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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 舞い降りた大王-20

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だれでも歓迎! 編集
???「Αμαρτωλοσ(アマルトロス)!今なお【モイラ】に抗うと言うのか!」カキィィン!

大王「……ッ!あぁ、抗うさ。」カンッ!

正義「大王……。」



~数分前~



ある夏も終わりに近づいていた日、俺達はごく普通の道路で普通に雑談をしていた。

奈海「夏休みも、あっという間よねぇ。」
正義「あと少し長くてもいいのにね。」
勇弥「ほんと、あと少しでハンドガンサイズのレーザーガンの開発に成功しそうなのに。」

大王「……友、また兵器を造っているのか?」


勇弥の発明の多くは兵器。

正義が腕に付けている戦闘補助トランシーバー『正義注入機』も
奈海がウェストポーチに入れている十円玉射出銃『コインシューター』も
楓が腕に付けているカウントダウン腕時計『カウントタイマー』も

全て勇弥の技術と、契約都市伝説、陰の力の結晶なのだ。


勇弥「ん、開発はだいたい月1個のペース。んで、夏入る前に良いのが見つかってな。
   夏休みが終わる前に、って造ってたんだけど、誤爆が・・・。」
大王「兵器の開発では、エネルギーの制御が1番の問題だからな。」
奈海「あんたもなんでそんなもの造るの?正義くんなら剣だけでも充分強いんだし。」

勇弥「分かってねぇなぁ……。兵器によって生まれる日常もあるわけよ。」
奈海「戦争で勝って云々とか?」
楓「そうじゃない。戦争に使われた兵器も、使いようによっては日常を支える製品となるという意味だ。」
正義&奈海「「兵器が日常を支える?」」

2人の脳裏に、イメージが浮かぶ。
正義は愛用の剣で食材を切り刻んでいるイメージで、奈海は火炎放射器で食材を焼いているイメージだ。
それを察したか、勇弥も楓も呆れるしぐさを取る。

コイン「ま、溶け込んでて分かりにくいのかもね。
    でも逆に、トンネル工事で使われているダイナマイトは戦争に使われたのよね。」
正義「えっ!ダイナマイトって兵器じゃなかったの!?」
勇弥「ん、戦争ってのはそういうものだからなぁ……。」
楓「身の回りにあるものは全て武器となる。だが逆に、全ての武器は日用品に変わるかもしれない……。」
奈海「ふぅん、武器1つでも色々あるのねぇ。」

ふと、正義は振り返り。

正義「だから大王も」
大王「いい加減に諦めろ!そんな説得で俺の心が動くとでも思ったか!?」
コイン「えぇー、動くと思ったのにぃ。」

楓「お前たち、揺るがぬ信念をお持ちになっているからこそ大王様はかっこいいんだぞ。」
奈海「十文字さんの心も動かさないといけないわね。」
勇弥「難多き問題だ。」
大王「だいたい、俺から世界征服を奪ったらだな。」



……その時だった。



大王「俺はいったい何“ドクンッ!”の、ため……。」



勇弥「大王、さん……?」
大王「……少年、今の気配は……。」
正義「気配?都市伝説の気配なら、感じてないよ。」
楓「気のせい、な訳ないですよね、大王様ですし。黄昏、集中してみろ。」
コイン「今、私も探ってるんだけど……。とても弱い都市伝説なの?」
正義「……ダメ。ボクは全然分からない。」
大王「……そうか、少年はまだ直接会っていないのか。なら今すぐここから」

言い切る間もなく、全員の目に黒い人影のような何かが見えた。
同時に、全員はそこから何かを感じ取った。



正義「くっ……。」
大王「ちぃ……。」



コインはあっという間に奈海のお守り袋の中に隠れた。
その後すぐに、刃物の煌めきが見える。形状は、鎌。
正義は恐怖に怯える奈海と勇弥を突き飛ばし、大王は楓を抱いて退避する。

