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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 鴉―KARAS― -03

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鴉―KARAS― 第三話「黄金の夢」】

「ただいまー」

 九郎は昨日まで誰も居なかった部屋にいつもどおりに帰ってくる。
 新米の契約者に過ぎない彼はトトの魔法の気配に気づくこともできない。

「おかえりなさーい、ご飯にする?お風呂にする?
 それとも…………ワ・タ・シ?」

 九郎が家に帰ってくると、トトはすっかり元気になっていた。
 本来この夜刀浦の街は魔力充満する魔都。
 魔術を扱う神である彼女にとってはこの上なく素晴らしい土地なのだ。

「な、何を言ってるんだ!?」

 昨日の出来事、彼にとっては夢を思い出して動揺する九郎。
 そんな彼の様子に満足したのかトトは笑い始める。

「冗談だよーん
 家、散らかってたから綺麗にしておいたよ」

「確かに綺麗になってるな」

「パソコンの中身も綺麗にしたよーん」

「―――――え!?」

 あの中には、というか付属の外付けHDDには集めに集めたエロスファイルが有るのだ。
 しかも情報屋としての仕事に使う情報の一部も混じっている。
 そもそも普通の人間には解除不可能なプロテクトがなされているのだがそれでも九郎は慌て始める。

「ウソウソ」

 胸をなでおろす九郎。
 それがおかしくてまた笑う。

「ハッハッハ、九郎は一々リアクションが良いなあ」

「やめろよ洒落にならないんだから馬鹿」

「知恵を司っちゃう私にバカと言うとは何事だ、お前結構失礼だな」

「匿ってもらっているくせによく言うぜ」

「ありがとう九郎、感謝しているよ」

「調子良いなあもう……、っていうかなんだよ。やたら元気だな
 態度も妙にでかくなってるし」

「そりゃあ元気にもなりますよ、九郎は気づいてないみたいだけどこの土地すっごい良い感じの霊地だもん
 今の私ならどんな奴が来ても怖くないね」

「へえ……、俺が最初見た時はお前追われていた気がするんだけど」

「そ、そそっ、それはほら、魔力切れ起こしていて……」

「ふぅーん」

「なんだよぉ!疑うなよお!今の私は強いんだぞ!
 どれくらい強いかって言うと漫画とかアニメみたいなレーザービーム撃ち放題って感じ
 ゴジラだろうがベムラーだろうがガタトノーアだろうがどんと来いだよ」

「そんなにすごいの?」

「うん」

「じゃあ契約した俺の能力はどうなってる訳?」

「それはねえ」

 その時突然、足にプロジェクターを装着した鳩がベランダに舞い降りる。
 プロジェクターは起動すると同時に一人の男の姿を映し出す。

「それを知る必要はないでしょうね」

 ちゃぶ台の上に乗る黄金の影。
 碧眼金髪絢爛豪華。
 黒のスーツと蛇をあしらったネクタイを身につけ、片手にはダイヤのついたステッキを振り回す男が突如として現れた。

「だってほら、貴方はこの少女と関わらないで平和な日常に帰っていくのですから」

「――――誰だ!?」

「慌てるな九郎、それは幻影だ。都市伝説の力ではない純粋な科学力の産物だよ」

「いやあ大したものですよ、さすが神霊レベルの魔術行使となると結界の作り込み一つとっても美しい
 さすがの私も直接の侵入は諦めたレベルです」

「今日は何の用だ?サンジェルマン」

 男の名前はサンジェルマン伯爵。
 組織のF-No.を率いる奇人。
 しょっちゅう「研究に夢中で政治的なことに関心は無い男」と言われているがその実は老獪な手腕を持って様々な事件の陰で暗躍する怪物でもある。

「そこに引き篭もられると困るんですよねー、捕まえにいけないじゃないですか」

「サンジェルマンって?」

「私を追いかけさせていた黒服の親玉だ」

「君が下っ端達の報告にあった青年ですか、傀儡にされた気分はいかが?」

「傀儡?俺は俺の心意気に従っているだけだ、結果がなんであろうとね」

「はん、中々言うことで」

「サンジェルマンよ、残念ながらこの土地には不戦の約定がある
 貴様ほどの都市伝説であってもこれを破ればどうなるか解っているだろう?」

「解っていますよ、だからこうしてつまらないマジックで貴方と話しに来たんじゃないですか」

「ふん」

「やれやれ、取り付く島もない。ではそこのお兄さん
 その少女を渡してくれるなら貴方の身の安全を保証しても良い」

「断る」

「こちら側とも話し合いの余地無しですか」

「話し合い?だまし討ちと強奪の間違いだろう」

「ハハッ、弱者の言い分が通るわけ無いでしょう。“話し合い”で
 我々には時間がない、多少強引な手段も辞さない覚悟です」

 半透明の姿のままにサンジェルマンは空中に腰掛ける。
 そして深く溜め息をつく。

「なあ、あんた組織の偉い人なんだろう?」

 九郎はそんなサンジェルマンの目を真っ直ぐに見据える。

「ええ、一応そういうことになっていますね」

 その鋭さにサンジェルマンは少々驚く。
 そして少しだけ口元を緩める。

「確かサンジェルマンというと黄金練成に至った本物の錬金術師って話だが……」

「ふむ、子供のくせに中々知っているではないですか」

「そんなあんたならばこの世なんて思いのままだろう
 何故こんな少女一人を追い求めるんだ?」

「それは……貴方は知らないのですか?」

「さあ?」

「………………」

 トトは唇を噛み締める。

「若いなりに心得ていますね
 しかしその行動は無駄なんですよ
 貴方が知っているなら今教えた所で損は無い、知らないならば教えることで貴方の動揺を誘える
 ですから教えてあげましょう。その娘の正体は邪神ナイアトラップ
 人類に破滅と混沌を齎す邪悪の権化です」

