「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - DKGとファントムさん-08

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 時間は少し遡る――――

 薫――――DKGは、突如襲ってくる神話級の都市伝説達に、困惑した。
(……何故だ? 何で神話級の都市伝説がこんなに? ここまで古今東西の都市伝説だと、多重契約者か? ……この量とだぶりよう、多重契約ってレベルじゃないだろ)
 DKGも神話級の都市伝説は何回か殺した経験がある。しかし、ここまでの量だとさすがに死ぬ。百人からさらに孫悟空が影分身するものだから……もう目視で数えるのも難しい。
 誰だこんな都市伝説を送りつけてきたのは。どこぞの機関だ。
(……本気を出して、殺すしかないか)
 そもそも、神話級相手に手を抜いたことなど無いのだが。
 とりあえず、パンツァファーストを虚空から何個か取りだし、都市伝説の中央辺りに撃ち込む。山なりで射たれ、見事な爆発で都市伝説を吹き飛ばす。
 二、三人は消せたかも知れないが、絶対的な防御や恐ろしい反射神経で避ける。
 DKGが今まで神話級都市伝説に勝ってきたのは、カウンターでのクリティカルヒットを決める事ができたからである。
 だが、この人数相手では、クリティカルヒットどころかカウンターすらできないだろう。
 バンパイアあたりの集団なら、大剣やら機関銃で無双できるのだが、神話級の集団になると、勝つ手段すら思い付かない。
 だが、相手はそんな活路を思いつく隙も与えてくれず、雷やらグンニグルが飛んで来たり、如意棒が伸びてきたりと、信じられない早さで襲ってくる。
「大人げないな。それでも先輩か? 三歳児相手に焦りすぎだろ」
 避けられるものは避け、避けられないものはジャックブレードでいなす。
 いなした神話級の攻撃は、手がジンジンするどころか、もげてしまいそうだったが、なんとか耐えきった。
 だが、一つの雷の矢が避け切れず、DKGの眼前に迫ってきた。

 それを、DKGは無意識に放った雷でいなした。

 は? なんでだ? とDKG自身一瞬疑問に思ったが、契約したことにより、災害なども扱えるようになったのかもしれない。現に光線などは指先か出せるようになっている……これは災害などではないが。
(……どうする? 雷は出したばかりで、どこまで通用するかわからない。このまま逃げ続けても、いつかは追い詰められる。……いや、アイツなら)
 ふと、こんな時にファントム――――雄介の事を思い出してしまい、敵の攻撃をよけながら、慌てて頭から振り払う。
(ダメだ。アイツは俺が助けを求めれば、命をかけて俺を守り通す。そういう男だ)
 雄介と接していたのはごく短い時間だが、人の心を覗いてきたDKGには、嫌でも分かる。
(……それだから、アイツには頼れない)
 そうすれば、雄介に殺しの苦悩を味あわせることになる。それだけはしてはいけない。
 彼は自分の気持ちを理解してくれた。つまり、殺しの苦悩も理解しているということだ。
 端から見れば変な男にしか見えないが、困っている何かがそこにいるのなら、助けずにはいられない優しいヤツなのだ。そんな人を、これ以上困らせるわけにはいかない。
 DKGは虚空からブローニングM2重機関銃を二丁取りだし、都市伝説達を睨めつける。
「……お前ら、運が悪かったな。今の俺は、かなりヤバイ」
 機関銃の安全装置を外し、構える。
「殺す覚悟が、もうできた」
 引き金を、戸惑いなく、躊躇いなく、目を大きく開け、――――引く。
 三銃士達が弾丸を弾こうとするが、逆に剣が弾かれ、全弾丸が眉間をぶち抜き、カード――――には戻らず、血を吹き出しながら倒れる。
 その後ろに控えていたアーサー王達がエクスカリバーを鞘から抜き取り、悠然と歩いてくる。
「なかなかの迫力だな。だが――――まだ弱い」
 右手のM2重機関銃で足元を狙い、弾幕を作る。
 だがアーサー王達もずくに反応し、エクスカリバーで切り裂く――――直後に左手のM2重機関銃で、アーサー王達の頭を蜂の巣にし、後ろにばたりと倒れる。
 その余韻を残す暇もなく、DKGは周りを囲んでいる阿修羅達を回転しながら、M2重機関銃で余計に多い顔を吹き飛ばす。
 その姿は、美しく、可憐で、――――圧倒的な強さを誇っていた。
 それを見た、孫悟空、オーディン、ゼウス達は廃工場の屋根を突き破って飛びながら、遠距離攻撃を仕掛けることにした。
 その距離、約6000m。
「おい!! さすがの俺もそこまで届かないぞ!! 俺の能力補正5000mが限度だぞ!」
 空を飛ぶ都市伝説たちは、容赦なく槍、雷、如意棒などの暴風雨を落とす。
 その攻撃をM2重機関銃で相殺し、廃工場の物陰に隠れる。
(……今まで一気にあの高さまで飛ぶヤツなんていなかったからな。いてもその前に即殺。さて……どうやって殺そうか?)
 ニヤリ、と笑いながら、M2重機関銃を虚空に戻し、F-22を虚空から無理矢理取り出す。コックピットに乗り込むと、ハンドルを握る。
「安心しろ」
 DKGは、神話達に、告げる。
「全員殺してやるから」
 そして、現在に至る。

 さらに、それをファントムとローゼは圧巻されながら眺めていた。
「俺は武器については詳しく無いんだが、あれはフレアか?」
「……私もあまり知らないのですが、おそらくそうなのでは?」
「派手だな。あいつらしいぜ」
「レジェンドハンターはDKGを狙っていると聞きますが……あれに乗っているのは?」
「DKGだ。お前の想像通り、な」
「なぜ、レジェンドハンターはDKGを狙うのでしょうか?」
「レジェンドハンターの弟がDKGと契約したらしく、レジェンドハンターが嫉妬しているらしい」
「ブフゥ!?」
 ファントムの言葉を聞き、ローゼは思い切り吹き出してしまった。
「おい、なぜ吹いた?」
「いえ、だって!? DKGとの契約するためには条件があって、それは、絶対に不可能でしたもの!!」
 そういえば、ファントムがDKGのことを教えられた時、そんな事を教えられた気がする。
「……聞いたことはあった気がするが、忘れた。教えてくれ」
「……本当に忘れたのですの?」
「ああ、φNo.0程ではないがな」
「まあいいですわ」
 ローゼは右手の人差し指をピーンとたて、いつの間にかワイレッドの眼鏡をかけていた。
「DKGとは、契約の危険度としてもかなり高く、契約すれば、たちまち飲まれてしまう程らしいですの」
「それはどうやって調べたんだ?」
「こっくりさんなどの都市伝説で、十分に調べられますわ」
「なるほどな」
「そもそも、DKGと契約する事が不可能ですわ。彼女との契約条件というのは――――」
「――――殺し合い」
 ローゼが言う前に、ファントムが先に呟いた。
「知っているじゃありませんか! ワタクシが説明する必要って無かったんじゃありませんか!」
「今思い出したんだ。悪かったな」
 ファントムはさらっと謝るが、ローゼは納得していない顔をしている。
「……それにしても、DKGが契約したとは本当ですの? すでに飲まれてしまったのでは……」
「ああ、俺が契約したからその心配はない」
「あら、そうなんですの?」
「ああ、そうなんだ」
 二人は、F―22の活躍を眺めながら(この時、都市伝説の三分の二を撃ち落としていた)、しばらく沈黙する。
「ってえぇ!?」
「驚くのが遅い」
「いえ、だって、都市伝説が、都市伝説と契約したって!?」
「ああ、俺は都市伝説じゃなくて、人間だ」
「……ああ、そうなんですの……えぇ!?」
「いちいちリアクションが面白いな」
 そういいながら、ファントムは骸骨のマスクを外し、人の姿に戻る。
「……た、確かに普通の契約者ですわ。飲まれてもいませんし」
「そうなんですよ。まあどうしてこうなってしまったかは、組織にも実はわかってはいないらしいですけど。間違った説をどうどうと言っていまして。……いや、一部はあっていましたけど」
「あの……つまりどういうことですの???」
「まあ、都市伝説の力を自分の物にしただけですよ。……詳しいことは教えられないが、な」
 話している途中に骸骨マスクを被り、ファントムという都市伝説に戻る。
「……融合ではなく?」
