「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 赤い幼星-32

最終更新:

Retsuya

- view
だれでも歓迎! 編集
「み、見つけた………これで、この家の庭の破片は全部回収したぞ……」

民家の芝生を舐めるように何かを探していた黒服の男は、
虫眼鏡を片手に、掌にほんの僅かな大きさの獲物を置いて溜息混じりに宣言した

月光が冴え渡る深い夜
東区の住宅地の道端や民家等を、黒服達が血眼になって探している物
それは、昼間に行われたとある少年の戦闘によってこの一帯に散らばった「UFO」の残骸
大小様々な破片ですらも、何らかの都市伝説、若しくは最先端の技術で近未来兵器を作る切っ掛けになる可能性がある
それを阻止するべく弛まぬ努力を費やしているのが、彼等―――「組織」の黒服達である
彼等に割り振られたナンバーは…“R-No.”

「R-No.4、エリアE33の破片は全て回収したようです」
「分かった、大変だろうがその調子で、なるべく休みなく作業を続けるように伝えてくれ」
「Yes,ma'am」
「……いや、その返事は止めて貰えないか…;」

照れ臭そうにしながらも、黒服に対して偉そうな態度を取っているのは、白髪の巨乳の少女
R-No.の上位メンバーの一人であり事後処理班を統括している、R-No.4―レクイエム・リッケンバッカー

「流石に早いな…順調にいけば今夜中には終われそうだ」
「あらぁ、それは良かったですわ♪」

背後からの声に振り向くと、赤い髪の少女がにこにこと笑顔を振りまいてこちらに歩み寄っていた
R-No.0――ローゼ・ラインハルトである

「「「「あ、R-No.0!?」」」」」
「ローゼ、こんな所に来ていて良いのか?」
「てへっ♪ 蓮華ちゃんが怖いから逃げだして来ちゃいましたの♪
 …あ、皆さん敬礼なんて堅苦しい事なさらなくても宜しいですわよ;」
「貴様等ァ!! すぐに作業に戻れ!!」

背筋をぴんと伸ばしてローゼに敬礼していた者は、
レクイエムの一喝を受けて慌てて破片探しに取りかかった

「全く、油断するとこれだ…貴様も余り外には出てくるな、一 応 No.0なんだぞ?」
「あの、レクイエムさん? 『 一 応 』とはどういうことですの?」
「そのままの意味だが?」
「ぐすっ……レクイエムさんが虐める……」
「…嘘泣きは止せ;」
「それにしても、作業が順調そうで何よりですわ♪」
「(さっきの茶番は何だったんだ)ん、まぁな…あいつのお陰か」

ちら、とレクイエムが視線を向けた先
ぞろぞろと丸っこい饅頭型の謎のナマモノを引き連れたオレンジ色のツインテールの少女が、後ろ手にこちらに歩いてきていた
彼女はローゼ達の前までくると、手を上げてぴたりと立ち止まる

「ぜんたーい、止まるんだよー」
「「「「ホニョ!!」」」」
「はい、番号」
「ホニョ!」「ホニョニョ!」「ホニョホニョ!」「ホンニョコニョン!」
「よしよし、お利口さんなんだよー…あれ、ローゼさんも来てたの?」

R-No.7――ラピーナ・レスピーギ
本来彼女は物資調達班を指揮しているのだが、
今回は彼女の都市伝説が役に立つだろうという事で事後処理班に協力しているのだ

「お疲れ様ですわ、ラピーナちゃん♪」
「貴様達も、良く頑張ってくれた」
「「「「ホニョニョ!!」」」」
(う……か、可愛い……)
「ねーねーローゼさん、帰ったらクッキー食べよーよー」
「あらぁ良いですわね♪ でも蓮華ちゃんには内緒にして下さらない?」
「はーい」

女が三人寄れば姦しい…とはよく言ったものだが
秘密主義である筈なのに真夜中の住宅街で堂々と井戸端会議を行うとは、果たして彼女達は「組織」としての自覚はあるのだろうか
それが明確になるのは、この数秒後の事だ

「――――――――――――ッ!?」

ローゼの瞳の紫水晶が、柘榴石に変わる時
悪意が、音を立てて歩み寄る

「…ローゼさん、どうかしたの?」
「都市伝説ですわ、でも何処から――――――ッ下から!?」
「全員下がれ!!」

咄嗟に黒服達が道路の端に身を寄せた
気配の根源は、その中央から現れた
激しい機械音を轟かせ、大きな穴を開けて地中から現れたそれは

「……ロボット?」

どうみても、そうとしか形容できない物だった
人型ではなく、被災現場などで活躍しそうな、蛇型のロボット
その装甲は灰色がかった鏡のようであり、キャタピラのついたユニットが幾つも並んだその先頭に4基のドリルが円状に配置され、
各ユニットにはそれぞれ2基の機関砲が配備されていた

「む……4月に欧州に出現した謎の殺人兵器と特徴が一致するぞ?」
「そんな…これは「ミドガルドシュランゲ」!?」
「ローゼさん、何か知ってるの?」
「ドイツで研究のみに終わってしまった兵器ですわ…こんなものまで都市伝説になってらしたなんて…」

蛇型のロボット―――「ミドガルドシュランゲ」はまだその機体の半分を地中に潜ませた状態で、
先頭のドリルのついたユニットを頭部のようにして辺りを見回すような仕草を取る

《β10-MidgardSchlange-ArtificialIntelligence+MicroSystem-MachineGun+BearingBallet-Land&Sea-1935228…目標地点到達確認
 目標数…約400体……目標補足…UnitA,B,C,D,E,弾薬装填完了………任務開始》

冷たい女性のような機械音声が響き、機関砲が一斉に動き出す
最初に動き出したのは、ローゼだった

「くっ、『フォトン・ヴェール』!!」

赤光のカーテンが揺らめき、壁となって放たれた弾丸を全て受けきった
光の壁の発生源に気づいた「ミドガルドシュランゲ」は、ローゼ達の方に向き直った

《……Data認証…R-No.0,RoseReinhardt…R-No.4,RequiemRickenbacker…R-No.7,RapinaRespighi
 作戦一部変更…対象…R-No.0,他上位構成員2人》
「あら…好都合ですわ、こちらに標的を絞って下さったようですの」
「全員に告ぐ! ここは私達が食い止める! 貴様等は作業を続行しつつ、危険と判断したら即刻逃げろ!!」
「えー、ラピーナもやるのー?……仕方ないかも」

黒光りする機関銃の砲口が、ローゼ達に向けられる

《……射殺》

再び、10基の機関銃が火を噴いた

「『フォトン・ヴェール』!」
「『コンフィタティス』!」
「『妖怪“人”隠し』だよ!」

ローゼは赤い光に身を包んで攻撃を防ぎ、
レクイエムとラピーナはその場から姿を消して攻撃を躱した

《…目標消失……熱探知開始》
「今度はこちらの番ですわ! 『フォトン・クラッシャー』!」

彼女の伸ばした指先から、雷光を伴う赤く細い光条が発射され、「ミドガルドシュランゲ」に向かう
だがそれは、曇った鏡の装甲によって反射し、民家の塀を破壊する

「えっ……“光”の攻撃が効かない!?」
「貴様ァ! 私の仕事を増やすな!!」

「ミドガルドシュランゲ」の真上に現れたレクイエムが、軽やかに宙を舞って踵落としを命中させる
彼女の都市伝説「ヒエロニムスマシン」によって肉体強化がなされたその一撃は、機械さえもよろめかせる

「ごめんあそばせ!!」

ローゼも戦術を切り替え、赤い雷光を纏わせた拳を叩きつけた
「フォトンベルト」の能力で、レクイエムと同じように身体強化したその拳は、
またも機体をぐらつかせたが、両者の攻撃はただの一度も傷を与えた訳ではない

「ちっ、やはり硬いな……!」
《R-No.4発見…R-No.7未確認――――――――9時方向熱源反応感知》
「ミサイル発射だよー!!」

民家の屋根の上に立つラピーナが、白饅頭を使役して多弾頭ミサイルを発射させた
ラピーナの能力は、「妖怪○○隠し」
あらゆる物を隠すと同時に、隠した物を出現させる事が出来る
放たれたミサイルは全て「ミドガルドシュランゲ」に直撃し、住宅街に倒れ込んだ

「あ……ちょっとまずいかも」
「ちょっとじゃない! 貴様等、後で覚えておけよ!?」
「うえーん」
「お二人とも、まだ終わってませんわ!」

ローゼの言う通り、「ミドガルドシュランゲ」は再度起き上がり、出現した穴から這い出て全身を露出した
全長524メートルという巨大さが、見る者を圧倒させる

「うわ…おっきいかも」
「それに防御力も問題だ…光を跳ね返すらしいからな」
「えぇ、恐らく黒服の皆さんが持ってる光線銃も効かなかったものだと思いますわ………あ、れ?」

ローゼが何かに気づいたような頓狂な声を上げた瞬間、「ミドガルドシュランゲ」が新たな行動に出た
ユニットの内部から、弾薬の詰まったランチャーが飛び出したのだ

「ッ! また何か来るかも!」
《原子番号22金属元素製特殊弾丸……発射》

ランチャーから、金属製のビー玉のような弾丸が発射された
それはまるで雨のように、少女達に降り注いだ



「『妖怪“皆の前にオリハルコンの塊”ぶつけ』!!」

ずどんっ!と3人の目の前に直方体の金属が落ちてきて、
甲高い音を鳴らしながら彼女達の代わりに弾丸を受けきった
「妖怪○○隠し」には、「妖怪小指ぶつけ」のような“隠す”以外の悪戯をする亜種がいる
その能力を、彼女は防衛の為に使用したのだ

「…ふぅ、助かったみたいだよー」
「ラピーナちゃん? この「オリハルコン」は何処から?」
「んーっと、「組織」の倉庫だと思うよー」
「後できちんと返してさしあげて」
「えー!?」
「当然だろ……」
《……攻撃失敗…攻撃方法変更,突撃態勢移行…照準,R-No.4》

直後、「ミドガルドシュランゲ」の先端の4つのドリルがそれぞれ回転すると同時に、
蛇のように持ち上げられた頭部が大きく仰け反った

「レクイエムさん!」
「あぁ、分かっている!!」
《…殺……殺……殺………》

ドリルが迫り、「オリハルコン」の壁を木っ端微塵に粉砕した
だがその先に狙いである筈のレクイエムはいなかった

《標的消失……対象変更…照準,R-No.0―――――》
「頼むぞラピーナ!」
「了解だよ!」

鉄蛇の身体は、完全に地面に接した状態
その隙を突いて、各ユニットに白い饅頭がよじ登り、機関砲に触れた

「『妖怪“機関銃”隠し』!!」

妖怪達が消えると同時に、154の機関砲台が一瞬にして消えた
いや、“消えた”というより“抉られた”と表現した方が正しいかも知れない
砲台のあった部位からは配線などが露出し、バチッ、バチッ、と火花が走る

《!?!?……損傷率40%…支障皆無,作戦続行》

再びランチャーが飛び出すが、もう遅かった
彼女達の反撃が始まる

「『トゥーバ・ミールム』!!」

レクイエムが召喚した無数の死霊達が刃の形を取り、「ミドガルドシュランゲ」に突き刺さる
狙いは無論、配線が露わになった大きく空いた穴の中
生命体のように悶える「ミドガルドシュランゲ」だったが、その時まだ自分が沢山の敵に狙われている事に気づいていなかった
屋根の上にずらりと並んでいるのは、バズーカ砲を持った白饅頭
その中には、ミサイルランチャーを構えるラピーナの姿があった

「3(トレ)、2(ドゥエ)、1(ウノ)……Vada(行け)!!」

ラピーナのゴーサインと共に放たれる弾、弾、弾
全てがレクイエムと同じく、抉られた損傷部
爆音に混じって、断末魔の様な機械音が響き渡る

「これでトドメですわ!!」

赤く輝く翼を広げ、上空で待機していたローゼが叫ぶ
構えた両手には、強く輝いた赤光が宿っていた

「必殺! 『破滅のフォトン・ストリーム』!!!」

天地を貫くが如く伸びた真っ赤な光条は、定められた狙いを全く外す事なく弱点を射抜く
全長524メートル、重量にして約6万トンもの巨体が、アスファルトにめり込んだ
これだけの攻撃を受けても尚、鉄の蛇は未だに沈黙する気配を見せない
上体を起こし、ローゼ達にランチャーの砲口を向ける

「ちっ、流石にしぶといな……」
「うーん、もうこっちの弾薬が切れかけかも」
「あと一押しですわ、もう一度―――」
《……了解……任務達成確認,戦闘終了…撤退》

ランチャーを機体の中に仕舞うと、ドリルが激しく回転を始め、
今度は下を向いてアスファルトに穴を開け始める

「なっ、逃がしませんわ!」

上空から急降下し、その勢いで拳を振るうローゼ
だが、

「―――――――――――え!?」

それは大きく空振ってしまった
そこに、「ミドガルドシュランゲ」の姿は無かった
あの巨体が、忽然とその場から消えてしまったのだ

「…うー、どこ行ったのー!?」
「ローゼ!」
「駄目ですわ……気配が感じられませんわ」

かつん、と地上に降り立ち、ローゼは首を横に振る
レクイエムは舌を打ち、ラピーナは複雑な表情で首を傾げる

「……ねーねー、これって蓮華さんに怒られたりしないよねー?」
「「え?」」

粉々になった「オリハルコン」
大穴の空いたアスファルト
潰れた民家

「……あー、その……はい、怒られると思いますわ」
「ハァ……急いで直そう」






     †     †     †     †     †     †     †





とある艦内のモニタールーム―――

《コチラβ04-Sanger-Skybolt+Stealth-LaserGun-Sky-1936
 ボス、「UFO」ノ破片、並ビニ「ミュータント」ノ物ト思シキ細胞ノ一部ヲ入手シマシタ》
「ご苦労様…すぐに帰還して休むと良い」
《Yes,Boss》

大きなモニターが消え、通信が切られる
暗いその部屋で唯一の光は、小さなモニターの僅かな輝きだけ
そんな部屋に、白衣を纏った青年が一人立っていた

《……宜シカッタノデスカ? ボス》
「何の事だい? β01」
《β10ノ事デアリマス》
「あぁ、それなら大丈夫だよ。あれは僕の最高傑作だ
 上位ナンバーが何人いようと、そう簡単に壊れはしないさ
 尤も、壊れればすぐに作り直すだけ……だけどね」

暗がりに浮かぶ怪しい笑み
小さな光があるからこそ尚一層、その笑みは不気味に感じられる

「β01、進路を日本に向けてくれ
 β04と合流し、その後β10の連絡を待つ」
《Yes,Boss》
「フッフフフフフ……もうすぐだよ
 もうすぐ、この僕の野望が……達成される」

青年――β-No.0は、またも不敵な笑みを浮かべた


   ...To be Continued

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー