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連載 - ケモノツキ-g04

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ケモノツキ_幕間_ハロウィンの夢


 現実と夢の狭間の真っ白な空間。
 ベッドに入った悠司はいつものようにそこに立っていたが、今回は何かが違った。
 いつもならめいめい辺りにいるはずの憑き物たちの姿が、周りを見渡してもどこにも見えない。
 悠司が疑問に思っていると背後から駆け寄る足音が聞こえ、そちらを振り返った。
 そして目を丸くした。

「主様ー!ハッピーハロウィーン!」
「み、ミズキ!?なんでそんな格好に!?」

 いつもは白猫の姿か中学生くらいの少女の姿をしているミズキだが、今回の格好はいつもと違った。
 白いファーで覆われたチューブトップに、同じく白いファーのホットパンツ。そこから伸びる白い尻尾。
 頭の上にはネコミミが乗せられ、両手には猫の肉球を模したネコ手袋をつけている。
 それはまさしく、ハロウィンの仮装だった。

「今日のあたしは魔性の白猫なのにゃ!ねね、主様どう?かわいい?」
「え、うん、かわいいよミズキ。でも……なんでそんな格好に?」
「だってせっかくのハロウィンだもん、楽しまなきゃもったいないじゃん!……もったいないにゃん!」

 ミズキは楽しそうに悠司に擦り寄って、尻尾を悠司の足に絡める。
 その頭を撫でてやりながら、ふと、悠司の中に疑問が生まれた。

「でもミズキ、ハロウィンっていったら普通、黒猫じゃないの?」
「……黒はきらいだもん。」

 ふいっとそっぽを向いて悠司から離れるミズキ。
 何か悪いことを言ってしまったのかと焦る悠司。

「いいじゃないですか。白猫の方がミズキらしくて。」

 そんな悠司たちにかけられた優しい声。
 声のする方向を見ると、そこにはタマモが立っていた。
 そして悠司はその格好を見て一瞬見とれ、直後思わず目を逸らした。

 タマモの姿は、腕には黒いドレスグローブ、頭には黒い三角帽子、肩には黒いケープといった魔女の格好だった。
 それだけでは普通の魔女だが、タマモがケープの下に着ているのは、胸元が大きく開いた黒いドレス。
 全身が黒で覆われているため、胸元の肌色と腰から伸びる黄金色の九尾が映えている。

「きゃー!タマモ姉さんセクシー!ね、主様、似合ってるよね?」
「えっ?あ、うん、凄く似合ってるし、きれいだと思うよ、タマモ。」
「ありがとうございます、主。」

 直視することに若干の照れを感じつつ、タマモに率直な感想を述べる。
 それを受けてタマモは嬉しそうに九尾をふわりと揺らす。

「ってことは、もしかしてタイガも?」
「ああそうだよちくしょう……。」

 そう言ってタマモの後ろから姿を現したタイガも仮装をしていた。
 灰色の獣耳に、ミズキのものよりワイルドな獣手袋、同じような毛皮のベスト。
 それに加えて狼のような灰色の尻尾という、いわゆる狼男の格好だ。

「やっぱりタイガも……でもなんだか意外だなぁ。」
「好きでやってるわけじゃねえからな!?勘違いすんなよ!」
「狼男っていうか、犬耳男だよねー。」
「うるせえ!いいからさっさと終わらすぞ。」
「ノリ悪いなー犬耳男。さてと、じゃあ主様……。」

 三人は悠司に向き直る。

「トリックオアトリート!」
「トリックオアトリート?」
「……トリックオアトリート。」

 異口同音に三者三様のトリックオアトリートが悠司に投げかけられた。
 が、今悠司たちが居る実体の無いこの空間の中では、お菓子など持ち合わせているはずもない。

「えっと、今お菓子は無いから、目が覚めたら何か買ってくるよ。」
「くすくす……。ねぇ主様、お菓子が無いならイタズラだよね?」
「え、いやそうだけれど、でも今は仕方ないっていうか……。」
「ええ、お菓子が無いなら仕方ありませんね。さ、タイガ。」
「暴れんなよ、主。」

 タイガは悠司の背後に回り込むと両腕を掴み上げ、いわゆるバンザイの格好をとらせる。
 唐突な出来事に戸惑う悠司に、タマモとミズキがゆっくりと近づく。

「え?えっ?」
「お菓子が無いなら……イタズラだよね……くすくす。」
「お菓子が無いならしかたありませんね……ふふっ。」

 迫る二人に恐怖を感じて逃げようとするが、タイガはしっかりと悠司を捕らえて離さない。

「あ、あの、タイガ?離してくれないかなー、なんて……。」
「諦めろ。」
「だいじょーぶ主様、痛いことはしないから。」
「少し我慢すればすぐ終わりますからね。」

 不敵な笑みを浮かべながら、タマモとミズキはネコ手袋とドレスグローブを外して悠司を囲む。

「ちょっ、ま、待って!なんかみんな怖いよ!?わかったから一旦落ち着いて……」

 言い終わるのも待たず、四本の手が悠司のわきの下とわき腹に伸びた。


    ・
    ・
    ・


 ガバッ!

 悠司は勢いよくベッドから跳ね起きた。
 息を荒げ、背中にはびっしょりと汗をかいていた。
 深呼吸を繰り返し、必死に呼吸を落ち着かせる。
 窓の外では日が昇り始めており、まだ早い時間であることを知らせていた。

『おはようございます、主。』
「お、おはようタマモ。……ねぇ、昨日の……」
『寝覚めが悪かったみたいですが、何か悪い夢でも見たんですか?』
「いや夢っていうか……ん、夢?」

 昨夜の出来事を思い返す。彼らは普段、あんなにノリが良かっただろうか。
 タイガはこういうことはあまり乗り気にはならないはずだし、
 タマモはたまに人をからかうことはあるが、行き過ぎた行いはいさめてくれるはずだ。
 ミズキは……うん、ミズキだけはノリノリでやりかねない。
 でもよく考えて見るとあれは、単なる夢だったのかもしれないと思えてくる。

「夢、だったのかな?」
『汗だくですよ、主。シャワーでも浴びて、汗と一緒に悪い夢も流してしまいましょう。』
「ん……そうだね。せっかく起きたんだし、二度寝するのももったいないかな。」

 あの出来事はただの夢。そういうことにしておこう。
 悠司は一つ伸びをしたのち、体に残ったむず痒さを鎮めるために風呂場へと向かった。









「あ、そうだ。今日ハロウィンだし、何か欲しいお菓子があれば買ってくるよ。」
『いえ、既にトリックの方を頂きましたので。』
「!!?」


ケモノツキ_幕間_ハロウィンの夢】    終




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