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単発 - 社長出勤者の夕餉

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私の名は、秘密だ。教えない、という意味だ。
因みに通り名は、『社長出勤者』だ。まあ…かなり失礼千万な意味だ。
私の名誉のために弁明しておくならば、私は『社長』であり『社長出勤者』でない。
そうであるからして、正々堂々と皆に遅れて出勤するのだが…社員からはかなり不評だ。
まあ、社員といっても、私を含め4名しか居ないのだがね。

さて、年の瀬迫った12月。
宅で折角の休日を堪能していたのだが、掃除の邪魔とばかりに家政婦に叩き出されてしまった。
まあ、今現在、私がこの寒空の中でガタガタ震えながらほっつき歩いているのは、そういう理由からだ。

「ねえねえカエちゃん、クリスマスに南区のウォーターアミューズメントパークで
 イルミネーションライヴやるんだって。一緒に行かない?」
「イルミネーションライヴか…。行って、みようかな。クリスマスはお祖母ちゃんも予定ないみたいだし。」
「でもさこれ23時までやるみたいよー? コズカじゃ小学生と勘違いされて補導されちゃうんじゃないのー?」
「あーっ、言ったなハルー!」

女子高生と思しき三人組が『新町掲示板』に貼られた広告を見て騒いでいる。
ん? 何故、私服の女の子の集団を女子高生だと分かったのか、って?
ハハハ、そりゃあキミ、この年の『おぢさん』はねえ、
女性を見ただけである程度のステータスを把握できるものなのだ! 憶えておきたまえ!
ナニ、手を出したりはしないさ。最近は買春法の締め付けで当局が五月蠅いからね。
私は、紳士の余裕を周囲に誇示しながら、賑やかな女学生の後ろを通り過ぎた。

辺湖市新町の特にこの界隈は、とにかく静かだ。まあ、住宅街ということもありはするが。
先程から小腹の減った私は、だがしかし、新町の飲食店は軒並み回ってしまったし、と暇と空腹を持て余していた。
さて、学校町に足を運んで店探しにでも洒落こもうか、と本気で考え出した時。

「いしやあああああああああああああきいもおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

コレだよ、待ってました。

『石焼き芋』。

この時期に食うにはもってこいの一品。

手に取った時、かじかんだ手には熱すぎて片手片手へ交互に取ったり、
芋をさっくり割った時に立ち上がる湯気とほんのり漂う香り、
頬張った時の、あのじんわりと体中に響く温かさと素朴な甘さ。

全く、風情ではないかね!?

「やきいいもおおおおおおおおおおおおおおやきいいもおおおおおおおおおおおおおおおお」

おお、向こうから来たか。ナイスタイミングだ。
ん、石焼き芋トラックの後ろから追いかけてくる影が3つあるぞ?

「待ってくらさあああああいい!!」
「に゛ゃぁぁあああああーーー、止まれーーーーー!!」
「ジジイ、車止めろー!」

フム、黒服(男)に黒服(女)。どちらも歳は若そうだな。
あと一人は、小学生ほどの子どもか。トラックの運ちゃんをジジイ呼ばわりとは、とんだ憎まれっ子だな。

トラックは私の前で、停車する。
半ば開いたウィンドウ越しに運ちゃんへと話しかけた。

「じいさん、石焼き芋2つ頼むよ。」
「あいあい、分かりました。」

数拍遅れて返事が返って来た。
耄碌してるのか、じいさん。

じいさんは運転席から降りて、後方の釜へと移動する。
そうそうこの釜開ける時のこの湯気、ああ、あ、あ、あああ!!
もう、最高だね。
じいさんは芋を二つ取り出して紙袋へと突っ込んだ。うん、満足いく大きさだ。
じいさんにお金を渡したところで、例の三人組が追いついた。

「ハアハア、ねえ、ひとひと、まる、何で、能力、使って、追いかけ、なかったのよ。」
「ゼエゼエ、でも、能力使って、追いかけると、何か、負けな、気が、しましたし。」
「ヒューーーー、ジジイ、止まれ、てのが、聞こえ、なかったのか。」