 トトに緊張が走る。
 これで九郎が彼女を拒絶したら……、そんな恐怖が彼女を襲う。
 最悪、契約の回路を通して無理矢理彼の精神を乗っ取って……と彼女が考えた時だった。

「ああ、そう」

 彼はまるでその話を聞いてなかったかのようにあっけらかんと答えた。
 九郎のリアクションの薄さにサンジェルマンは驚いた。

「おや、あまり気にしてないようですね」

「俺は他人の言うことは信じない。俺は俺の目だけを信じる
 俺の目にはこいつが悪いやつには見えない、俺は俺の目が信じたこいつを信じる
 むしろ……あんたのほうが悪者に見えるぜ、組織のお偉いさん」

「ククク……中々達者な口だ。見合う実力が無ければ滑稽なだけなんですがね
 組織に追いかけられてあなた達は無事でいられると思っているのですか?」

 サンジェルマンの心は踊っていた。
 この青年、どうもサンジェルマンの好みのタイプらしかった。

「その組織をどれほど掌握できているかも怪しいね
 この前俺を追いかけてきた黒服に元人間は一人も居なかった
 そして今、あんたは幻らしいとはいえ自らここに来ている
 あんたが本当にサンジェルマンだっていうなら私兵だって居る筈なのに
 トトへの行動は組織に知られていない行動なんじゃないか?
 だとしたらある程度あんたの行動に合点が行く」

「中々に聡いですね
 Good、腕の良い情報屋、そして契約者を見つけましたね、ナイアトラップ
 気が変わりました。そこの青年もまた危険分子だ、そして研究対象にもなりうる
 貴方達、否、貴方に降伏の選択肢はなくなりましたよ
 残されたのは屈服だけだ」

「成程、それであとの用件は?」

「今日は宣戦布告だけだ。重ねて申し上げますが不戦の約定を破る気はありません
 私は能力を持つ人間には敬意を払う主義でしてね、無粋な方法で戦うのはやめておきましょう
 もし派手に動いて組織の方に目を付けられると困るのは私ですし」

「ならば早く帰った方が良いぞサンジェルマン
 貴重な命のストックをこれ以上は減らしたくないだろう?」

「ん……?」

 次の瞬間、ホログラムのサンジェルマンが血反吐を吐いて倒れる。
 ホログラムは消失し、鳩はそのままその場で気絶した。

「トト、今のは?」

「丑の刻参りみたいなもんだよ、姿さえあればそれを起点に呪殺できる
 魔力さえ残っていればあんな奴怖くもなんともないんだから」

「じゃあさっき言っていた命のストックって……?」

「それが貴人サンジェルマンの厄介な点だ。奴はほぼ無限といっても良いくらいに命のストックがあるんだよ
 奴の錬金術の真の成果はそれだ」

「成程ね……ずいぶん厄介な敵に目をつけられたみたいだね」

 ハフゥと溜め息をつく九郎。
 その様子を見て目を伏せるトト。

「……私のせいだ。ごめんなさい」

「気にしないって言ったじゃん。俺は男だ、俺の敵は俺が選ぶ
 そして俺が守るべきものもまた俺が選ぶ」

 そういって彼は台所に向かう。

「料理作ってやるよ、何が良い?」

「え?」

「片付けはできているが料理は下手だろう?」

「な、なんでさ!なんで解るのさ!」

「缶詰は減っているのに生の食材は減っていない
 作っていった料理じゃ足りなかったらしいことはまあ缶詰の減りから解る」

「身体ボロボロだったから回復に食べただけなんだからね!
 九郎の心の力の供給が万全だったら八咫烏を通して私にも流れこんでくる筈なんだから!」

 言い訳を始めるトトを無視して九郎は話を進める。

「しかし生の食材が手を付けられてないってことは……料理をほとんどしなかったということで
 怠惰な性格ではないトトが料理をしなかったのはできなかったのだと考えるのが一番自然な訳よ」

「うー……!」

「という訳で作りたいものが有るなら何でも言ってくれよ、作るから」

「……ラーメン」

「はいはい」

 九郎は器用に食材を刻んだり麺を茹で始める。
 そんな彼の背中に向けてトトはポツリと呟く。

「信じてくれて、ありがとう」

「ん?どうした」

「な、なんでもないよ!」

「ああ、そう?ニュースつけておいて、面白い情報が転がってるかも知れないから」

「……このテレビってのどうやってつけるの?」

「……なん、だと?」

 まずはトトに機械の使い方を教えなくてはいけないらしい。
 九郎はやれやれといった感じで笑った。

【鴉―KARAS― 第三話「黄金の夢」 続】


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