喫茶ルーモア、入口から見て左側の奥、そこに一人の青年と少年がいた。
「平日の昼間から何してるの?」
少年の声。
「お茶、だな」
飲んでるのはコーヒーだがな。と言いつつ青年。
少年は、違う。と言って、
「なんで昼間っからのんびりしてるのさ。学校は?」
「俺はそんな年じゃなくてな」
「君じゃないよ、君の契約者。赤点取って補修なんでしょ? あの子のそばに居なくていいのかってこと」
「少年、俺は男であれは女だ」
間を取るように青年はコーヒーを啜る。
「四六時中いられても迷惑だろう? それに、人形の嬢ちゃんもついている」
「……ふーん」
少年の、納得したのかしていないのかよく分からない返事。
「それよりも」
青年は懐に手を入れ、
「遅れてすまんな。ちょっと問題が発生して再現像をかける羽目になってな。この前の浴衣の写真を持ってきた」
と言って少年が何故か女物の浴衣を着てそっぽを向いている写真を取り出した。
「っ!」
瞬時に写真を奪い取る少年に青年はネガも手渡して、
「うん、この前の、夏祭りの時の悪ノリの産物だな。かわいいぞ?」
「うるさい。なんでわざわざ現像までしてくるのさ!」
どうもウケが悪いようだぞ契約者よ。と青年は現像するよう指示を出した己の契約者に心の中で思う。赤い靴の件は黙っておこう。とも、
少年は溜め息をつき気を落ち着ける。そして青年を見ると首をかしげる。
「どうした?」
「いや、何か変わった?」
少年は目を細めて何かを凝視しようとするかのように青年を見る。
「なぜそう思うんだ?」
「この前まで見えていた〝二度目の失敗〟が視えなくなってる」
「そんなもの視えてたのか?」
青年は呆れたかのような驚いたかのような声を上げる。
「うん、内容まではよく視えなかったけど確かに視えてた」
「言ってくれればよかったのだが……」
青年は多少むすっとした顔で少年を見る。少年は平気な顔で、
「君、なんか完璧くさいから少し痛い目にでもあってもらおうかと思って」
少年の言葉に、あー、と青年は言うとまた一口コーヒーを啜る。そして、
「俺はそんなに完璧じゃあないさ」
そう言って薄く笑い、全身から力を抜くように息を吐きだす。
「?」
少年の頭に疑問符が浮かぶ。
「一人じゃないってのは幸せってことさ」
少年には青年の真意はよくわからない。でも言葉の意味は彼なりに分かるのだろう。
「まあね」
同意をすると少年は席を離れていった。玄関のベルが鳴っている、客が来たようだった。
「平日の昼間から何してるの?」
少年の声。
「お茶、だな」
飲んでるのはコーヒーだがな。と言いつつ青年。
少年は、違う。と言って、
「なんで昼間っからのんびりしてるのさ。学校は?」
「俺はそんな年じゃなくてな」
「君じゃないよ、君の契約者。赤点取って補修なんでしょ? あの子のそばに居なくていいのかってこと」
「少年、俺は男であれは女だ」
間を取るように青年はコーヒーを啜る。
「四六時中いられても迷惑だろう? それに、人形の嬢ちゃんもついている」
「……ふーん」
少年の、納得したのかしていないのかよく分からない返事。
「それよりも」
青年は懐に手を入れ、
「遅れてすまんな。ちょっと問題が発生して再現像をかける羽目になってな。この前の浴衣の写真を持ってきた」
と言って少年が何故か女物の浴衣を着てそっぽを向いている写真を取り出した。
「っ!」
瞬時に写真を奪い取る少年に青年はネガも手渡して、
「うん、この前の、夏祭りの時の悪ノリの産物だな。かわいいぞ?」
「うるさい。なんでわざわざ現像までしてくるのさ!」
どうもウケが悪いようだぞ契約者よ。と青年は現像するよう指示を出した己の契約者に心の中で思う。赤い靴の件は黙っておこう。とも、
少年は溜め息をつき気を落ち着ける。そして青年を見ると首をかしげる。
「どうした?」
「いや、何か変わった?」
少年は目を細めて何かを凝視しようとするかのように青年を見る。
「なぜそう思うんだ?」
「この前まで見えていた〝二度目の失敗〟が視えなくなってる」
「そんなもの視えてたのか?」
青年は呆れたかのような驚いたかのような声を上げる。
「うん、内容まではよく視えなかったけど確かに視えてた」
「言ってくれればよかったのだが……」
青年は多少むすっとした顔で少年を見る。少年は平気な顔で、
「君、なんか完璧くさいから少し痛い目にでもあってもらおうかと思って」
少年の言葉に、あー、と青年は言うとまた一口コーヒーを啜る。そして、
「俺はそんなに完璧じゃあないさ」
そう言って薄く笑い、全身から力を抜くように息を吐きだす。
「?」
少年の頭に疑問符が浮かぶ。
「一人じゃないってのは幸せってことさ」
少年には青年の真意はよくわからない。でも言葉の意味は彼なりに分かるのだろう。
「まあね」
同意をすると少年は席を離れていった。玄関のベルが鳴っている、客が来たようだった。
●
青年は思う。
変わった、か。
確かに変わったのだろう。
以前は能力の正体であるケサラン・パサランが他人に知られて力を失わないように、人との付き合いも極少にして生きていたし、都市伝説になってからも半端に強い自分の能力を過信して誰かと手を組むことはなかった。
それが、前回の事件だ。
あの時、他の能力者の助けがなければあの契約者にたどりつくこともできなかった。
他人の助けを必要として、こちらの力も必要とされた。
協力しようという意思。変わったことと言えばこれを手に入れたことか……
思えば、
「≪夢の国≫には一人で挑んで敗けたんだったか」
変わった、か。
確かに変わったのだろう。
以前は能力の正体であるケサラン・パサランが他人に知られて力を失わないように、人との付き合いも極少にして生きていたし、都市伝説になってからも半端に強い自分の能力を過信して誰かと手を組むことはなかった。
それが、前回の事件だ。
あの時、他の能力者の助けがなければあの契約者にたどりつくこともできなかった。
他人の助けを必要として、こちらの力も必要とされた。
協力しようという意思。変わったことと言えばこれを手に入れたことか……
思えば、
「≪夢の国≫には一人で挑んで敗けたんだったか」
『一人で力を過信して無理をすれば、また失うぞ』
少年の予知が言いたかったのは大方こんなところだろうか。
「まったく、的を射てるもんだな」
苦笑すると青年は立ち上がる。
青年の契約者は赤点の補習授業で学校行きだが、それも午前中で終わる。
迎えに行くか。
青年は喫茶ルーモアを後にした。
「まったく、的を射てるもんだな」
苦笑すると青年は立ち上がる。
青年の契約者は赤点の補習授業で学校行きだが、それも午前中で終わる。
迎えに行くか。
青年は喫茶ルーモアを後にした。