【鴉―KARAS― 第十二話「アイをひとひら」】
第一の誕生は歓喜に包まれていた。
第二の誕生は悲劇としか言えなかった。
第二の誕生は悲劇としか言えなかった。
「…………ここは」
鷲山九郎は目を覚ます。
「おい少年!大丈夫か!」
「う……」
「何があったんだ?連絡がつかないから探していたんだぞ!
怪我はないな?意識は薄いか……」
怪我はないな?意識は薄いか……」
「あ……」
「おい、九郎くん!起きろ!」
「貴方は……誰ですか?」
鷲山九郎は死んだ。
必殺の魔槍を受け、脳髄をまき散らして死んだ筈だった。
しかし彼は今こうしてここに居る。
それは何故か?
必殺の魔槍を受け、脳髄をまき散らして死んだ筈だった。
しかし彼は今こうしてここに居る。
それは何故か?
「記憶を失っているのか……?」
「どういうこと……」
溶解する肢体。
驚いて明日は後ろに飛び退く。
これが彼の生の理由だった。
驚いて明日は後ろに飛び退く。
これが彼の生の理由だった。
「なんだこれ……、俺の身体はどうなってんだ?」
“ショゴス”という都市伝説が存在する。
非常に高い可塑性と延性を持ち、必要に応じて自在に形態を変化させ、さまざまな器官を発生させることができる。
自我は非常に希薄な個体が多いが、一部には例外的に脳を発生させて知性と完璧な自我を得る個体が居る。
セージの母親であったナイアトラップの化身の一体が彼に渡したお守りがまさにそのショゴス、及びその契約書だったのだ。
彼に投げ捨てられた後、本来の主から下された命令を忠実に守りそのショゴスは九郎を追いかけていた。
もし彼の命が危険に陥ったり、トトの存在が消えたならば彼女の指示でソレは九郎の肉体を奪い取る予定であった。
しかし、その主が明日真の手で抹殺された時にソレは九郎の肉体を奪い取るという選択肢を失った。
結局熱に弱いソレは九郎の放った熱攻撃に巻き込まれて生命の危険を感じ、また彼の生命への強い意志に惹かれて彼の肉体に緊急避難することを選んだのだ。
元々自我が希薄なショゴスの存在は脳の再生を終えた後、蘇った九郎の自我に完全に吸収され、消滅した。
そして彼の身体には自我を完全に失ったショゴスとの契約が残ったのだ。
そう、彼の第三の誕生は自らの意思で選びとったものであった。
非常に高い可塑性と延性を持ち、必要に応じて自在に形態を変化させ、さまざまな器官を発生させることができる。
自我は非常に希薄な個体が多いが、一部には例外的に脳を発生させて知性と完璧な自我を得る個体が居る。
セージの母親であったナイアトラップの化身の一体が彼に渡したお守りがまさにそのショゴス、及びその契約書だったのだ。
彼に投げ捨てられた後、本来の主から下された命令を忠実に守りそのショゴスは九郎を追いかけていた。
もし彼の命が危険に陥ったり、トトの存在が消えたならば彼女の指示でソレは九郎の肉体を奪い取る予定であった。
しかし、その主が明日真の手で抹殺された時にソレは九郎の肉体を奪い取るという選択肢を失った。
結局熱に弱いソレは九郎の放った熱攻撃に巻き込まれて生命の危険を感じ、また彼の生命への強い意志に惹かれて彼の肉体に緊急避難することを選んだのだ。
元々自我が希薄なショゴスの存在は脳の再生を終えた後、蘇った九郎の自我に完全に吸収され、消滅した。
そして彼の身体には自我を完全に失ったショゴスとの契約が残ったのだ。
そう、彼の第三の誕生は自らの意思で選びとったものであった。
「説明は後でするからとにかく病院に行こう
組織の病院がここからだと近いな……立てるか?」
組織の病院がここからだと近いな……立てるか?」
「はい、大丈夫です」
こうして九郎は組織の息のかかった病院で検査や治療を受け、数ヶ月の入院が決まる。
結局一部の記憶と引換に彼は生き残ったのだ。
そして退院の日。
結局一部の記憶と引換に彼は生き残ったのだ。
そして退院の日。
「なんか入院前からお世話になっていたみたいで……
それも含めて色々とありがとうございました」
それも含めて色々とありがとうございました」
「礼には及ばないよ、俺は正義の味方だからな!」
「でも奥さんと娘さんをもっと大切にしてあげてくださいね」
「う……今度この街のすぐ近くにあるネズミーランドに行こうかと」
「オススメのアトラクションとか教えてあげましょうか?」
「そうだな、後でメールにして渡してくれると本当に嬉しい」
「じゃあそうしますよ、それじゃあ」
「これから君はどうするんだい?」
「高校卒業したら親父のラーメン屋継ぐ修行を本格的に始める予定です」
「そうか……ならそれまで『組織』で働いてみる気は無いか?
都市伝説や悪い契約者から普通に暮らす普通の人を守るアルバイト」
都市伝説や悪い契約者から普通に暮らす普通の人を守るアルバイト」
「時給幾らですか」
「……能力給」
「時給700円以上なら考えます」
「何基準?」
「親父が俺にくれるラーメン屋のバイト代です」
「…………ならば色よい返事を期待しておこう」
明日と別れて九郎は自分の働くラーメン屋に向かう。
今日もいつも通りに店は忙しげだった。
ただ普段と違うのは見慣れぬバイトの女性が居ること。
今日もいつも通りに店は忙しげだった。
ただ普段と違うのは見慣れぬバイトの女性が居ること。
「こんにちわ……じゃなくてはじめまして九郎くん」
「あれ?あのどちら様……」
「舞さんって言ってな、新しくバイトに入ったお姉さんだ
歳も結構近いみたいだから色々教えてやりな」
歳も結構近いみたいだから色々教えてやりな」
「親父あんた退院してきた息子を働かす気かよ」
「はん、あったりまえだ。ほらさっさと奥で着替えてこい」
「ったくもう……」
九郎はそそくさと店の奥に入ってコックコートに着替える。
着替えを終えて部屋を出るとそこで舞が待っていた。
着替えを終えて部屋を出るとそこで舞が待っていた。
「九郎くん、今日は何の日だか知ってますか?」
「え?」
「2月14日、バレンタインデーです
という訳でこれどうぞ」
という訳でこれどうぞ」
舞が九郎にチョコを手渡す。
「ありがとうございます」
「味の感想、きかせてくださいね」
「はぁ……」
「ほら九郎!タラタラしてないで出前行ってこい!」
「わかったよ今行く!」
九郎は岡持ちを両手に店を出て歩き始める。
冬場は出前が多い。
彼も自然と忙しくなる。
彼がバイトから帰れたのは結局夜になってからだった。
冬場は出前が多い。
彼も自然と忙しくなる。
彼がバイトから帰れたのは結局夜になってからだった。
「あーあ、明日から学校か……たりいなあ」
懐に違和感。
「ああ、そういえばチョコもらってたっけか」
手作りチョコの包を開けて、無造作に口の中に放り込む。
美味しい。
それはそれは美味しくて、懐かしい味のチョコだった。
美味しい。
それはそれは美味しくて、懐かしい味のチョコだった。
「あれ……俺はなんで?」
涙が溢れる。
忘れていた大事なことを思い出したような、そんな感覚。
感覚がするだけだけれども。
マンションのベルが鳴る。
涙を拭いてドアを開けるとそこには昼間のバイトさんが居た。
忘れていた大事なことを思い出したような、そんな感覚。
感覚がするだけだけれども。
マンションのベルが鳴る。
涙を拭いてドアを開けるとそこには昼間のバイトさんが居た。
「お引越しの挨拶に伺いました、これお菓子ですので……あ!」
「あ、名前はなんでしたっけ?」
「私はマイと言います、貴方は確か……」
「俺は……九郎、鷲山九郎」
綺麗で、どこか懐かしいお姉さん。
朧気な記憶の中の母親に似ているような。
それとも朧気な記憶の中の……まあ良いや。
朧気な記憶の中の母親に似ているような。
それとも朧気な記憶の中の……まあ良いや。
「あの……」
「なんですか?」
「夕飯作りすぎちゃったので良かったら少し食べていただけますか?」
「はい、喜んで。丁度お腹へってたんですよ
そういえばマイさんって……」
そういえばマイさんって……」
「とりあえず」
「え?」
「食べてからってことでどうでしょう?
これでも自信があるんですよ、ラーメンとか」
これでも自信があるんですよ、ラーメンとか」
ここは千葉県夜刀浦市。
人口は60万人、海に面した土地で名門飯綱大学を抱えるベッドタウン。
特産品は佃煮、ピーナッツ、等々。
俺の生まれた町で、生きていく町だ。
人口は60万人、海に面した土地で名門飯綱大学を抱えるベッドタウン。
特産品は佃煮、ピーナッツ、等々。
俺の生まれた町で、生きていく町だ。
【鴉―KARAS― 第十二話「アイをひとひら」 おしまい】