三者三様ひとしきり呻いた後、芋を買う。
小学生と黒服(女)がじいさんに対してブツクサ文句を垂れていたが、
口を半開きにしたまま、彼らを見ているようで実は目の焦点が合っていないじいさんの様子から推すに
後ろから追いかけていた事に気づいていなかったらしい。

「ったく、まあ買えたからいいけどさ。」ベリベリ
「良いじゃないですか、それに食べ物扱ってらっしゃる方に文句言ったら罰が当たりますよ。」パクパク
「うげッ、黒服アイ! お前、皮のまま食べるのかよー!」ペリペリ

小学生に、黒服アイと呼ばれた黒服(男)は早速、芋の皮を剥かずに食べ始めている。
それを見た小学生が「汚ねーー!」と叫び、
黒服(女)も「わー最悪、ヒトヒトマル、そんなガッつくから駄目なんだよお前はー」などと非難している。

フ、あえて言おう。
真の通ならば、芋の皮は剥かずに食すのだ!
芋のカサカサした食感や歯応えは良い。
それが、芋のさっくりふわふわした舌触りとマッチするのは、更に良い。
いいか画面向こうのキッズども!
漢なら! 芋の皮は剥かずに! ガッつけ!!
分かったか!?

トラックの後ろに立ったまま焼き芋にパクつく三人組。
その様子を後ろから眺めていた私も、袋から芋を取り出して二つに割った。
湯気と共に、甘い香りが漂う。

「うーん、いい感じ。いっただきまーす。」

勿論皮を剥かずにそのまま頬張る。うん、この歯応え、舌触り。冬はやっぱりこれだね。

「おーし、コタコタ。見とけよー。」
「お、姉ちゃんアレやんの?」

芋を食べていた黒服(女)が、芋を頬張ってしまっている黒服(男)を指さしている。
黒服(男)は、それをきょとんとした様子で見ていたが、何やら慌てた様に黒服(女)に両の掌を突き出した。
口の中に芋を詰め込んだらしく、呻き声しか聞こえない。

「えい!」
「ン゛ン゛ーーーー§@8080***??>&%Β〒!!!1!」

黒服(女)の掛け声と同時に黒服(男)は七転八倒し始める。何故か尻を両手で押さえながら。

「へへー! スゲーだろ、コタコタ!」
「スゲー! 姉ちゃんの超能力、スゲー!」

何がどうなってるのか分からないが、とにかく黒服(女)が黒服(男)に何かやったらしい。
黒服(男)は苦しそうに呻いている。
出し抜けにトラックが発進した。勢いよく噴射された排ガスが白い蒸気となって黒服(男)を襲う。ああかわいそ。

「くぁwせdrftgyいンポlp;@:!1!」

地を転げまわっていた黒服(男)は、絶叫をあげた。うん、見ていて非常に楽しい。

黒服(女)と小学生もまたケタケタ笑っている。

「ハァハァ、いきなり『青木まりこ現象』かけるなんて酷いじゃないですか!!」

ようやく立ち直ったらしく、黒服(男)は黒服(女)に向かって半ば怒鳴るように突っ込みを入れた。
対する(女)は、しれっとした様子だ。

「えーだって楽しいじゃんヒトヒトマルのリアクション。」
「そーそー、アイの反応スゲー面白いし!」
「私は玩具ですかそうですか。」

うう、と半べそをかきながら小学生と(女)を睨む黒服(男)。

「…そーいえば、ここ。『辺湖』の『新町』ですよ。私はともかく、Pさんは、マズいんじゃないですか。」

何処か暗い声色でジト目で二人を向けながらボソボソ告げる(男)。

「へ、それがどうした、って、ああっ!」
「どしたの姉ちゃん?」
「こ、コタコタ、ここから逃げるぞ、走れ走れー!」
「あ? 何なんだよ一体!?」
「『イルミナティ』とかゆーヤバいのが居るんだよ『辺湖』にはー!」

黒服(女)は、何やら慌てた様子で小学生の手を取ると、一目散に駆け出し始めた。

「ふう、やっと行きましたか。」

肩で息を吐きながら走り去った二人を見やる(男)。
どうやらお開きらしい。気付けば辺りはすっかり暗くなっている。
私もここいらでお暇するとしよう。いやいや、中々に愉快な一時だったよ。アッハッハ。 〈了〉





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