アットウィキロゴ

「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ラップトップハッピネス-04

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
ラップトップハッピネス 第四話「ロッキンオンザサムライガール」】

「もしもーし!蒼崎蓮!居るならでてこーい!」

 相変わらずドアの前で叫ぶ女。
 透過能力の発動。
 ドアを通り抜けて有無を言わさず手を伸ばす。
 女の心臓があるであろう所に当てる。

「用件を言え。」
「おや、初対面の女性の胸を掴むとは無礼な。これでも恥ずかしいんだが。」
「ノンキしてる暇は無いんじゃないのか?
 文字通りお前の命は俺が握っているんだ。」
「ふむ、それもそうだな。でもそれが何時から本物だと思ったのかという問題だよ。」

 うるさい女だ。
 そう思ってクシャリと握りつぶしたのは只の紙人形だった。

「変わり身の術かい。」

 殺気が鋼を纏い戦慄すべき速度で背後の宙から落ちてくる。
 間一髪の所で回避。
 全身に透過をかけて直進、女の後ろを取る。
 殺った、確信した所で動きが止まる。
 下に書かれているのはどうにも魔法陣らしきもの。
 五芒星……陰陽師ってやつか?
 初めて見た。
 女は俺の首に向けて躊躇いなく刀を振るう。
 地面に対して透過を発動、一気に地下に潜って首に向けられた刀と魔法陣から身をかわす。

「消えた?」

 女の声を頼りに手を伸ばす。
 足を捕まえたので握力に任せて一気に握りつぶす。
 しかしこちらも指を四本切り落とされた。 
 熱い、痛い、だけれども戦闘が続けられない訳ではない。
 痛覚をある程度までブロックして戦闘を続けることなぞ人外たる俺には容易いことだ。

「雪女!」

 また声が聞こえる。
 同じ事を繰り返してダメージを受ける俺ではない。
 ……が、やたら冷えるな。
 地面を凍らせたのか?
 都市伝説の氷を通り抜けられる確証は無い。
 耳を立てて水道管の音を聞く。
 家の軒下ならまだ凍らされては居ないはず。
 水道管の音がする方へ素早く移動。
 俺はそこから家の中に一端戻り一気に空へと舞い上がる。
 狙いは簡単、空中からの急降下による一撃必殺。
 息を思い切り吸い込み空気に対しての透過を開始。
 眼下に映る女性の影。
 遠くに見える昼下がりの太陽。
 俺は女に向けて急降下した。

「かかったな戯けめ!」

 驚いた。
 先ほど雪女で地面を凍らせていたのは地面に居た俺を生き埋め乃至氷漬けにする為だと思っていた。
 だが違った。
 あの女、飯島下弦とかいう女は鏡を作っていたのだ。
 とびきり巨大な氷で出来た鏡。
 丁度太陽の光を俺に反射させている。

「お前がいくらすり抜けられるといってもその姿が見えている以上は!
 “光だけは透過できていない”ということだ!
 これでもくらえ!」

 ご明察。
 だがしかしその程度で怯む俺ではない。
 眼と耳を塞いで自爆覚悟で一気に飯島に突撃を決める。
 額に何かぶつかる。
 その直後、光と音が辺りを包み込んだ。
 脳が揺れるようだ。
 だがなにか掴んでいる。
 腕……か、これを離せば切られる。
 視界が開くまで自分が組み敷いていると思しきものを絶対に離してはいけない。
 長く伸びて凶器のようになっている親指の爪を恐らく頸動脈と思われる場所に当てて相手の動きを制限する。

「……相性や策だけで影山翁を倒したわけではないらしいな。
 解ったよ、素直に負けを認める。」

 耳が聞こえるようになってきた。

「俺の実力を理解してもらった上で改めて聞こう、用件はなんだ?」

 流石都市伝説というべきか。
 眼も次第に見えるようになってきた。
 回復が異常に速いのは先ほど人を喰ったばかりだからか。
 見てみると、俺がまるで下弦を押し倒しているような姿勢になっていることに気がついた。

「用件は、あー……その前に上から降りてもらえるか。
 これでも嫁入り前の身なのだ、この体勢は少々恥ずかしい。」
「…………。」
「な、何だその目は!私だって大和撫子だぞ!恥というものはあるんだぞ!」

 うっっっっっっっっぜぇ…………。
 頬赤らめんじゃねえよ!
 さっきまで殺し合ってただろうがよ!
 なんなの!?
 マジなんなのお前!?
 あれか?
 私より強い男でなければなんたらかんたら!とか言っちゃうあれなのか!?
 知らねえよてめえの婚活事情なんざよお!