奈海「きゃあ!」
勇弥「うわぁ!」ドサァ!
正義「ごめん、緊急事態だったから。」

大王「ふぅ、大丈夫か会長?」
楓「え、は、はい!大王様!」



???「避けたか、Αμαρτωλοσ(アマルトロス)。」



大王「(こ、この気配、やはり……。)」
正義「き、キミは一体誰!?」

正義が目を向けた先には、黒いローブを纏った男が立っていた。
男の手には鎌があり、何より気になるのは背中にはえている黒い翼だった。

奈海「コスプレ、な訳ないよね……。」
楓「明らかに神の類……だが。」

男は全員を睨みつけるかのように威圧する。



タナトス「我が名は【Θανατοσ(タナトス)】。ギリシャに伝わる死を司る神だ。」



その威圧により、また全員の脚がすくむ。

勇弥「【タナトス】……。確か名前が少し出ていただけの神のはず。それがなんでこんな力を……。」
楓「気迫だけで動けなくなりそうだ……。奈海は……?」
奈海「ご、ごめん……立てない……。」

コインもお守り袋から全く出てこない。この場で立っているのは3人だけだった。

正義「タナトス、罪人って、誰の事?」
大王「少年……?」

いつもとは違う口調で、睨みつけながら話しかける。

タナトス「Αμαρτωλοσ(アマルトロス)はお前たち全員だ!Μοιρα(モイラ)に抗ったαμαρτια(アマルティア)、償ってもらう。」
奈海「何言ってるの!?全然分からない!」
勇弥「ギリシャ語か?とりあえず分かるのは『オレ達は罪人だ』って言った事だ。」
楓「ざ、罪人?私達が、何をしたって言うんだ……。」

【タナトス】は嘲笑し、怒りも混じったような声で語りだす


タナトス「簡単な話だ。まず十文字楓!もう数ヶ月前にお前は交通事故でΝεκροσ(ネクロス)!」
正義「し、死んでるって!?」
楓「交通事故……はっ!?」

楓はふと、【数秒ルール】と契約した時を思い出す。
契約した事も知らず、下校中に横断歩道を渡る時、信号無視でトラックが突っ込んできたのだ。
……もしあの時、契約していなかったら、確かに自分は死んでいた。


タナトス「次に日向勇弥!5年以上前に山の中でΝεκροσ(ネクロス)κρυο(クリヨ)でだ!」
正義「寒さで死亡?どういう事?」
勇弥「凍死って事か?山の中……あ!」

勇弥が思い出したのは、【電脳世界=自然界論】と契約した頃。
あの時契約していなかったら……。考えた事もなかった。


タナトス「心星奈海!三年前にある人間の後を追ってαυτοκτονια(アフトコンニア)!」
正義「自殺ッ!?奈海が!?」
奈海「後を追うって、……え?でも……。」

奈海は、小学4年生の時、ある人物とケンカをした事を思い出す。
そのケンカの後、居たたまれない気持ちでいた。あの時、後押ししてくれる人がいなければ、謝れなかっただろう。
……だが、そのケンカした人物とは……。


タナトス「そして最後に黄昏正義!お前は……三年前にαυτοκτονια(アフトコンニア)!」
正義「ッ!?ボクは……死んでいた……?」
大王「今でもあの日は覚えている。そして……。」


【タナトス】は鎌で全員に向け、最後に大王で止める。

タナトス「Μοιρα(モイラ)を無視し生き続ける人間、そしてΜοιρα(モイラ)を掻き回す者達!
     もうΜοιρα(モイラ)を悲しませないために……私は全てをあるべき形に戻す。」

正義「あるべき……形?」
大王「……来る!」

【タナトス】は思い切り後ろへ振りかぶり、大王の右側を風のように通り過ぎようとする。刃は、的確に大王の首を狙っていた。



タナトス「そう、私こそが『Θανατοσ()』だ。」フッ



大王はいつの間にか出現していた黒雲より剣を降らせ、鎌を止める。

大王「悪いな。まだ、死ぬ気はない!」ギィィィ キィンッ!

火花を散らしながら、大王は鎌を払いのけた。



~数分前/終~



大王「お前もモイラモイラとしつこいな。そんなに決められたレールを走るのが好きか。」
タナトス「【モイラ】の決めた、絶対的なΜοιρα(モイラ)を捨てる権利などない!」

【タナトス】が鎌の柄を引っ張ると、鎌が閉じて斧のような形となり、先端に鋭い刺が移動した。

正義「変形した!?」
勇弥「なんだありゃあ?!どんな変形機構だよ……!」

思い切り振りかぶり、【タナトス】は斧形となった鎌を力強く大王に叩きつけようとする。
大王は横へ飛び退いたため、それは地面に大きなひび割れをつくった。

タナトス「Μοιρα(モイラ)を受け入れろ。」
大王「断わる。レールの上よりも、何もない道が好きでな。自分の道は自分で決める……。」
正義「だ、大……王……?」

奈海「はやく、助けに……。」
勇弥「お、おい、奈海!?」
楓「闇雲に行くな!危険すぎるぞ!」

やっと立てるようになった奈海は、戦うために正義のもとへと走り出した。
が、急に金縛りにあったように、動かなくなった。

奈海「あ、あれ?……まさか、コインちゃん!?」
コイン「だめよ奈海!逃げよう!あいつだけは相手にしちゃいけない!」

勇弥「ど、どういう意味だよ?」
コイン「お母さんが言ってたの!『【タナトス】は都市伝説を狩るためだけに生まれた死神』って……!」
楓「死神……確かに鎌を持っているが、いったいどんな神なんだ?」
コイン「分からない……。神とかの情報は、私には読めないし……勇弥くんは?」
勇弥「俺にも分からねぇよ……。ヘラクレスの話で少し出てたぐらいしか知らねぇ……。」



大王「なら、話を聞かせてやろうか?」



思いもよらない言葉が、大王の口から出た。しかしすぐ後に、、刃のぶつかり合う音が聞こえる。

タナトス「その余裕がどこにある?」
大王「まずは、この神に黙ってもらうか。(作戦を立てるためにも、話しておきたいが。)」
タナトス「……。」ピクッ

【タナトス】が後ろに飛び退いた瞬間、正義が大王の前に現れる。

正義「大王、行って!ここはボクが相手をする。」
大王「少年……!お前も聞かないと作戦も練れんぞ?」
正義「戦いながらでもある程度は聞ける。それよりしっかり説明できる方がいいと思う。」
大王「……腹の立つ奴だ。気をつけろよ!」

大王は背を向けて、全力で勇弥達のいる所へ向かった。
正義がそれを確認している時、上から大きな斧が落ちてきた。

タナトス「そんな貧弱な剣で受けられるか?」
正義「受けるんじゃない。受け流すんだよ。」

【タナトス】の振り下ろしたものに、正義は剣をぶつけ、わずかに軌道をずらす。
またその勢いを利用して、反対方向に大きく跳んだ。

正義「身軽な武器も、使いよう。」
タナトス「黄昏正義……お前も多くの人間のΜοιρα(モイラ)を変えた、Αμαρτωλοσ(アマルトロス)だぞ……?」



その頃、大王は勇弥達に【タナトス】に関する話をしていた。

大王「少年1人で相手できる奴じゃない。可能な限り短くするぞ。」
奈海「大丈夫、早く言って!」
大王「まず【タナトス】について1番重要な事柄、奴は『死を神格化したもの』だ。」
奈海「……神格化?」
勇弥「死という現象・事柄を、神に具現化したって事だ。」
大王「そう、つまり奴は死、そのもの。故に死に関する多くの力が使える。」

と、説明されると、疑問が生まれる。

勇弥「それだけじゃあの鎌は説明できないよな?」
大王「それも問題の1つだ。元々、奴が持っていたのは『死を招く剣』と言われていた。」
楓「剣?では何故彼は鎌を?」



コイン「【死神】に、なりたかったんだよ……。」



コインの震える言葉に、三人に鳥肌が立つ。
正義と【タナトス】の刃が打ち合う音が響いた瞬間、またコインはお守り袋の中に隠れた。

大王「きっかけこそ分からないが、奴はより強くなりたいと願った。そこで考えたのさ。
   『【死神】のイメージを高める事で、【死神】の力さえも手に入れよう』とな。
   元々死神に近い存在、あっさりと奴は【死神】として、より強くなった。
   しかし、鎌は戦闘に向いていない。元は農耕の道具だからな。
   そこで【タナトス】は鎌の内部に鎖を仕込み、柄を引くとハルバートになる機構を組んだんだ。」
勇弥「ハルバートって……。」
大王「15世紀ぐらいに誕生した武器だ。斧の性質と槍の性質を併せ持ち、高い攻撃力を持っている。
   最低でも斬る・突く・鉤爪で引っかける、叩くという使い方が可能。
   だがそれ故に重量は重く、さらに性能を生かすためには迅速で適切な判断力を必要とする。
   つまり、よほどの者でない限り使いこなせず、宝の持ち腐れとなる。」

ふと【タナトス】を見ると、

まず思い切り斧部を叩きつけ、正義が後ろに避けるとすぐに踏み込み突きにかかる。
それを横に避けると、次は薙ぎ払い。正義はそれを剣で受けて大きく退く。

勇弥「すげぇ、あんな重たそうな物を振り回しているのに、正義を押してる……。」

おそらく何も知らない者がここにいるなら、【タナトス】の連撃を全て避ける正義に驚くだろう。
しかし長年正義と共にいる勇弥にとっては、未だに1度も攻撃を与えていない正義が珍しかったのだろう。

楓「と、ところで大王様、ハルバートってあんな物でしたっけ。」
大王「元が鎌だからな。攻撃力と近距離戦に有利とメリットはあるが、重量が問題だ。」
奈海「重いもの振り回してる、と。OK。じゃあ行こっか。」

すくっ、と奈海は立ち上がる。その脚は、わずかに震えていた。

楓「行くって、まさか……?」
奈海「正義くんは戦っているのよ?それにいつかの神様とは違う、死神と。
   私達の命もかかってるのに、正義くんだけに任せる訳には行かないじゃない……。」

潤んだ目が物語っている事は、話を聞けば充分に分かった。勇弥と楓も立ち上がり、覚悟を決める。

奈海「コイン!」
コイン「(!?)」ビクッ
奈海「そんなところで隠れてても、どうせ私が死んだらあなたも死んじゃうのよ!」
勇弥「おい、流石にそれは……。」



奈海「もしそれが嫌なら、私と戦って。それで負けそうになったら、その時に逃げなさい。」



コイン「……奈海ぃ……。」ヒョコッ
奈海「大丈夫。私ができる限り、守ってあげるから。」

コインは頷き、涙を拭う。

勇弥「……奈海ってさ、時々たくましいよな。」
楓「時折、母親らしさを垣間見れるな。……誰かさんのおかげか。」






タナトス「友情ごっこは終わったか?」






突然後ろから聞こえた声に、思わず勇弥と楓は左右に飛び退く。
運良く、【タナトス】のハルバートの斧部は地面を割るだけだった。

勇弥「って、っと。せ、正義はッ!?」
奈海「……あ!正義くぅん!」

そこには、剣を折られ、火傷や切り傷、打ち身などで傷だらけとなった正義の姿があった。



正義「ごめん……止められ、なかっ、た……。」



奈海「正義くん……そんな……。」
タナトス「Νεκροσ(ネクロス)の分際で、私にあの技を使わせるとは。」
大王「(あの技?……しまった、まさかあれを!?)」

ふと、奈海が【タナトス】の所へ歩み寄り、【タナトス】を睨みつける。

タナトス「なんだ?」
奈海「あんたさ、何を怒ってるの?」
タナトス「お前たちがΜοιρα(モイラ)に逆らって生き長らえているからだ。」
奈海「最初聞いた時から思ってたのよ。おかしな事を言ってるって。」
勇弥「お、おい、また……。」

仮にも神、それも死神に口答えは、と止めようとした時、楓が勇弥の肩を叩き首を振る。

奈海「なんで私達が生きてたらいけないの?私達が生き長らえようと努力しちゃいけないの?」
タナトス「……なに?」

奈海「例えば、死にそうな病気や怪我になった時、
   その人や周りの人ががんばって治ったとしたら、その人は祝福されるものじゃないの?
   『自分が死ぬ』という運命が分かるのなら、人は生きる為に努力するべきじゃないの!?」
タナトス「Μοιρα(モイラ)に抗う事は愚かだ。Μοιρα(モイラ)を受け入れΝεκροσ(ネクロス)となれ。」

言い終わったと同時ぐらいに、奈海はコインシューターの引き金を引く。
【タナトス】の頬に十円玉がぶつかった。

タナトス「……ανοητοσ(アノイトス)。」スゥ…
コイン「“な、奈海ィッ!”」

そして【タナトス】のハルバートが振り下ろされ……。



楓「1!」
タナトス「ッ?!」グググ…
コイン「“奈海、今よ!逃げて!”」
奈海「……あ、わ、分かった。」

とっさに【数秒ルール】を発動させて【タナトス】の攻撃を止める。

勇弥「お前、今日おかしいぞ!?何かあったのか?」
奈海「何?あいつに言いたい事言ってるだけじゃない。」
楓「2、3、っと。(お母さんモードが暴走気味だな……。)」

タナトス「また抗うか。恐れなき攻撃に敬意を評してやろう。」

奈海「敬意……?」
大王「まさかッ……!?おい気をつけろ!あれが出るぞ!」

【タナトス】はハルバートの柄を押し戻して鎌を展開する。

勇弥「何が始まるんだ……?」
大王「【タナトス】の死に関する能力だ。あれは鎌でないと発動できない。」
楓「いったいどんな能力なんですか?」
大王「すぐに分かる。伏せる準備をしておけ。」

すると、【タナトス】は鎌を左から右へ振り……。

タナトス「『κηδεα()』……『φλογα()』。」

その瞬間、鎌から禍々しい色をした炎が発生する。

勇弥「ほ、炎!?」
コイン「“奈海、避けるよ!”」
奈海「うわっ!」

コインの対応のおかげで、奈海は炎を避け、操られるように勇弥の所へ突き動かされた。

奈海「いたた・・・ありがとう、コインちゃん」
勇弥「コインちゃんナイス!」
コイン「“そんなのどうでも良いから、勇弥くん、壁を作って!”」
勇弥「ん?あぁ、了解……。」

言われるままに、勇弥は空気を壁に変換した。

タナトス「『κηδεα()』、『νερο()』。」

【タナトス】は鎌を右から左へ振ると、鎌から禍々しい色をした水が押し寄せてくる。

勇弥「今度は水か!」
楓「壁のおかげで助かった……。コインちゃん、それで壁を!」
コイン「“いいから!次は飛ぶ準備!”」
勇弥「飛ぶのかァ!?無茶言うなよ!」
奈海「まさか、次の攻撃って……。」

【タナトス】は鎌を天高く掲げ、勢いよく地面へ振り下ろす。

タナトス「『κηδεα()』、『εδαφο()』。」

その瞬間、鎌が突き刺さった所から禍々しい光と共に地面に亀裂が走り、あっという間に勇弥たちの足元は……。

勇弥「今度は……生き埋めかよ!?」
楓「く、こればかりは……。」
奈海「え、ちょ……。きゃあああああ!」

そのまま勇弥達は、奈落の底へと落ちていった。



タナトス「Αμαρτωλοσ(アマルトロス)、哀れなものだ。」



大王「隙あり……!」



突然、大王が懐に入り剣を振るう。【タナトス】は反応が遅く、皮1枚程度を斬られた。

大王「ほぅ。お前という奴が、これを喰らうとはな。」
タナトス「ッ……!『κηδεα()』、『ανεμοσ()』。」

鎌を下から上へ振り上げると、発生した風が禍々しい色と共に大王へと向かう。

大王「ぐっ……。」

その風を受けた地面も、周りにあったものも、まるで何百年も風に吹かれていたように、全てボロボロになっていく。
唯一大王だけ、比較的軽いダメージで済んだようだった。

タナトス「耐えたか。これを耐えたのは2人目だ。1人目はあそこにいるが。」
正義「……。」

【タナトス】が指差した先では正義が倒れていた。
おそらく正義もこの技を、いや、あの4連撃を全て受けたのだろう。

大王「少年は、この攻撃を、耐えたのか……癇に障る奴だ……。」
タナトス「仲間を見捨ててまで私を攻撃した、その結果がこれとはな。ανοητοσ(アノイトス)。」



大王「……見捨てた?」



その時大王は、体のの中で何かが弾けたような感覚を覚えた。

大王「【タナトス】、今『見捨てた』と言ったのか?」
タナトス「あぁ、友情ごっごに飽きたのか?」
大王「……そうか。聞き違えたかと思った……。」
タナトス「……?何を考えている?【恐怖の大王】。」

何を思ったのか、大王はにやりと笑った後、【タナトス】に疑問をぶつけた。

大王「【タナトス】、お前は『見捨てる事』は悪だと、本当は思っているんじゃないのか?」
タナトス「何……?」
大王「そうだろう?小学生ですら、目の前の人を救えなかったと悲嘆するんだからな。自分を襲った人物を、だ!
   ならお前とてそそう思っていても不思議ではない。」



少年は最初からそうだった。『目の前に困っている人がいたら助ける』『手が届くなら手を伸ばす』、そう言って聞かなかった。

俺にはその考えが邪魔だった。

世界征服をする以上、弱者を庇ったがために命を落とすなど、笑い話にもならない。忘れられるが落ちだろう。
だからその考えだけは捨てて貰うつもりだった。だが少年は今なお変わっていない。



……今なら、分かるかもしれない。大王は意を決する。



タナトス「それを認めたから、何だというんだ?私が消滅するでもない。」
大王「俺は見捨てた訳ではない。友と少女、会長もいる。なら俺が助ける必要はないと考えたんだ。」
タナトス「それは憶測に過ぎない。あの技をまともに受けて助かった者は1人といない。」
大王「そうだ。俺の予測は外れるかもしれない。未来を間違いなく知っていたなら、助けただろう。
   そんな人物がいるとしたなら、俺は1人しか知らない。」






大王「     【モイラ】 だ。     」






タナトス「……ッ!!」
大王「運命の神【モイラ】なら、全ての人間の死を予知し、救う事もできよう。
   もしそうなら……あいつらを見殺しにしたのは、俺でもお前でもなく、他でもない【モイラ】」

言い終わろうという瞬間、【タナトス】のハルバートが大王の腹部を切り裂いた。

大王「……流石に効いたな。死の神。」
タナトス「【モイラ】様に責任をなすりつけるとは……Αμαρτωλοσ(アマルトロス)に何が分かる!
     私は【モイラ】様の紡ぐΜοιρα(モイラ)に従えば良いと言っているのだ!」

大王「俺が問いたいのはお前の存在だ。ある考えを持ちながら、何故それを貫こうとしない?
   自分の考えを押し殺してまで、こんな事をするのに意味があるのか?」
タナトス「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!!!貴様に何が分かる!?所詮世界征服を企む者の口が、何を言っても無駄だ!」

大王「【タナトス】、俺と少年の唯一の共通点を教えてやろう。」



―――その顔は、笑顔のようにも見え、何かに満足しているようにも取れた―――



大王「俺も、少年も……自分の考えが正しいかを証明するために行動しているんだ。」
タナトス「は……!?」
大王「意外だろ?俺は世界征服のため、少年は人を助けるため。目的は違うのに同じ修行をしている。
   俺達が間違っているかなど、まだ分からない。だが確かめるためには、動くしかないだろう?」



しばらくそのまま全てが動かなくなった。最初に動いたのは【タナトス】だった。



タナトス「戯言は終わりか?」
大王「動じず、か。」

タナトス「そんな事だろうと思った。そうやって私の戦意を削ぎ落として、その隙を狙ったのだろう?」
大王「ニアピン賞。戦意を失い、帰って反省会でも開いてくれると思ったんだが、そう上手く行かなかった。」
タナトス「どれだけ人を舐めれば気が済む?【恐怖の大王】。」
大王「あと1回だ。【タナトス】、お前が本当に迷いがある、或いは自己の考えを持たないというのなら
   どうやらお前は、俺が思っていたよりも弱いかもしれん。」

【タナトス】はゆっくりハルバートを振り上げた。

タナトス「どうやら、もう一度味わって貰うしかないようだな。」
大王「あぁ、来い……!」

その時、【タナトス】が横へよろめく。同時に、刃の煌めきが【タナトス】のいた場所を駆け抜けた。



正義「だ、大王……雲、もう少し、近くに……。」はぁ、はぁ……
大王「……!それはすまなかったな。以後気をつける。」



いつの間にか、正義は立ち上がって剣を握っていた。

タナトス「……まだ諦める気は無いのか。」
大王「まだだ、まだ動ける……。まだ足掻ける……!」

ふらつく足を踏ん張り、大王は目を【タナトス】に向ける。

大王「少年、もっと寝ていた方が良いんじゃないか?」
正義「休みすぎたぐらいだよ。おかげでだいぶ楽になった。」
大王「そうか。なら安心だ。」

不意に、地面から四角い透明な何かが浮かび上がってきた。
よく見ると、0と1の線でできており、中には勇弥達が入っていた。

勇弥「お待たせしました、1階です。っと。」
楓「……。せっかく遠回りしたのに、奇襲はできなかったな。」
奈海「正義くん、大王さん、大丈夫!?」
正義「奈海、勇弥くん!」
大王「会長、無事だったか!」

改めて全員揃い、喜んでいる正義達だったが、快く思わないものもいた。

タナトス「せっかく葬ってやったのに、出てくるとは……。」
勇弥「あ、じゃあオレ達って今ゾンビみたいな状態か?」
奈海「やめてよ、なんだか気持ち悪いじゃない。」
楓「しぶとさは、この会の誇りだからな。ですよね、大王様?」
大王「あぁ。で、アンデッドを目の前にしたお前はどうする?お前こそ諦めたらどうだ?」

【タナトス】は怒りに震えていた。しかし、急に表情を戻し、ゆっくり鎌を下ろした。



タナトス「遊びが過ぎた……。終わりにしよう。」



勇弥「お、【タナトス】の試練もクリアって事か。」
楓「厳しい戦いだったが……、大王様が極めて下さったんですね。」
コイン「ねぇ、いい加減『すけいでぃお』について訊こうよぉ。」
奈海「そうね。こっちもスケジュール空いてないかもしれないし。」










正義「大王、伏せてぇ!!!」










急に正義の表情が変わり、叫びだす。
しかし間に合わなかった。すでに【タナトス】の姿が消え、急に大王の後ろに現れる。
大王はとっさに勇弥・奈海・楓を突き飛ばした。

勇弥「うおっとぁ!?」
奈海「きゃあっ!?」
楓「うわっ、だ、大王様!?」

楓が振り返ると、大王と【タナトス】の周りから禍々しい色の霧が発生していた。

奈海「なによこれ……。信じられない……。」
勇弥「なんだ、近寄れねぇ……。どうなっているんだ……?」
正義「皆!いったいどうしたの!?」
楓「た、黄昏はあれを見ても大丈夫なのか……?とにかく、あれはいったい……。」

正義以外、震えた声で喋っている。

奈海「コ、コインちゃん、分かる?」
コイン「……うそ、これ、私達があいつに会った時からずっと出てたの……!?」
勇弥「はぁ?!あの時は、たしか普通だったぞ!?」
楓「私達が、ずっと気付かなかったという事になるな……」

すると、はっとしたようにコインが顔を上げ、すぐに頭を抱える。

コイン「……そうだ、大変だ!お母さんが言っていたの。この霧が出たら……。」
楓「た、対処法があるのか……?」

全員が期待する中、コインが口を開く。






コイン「諦めろ、って……。」






勇弥「お、おい、それって、もう逃げられないって事かよ……!」
楓「つまり、あれが【タナトス】の必殺技か。文字通り……。」
コイン「そうみたい……。あれに近づいたら、大人も子どもも、獣も鳥も恐怖すると言われているの。」

全員が霧の様子を窺っている中、奈海はキョロキョロと辺りを見回していた。






奈海「……正義くんは……?」






Σχεδιο編第6話「死」―続―



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