「変身と言うべきか装着と言うべきか……それはわからないが、少なくとも、どこぞのNo.0や、シャドーマンの契約者の半融合ではないな」
「あなた、裂邪さんをご存知なんですの?」
「裂邪というのか、あのUFOを落としたのは」
「見てたんですの!?」
「ああ、UFOが学校町にきたというから、あのバカ兄貴が何かしたんじゃないかと、アメリカから千里眼でな」
「……冗談でしょう?」
「千里眼というのはな」
(アメリカというのは否定しませんのね……)
 ファントムのアメリカから一体どうやって見たんでしょか? ともローゼは思ったが、危ない橋を渡る事になりそうなのでやめておく。
 そんな時だった、F-22から逃げている都市伝説たちが、カードに戻り、空高く跳んでいく。
 そして、だ。その上から、どこか古い、飛行船が現れた。
「……あれは、ダ・ヴィンチの設計図からでも作ったか?」
「最近映画もできましたし、それの影響では? それと、空飛ぶ都市伝説でも流行なんでしょうか?」
 その飛行船の大砲から弾が発射されるが、F-22は簡単に避け、フレアをブチ込む。
 見事バラバラとなり、学校町のあちこちに飛んでいった。
「……組織、あの後処理任せた」
「民間人に仕事は頼まないのですが……DKGはファントムさんの契約した都市伝説なのですし、責任くらいとってほしいものですわ」
「さて、次はUFOでもでるか? それともラピタか?」
「……部下と私に仕事を増やさないでくれると助かりますの」
「俺の兄貴に言え」
 バラバラになった飛行船の中から、一枚のカードがキラリと光る。そこから大きな島と、海――――
「オイ待て。島なら分かるが海ってなんだ海って!!」
「……ラピュタどころでは無いんじゃありません?」
 ――――その名も、ネバーランド。
「……あのバカ! 即、殺してやる!」
「ああ……頭が痛くなってきましたの」
「雑談スレのラピタはフェイクか」
「メタ発言はお止しになって!?」
 だが、ネバーランドである。子供の国である。永遠の少年少女の島である。
「……は!! いえいえ、ワタクシったらハレンチな!!」
「お前やっぱりショタコンだろ。今ネバーランドの響きにやられてただろ」
「い、いいえ!! ワタクシの年齢ならショタを愛でても……」
「確か一〇〇過ぎじゃなかったかお前」
「もう少し若いですわ!! ……は!」
「自爆だな」
 ファントムは黒いコートをなびかせながらネバーランドを見る。
 F-22は容赦なくミサイルをブチこみ、水やら岩などが崩れ落ちている。
「……もう、書類の枚数とか考えたくありませんの」
「……両方俺の身内だ。とっとと捕まえてお説教だ」
「よろしくお願いします……あら? 両方?」
「まぁ、説明は後だ」
 黒いロングコートを両手ではためかせ、それは翼の様になびいた。
「俺は止めに行くが……一緒に行くか?」
 その言葉に、ローゼは当然とばかりに頷く。
「もちろん、ですわ。一般人を危険な目には、あわせませんわ」
「まぁ、書類に何て書くか考えておけよ」
「……忘れようとしてましたのに」

 その頃、DKGは突如現れたネバーランを睨みつけていた。
「……ネバーランド、ね。ここまでして、俺を殺したいか」
 F-22でネバーランドを撃ち落としにかかっているが、なかなかと頑丈である。
「こんな都市伝説とどうやって契約した――――」
 ゴォン!! と、突如F-22がバラバラになった。
 は? と思う暇もなく、DKGは外へ引きずり出される。
 その時、一瞬、緑色の服を着た少年を見た。
(――――ピーター・パンか!!)
 ジャックブレードと9mmベレットを虚空から取り出し、ピーター・パンを撃つ。
 が、すぐに避けられ短剣で襲い掛かりに来る。
 それをジャックブレードでいとも簡単に弾き、そのまま首をかっ切ってやった。
 ピーター・パンはカードになった。が、弾けて壊れてしまう。
 空に放り出されながらも、何とか勝利を手にしたDKGだが。
 重力には逆らえず、空の海の上にある海賊船に落ちてしまった。
「……痛っ」
 さすがに痛かったらしく、お尻をさする。
「やあ、ようこそ。夢の国へ」
 そのそばにストっと降りてくる男がいた。DKGは反射的に顔を上げると、

 その顔を鼻ごと思い切り踏みつけられた。

 ガッ!! と鈍い音が響き、その綺麗な顔がゆがめられる。
「この!!」
 DKGはそれに構わず立ち上がろうとするが、両腕、両足に、青く光った剣が貫通した。
 男――――レジェンドハンター、本条総司の陰陽術である。
「――――ッ!!」
 声にならない絶叫がDKGの口から洩れ、その顔は苦痛で歪んでいた。
「はじめましてDKG。僕の弟が許可したからって、本条名乗ってんじゃねーよ」
 ガッ! ガッ!! と、何度も何度も顔を蹴る男。その顔には、怒りしかなかった。
「お前ら都市伝説の所為で……僕のゆーは、どれだけ人生をめちゃくちゃにされなきゃいけないんだ!! うんざりだ! ゆーの前に出てくんなクソッ!!」
 段々と、容赦なく、目も、耳も、歯ぐきも、蹴りつける。
「……まあ、あいさつはこれぐらいにして、僕の名前を教えてあげよう」
 あいさつでこれ。酷い男もいたものだ。
「僕は本条総司。ゆー……雄介の血のつながった、正真正銘のお兄様さ。君の事は絶対に認めないけどね」
「……め……ちゃ、くちゃ、だな……」
「おや、まだ話せたかい。まあいいや」
 総司はどこからともなく金色の金槌を取り出し、手の中でくるくると遊ぶ。
「僕の式神をよく殺せたものだ。本来、死ぬ一歩手前でカードに戻って僕の元に戻ってくるんだけど……、君の能力の所為で、カードにも戻らず、死んでしまった。君に送った劣化品は、オリジナル程じゃ無いにしろ、上級の都市伝説でも死んでしまう……道具としては、優秀みたいだね」
 ゴン、ゴン、と金槌でDKGの頭を叩く総司。
「だけど、過去に何万人もの人間と都市伝説を殺してきたのに、ゆーのそばにいるってのが信じられない。……確か、本当は殺すのが嫌だったんだって?」
 DKGの髪の毛を根元から掴み、顔を覗きこむ総司。

「嘘つけ。笑ってたじゃないか」

 確かに、確かにDKGは笑っていた。守る為に殺すと決めた時、笑っていたかもしれない。だが、それは――――
「違うだなんて言わせないよ。君の本能が活発してきただけだろ。今までいやいや殺してきたと言いながらも、苦痛にしか感じないと自分の本能に嘘をつきながらも、本能は求めているんだよ。死を!! もっと死をよこせ!! ってね」
「ち、ちが」
「違うだなんて言わせないっつったろォがァ!!」
 ガン!! とDKGの顔を床に叩きつけ、黙らせる総司。
「……いいかい? 君は人の心に触れて感情が生まれたとか言っていたらしいね。そんな嘘、よくもいけしゃあしゃあといえたものだ」
 やめろ。
「そんな作り物で、感情ができるわけがないだろ! ロボットがそんな感情を持つ事はあり得ないように、君も同じさ!!」
 やめてくれ。
「建前を作って殺せば、許されるとでも思ったんじゃないかな!? はァふざけんな!! そんなヤツに普通の暮らしをさせてたらこの街は地獄に変わってしまうだろうね!!」
 お願いだから。
「結局、本能に君は勝てないのさ。その作り物の感情も、信用できない!! 過去はその都市伝説の本質を表す!! 道具がいっちょまえに感情を手に入れたってはしゃぐんじゃねえよ!!」
 やめてく

「作り物が、勝手に遊ぶな」

 ――――                                  ――――
 そのとき、DKGの感情は、崩れ落ちた。
 彼の言葉は支離滅裂だったが、彼女の弱点を見事に抉っていた。
 完全に生気を無くした目を見ると、総司は中に何の都市伝説も入っていないカードを一枚取り出す。
「まあ、僕の道具としては、使ってあげるよ。一生ね」
 そのカードを額につけようとした。
 シュッ!! と赤い閃光がカードに穴をあけ、シュシュシュシュッ!! と青く光る四本のダーツが、DKGを突き刺す青い剣を消した。
「……誰だい。邪魔をするのは?」
 船の帆の上に、赤い髪をなびかせた黒いスーツを着た少女と、黒いロングコートをなびかせた骸骨マスクを被った男がいた。
「組織のR-No.0と申しますわ。さっそくで悪いのですが、お縄を頂戴いたします」
「嫌だといったら?」
「それと関係なしで、こちらの方はヤル気満々のようですわよ?」
 ガッ!! と重力に任せた着地とは考えられない様な勢いで床に落ち、綺麗に着地する骸骨マスクの男――――ファントム。
「やぁゆー。久しぶりだね。元気にしていたかい?」
 親しげに、手を振りながらファントムに近づく総司。
 まるで、DKG――――薫を罵っていた事が、嘘だったかのように。
「失せろ」
 そんな男の顔に、直立したままで裏拳を叩きこみ、放物線を描き海に落とす。
 そんな事を気にせず、マスクを投げ捨て薫の元に駆け寄る。
「……遅れて、すいませんでした」
 ポツリと呟き、しゃがみ込んで薫を抱きしめる。
「……雄介、か」
 ファントム――――雄介が抱きしめた事に気がついたらしく、かすかに目に生気が宿る。
「なあ、俺は道具か?」
「違います」
 この違いますには、薫は安堵した。
「人間か?」
「違います」
 この違いますには、当たり前かと笑ってしまった。
「……都市伝説か?」
「違います」
 この違いますには、驚いてしまった。
「……じゃあ、何だ?」
「あなたは、本条薫。そして――――」
 いったん区切ると、雄介は少し照れを見せたが、今までにみた事が無いほど真摯な顔で囁いた。
「――――俺の女だ」
 物ではなく、女。
 いつも、いつも、雄介は薫を物扱いしなかった。いつも女だと言っていた。
 不安な時も、悩んだ時も、暴力を振ってしまった時も、雄介は嫌な顔一つせずそばにいた。
 そして、今も。
 薫も、そのぬくもりが段々と愛おしくなり、強く抱きしめてしまう。
「あなたがいなければ、もう私に生きる意味なんてありませんからね? ずっと一緒にいて下さい」
「俺の事、愛してるか?」
「ええ、愛しています」
 尚も真摯に答える雄介に、優しく微笑んでしまった。
「……俺もだ」
「……そうですか」
 二人は笑い合い、互いに、もっと強く、抱きしめる。
「どうして、私の周りには、アツアツのカップルしかいらっしゃらないのでしょう?」
 はぁ、と呟くローゼの拗ねた小言に、二人はビクッ!! と体を震わせ、ゆっくりと離れる。
「……すまん、忘れてた」
「……手を引いて連れてきたというのに、随分と扱いが酷いんですのね」
 プイッと怒りながら紅茶(どこから出したかは謎)をすするローゼ。

「……僕を忘れるって酷いな」

 ザバァン!! と海が割れ、ポセイドンと共に海から出てくる総司。
「雄介……、お前は、自分をそんな体にした、都市伝説が憎くないのか?」
「兄貴、俺は別に憎くんでない。気にしてもしょうが無いし、何よりあの体の力はもう抜けてる」
「裏切ったんだぞ!! 君の事を差し出し、逃げたんだぞ!!」
「人間、誰だって自分と愛しい奴が可愛いのさ」
「だからこそ!! 都市伝説は、人の道具であるべきだ!!」
「人は神に作られたんだ。神の道具になる気は無いだろ?」
「神は実在はする。だがそれは都市伝説としてでだ!!」
「俺達の手の届かないところで、思いつかないところで、人を生み出した神の存在を信じないのか?」
「今はそんな事を話してるんじゃない!! その都市伝説は危険なんだ!! 過去に何万人もの人間を殺したんだぞ!!」
「過去はそうだな。だが今はどうだ?」
「笑って、都市伝説を殺している!! 前より、酷くなっているんだ!! いつ雄介を飲み込むかもわからないんだぞ!?」
「そうだとしても、俺は薫を信じている」
「そう言って!! あの都市伝説にも裏切られただろう!!」
「俺は今でもアイツを信じている! まわりを疑い続けるより、信じ続ける事が、幸せな人生だ!!」
「裏切られたらどうする!? もし、全てに裏切られたら、雄介、お前はどうする!? そこの危険な道具に裏切られたら、お前はどうするんだ!!」
「こいつに裏切られるなら、俺はそれでも構わない!!」
「なぜだなぜそう言える!!」
「俺はこの女を愛しているからだ!!」
 二人は怒鳴り合いながら言い合ったのがよほど疲れたのか、肩で息をしながら睨み続けている。
「ここまで言ってもわからないのか……!!」
「そんな考え、理解したくもない頑固者!!」
 雄介は突如走り出し、そのまま船から海へ――――総司のいる場所に飛び出す。
 雄介は拳を握り、総司の顔を殴りつけて一緒に海へ落ちる。
「あのバカ!!」
「一体何をやってますの!?」
 ポセイドンはいつの間にかカードに戻っており、海へと沈んでいくのが見える。
「「だァアアアアア!!」」
 浅い場所から、二つの影が飛びだした。
 海の中から飛びだしてきたのは、雄介――――ファントムと、赤い仮面をつけり、金色の鎧兜の姿――――総司の姿が。
 その総司を見て、ローゼと薫は恐怖で体が震えた。
「何ですの、あの金色の兜鎧は……」
「呪いの鎧兜か、なんかだろ」
「私が言っているのは、そういう事ではなく!!」
「分かっている!! あいつの力が、普通じゃない―――――あの劣化版の神話共あわせてもの、何十倍の力があるってことぐらい、俺にもわかっている!!」
 そう、総司の鎧兜は、力が大きすぎる。最強とも言える二人が、恐怖するくらいなのだから。
「……これは仮説だが、もしかして、今持っている都市伝説の力を、一つにしたって事は無いか……?」
「……レジェンドハンターなら、可能かもしれませんわ」
 これは危険だと思い、二人が船から身を乗り出す。
「来るなァ!!」
 ファントムの叫び声に、ピタリと体を止める二人。
「……Redyは、紅茶でも飲んでゆっくりしてな」
「しかし!!」
「これは!!」
 ローゼの声を遮って、叫ぶファントムの姿には、ただならぬ雰囲気があった。
「……これは、ただの兄弟喧嘩だ」
 ファントムは、手を軽く振った。
「うわァァアアアアアアアアアア!!」
 それが合図かの様に、総司はファントムに向かって走ってくる。
 ここから先は、男の泥試合だった。
 能力を使えば、ファントムなどは簡単に消せるかもしれない。
 だが、これは戦いではない。喧嘩だ。
 喧嘩で使うのは己の身体のみ。装備は防具に過ぎない。
 二人の拳が交差し、互いの顔に拳が叩きつけられる。
 その力に、共に後ろに倒れこんでしまった。すぐに起きあがり仕掛けに入る。
 だが、早かったのはファントムの方。総司はまだバランスが安定しておらず、それについてファントムはその腹を蹴飛ばした。
「ガァ!?」
 総司はまたしても後ろに倒れこみ、ファントムはその顔を踏みつける。
 それだけでは止まらない。蹴る踏む蹴る踏む蹴飛ばす……ファントムの一方的な攻撃。
「お前は、薫を傷つけた!! その、倍、返しだァ!!」
 最後に総司の顎を蹴り上げる。総司の身体は、まるで大きな魚が吊るされているかのように飛ばされていた。
「うオリャァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
 ファントムも同じ高さに飛びあがり、身体の全体重を乗せ、全てを絞り出した渾身の一撃――――本気の拳を叩きこんだ。
 総司は砂浜まで飛び、赤い仮面も、金色の鎧兜も外れ、たくさんのカードがバラバラと落ちていった。
「……僕は、認め、ないよ。ゆー」
「お前の同意は、いらない」
 黒いロングコートのポケットに両手を入れ、フラフラとした足取りで船の方を振り向く。
「……帰りましょうか」
 ポケットから取り出されたその手には、金色の粉を零れ落とす、妖精――――ティンカーベルが握られていた。

「面舵一杯ー!! ですわー♪」
 海賊帽子を被ったローゼは、今、海賊船の舵をとっている。
 今いるのはネバーランドの海ではない。ましてや海でも無い。
 夕日が傾く、赤い大空である。
 その赤い空の中に、金色に光る海賊船が航海ならぬ航空をしているのだ。
「にしても、お前もロマンチックな事を考えるな」
「一度やってみたかったんですよ。……これが夜空なら最高だったんですけどねー」
「あら? なら夜空まで飛んでみます?」
「……そもそも、組織の人間として、ここまで派手にやっていいんですか?」
「……書類なら後で何万枚だって書いてやりますわっ!!」
 涙目になりながら、ローゼは舵を握っている。どうやら、現実逃避をしたいらしい。
「まあ、組織がいいなら私としては構いませんけどねー」
「俺も問題無い。舵とってもいいぞ?」
 二人の許可を得て、思い切りグルン!! と回す。
「面舵いっぱーい!! でーすーわー!!」
「「そっち左」」
 ローゼは現実逃避を楽しんでいる様で、やけくそ気味にオホホホホォ!! と笑い飛ばしている。
「……そういや、お前に兄貴っていたんだな。てっきり、一人っ子かと思ってた」
「さっきのを含めて上に六人程。全員異母兄弟ですけどね」
「そうか」
 イボ兄弟のイボってなんだ? と日本語にまだ疎い薫は、後に理解して苦笑いをする事になる。
「……なあ」
「何ですか?」
「お前、昔都市伝説と契約してたのか?」
「……まあ、してましたね」
 雄介は遠い目をし、夕日を眺める。
 それを見て、薫はしばらく。この事には触れないでおく事にした。
 雄介が、今までに見たことも無い、複雑な表情をしていたからだ。
 先程の喧嘩っぷりにも驚かされたが、そんなことが、どうでもなるくらいに暗い顔だった。
 どんな表情かすらわからない、そんな顔。
「今度、話せる時がきたら、話してくれ」
「いいですよ。その時は、ファントムのビギンズナイトもお聞かせしましょう」
 にっこりといつもの笑顔で話しかけてくる雄介に、薫もにっこりと、笑った顔で返した。

See you next time ・・・ 

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