「ま、まさか!お前私をそんな眼で……
 確かに私は美しいし、頼り甲斐もあるし、知性も色香も兼ね備えた上に母性も溢れるパーフェクトな女性であるゆえ惹かれるのもいたしかたなしか。
 だがしかし私はどちらかといえば年上が好みだしそれに君は……」
「ちっげーよ!」
「きゃん!」

 …………ハッ!
 勢いに任せて蹴り飛ばしてしまった。

「なんて奴だ、降参した相手を蹴り飛ばすなんて……。」
「うるせー!殴るぞ!こんど殴るぞ!調子狂うんだよ!
 早く何しに来たのか言え!」
「あ、ああ……なんかすまん。
 えっと、まず君の影山翁を倒した実力を認めて私たちは君をフォーチュンクローバーの一員として飯島紹介に迎え入れることに決まった。
 其れにともなって君に影山翁の邸宅やら様々な財産が手に入ることになる。
 あの老人は君が今連れているらしい娘の遥ちゃん以外肉親が居ないんでね。
 君が管理する形になる。
 フォーチュンクローバーの一員になると専用の医療施設や娯楽施設などの年間パスや仕事に応じた報酬などが給付され……」
「いきなりすぎるわ!」
「キャン!」
「蓮さん!」

 振り返ると壁に手をつけたまま歩いてきたらしい遥がドアの前に立っていた。
 まだ具合が悪い様子で顔を真っ青にして震えている。

「待って蓮さん!その人は、良い人…………だか、ら……」

 震えている?
 さっき震えていたのもこれか?
 下弦の声を聞いて怖がっていたとかじゃなくて……
 たんに具合が悪かっただけなのか?
 まあだからといって行動が変わったかというとまったく変わらないが。

「遥ちゃんか!?身体がボロボロじゃないか!おい蒼崎蓮、なんでこんなことに!?」
「俺の毒をこの前まともに浴びてたからか?」

 そう言い終えるか否かのところで遥が倒れる。
 下弦は遥の傍に駆け寄って彼女の胸に耳を当てる。

「……いやそれじゃない、もうその毒とやらは抜けている。とりあえずこれについては私に治療させろ。」
「医術の心得もあるのか。」
「まあな。私はこの娘の主治医だよ。」
「その辺りの事情もゆっくり後で聞かせてもらおうか。」
「ああ、嫌でも聴かせる必要があるんだ。」

 俺は下弦と協力して遥をベッドに運ぶ。
 下弦は持っていたカバンからテキパキと医療用のキットを取り出して遥に白い液体の入った注射を打った。
 しばらくすると苦しそうにしていた遥はすやすやと眠り始めた。

「これでしばらくは保つとして……。
 まずはこの書類を読んでくれ。
 私は飯島下弦、飯島商会現会長飯島上弦の孫だ。
 商会の独自に抱えるフォーチュンクローバーという契約者集団との連絡役をしている。
 詳しいことについてその書類に載せておいた。」
「ふむ……なに、つまり傭兵?」
「違うな。確かにそう言えなくもないがあくまで君たちと我々との関係は対等。
 雇っているのではなくビジネスパートナーだ。」
「つまりビジネスパートナーが殺されたから、そのビジネスパートナーの代わりになる手駒が欲しいと。
 それで影山を殺した俺に白羽の矢が立った。
 ……ん?というかフォーチュンクローバーの選定条件が現役メンバーの殺害なのか。」
「まあそういうことだ。決して悪くない条件だと思うが……?」
「確かにな、旅してまわるにも金が要る。それに遥には医者が必要だ。」
「ならばそこに入っている書類にサインをしてくれ。
 契約金としてこの通帳に金は入れておいた。
 サインした書類と引換で頼む。」

 俺は自分の名前を書類に書き込んだ。

「随分簡単にサインしてくれたな。」
「うん、暇だからね。絵を描くくらいしか趣味がない。
 とりあえずその通帳とカードをくれ、」

 通帳には0が一杯並んでいた。
 貧乏旅を続け、ラーメン二郎が唯一の贅沢であった俺には使い切れない額だ。

「上手いのか?」
「小学生の落書き以下だ。」
「サインした本当の理由は?」
「書類を見たところ少なくとも“組織”程ルールが厳しくない。
 あの影山老人よろしく多少以上の犯罪行為も許可される。
 人間を自由に襲っても良いんだろう?」
「まあ必要以上の殺戮は困るから空気を読んで常識の範囲で目立たないように……。」
「都市伝説って人間を襲わなきゃ駄目なんだろう?」
「そうでもない。ジーナ・フォイロなんてそもそも人を食ったりしない。」
「マジかよ、勘違いしてた……。」

 下弦が咳払いをして遥の方を見る。

「遥が寝てるようだしし、話したいことが有る。」
「なんですか?」

 下弦はその場で椅子から立ち上がる。
 ついてこい、とジェスチャー。
 俺は彼女についてこの屋敷の応接間に向かう。

「わざわざここまで連れてきて話って?」

 彼女は椅子に腰を降ろすと驚くほど小さな声で話し始めた。

「まず遥は人間じゃない。彼女は人間とサキュバスのハーフなんだ。」
「え?」
「あの娘は……普通の人間と同じような食事では生きていけない。」
「人でも食うのか?なぁんだ、俺と同じ物でよかったのか……。」
「違うな、サキュバスだぞ?」
「え、それじゃあ……。」
「ああ、非常に言いづらいがそういうことだ。
 先ほど注射したのもそれに近い物だと思ってくれ。
 “それ”の供給が無くなると人間で言う所の低血糖と同じ症状が起きる。」
「あの子、幾つだっけ?」
「十三だ。」
「あいつと一緒か……それにしては身体が小さいが。」

 幼い頃に隣に住んでいた少女を思い出す。
 名前は確か……蘆薬茉莉、そうだそうだ、どうせ日本に帰ってきたんだから電話してやろう。

「栄養不足だよ。純粋なサキュバスほどあれを栄養にできないんだ。
 サキュバスと違って美味にも感じないらしいし。」
「難儀だな。」
「全くもってな。」
「で、俺にどうしろと。」
「男だろ、なんとかしろよ……。」
「えぇ……。」
「ていうかてっきりそういう趣味の方で情が移ったのかと……」

 そんな心ある人間でいられたらどれほど良かったか。

「違う、旅してたらぶっ倒れてたあいつを拾って、追手が面倒くさいから元から断っただけだ。」
「成程……人を人とも思ってないな。」
「まあな。」
「さて、私が話すべきことはこれで全部だ。私はそろそろ帰らねばならん。」
「そうか、帰りの道中気をつけろよ。この辺りには熊が出るらしい。」
「おや、意外と優しいな。」
「常識的に考えて言うべき文句ってだけだろ。」
「では私から親切のお返し。
 最近、警視庁密葬課が壊滅的被害に遭って、その分陰陽省の動きが活発になっている。
 近々奴らがこっちに来るだろうから十分気をつけてくれ。」
「ありがとう。」
「なに、メンバーが連続して交代ってんじゃあ様にならないからね。
 あと薬が必要になったら言ってくれ。
 だが薬は一時しのぎにしかならない。
 君が彼女を手元に置いておくならば……まあ覚悟を決めるんだな。」

 下弦はそう言い残して帰っていった。
 俺は遥の眠る寝室に戻る。
 穏やかな寝顔はとても可愛らしかった。
 だからこそ、とてもじゃないが……俺にはできない。
 俺はどうすればいいのだろう。
 迷っている自分に気づく。
 どうやら俺も少しは人間らしくなってきたらしい。
 その事実が少し嬉しかった。

【ラップトップハッピネス 第四話「ロッキンオンザサムライガール」 to be continued】



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー