アットウィキロゴ

「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 鴉―KARAS― -09

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
鴉―KARAS― 第九話「ただひとつのほんとう」】

「お疲れ様でしたー」

「お疲れ様でしたー」

 九郎はお化け屋敷を進むとすぐにトト達と合流した。
 そこで敵を撃退した後は四人でのんびりと寿司を食べ、無事に彼らは家に帰ることができた。
 今はトトと九郎で生還祝賀会の真っ最中である。

「生きて帰ってこれるなんて思ってなかったよ、やるじゃん九郎
 それどころかある程度親密になれたと思われるし」

「いやー俺はただあれだよ、面白そうな行動をしただけで……
 敵の気配がして面白そうだったからお化け屋敷行ったら襲われて結果として結束が強くなっただけみたいな」

「それで結果を出してしまうんだから偉いんだよ九郎は
 これでまあクラウディアを極端に恐れることはもうしなくていい
 少なくとも私達への攻撃順位は限りなく低いことが解ったんだからね」

 トトは悩みの種が一つ消えて上機嫌といった所である。

「あ、そうだ」

「どうした?」

「なんか叶えて欲しい願いとかない?」

「え?急だなあ」

「機嫌が良いからね、水を酒に変えたりもできるし、マンションの室内を豪邸にしてみたりもできちゃうよ!
 あとお金も出せたりしちゃうし、九郎好みの美女なんてのも……」

 ニヤニヤしながら九郎の表情を伺うトト。
 しかし九郎は彼女が予想したのとはまるっきり別の真面目な表情をしていた。

「美女は別に良いよ」

「ん?」

「……目の前に俺の一番好みのタイプの女の子が居る
 我儘で気まぐれで迷惑で……でも情を捨てられなくて責任感が有って心優しい女の子
 俺はお前がいれば良い」

 胸をナイフで突かれるような衝撃。
 分からなかったとは彼女も言うまい。
 しかし今か。
 その唐突さは確かに彼女の理解を超えていた。

「だから……その、なんだ」

「――――――――解ったよ」

「え?」

「それ以上は言わなくて良い
 私もね、契約者なんて持ったのは初めてだが……それがお前でよかったと思っている
 うん、私も九郎のことが好きだ
 もしかしたら愛しちゃってるのかもしれない
 この私がね、たかが人間に数日だけで情を持つなんておかしい話だが……
 まああれだ、ここまで人に愛される経験ってのも無かったんだ
 だからそうなんだ、決して軽い女って訳じゃあないことは覚えておいてくれ」

「……トト」

「だけど、九郎」

 とても言いづらそうにトトは口を開く。

「私は……」

 そこでまた口ごもる。

「私は」

 九郎がトトの手を握る。

「言わなくても良いんだぜ?」

「言わせてくれ、お前がそこまでしてくれたなら私は応えたい」

「分かった」

 九郎の手は少しだけ冷たい。
 忘れていたが彼は死人だったのだ。
 自分の術で動いているだけの。
 そう思うと何故かトトは目の前の、自分から見れば赤ん坊のような少年が愛おしかった。
 自分が仮初の命を与えた存在。
 自分のために命を捨てた存在。

「私は実はお前に正体を隠している」

 正直に言えば怖かった。
 九郎が恐怖で逃げ出すのではないかと。

「私の本当の名前はマイノグーラ、君に名乗ったような邪神ではない
 もっと高位の、化身など持たぬ故普通ならばこの世界に出てくることすら出来ぬような存在だ
 何故この人間の世界に居られるかっていうとだね
 ナイアトラップの化身の一つを奪い取ったのさ
 奴らを叩き潰すためにね
 そしてその化身はどうにもあのサンジェルマンと仲良くしていたみたいでさ
 それで私は恨まれている
 まあ、あれだ
 だから実はヤツに追われている件に関しては私が完全に悪い
 “コイツ”は化身の中では良識的な方だったみたいだしね
 だから君は私の悪行に巻き込まれた形になるわけだ」

「俺が心から正しいと信じて行なっているんだから俺は正義を貫いている
 それより俺はお前をなんと呼べば良いんだ」

「今まで通りで構わないよ」

「じゃあトト、で良いのな
 あと化身ってことはその姿は……」

「まあ完全に“私自身”ではないな、その化身の一体を取り込んで無理矢理自分と練り合わせているから
 それでやっとこの世界に自分を固着させている
 安心しろよ、本体も君たちの美観にそぐう姿だから」

「それは良かった」

「だいたい他の奴らが気持ち悪すぎるんだ、まったくもう……
 ところでだ、そんな私の絶世の美女な本来の姿を見てみたいか?
 今ならば契約でこの世界に繋がっていられるからな」

「……俺は全てを受け入れるぜ」

「よく言った、お前ならば心配はしていないが正気を失ってくれるなよ?」

 そう言うと同時にトトがおもむろに立ち上がる。
 ペキッ、骨をおるような音と共に彼女の背中からダラダラと血が溢れる。
 衣服を割いて蝙蝠のような翼が現れる。
 ボロボロになった衣服は光の粒子になり、彼女は生まれたままの姿に還る。
 見る間に身長は伸び、肌の黒色は抜けて死人のように真っ白になる。
 長く伸びた髪はクルクルと巻き毛になり、まるでそれ自体が別個の生き物のようにウネウネと動いていた。
 目はいつの間にか現れたバイザーによって隠されておりうかがい知ることはできない。
 唇だけがやけに紅くて、それが彼の目を引いた。
 美しい。

「どうした?これを外すと更に大変だぞ?気が狂ってしまうかも……」

 彼女に見蕩れている九郎にトトはいつも通り軽口を叩く。

「構わない、外してくれ。俺はもうとっくにお前に狂っている」

 恥ずかしそうに下を向くと彼女はバイザーを外して真っ直ぐに九郎を見つめた。
 その瞳は翡翠の如く、藍より蒼き群青と若葉の如き緑の交じる複雑な色合いをしていた。
 起伏に乏しい身体がゆるりとうねり、九郎の側にしなだれかかる。

「どう?おどろいたか?」

 吐息がこぼれて九郎の内側に染みこんでいく。

「驚きはするさ、でもそれよりも……ありがとう
 俺に全部を見せてくれて」

「構うな、私はお前に惚れたんだ
 それよりも……私の姿を見て理性を失わないお前が私は怖いよ
 人間なのにお前は……本当に何者なんだ」

「お前が教えてくれただろう、すげえ素質の契約者だって」

「だったな……お前の父親がお前に契約をさせなかった理由というのはもしかしたら……
 だとするとなおのこと済まないことをした」

「構わない、お前のためだったら」

「……あーあ、なんでお前は私を好きになったんだ」

 悔しそうにつぶやきながらトトは九郎を抱きしめる。

「私たちはね、人間の世界に来る時に思考も人間レベルまで制限されるんだ
 それを忌々しく思っていたけど今はそれが幸せなんだよ」

 九郎はトトを抱きしめて彼女の頬と自分の頬を触れ合わせる。

「どうしてくれる?私にこんな幸せを教えてしまって
 私はしばらくお前を手離せないぞ?
 お前は死ぬのに、簡単に死ぬ人間のくせに」

「ならば簡単なことだよ、一生離すな
 俺も絶対にお前の側から離れない。お前に嫌われたってお前と一緒に居る」

「馬鹿、嫌いになることなんてあるもんか
 九郎の……馬鹿
 最初会った時から思ってたよ、馬鹿、馬鹿……」

 そのあとはもう、言葉になどならなかった。

【鴉―KARAS― 第九話「ただひとつのほんとう」 続】




タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー