、コロ!あの子達を守って! モッケは百花の援護を!」
「心得た!」
「もっけけけけ! 殺っちゃうよォ? 殺っちゃうってばよォ!!」
コロと玄鳥は子供達の元へと駆け寄り、百花はモッケと共に化け物に立ち向かった
「っち、やれ!」
「モエルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥワァァァァァァァァァァァァァァ!!」
「モエルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥワァァァァァァァァァァァァァァ!!」
枝が変化した腕を力強く叩きつける化け物
狙いはモッケだったが、フクロウ宛らの俊敏さで易々と回避し、地面だけが深く抉られる
狙いはモッケだったが、フクロウ宛らの俊敏さで易々と回避し、地面だけが深く抉られる
「珍妙奇天烈な鳴き声しやがって! テメェが燃えちまえ!!」
ぼ、ぼ、ぼ、とモッケの周囲にどす黒く燃える炎が1つ、2つ・・・計8つ出現した
しばらくそれらはくるくると周り続け、ピタリと突然動きを止める
しばらくそれらはくるくると周り続け、ピタリと突然動きを止める
「もっけけけけけ! 『怪火・深淵の舞』ィ!!」
黒い火の玉は一斉に化け物に向かい、激しい爆発を起こし、その身体を焦がす
化け物は苦しげに金切り声をあげた
化け物は苦しげに金切り声をあげた
「っ!? ちょっと馬鹿じゃない!? 燃やしちゃったら元も子もないじゃないの!」
叫び、百花は駆けながら「ロータス・ワンド」を振りかぶった
先端の蕾の装飾が展開して蓮の花が咲き、光が宿る
先端の蕾の装飾が展開して蓮の花が咲き、光が宿る
「光よ、命の輝きよ、世を覆う闇を振り祓え! 『トゥキャプミィ・レウォルフ』!!」
強く地面を蹴って跳び上がり、化け物の燃えている箇所に杖を叩きつける
七色の光を爆発させ、化け物は大きく仰け反りその場に倒れた
そして、黒い炎もその衝撃で消え失せた
七色の光を爆発させ、化け物は大きく仰け反りその場に倒れた
そして、黒い炎もその衝撃で消え失せた
「うォいおい、俺の火を消してどォすんだよ!?」
「あんたは黙ってなさい!」
「くっ、ガキの分際で・・・!」
「あんたこそ大人の癖にどうしてこんなことするの!?」
「君には分からないのか!? あの木を見てみたまえ!
朽ち果てながらもあの老木は今日まで生きてきた、そして明日からも生き続けていくだろう!
だが実際はどうだ? 人間達が自分を切ろうとしている事を知ったあの木が、どんな気持ちを抱いたのか分かるか!?
この公園で何十年、何百年と見守ってきた人間に裏切られたあの木の気持ちを―――――」
「裏切られてなんかない!!」
「あんたは黙ってなさい!」
「くっ、ガキの分際で・・・!」
「あんたこそ大人の癖にどうしてこんなことするの!?」
「君には分からないのか!? あの木を見てみたまえ!
朽ち果てながらもあの老木は今日まで生きてきた、そして明日からも生き続けていくだろう!
だが実際はどうだ? 人間達が自分を切ろうとしている事を知ったあの木が、どんな気持ちを抱いたのか分かるか!?
この公園で何十年、何百年と見守ってきた人間に裏切られたあの木の気持ちを―――――」
「裏切られてなんかない!!」
百花の怒声に、辺りがしんと静まり返った
そのお陰で聞こえた、小さな声
そのお陰で聞こえた、小さな声
「キノ爺! 戻ってよキノ爺!」
「またかくれんぼしようよ! カブトムシいっぱい捕ろうよ!」
「一緒に流れ星見つけて願い事いっぱい叶えて貰おうよ!」
「キノ爺!」
「キノ爺!!」
「またかくれんぼしようよ! カブトムシいっぱい捕ろうよ!」
「一緒に流れ星見つけて願い事いっぱい叶えて貰おうよ!」
「キノ爺!」
「キノ爺!!」
子供達が、涙ながらに化け物に対して訴え続けている
それを指差し、百花は続けた
それを指差し、百花は続けた
「キノ爺、聞こえる?あの子達の声。 分かる?あの子達がどんな思いでいるか
確かに人間には酷い人も沢山いるよ。自分の事や利益の事ばっかりで、他人の事なんて全ッ然考えない人が
でも広い目で、広い心を持って見直してよ!
あなたにはあの子達が・・・自分を愛してくれてる人達がいるじゃない!
ちっとも裏切られてなんかないんだよ!? それどころか、そんな姿になってまでも、皆あなたのことを信じてくれてる!
その人達を悲しませて、あなたはそれで良いの!?・・・きっと、後悔すると思うよ」
「・・・百花・・・」
確かに人間には酷い人も沢山いるよ。自分の事や利益の事ばっかりで、他人の事なんて全ッ然考えない人が
でも広い目で、広い心を持って見直してよ!
あなたにはあの子達が・・・自分を愛してくれてる人達がいるじゃない!
ちっとも裏切られてなんかないんだよ!? それどころか、そんな姿になってまでも、皆あなたのことを信じてくれてる!
その人達を悲しませて、あなたはそれで良いの!?・・・きっと、後悔すると思うよ」
「・・・百花・・・」
化け物―――キノ爺は立ち上がった
しかしそれだけだった
棒立ちになったまま、戦う意志を見せなかった
しかしそれだけだった
棒立ちになったまま、戦う意志を見せなかった
「ッバカな、騙されるな! こいつら人間は、君を殺そうとしたんだぞ!?」
「この子供達は生かそうとしてたのよおっさん! あんたがどんな理由でこんなことするのか分からない、分かりたくもない
だけど、キノ爺の心につけこんで、皆を悲しませるなんて・・・絶対に許さない!!」
「この子供達は生かそうとしてたのよおっさん! あんたがどんな理由でこんなことするのか分からない、分かりたくもない
だけど、キノ爺の心につけこんで、皆を悲しませるなんて・・・絶対に許さない!!」
くるくるっ、と「ロータス・ワンド」を回転させ、
蓮の花を天に仰ぎ、呪文を唱える
蓮の花を天に仰ぎ、呪文を唱える
「聖なる光よ、善なる輝きよ
憎悪、怨恨、悲哀、殺意、邪悪なる意思を全て討ち祓い、その者の心を清め洗え!」
憎悪、怨恨、悲哀、殺意、邪悪なる意思を全て討ち祓い、その者の心を清め洗え!」
七色に輝く蓮の花を男に向け、狙いを定める
「百花繚乱! 『グナブ・ギブ・レウォルフ』!!」
「くっ・・・!!」
「くっ・・・!!」
男が咄嗟に飛び退いた刹那に、巨大な花の形をした光弾が杖の先端から放たれる
それは弾道上のキノ爺に命中すると、老木を優しい光で包みこみ、禍々しいオーラを取り除いた
ぱぁんっ!!と爆発音が轟くと、化け物の姿はそこになく、代わりに元あった場所にキノ爺が戻っていた
子供達は嬉し泣きしながら、木にしがみ付く
それは弾道上のキノ爺に命中すると、老木を優しい光で包みこみ、禍々しいオーラを取り除いた
ぱぁんっ!!と爆発音が轟くと、化け物の姿はそこになく、代わりに元あった場所にキノ爺が戻っていた
子供達は嬉し泣きしながら、木にしがみ付く
「・・・またしても敗北、か・・・」
「そしてこれから完全敗北よ!」
「そしてこれから完全敗北よ!」
男の目の前には杖を構えた少女と炎を揺らめかせるワシミミズク、
そして向こうから眼鏡の少年とシマフクロウが近づいてくるのが見えた
そして向こうから眼鏡の少年とシマフクロウが近づいてくるのが見えた
「・・・ふふふ、まぁいい、今日も退散させて貰うとしよう」
「おっさん!また逃げる気なの!?」
「そのおっさんと呼ぶのは止めて頂こうか。私の名はケセド・・・覚えておきたまえ」
「覚える気なんてないわよ!」
「喰らいやがれ!!」
「おっさん!また逃げる気なの!?」
「そのおっさんと呼ぶのは止めて頂こうか。私の名はケセド・・・覚えておきたまえ」
「覚える気なんてないわよ!」
「喰らいやがれ!!」
百花は光弾、モッケは黒い炎をそれぞれ放つが、
ケセドと名乗った男は、その場から忽然と消えてしまった
ケセドと名乗った男は、その場から忽然と消えてしまった
「また逃げられた・・・一体何者なのよ、あのおっさん・・・」
「百花! 怪我は無い!?」
「まぁね、そっちは大丈夫?」
「お陰様でね。それにしても凄いよ百花!」
「え・・・で、でもまぁ逃げられちゃったし、それにモッケも手伝ってくれたし・・・」
「もっけけけけ、俺のお陰だ、褒めろ称えろォ!」
「調子に乗るな小僧」
「お姉ちゃんお兄ちゃん、ありがとう!」
「百花! 怪我は無い!?」
「まぁね、そっちは大丈夫?」
「お陰様でね。それにしても凄いよ百花!」
「え・・・で、でもまぁ逃げられちゃったし、それにモッケも手伝ってくれたし・・・」
「もっけけけけ、俺のお陰だ、褒めろ称えろォ!」
「調子に乗るな小僧」
「お姉ちゃんお兄ちゃん、ありがとう!」
振り返ると、子供達がお礼を言う為にこちらに来ていた
ずっと流しっぱなしだった涙も乾き、どれもこれも皆目を覆いたくなる程に眩しい笑顔だった
照れ臭そうに頭を掻きながら、百花は少し腰を落として子供達に目線を合わせた
ずっと流しっぱなしだった涙も乾き、どれもこれも皆目を覆いたくなる程に眩しい笑顔だった
照れ臭そうに頭を掻きながら、百花は少し腰を落として子供達に目線を合わせた
「どういたしまして。でもごめんね、元には戻せたけど・・・」
切られるのは私じゃ助けられない、と言おうとしたが、
何やら子供達が互いに顔を見合わせて笑うと、こっちに来いとでも言うように手招きをする
百花も玄鳥も首を傾げながら、そっとついていくと、キノ爺の傍の草むらに案内された
何やら子供達が互いに顔を見合わせて笑うと、こっちに来いとでも言うように手招きをする
百花も玄鳥も首を傾げながら、そっとついていくと、キノ爺の傍の草むらに案内された
「お姉ちゃん、これ見て!」
「・・・あ!」
「これって・・・植物の芽?」
「・・・あ!」
「これって・・・植物の芽?」
小さな、小さな、二枚の葉
自分よりも大きな草に囲まれて、それは一生懸命にそこに存在していた
自分よりも大きな草に囲まれて、それは一生懸命にそこに存在していた
「えへへへ、今ね、キノ爺に教えて貰ったの!」
「キノ爺に?」
「うん! 『この子をワシだと思って遊んであげてくれ』って!」
「だから寂しくなんかないよ! キノ爺はずっと、僕達と一緒だもん!」
「キノ爺に?」
「うん! 『この子をワシだと思って遊んであげてくれ』って!」
「だから寂しくなんかないよ! キノ爺はずっと、僕達と一緒だもん!」
心から嬉しそうに、笑顔を振りまく子供達を見て、
百花達も、思わず口元を綻ばせた
百花達も、思わず口元を綻ばせた
† † † † † † †
「良かったね、あの子達も、キノ爺も」
「うん。皆、元気に育つと良いなぁ・・・」
「うん。皆、元気に育つと良いなぁ・・・」
日の傾きかけた空を見上げる
橙色に染まった西方にうっとりしていた百花だったが、すぐに目に入った2羽のフクロウの喧嘩に萎えてしまった
橙色に染まった西方にうっとりしていた百花だったが、すぐに目に入った2羽のフクロウの喧嘩に萎えてしまった
「ところで、玄鳥」
「ん?」
「何であたしが契約者だって知ってたの?
あんたに会ったのは今日が久しぶりだったけど、契約したのはあんたが北海道に行ってる間よ?」
「あぁ、契約すると他の都市伝説や契約者の気配みたいなものが分かる・・・って、知らなかった?」
「ッ・・・そ、そそそんなの知ってるわよ! ちょっとあんたを試しただけよ、おーっほっほっほっほ!」
「ん?」
「何であたしが契約者だって知ってたの?
あんたに会ったのは今日が久しぶりだったけど、契約したのはあんたが北海道に行ってる間よ?」
「あぁ、契約すると他の都市伝説や契約者の気配みたいなものが分かる・・・って、知らなかった?」
「ッ・・・そ、そそそんなの知ってるわよ! ちょっとあんたを試しただけよ、おーっほっほっほっほ!」
どう見ても見栄を張っている彼女を見て、くすっと控えめに笑うと、
「あ、そうだ」
何かに気づいて、玄鳥はズボンのポケットに手を突っ込み、
中から小さな紙包みを取り出して、百花に差し出した
中から小さな紙包みを取り出して、百花に差し出した
「はい、百花」
「・・・え、はい、って・・・」
「開けてみてよ」
「・・・え、はい、って・・・」
「開けてみてよ」
こくん、と頷き、紙包みを受け取ってそれを開封する
「・・・あ、」
取り出した物は、携帯用のストラップだった
可愛らしくデフォルメされた、シマフクロウのストラップ
可愛らしくデフォルメされた、シマフクロウのストラップ
「シマフクロウは「コタンコロカムイ」の化身だ、って言われててね
お守りにもなるかな、と思って」
「こ、これ、あたしに・・・?」
「遅れてごめん、16歳のお誕生日おめでとう
こんなのしかあげられないけど、気に入ってくれると嬉しいな」
お守りにもなるかな、と思って」
「こ、これ、あたしに・・・?」
「遅れてごめん、16歳のお誕生日おめでとう
こんなのしかあげられないけど、気に入ってくれると嬉しいな」
にこっ、と微笑む玄鳥
百花はそれをぎゅっと握りしめ、
百花はそれをぎゅっと握りしめ、
「・・・っば、馬鹿じゃないの、わざわざ買ってこなくても良かったのに・・・っ、わざ、わざっ・・・」
ぽろぽろと、涙が零れ始めた
「わ、あ、あの、ごめん、気に入らなかった!?」
「ぐすっ・・・うぅん・・・すっごく、嬉しい・・・ありがとぉ、つばめぇ・・・」
「ぐすっ・・・うぅん・・・すっごく、嬉しい・・・ありがとぉ、つばめぇ・・・」
涙を拭いながら、必死に笑みを作ろうとする百花
「・・・も、もう、百花は素直じゃないなぁ、幾つになっても」
「し、失礼ね、もっとマシな言葉はなかったの?」
「し、失礼ね、もっとマシな言葉はなかったの?」
と言うと、2人は暫し顔を見合わせて、
堪え切れずに、そのまま声をあげて笑い合った
堪え切れずに、そのまま声をあげて笑い合った
† † † † † † †
「あー、かなり遅くなっちゃったぞー!」
夕闇の中、胸を揺らして急ぎ足で岐路についているのは、百花の幼馴染である萌黄野 風音だった
運動神経抜群の彼女は、幾つかの運動部で助っ人として呼ばれることが多く、
今日もそれで予定が入ってしまい、百花との約束を破棄せざるを得なかったのだ
運動神経抜群の彼女は、幾つかの運動部で助っ人として呼ばれることが多く、
今日もそれで予定が入ってしまい、百花との約束を破棄せざるを得なかったのだ
「百花には悪い事したぞ・・・今度またケーキでも奢らないと怒るぞあいつ・・・」
己の懐を心配しながら、彼女は走った
と、前方から聞き覚えのある声が
と、前方から聞き覚えのある声が
「・・・あれ?」
歩を緩め、そっと歩みを進める
一人は、親友である百花だった
影は、もう一つ
一人は、親友である百花だった
影は、もう一つ
「・・・白鷺? 帰ってたのか・・・」
百花と玄鳥が、仲睦まじく歩いているところだった
とても楽しそうに、嬉しそうに
とても楽しそうに、嬉しそうに
「・・・へへっ、お似合いなんだぞ、2人とも」
笑みを浮かべて、思わず呟く
だが、
だが、
「そう・・・白鷺には、百花がいる
俺には、あの2人の間に入る事なんて、出来ないんだぞ・・・」
俺には、あの2人の間に入る事なんて、出来ないんだぞ・・・」
自分に言い聞かせるように、彼女は寂しげにそう呟いた
...続く