「……ふふふ、まぁいい、今日も退散させて貰うとしよう」
「おっさん!また逃げる気なの!?」
「そのおっさんと呼ぶのは止めて頂こうか。私の名はケセド…覚えておきたまえ」
「覚える気なんてないわよ!」
「喰らいやがれ!!」
「おっさん!また逃げる気なの!?」
「そのおっさんと呼ぶのは止めて頂こうか。私の名はケセド…覚えておきたまえ」
「覚える気なんてないわよ!」
「喰らいやがれ!!」
光と炎が同時に放たれた時、
その標的となった、黒いマントを羽織った初老間近の男性―――ケセドは、
対峙していた「ロータス・ワンド」の契約者である百花達の目の前から姿を消した
否、厳密に言えば、彼は一瞬にして我々の住むものとは違う世界、所謂“異世界”へと移動したのだ
ケセドが今立っているのは、ただ闇が広がる真っ黒な空間
唯一の光は辺りを漂う青白い人魂のみ
その標的となった、黒いマントを羽織った初老間近の男性―――ケセドは、
対峙していた「ロータス・ワンド」の契約者である百花達の目の前から姿を消した
否、厳密に言えば、彼は一瞬にして我々の住むものとは違う世界、所謂“異世界”へと移動したのだ
ケセドが今立っているのは、ただ闇が広がる真っ黒な空間
唯一の光は辺りを漂う青白い人魂のみ
「……くっ、またしても、あの小娘に………」
拳を握りしめ、先程の戦闘を回顧する
怒りを露わにする彼の元へ、忍び寄る影
怒りを露わにする彼の元へ、忍び寄る影
「おや? ケセド様、また敗れたのですか? “慈悲”のセフィラは、私達が貴方に慈悲を向ける事で満たされるのでしょうか」
「…マルクトか」
「…マルクトか」
足元まで届きそうな艶やかな黒髪を揺らす、妙齢の女性
その右の太腿には、ケセドの左腕にあるような十の真円が描かれており、一番下の円が小豆色に塗り潰されている
マルクトと呼ばれたこの女性
彼女こそが、この空間の生みの親―――「六道」の契約者
その右の太腿には、ケセドの左腕にあるような十の真円が描かれており、一番下の円が小豆色に塗り潰されている
マルクトと呼ばれたこの女性
彼女こそが、この空間の生みの親―――「六道」の契約者
「どうかしたのですか? この町に来てから、セフィラの集まりが悪いのは貴方だけですよ?」
「黙れ。まだ、あの独特の空気に馴染めないだけだ。今度こそ、邪魔の無いようにセフィラを集める」
「しっかりして下さいね……セフィロス様のお怒りを買う事の無いように」
「黙れ。まだ、あの独特の空気に馴染めないだけだ。今度こそ、邪魔の無いようにセフィラを集める」
「しっかりして下さいね……セフィロス様のお怒りを買う事の無いように」
“セフィロス”
その名が出た瞬間に、ケセドの身体が大きく飛び上がったと同時に、脅えるように震え始めた
その名が出た瞬間に、ケセドの身体が大きく飛び上がったと同時に、脅えるように震え始めた
「………せ、セフィロス様が、いらっしゃるのか?」
「先程までは居られました。しかし、すぐに出て往かれましたよ」
「そう、か……」
「あれれれ~? 誰かと思えばケセドじゃん、クッヒヒヒヒヒヒ…」
「ふぉっふぉっふぉ、こっ酷くやられたそうじゃのぅ」
「先程までは居られました。しかし、すぐに出て往かれましたよ」
「そう、か……」
「あれれれ~? 誰かと思えばケセドじゃん、クッヒヒヒヒヒヒ…」
「ふぉっふぉっふぉ、こっ酷くやられたそうじゃのぅ」
聞こえたのは老人の声と少年の声
闇の奥から、黒いローブに身を包んだ、白い顎鬚を蓄えた老人と、
小学校中学年程度の、眼鏡をかけた少年が歩み寄ってきた
闇の奥から、黒いローブに身を包んだ、白い顎鬚を蓄えた老人と、
小学校中学年程度の、眼鏡をかけた少年が歩み寄ってきた
「コクマー、それにゲブラー…お前達もいたのか」
「一仕事終えた故、少し休憩にのぅ」
「クッヒヒヒ、それにしても最近ホント仕事してないじゃん、やる気あるのかなー?」
「貴様ッ…ゲブラー、俺を愚弄するのか!?」
「一仕事終えた故、少し休憩にのぅ」
「クッヒヒヒ、それにしても最近ホント仕事してないじゃん、やる気あるのかなー?」
「貴様ッ…ゲブラー、俺を愚弄するのか!?」
少年―――ゲブラーに向かって、食い入るように詰め寄るケセド
飢えた獣のように唸る彼を、マルクトが制止した
飢えた獣のように唸る彼を、マルクトが制止した
「止めて下さい。仲間割れなど、セフィロス様に知れたらどうなるか」
「………ちっ、覚えておけ」
「おー怖い怖い」
「ふむ、しかしなかなか面白そうじゃのぅ、小童の分際で儂等に盾突くとは……
どぉれ、明日にでも儂が遊んでやろうかのぅ」
「コクマー様が? 子供相手に“知恵”のセフィラが集まるとは思えませんが」
「ふぉっふぉっふぉ、なぁに、軽い腕慣らしじゃよ」
「ふん、お手並み拝見と行こうか」
「偉そうに言うじゃん? 負け犬の癖にさー」
「このっ……!!」
「何度も言わせないで下さい。明日は貴方も邪魔が入らないのですから、“慈悲”のセフィラの収集に専念出来るでしょう
一刻も早く、全てのセフィラを集め、セフィロス様に献上するのです
我等がセフィロス様の為に」
「………ちっ、覚えておけ」
「おー怖い怖い」
「ふむ、しかしなかなか面白そうじゃのぅ、小童の分際で儂等に盾突くとは……
どぉれ、明日にでも儂が遊んでやろうかのぅ」
「コクマー様が? 子供相手に“知恵”のセフィラが集まるとは思えませんが」
「ふぉっふぉっふぉ、なぁに、軽い腕慣らしじゃよ」
「ふん、お手並み拝見と行こうか」
「偉そうに言うじゃん? 負け犬の癖にさー」
「このっ……!!」
「何度も言わせないで下さい。明日は貴方も邪魔が入らないのですから、“慈悲”のセフィラの収集に専念出来るでしょう
一刻も早く、全てのセフィラを集め、セフィロス様に献上するのです
我等がセフィロス様の為に」
† † † † † † †
「ふーん、じゃあ都市伝説は、強くなったり長生きしたりしたいから、人間と契約するの?」
「うん、凡そそんな考えで大丈夫かな」
「何よそれ、あたしが子供っぽいみたいじゃない
誰が幼女体型よ!?」
「ま、まだ何も言ってないし思ってもいないから;」
「…そ、そう? なら良いけど」
「うん、凡そそんな考えで大丈夫かな」
「何よそれ、あたしが子供っぽいみたいじゃない
誰が幼女体型よ!?」
「ま、まだ何も言ってないし思ってもいないから;」
「…そ、そう? なら良いけど」
キノ爺との戦闘があった日の翌日、紅坂家の百花の部屋にて
百花は、自分よりも都市伝説に詳しそうだった白鷺 玄鳥に、都市伝説や契約についてのレクチャーを受けていた
実はこの2人、自宅がかなり近い、どころではなく隣同士なので、会うのはそれ程苦にならない
幼い頃は互いの部屋の窓を開けて話したりもしていたのだが、高校生にもなってそんな事出来る筈もなく
喫茶店などに行って友人に見つかると色々ややこしくなることもあって、渋々彼女は玄鳥を家に呼んだのだった
親の冷やかしを受けながら
百花は、自分よりも都市伝説に詳しそうだった白鷺 玄鳥に、都市伝説や契約についてのレクチャーを受けていた
実はこの2人、自宅がかなり近い、どころではなく隣同士なので、会うのはそれ程苦にならない
幼い頃は互いの部屋の窓を開けて話したりもしていたのだが、高校生にもなってそんな事出来る筈もなく
喫茶店などに行って友人に見つかると色々ややこしくなることもあって、渋々彼女は玄鳥を家に呼んだのだった
親の冷やかしを受けながら
「と、ところで、なんかごめんね、うちのお父さんとお母さんがあんなこと言って…気ぃ悪くした?」
「ううん、気にしてないよ」
「そう? なら良いけど…」
「それより、ちょっと嬉しかったかな」
「え?」
「ほら、子供の時はこうしてよく遊んだけど、大きくなってから話す機会も少なくなって
ちょっと昔を思い出したっていうか」
「ッバ、バカじゃない!? べ、べべべべ別に、都市伝説に詳しかったら玄鳥じゃなくても良かったんだから!
で、でも……ま、まぁ、久しぶり、だしぃ? ゆゆっくりしていけば?」
「うん、そうする」
「ううん、気にしてないよ」
「そう? なら良いけど…」
「それより、ちょっと嬉しかったかな」
「え?」
「ほら、子供の時はこうしてよく遊んだけど、大きくなってから話す機会も少なくなって
ちょっと昔を思い出したっていうか」
「ッバ、バカじゃない!? べ、べべべべ別に、都市伝説に詳しかったら玄鳥じゃなくても良かったんだから!
で、でも……ま、まぁ、久しぶり、だしぃ? ゆゆっくりしていけば?」
「うん、そうする」
にこっ、と微笑みかける玄鳥を見て、思いっきり顔を赤らめて目をそむける百花
因みにこの部屋にいるのは、百花と玄鳥の2人だけである
玄鳥の相棒であるコロとモッケは、今頃学校町の空を悠々と飛び回りながら喧嘩している事だろう
密室空間で2人きり―――その事実が、百花の心臓を高鳴らせる
その時、携帯電話の着信音が鳴り響く
漫画では胸からハートマークが飛び出したのだろう、びくんっと大きく飛び上がりながらそれを取り出したのは、百花だった
因みにこの部屋にいるのは、百花と玄鳥の2人だけである
玄鳥の相棒であるコロとモッケは、今頃学校町の空を悠々と飛び回りながら喧嘩している事だろう
密室空間で2人きり―――その事実が、百花の心臓を高鳴らせる
その時、携帯電話の着信音が鳴り響く
漫画では胸からハートマークが飛び出したのだろう、びくんっと大きく飛び上がりながらそれを取り出したのは、百花だった
「………風音から? どうしたんだろ………もしもし?」
《あ、萌黄野 風音です、百花ちゃんお願いします》
「はい分かりましたー、おーい百花ちゃッってあんた今あたしのケータイにかけてるでしょうがぁ!?」
《そうだった、おはよー百花》
「もうお昼過ぎてるけど」
《そっちに向かってるんだけど、今大丈夫か知りたいんだぞ》
「え? 今?」
「どうかしたの?」
「ん、風音がこっちに来るみたいなんだけど、どうしy」
「お邪魔しまーす」
《あ、萌黄野 風音です、百花ちゃんお願いします》
「はい分かりましたー、おーい百花ちゃッってあんた今あたしのケータイにかけてるでしょうがぁ!?」
《そうだった、おはよー百花》
「もうお昼過ぎてるけど」
《そっちに向かってるんだけど、今大丈夫か知りたいんだぞ》
「え? 今?」
「どうかしたの?」
「ん、風音がこっちに来るみたいなんだけど、どうしy」
「お邪魔しまーす」
がらっ、と部屋の窓が開け放たれる
現れたのは、現在進行形で百花と通話している筈の萌黄野 風音だった
現れたのは、現在進行形で百花と通話している筈の萌黄野 風音だった
「ってあたしに決定権は無いのかいっ!? てかいつもいつも何処から来てんのよあんたはっ!?」
「え、何処って、俺の家からだけど」
「分かっとるわ! わざわざ窓から入らなくてもいいでしょうが!」
「えー、屋根伝いに走ってくる時は着地すると脚に響くから窓からの方が良いんだぞー」
「屋根伝いに来ることが根本的におかしいのよ!!」
「萌黄野さん、こんにちは」
「ッ!? し、白鷺…………ご、ごゆっくりだぞっ!!」
「え、何処って、俺の家からだけど」
「分かっとるわ! わざわざ窓から入らなくてもいいでしょうが!」
「えー、屋根伝いに走ってくる時は着地すると脚に響くから窓からの方が良いんだぞー」
「屋根伝いに来ることが根本的におかしいのよ!!」
「萌黄野さん、こんにちは」
「ッ!? し、白鷺…………ご、ごゆっくりだぞっ!!」
ぴしゃり、窓が勢いよく閉められた
「待てやこのド天然ンン!? 誤解よ誤解! というか何と誤解してんのよ!?」
「いや、あの、まさか白昼堂々とそんなことするなんて思ってないんだぞ」
「隠し事出来ない奴かい!?
…良いから、用事あるんでしょ? 上がりなさいよ」
「改めてお邪魔しますだぞー」
「Just a minuts!! 土足土足!!」
「え?……あ、そっか、雑巾無いか?」
「そこまでして土足でいたいの!?」
「…あ、ごめん、アメリカと間違えたぞ」
「あんた未だに日本の海越えた事無いでしょうが!!」
「いや、あの、まさか白昼堂々とそんなことするなんて思ってないんだぞ」
「隠し事出来ない奴かい!?
