ともだち 01
こつん、と音を立ててテーブルの上にドミノ牌が立て置かれる
何の規則性も無く乱雑に並べられたそれは、端の一つを指先で突付いて倒したところで、いくつかの牌を押し倒しただけで止まってしまう
いつもの薄い笑みすら浮かべずに、ドミノ牌の山をじっと見詰める葉鳥
何の規則性も無く乱雑に並べられたそれは、端の一つを指先で突付いて倒したところで、いくつかの牌を押し倒しただけで止まってしまう
いつもの薄い笑みすら浮かべずに、ドミノ牌の山をじっと見詰める葉鳥
「そろそろ、ね……逢瀬佳奈美という『牌』を倒すのが、無理になりそうなんだよ」
「どういう事?」
「どういう事?」
ソファに転がっていた『友達』が、その言葉に反応してむくりと起き上がる
「今まで僕の『バタフライエフェクト』が、何十何百何千何万の羽ばたきを起こしてきたけど。それはどれも彼女には届かなかった」
「つまりは、今まさにそのテーブルみたいな状況な訳だね」
「つまりは、今まさにそのテーブルみたいな状況な訳だね」
テーブルの真ん中には、赤く塗られたドミノ牌が鎮座しているが、その周りには倒れたり倒れなかったりした牌が乱雑に入り乱れ、牌をきちんと並べるようなスペースはほとんど無い
「それで、どうするの? 諦める?」
「そうだね、もう全く余裕が無かったら諦めようと思うんだけど」
「そうだね、もう全く余裕が無かったら諦めようと思うんだけど」
ざらりとテーブルの端に牌の山を押し退けて、中央に佳奈美に見立てた牌を置き直し
その周囲にいくつもの色に彩られた牌を改めて乱雑に並べていく
その周囲にいくつもの色に彩られた牌を改めて乱雑に並べていく
「彼女の周りは、彼女を守ろうとする牌が多過ぎる。それらもまた相互に守り合って、そう簡単には倒せない……でも、ね」
葉鳥の指先が、佳奈美の隣にあった一枚の牌を突き倒すと、それにぶつかった佳奈美の牌がぱたりと倒れた
「逢瀬佳奈美という『牌』ではなく、周りを狙う。この『牌』はとてもとても弱いから、周りの『牌』が倒れてしまえば……その振動だけで倒れてしまうかもしれないからね」
そう言って葉鳥は、倒れた佳奈美の『牌』をひょいと手に取ると、かきりと音を立ててそれに噛み付いた
「もう立っていられないような傷をつける事ができれば、僕の勝ちって事でさ」
葉鳥が顎に力を入れて、ぎしりとドミノ牌を噛む
ごきん、と嫌な音が鳴って
ごきん、と嫌な音が鳴って
「どうしたの、葉鳥」
「……歯が欠けた」
「日頃の不摂生のお陰だね」
「……歯が欠けた」
「日頃の不摂生のお陰だね」
葉鳥は情けない顔でティッシュを手に取り、もごもごと欠けた歯の一部を吐き出して、丸めてゴミ箱に捨てる
「というわけでさ、折り入って『友達』に頼みがあるんだけど」
「何? 僕が直接介入するの、好きじゃないんじゃなかった? あと逢瀬佳奈美を直接狙うのは無理だよ。僕、あいつの傍に居る黒服が苦手だから」
「いや、逢瀬佳奈美には関らなくていいよ」
「ふうん?」
「そうだねぇ……親友の、宮定繰。とりあえず彼女辺りを殺しておいて」
「両親とか、生まれたばかりの妹とかじゃなくて?」
「この娘、本当なら高校に上がる前に君が殺してたはずなんだから。他の二人はきっちり始末したろ?」
「んー、厳密に死んでるのは一人だけだっけ、そういえば。確かに仕事が中途半端だね」
「何? 僕が直接介入するの、好きじゃないんじゃなかった? あと逢瀬佳奈美を直接狙うのは無理だよ。僕、あいつの傍に居る黒服が苦手だから」
「いや、逢瀬佳奈美には関らなくていいよ」
「ふうん?」
「そうだねぇ……親友の、宮定繰。とりあえず彼女辺りを殺しておいて」
「両親とか、生まれたばかりの妹とかじゃなくて?」
「この娘、本当なら高校に上がる前に君が殺してたはずなんだから。他の二人はきっちり始末したろ?」
「んー、厳密に死んでるのは一人だけだっけ、そういえば。確かに仕事が中途半端だね」
洗濯物を取り込んだけど畳むのを忘れた、そんな調子で頬を掻く『友達』
「あとは、そうだなぁ……北区の診療所の連中も縁があるみたいだから、気が向いたら適当に。あと診療所の大元の『第三帝国』と、縁がある『組織』の連中も殺っとく? HナンバーとZナンバー辺り。宮定繰はAナンバーだっけ」
「わぁい、一気に増えた」
「メインは宮定繰でいいよ。他は気が向いたらで」
「うん、まあ殺り残しがあるとすっきりしないからね」
「わぁい、一気に増えた」
「メインは宮定繰でいいよ。他は気が向いたらで」
「うん、まあ殺り残しがあるとすっきりしないからね」
そう言って『友達』は笑う
「『八尺様』と巡り合せた真田映(さなだ・あきら)」
ざわりと神経を逆撫でするような気配と共に現れた、赤い服と帽子の女『八尺様』
そんな彼女に抱き留められた、蒼白い顔をした少女の姿
そんな彼女に抱き留められた、蒼白い顔をした少女の姿
「『くねくね』と巡り合せた玖柳弥依(くやなぎ・やえ)」
ぎりぎりと脳髄を締め付けるような気配と共に現れた、白い姿の何か『くねくね』
そんな存在をべったりと身体に絡みつかせ、狂気に満ちた笑顔で小刻みに震えている少女の姿
そんな存在をべったりと身体に絡みつかせ、狂気に満ちた笑顔で小刻みに震えている少女の姿
「君達を裏切って逢瀬佳奈美と縁を結んだ、君達を裏切って一人生き延びた、宮定繰を……君達は、どうしたいかな」
逢瀬佳奈美、宮定繰の名前に
二人の少女の顔が、あからさまに歪む
二人の少女の顔が、あからさまに歪む
「そうだね、じゃあ話してあげないとね。君達の体験を、君達の恐怖を、君達の無念を、君達の絶望を。君達の『友達』の僕が伝えてあげよう、宮定繰という君達の『友達』に。そして思い出させてあげよう、彼女自身の体験した『人が消えるブティック』というお話を」
笑い声と共に、『友達』も『八尺様』も『くねくね』も二人の少女も、全てが一瞬で姿を消す
残された葉鳥は、痛む歯と顎を抑えながら携帯電話を手に取り
残された葉鳥は、痛む歯と顎を抑えながら携帯電話を手に取り
「あ、もしもし。診察の予約をお願いします……ええ、明日の昼で。固いもの噛んだら、なんか歯が欠けちゃって」
歯医者の予約を入れていた