…良いから、用事あるんでしょ? 上がりなさいよ」
「改めてお邪魔しますだぞー」
「Just a minuts!! 土足土足!!」
「え?……あ、そっか、雑巾無いか?」
「そこまでして土足でいたいの!?」
「…あ、ごめん、アメリカと間違えたぞ」
「あんた未だに日本の海越えた事無いでしょうが!!」
……とまぁ、見ての通り
風音は少し頭があったかい子である
風音は少し頭があったかい子である
「ぜぇ、ぜぇ………で? 用って何よ?」
「そうそう、家の倉庫を掃除してたら、変なもの見つけたんだぞ」
「変なもの?」
「それ、僕も見て良いかな?」
「勿論、ちょっと待って」
「そうそう、家の倉庫を掃除してたら、変なもの見つけたんだぞ」
「変なもの?」
「それ、僕も見て良いかな?」
「勿論、ちょっと待って」
突然、風音はぐいっ、とTシャツの裾をたくし上げた
ぽとり、何かが床の上に落ちる
アニメでよく見るような、巻物だった
ぽとり、何かが床の上に落ちる
アニメでよく見るような、巻物だった
「これこれ、これなんだぞ………って、白鷺?」
彼女の視線の先、玄鳥は必死に両手で目を覆っていた
百花はそこまでやっていないが、流石にドン引きである
百花はそこまでやっていないが、流石にドン引きである
「…何があった?」
「こっちが聞きたいわよ!? 明らかに見えちゃいけない物見えてたし!?」
「ん?………あ、ブラするの忘れてたぞ///」
「違うわよ! あんたブラしてッ……あ、合ってるわ」
「こっちが聞きたいわよ!? 明らかに見えちゃいけない物見えてたし!?」
「ん?………あ、ブラするの忘れてたぞ///」
「違うわよ! あんたブラしてッ……あ、合ってるわ」
何とか玄鳥を宥めると、ようやく本題に入った
広げられた巻物をまじまじと見つめる百花と玄鳥
広げられた巻物をまじまじと見つめる百花と玄鳥
「……ん~、何て書いてるのか分からない…」
「でもこの字、漢字の『忍』に見えないかな?」
「ニン?」
「『忍者』の『忍』だよ」
「い、言われてみればそうね……見えなくもないわ」
「てことは……これってもしかして、患者の履物?」
「はい坊や、ちゃんとスリッパ履きましょうねーってちゃうわ!」
「もんじゃの漬物?」
「何かそれまずそう! じゃなくて、忍者の巻物だってば!」
「そうそう……で、それなのか?」
「断定はできないけど、その可能性はあるよ」
「おー、なんだか高く売れそうな気がするぞー」
「え、売っちゃうの?」
「ううん、爺ちゃんがいらないって言うから、俺の宝物にするんだぞ」
「あ、そう;」
「でもこの字、漢字の『忍』に見えないかな?」
「ニン?」
「『忍者』の『忍』だよ」
「い、言われてみればそうね……見えなくもないわ」
「てことは……これってもしかして、患者の履物?」
「はい坊や、ちゃんとスリッパ履きましょうねーってちゃうわ!」
「もんじゃの漬物?」
「何かそれまずそう! じゃなくて、忍者の巻物だってば!」
「そうそう……で、それなのか?」
「断定はできないけど、その可能性はあるよ」
「おー、なんだか高く売れそうな気がするぞー」
「え、売っちゃうの?」
「ううん、爺ちゃんがいらないって言うから、俺の宝物にするんだぞ」
「あ、そう;」
何やら上機嫌に鼻歌を歌い始める風音を他所に、
百花と玄鳥はこそこそと内緒話を始めた
百花と玄鳥はこそこそと内緒話を始めた
「…ねぇ、あの巻物って……」
「うん……多分、都市伝説だと思う。今のところは、危険じゃなさそうだけど…」
「どうする? 風音まで物騒な事に巻き込むのはちょっと……」
「僕も同じ気持ちだよ、でももう少し様子を見てから―――――」
「何の様子?」
「うん……多分、都市伝説だと思う。今のところは、危険じゃなさそうだけど…」
「どうする? 風音まで物騒な事に巻き込むのはちょっと……」
「僕も同じ気持ちだよ、でももう少し様子を見てから―――――」
「何の様子?」
ドキッ!と心臓が強く脈打った
どうやら風音は何も聞いてなかったようだが、その無知の攻撃は2人に効いていた
どうやら風音は何も聞いてなかったようだが、その無知の攻撃は2人に効いていた
「そうだ、百花、昨日はごめん、お詫びにケーキ奢るぞ」
「ホント!? やったぁ!」
「あ、僕も行っていい? 誕生日にいられなかったから、僕もお詫びで
僕の分は自分で出すから」
「気にしなくていいぞ、白鷺の分も俺が出すぞ」
「な、何だか悪いなぁ……」
「それじゃ、れっつごー」
「待ちなさい! 窓から外出しようとしない!」
「ホント!? やったぁ!」
「あ、僕も行っていい? 誕生日にいられなかったから、僕もお詫びで
僕の分は自分で出すから」
「気にしなくていいぞ、白鷺の分も俺が出すぞ」
「な、何だか悪いなぁ……」
「それじゃ、れっつごー」
「待ちなさい! 窓から外出しようとしない!」
† † † † † † †
「んふふふふ♪ 美味しいケーキのバースデー♪」
「むぅ、白鷺がいてくれて助かったぞ…;」
「あはは…こんな出費になるのは僕も予想外だったけどね;」
「むぅ、白鷺がいてくれて助かったぞ…;」
「あはは…こんな出費になるのは僕も予想外だったけどね;」
日も暮れ始めた頃、3人は戦場から戻ってきた
陽気に歌を歌いながらスキップをしている百花とは対照的に、
風音と玄鳥は己の財布を覗いて苦虫を噛み潰したような顔でとぼとぼと歩いている
陽気に歌を歌いながらスキップをしている百花とは対照的に、
風音と玄鳥は己の財布を覗いて苦虫を噛み潰したような顔でとぼとぼと歩いている
「2人ともありがとね♪ また来年も……あ、今度はお正月に……うーん、今年のハロウィンでも良いなー♪」
「もう勘弁して欲しいぞ……ショートケーキ5皿、チョコレートケーキ2皿、モンブラン4皿にミルフィーユ3皿……
あの小さな身体に1万円以上のケーキが……奢るなんて言った俺が馬鹿だったぞ」
(あ、そういうのはちゃんと覚えてるんだ;)
「もう勘弁して欲しいぞ……ショートケーキ5皿、チョコレートケーキ2皿、モンブラン4皿にミルフィーユ3皿……
あの小さな身体に1万円以上のケーキが……奢るなんて言った俺が馬鹿だったぞ」
(あ、そういうのはちゃんと覚えてるんだ;)
百花を先頭に、家路を辿る3人
すると、突然百花のスキップが止まった
すると、突然百花のスキップが止まった
「ん? 百花?」
返事は無い
ただ、前方を見続けている
風音が玄鳥の方に視線を向けると、彼も同じような状態になっていた
恐る恐る前方を見ると、そこには黒いローブを羽織った如何にも怪しげな老人が立っていた
ただ、前方を見続けている
風音が玄鳥の方に視線を向けると、彼も同じような状態になっていた
恐る恐る前方を見ると、そこには黒いローブを羽織った如何にも怪しげな老人が立っていた
「ふぉっふぉっふぉ、楽しそうじゃのぅ、若人は元気が一番じゃ」
「? なぁ、あのじーちゃん知り合いか?」
「契約者……!」
「風音! 逃げて!」
「へ?」
「おやおや、そちらの娘さんは契約者で無いのかのぅ?………それは好都合じゃ」
「? なぁ、あのじーちゃん知り合いか?」
「契約者……!」
「風音! 逃げて!」
「へ?」
「おやおや、そちらの娘さんは契約者で無いのかのぅ?………それは好都合じゃ」
にやっ、と老人が笑うと、ローブの中から左腕を露出させる
その左肩には、真円が規則的に並び、上から2段目の一つが灰色に塗り潰されたタトゥーがあった
その左肩には、真円が規則的に並び、上から2段目の一つが灰色に塗り潰されたタトゥーがあった
「ッ! あれって……あんた、おっさんの仲間でしょ!」
「おっさん…む、ケセドの事かのぅ?」
「誰よそれ!」
「いや、合ってるよ;」
「ならその通りじゃ。儂の名はコクマー、“知恵”のセフィラを満たし、セフィロス様の完全復活を願う者」
「名前なんてどうでも良いわよ! 訳の分からない言葉ばっかり並べて、目的は何なの!?」
「あのー、さっぱり話が見えないぞ」
「萌黄野さん、早く逃げた方が―――――――」
「逃げて貰っては困るでのぅ」
「おっさん…む、ケセドの事かのぅ?」
「誰よそれ!」
「いや、合ってるよ;」
「ならその通りじゃ。儂の名はコクマー、“知恵”のセフィラを満たし、セフィロス様の完全復活を願う者」
「名前なんてどうでも良いわよ! 訳の分からない言葉ばっかり並べて、目的は何なの!?」
「あのー、さっぱり話が見えないぞ」
「萌黄野さん、早く逃げた方が―――――――」
「逃げて貰っては困るでのぅ」
左手の人差し指と中指を立て、胸の前に差し出し何やらぶつぶつと呪詛を唱えるコクマー
その時、何処からともなく青白い発光体が現れ、彼の周りを浮遊する
その時、何処からともなく青白い発光体が現れ、彼の周りを浮遊する
「おぉ、初めて見たぞ人魂」
「何暢気な事言ってんの!?」
「魂を呼び出した……?」
「ふぉっふぉっふぉ、儂は「降霊術」と契約しておってのぅ
儂の元に、人間を含めた様々な生物や、この世で息絶えた都市伝説の魂魄を呼び寄せる事が出来るのじゃ
まぁ、これだけでは何も出来ないんじゃが……」
「何暢気な事言ってんの!?」
「魂を呼び出した……?」
「ふぉっふぉっふぉ、儂は「降霊術」と契約しておってのぅ
儂の元に、人間を含めた様々な生物や、この世で息絶えた都市伝説の魂魄を呼び寄せる事が出来るのじゃ
まぁ、これだけでは何も出来ないんじゃが……」
ちら、とコクマーは視線を近くの電柱に目を向け、口角を上げて深く頷いた
「死して尚この地に彷徨い続ける憐れな魂……其方に新たな肉体を与えよう」
立てた指を狙った方向に向けると、発光体が真っ直ぐに電柱に向かい、ぶつかって消えた―――否、“融け込んだ”
その瞬間、電柱が激しい光を放ち、その姿を徐々に変えてゆく
コンクリートで出来た“身体”は蛇のように撓り、雷光を放つ電線が触手のように幾本も蠢いている
頭部と思しき先端部分には赤く輝く結晶体が2つあり、鋭い大顎と涎を垂らす大きな口があった
その瞬間、電柱が激しい光を放ち、その姿を徐々に変えてゆく
コンクリートで出来た“身体”は蛇のように撓り、雷光を放つ電線が触手のように幾本も蠢いている
頭部と思しき先端部分には赤く輝く結晶体が2つあり、鋭い大顎と涎を垂らす大きな口があった
「バァァァァァァァリバリダァァァァァァァァァァァァ!!!」
怪物の咆哮が、雄々しく町中に轟いた
「っな、何あれ!? あんなの有りィ!?」
「アノマロカリス……もしかして、「スカイフィッシュ」!?」
「左様、電信柱に「スカイフィッシュ」の魂魄を定着させた……宛ら『雷電飛魚』と言った所かのぅ」
「何だかダサいぞ」
「あんたまだいたの!?」
「むぅ、若人の趣味は分からん……さて、手並み拝見と行こうかの」
「アノマロカリス……もしかして、「スカイフィッシュ」!?」
「左様、電信柱に「スカイフィッシュ」の魂魄を定着させた……宛ら『雷電飛魚』と言った所かのぅ」
「何だかダサいぞ」
「あんたまだいたの!?」
「むぅ、若人の趣味は分からん……さて、手並み拝見と行こうかの」
化物の触手から、激しい音と共に雷撃が発せられる
「やばっ!? 封印解除! 『スィギア・レウォルフ』!!」
ペンダントを手に取って「ロータス・ワンド」の力を解放し、光の盾を作り出す
雷撃は盾に阻まれ、横道に反れてゆく
雷撃は盾に阻まれ、横道に反れてゆく
「コロ! モッケ!」
「心得た!」
「もっけけけけけけ!! 一丁殺ってやらァ!!」
「心得た!」
「もっけけけけけけ!! 一丁殺ってやらァ!!」
上空から、2羽のフクロウ―――コロとモッケが飛来し、
コロは光の壁を作り出して玄鳥と風音を包み込み、モッケはどす黒い炎を作り出して化物にぶつけた
しかし
コロは光の壁を作り出して玄鳥と風音を包み込み、モッケはどす黒い炎を作り出して化物にぶつけた
しかし
「―――――――ッれ!?」
炎はアスファルトに直撃して消える
化物の姿は、何処にもなかった
化物の姿は、何処にもなかった
「き、消えた!? 一体何処に―――――――」
「百花! 左だぞ!!」
「百花! 左だぞ!!」
え、と声を漏らしながら、杖の先端に光を込めて振るう
結果は大当たり、顔面にクリーンヒットした化物は、大きく吹き飛ばされてアスファルトを滑る
結果は大当たり、顔面にクリーンヒットした化物は、大きく吹き飛ばされてアスファルトを滑る
「あ、当たっちゃった……す、凄いじゃない風音!」
「えへへへ、これくらい朝飯前だぞ!」
(「スカイフィッシュ」は高速で動くUMAなのに、その動きに追いつけていた……
並みの動体視力じゃない……萌黄野さんって一体…?)
「ほぅ、なかなかやりおるな。だがこれしきの事」
「えへへへ、これくらい朝飯前だぞ!」
(「スカイフィッシュ」は高速で動くUMAなのに、その動きに追いつけていた……
並みの動体視力じゃない……萌黄野さんって一体…?)
「ほぅ、なかなかやりおるな。だがこれしきの事」
化物は再び飛び上がると、周囲に雷撃を放った
またも光の壁を生成し、身を守る
またも光の壁を生成し、身を守る
「へへーんだ、当たんないわよそんなの!」
「ッちょ、姉ちゃんよォ! 俺もそん中入れてくれよォ!」
「これくらい当たっても平気でしょ?」
「テメェは鬼か!?」
「隙有りじゃ」
「ッちょ、姉ちゃんよォ! 俺もそん中入れてくれよォ!」
「これくらい当たっても平気でしょ?」
「テメェは鬼か!?」
「隙有りじゃ」
直後、化物の姿が一瞬にして消える
と思えば、がつっ、がつっ、と鈍い音を立てて何かが百花の壁にぶつかってきた
と思えば、がつっ、がつっ、と鈍い音を立てて何かが百花の壁にぶつかってきた
「こ、これって……しまった!?」
百花の誤算
壁を作っている間は、その状態を保つ為に魔力を維持しなければならない
今この状態で攻撃しようとすれば、盾が消え、敵の攻撃を諸に受ける
逆にこのまま守り続けても、反撃が出来ない
壁を作っている間は、その状態を保つ為に魔力を維持しなければならない
今この状態で攻撃しようとすれば、盾が消え、敵の攻撃を諸に受ける
逆にこのまま守り続けても、反撃が出来ない
「っも、百花!!」
「小僧! 何とかしろ!」
「わァーってらァ、クソ爺!! 『怪火・煉獄の陣』!!」
「小僧! 何とかしろ!」
「わァーってらァ、クソ爺!! 『怪火・煉獄の陣』!!」
モッケが黒い炎を当てずっぽうに投げつける
だが稲光が発せられ、それらは相殺して掻き消えた
だが稲光が発せられ、それらは相殺して掻き消えた
「ちィッ、これじゃあ止めらんねェぞ!?」
「ふぉっふぉっふぉ、攻撃の手を緩めるでないぞ」
「ふぉっふぉっふぉ、攻撃の手を緩めるでないぞ」
化物の手数が増えてゆく
光の壁に、徐々に罅が入り始めた
たらり、百花の額に汗が流れる
光の壁に、徐々に罅が入り始めた
たらり、百花の額に汗が流れる
「くぅ………もう、限界…………」
「ふぉっふぉっふぉ、これでまず一人目じゃ」
「やめろぉ!!」
「ふぉっふぉっふぉ、これでまず一人目じゃ」
「やめろぉ!!」
風音の怒声が響く
コロの結界から飛び出した彼女を、玄鳥が必死に呼び戻そうとした
コロの結界から飛び出した彼女を、玄鳥が必死に呼び戻そうとした
「っ萌黄野さん! 外に出ちゃダメだ! 早くこっちに―――――」
「嫌だ! 俺は逃げない! 俺も一緒に戦うぞ!!」
「か……風音………」
「ん? ふぉっふぉっふぉ、何を言い出すかと思えば…
契約者でもない人間が、この儂を討ち倒せるとでも思っとるのか?」
「確かに、俺には百花やじーちゃんみたいな、不思議な力は持ってない…
でも! 目の前で戦ってる友達を見捨てて逃げるくらいなら! 戦って死んだ方がマシだぞ!!」
「嫌だ! 俺は逃げない! 俺も一緒に戦うぞ!!」
「か……風音………」
「ん? ふぉっふぉっふぉ、何を言い出すかと思えば…
契約者でもない人間が、この儂を討ち倒せるとでも思っとるのか?」
「確かに、俺には百花やじーちゃんみたいな、不思議な力は持ってない…
でも! 目の前で戦ってる友達を見捨てて逃げるくらいなら! 戦って死んだ方がマシだぞ!!」
風音の強い想いに応えるかのように
彼女の懐から、先程の巻物が飛び出し、眩く輝きながら浮き上がった
彼女の懐から、先程の巻物が飛び出し、眩く輝きながら浮き上がった
「……え?」
ぽかん、としている風音だったが、
暫くして首を左右に振ると、気を引き締めて巻物を見据えた
暫くして首を左右に振ると、気を引き締めて巻物を見据えた
「…頼む。お前が本当に忍者の巻物なら……俺に力を貸してくれ!!」
がしっ、と巻物を掴みとる
腕を通して彼女の身体に熱が流れるような感覚が広がった
う、と呻き声を上げるが、すぐに熱は引き、代わりに力が溢れてきた
腕を通して彼女の身体に熱が流れるような感覚が広がった
う、と呻き声を上げるが、すぐに熱は引き、代わりに力が溢れてきた
「……まさか……契約したのか?」
「今助けるぞ百花! 『忍法 分身の術』!!」
「今助けるぞ百花! 『忍法 分身の術』!!」
特撮の忍者で見るようなお決まりのポーズを取ると、
風音が2、3、4……10人にも増え、地面を蹴って高くジャンプした
風音が2、3、4……10人にも増え、地面を蹴って高くジャンプした
「「「「「「「「「「喰らえ! 『忍法 金遁の術』!!」」」」」」」」」」
10人の風音が同時に手裏剣を投げ、無数の刃の雨となる
見事命中、手裏剣は化物の電線を切り刻み、放電が出来なくなった
見事命中、手裏剣は化物の電線を切り刻み、放電が出来なくなった
「ミミフクロウ! さっきみたいに炎を飛ばすんだぞ!!」
「俺ァモッケっつゥんだよォ!! 『怪火・煉獄の陣』!!」
「俺ァモッケっつゥんだよォ!! 『怪火・煉獄の陣』!!」
再び黒炎の雨を降らせるモッケ
今度は阻まれる事もなく、炎は化物に命中した
爆音を響かせ、化物は失速し地面に叩きつけられた
今度は阻まれる事もなく、炎は化物に命中した
爆音を響かせ、化物は失速し地面に叩きつけられた
「バァリバリダァァァァァァァァ!!??」
防ぐべき攻撃が止んだことにより、百花が光の盾を解除する
「ありがとう風音! 後は任せて!」
くるくると「ロータス・ワンド」を回し、両手で持って構える
先端の蓮の花に、光が集まり始める
先端の蓮の花に、光が集まり始める
「聖なる光よ、善なる輝きよ
憎悪、怨恨、悲哀、殺意、邪悪なる意思を全て討ち祓い、その者の心を清め洗え!
百花繚乱! 『グナブ・ギブ・レウォルフ』!!」
憎悪、怨恨、悲哀、殺意、邪悪なる意思を全て討ち祓い、その者の心を清め洗え!
百花繚乱! 『グナブ・ギブ・レウォルフ』!!」
巨大な眩い蓮の花が射出され、化物を飲み込んで覆い尽くす
ぱっ、と煌めく花弁が散った時、そこに異形の化物の姿は無く、ただ電柱が横たわっており、
青白い発光体が、空の彼方にすぅっ、と消えていった
ぱっ、と煌めく花弁が散った時、そこに異形の化物の姿は無く、ただ電柱が横たわっており、
青白い発光体が、空の彼方にすぅっ、と消えていった
「……ふぉっふぉっふぉ、成程、ケセドが苦戦するのも無理はないのぅ」
「お爺さん、まだあたし達とやる気?」
「これ以上は好き勝手させないぞ!」
「お爺さん、まだあたし達とやる気?」
「これ以上は好き勝手させないぞ!」
百花は蓮の杖を、風音は手裏剣を構える
「そうじゃのぅ……今日のところは、ここで退散しようかのぅ
そもそもはただの小手調べ……良い物を見せてもろぅたし、良しとしよう」
そもそもはただの小手調べ……良い物を見せてもろぅたし、良しとしよう」
にやりと笑いながら、老人――コクマーの姿は、その場から忽然と消えた
「また消えた…昨日のケセドっていう人と同じだ」
「どうせ性懲りもなく来るんじゃないの?……それより、」
「どうせ性懲りもなく来るんじゃないの?……それより、」
百花は風音に向き直り、その両手を強く握り締めた
「あんたすっごいじゃないのぉ! さっきのどうやったの!? ねぇねぇさっきの何なの!?」
目をキラキラ輝かせながら、彼女は風音に詰め寄った
えー、と風音は困ったような顔つきで後頭部を掻いた
えー、と風音は困ったような顔つきで後頭部を掻いた
「えーと、どうやったかは俺も詳しく分からないけど……」
「多分、「忍法」だと思うな。 ほら、『分身の術』とか『金遁の術』とか」
「でもそれ、都市伝説になるの?」
「実際に出来た訳じゃないから、都市伝説化しても無理は無いと思うよ」
「「えっ、忍者って分身しないの!?」」
「多分、「忍法」だと思うな。 ほら、『分身の術』とか『金遁の術』とか」
「でもそれ、都市伝説になるの?」
「実際に出来た訳じゃないから、都市伝説化しても無理は無いと思うよ」
「「えっ、忍者って分身しないの!?」」
見事なまでにハモった2人
このままモジュレーションして2人の組曲を響かせてしまいそうな勢いである
このままモジュレーションして2人の組曲を響かせてしまいそうな勢いである
「……契約者よ、これは正直に説明するべきかどうか判断に迷いますな」
笑い転げるモッケを他所に、コロが溜息混じりにそう耳打ちする
玄鳥はただただ、苦笑するしかなかった
玄鳥はただただ、苦笑するしかなかった
...続く