???「さっきまでの威勢は何処に行ったのさ!?えいっ!」ヒュン、ヒュヒュン
正義「くっ!くぅ……。」ザッ、ザッ
奈海「ちょ、ちょっとぉ……、わっ!?」ササッ
コイン“「奈海ィ!気をつけないと当たっちゃうよぉ!」”
大王「(……何故、こんな事になってしまったんだ。)」
奈海「ちょ、ちょっとぉ……、わっ!?」ササッ
コイン“「奈海ィ!気をつけないと当たっちゃうよぉ!」”
大王「(……何故、こんな事になってしまったんだ。)」
~数分前~
奈海「うぅん……これと、これと、これも……。」
正義「もう、それぐらいで良いだろ?」
奈海「いいじゃない。私が持つ訳じゃないんだもん。ところで、これ似合う?」
正義「……やっぱりオレなのか。そんなに買って何になるっていうんだよ。」
奈海「あら、私にそんな口聞いていいのかしら?どうなっても知らないわよ。これ追加ぁー♪」
正義「うぅ……。」
正義「もう、それぐらいで良いだろ?」
奈海「いいじゃない。私が持つ訳じゃないんだもん。ところで、これ似合う?」
正義「……やっぱりオレなのか。そんなに買って何になるっていうんだよ。」
奈海「あら、私にそんな口聞いていいのかしら?どうなっても知らないわよ。これ追加ぁー♪」
正義「うぅ……。」
コイン「なんだかんだで楽しそうだね。」
大王「そうなのか?こういうのはよく分からん。」
大王「そうなのか?こういうのはよく分からん。」
ある夏の日、俺達はごく普通のショッピングセンターでごく普通の買い物をしていた。
コイン「待って、これってもしかして初デートにカウントされるのかな?」
大王「そんな小難しい事を俺に聞くな。」
大王「そんな小難しい事を俺に聞くな。」
奈海「ぅんと……よし。じゃあレジへレッツゴー!」
正義「あぁ、ちょ、待て!」
正義「あぁ、ちょ、待て!」
そして会計が終わり、俺達は店を出た。
奈海「あぁ~買った買った。じゃ、帰ろっか。」
正義「お前も持てよ!2つぐらい!」
正義「お前も持てよ!2つぐらい!」
……と、その時だった。
???「まったく、イチャイチャしてんじゃねぇ!」
正義「ッ!?危ない!」
奈海「え?きゃあ!」
奈海「え?きゃあ!」
不意に前から銀に煌めく矢が飛んでくる。とっさに少年は少女を突き飛ばす。
正義「奈海ちゃ、“コホン”大丈夫か!」
奈海「え、えぇ、まぁ。あ!さっき買った服が!」
奈海「え、えぇ、まぁ。あ!さっき買った服が!」
???「ふぅん……よくアレを避けたねぇ。関心関心。」
コイン「もぅ!いったい誰よ!」
大王「この気配……まさか!?」
大王「この気配……まさか!?」
気配の元を見ると、少年と同世代かそれより下ぐらいの、背中から羽の生えた子どもがいた。
おそらく少女には普通の人間に見えたのだろうが、俺にはその正体が分かった。
おそらく少女には普通の人間に見えたのだろうが、俺にはその正体が分かった。
奈海「えっと、天使のコスプレをした、男の子、だね?危ないから弓矢は人に向けちゃダメ。分かった。」
???「子どもじゃねぇ!人間のくせに偉そうに!」
奈海「ダメね……完全に自分を天使だと思い込んでる。」
コイン「いつもだったら無視しようって言うところなんだけど、今日は奈海が思い込みをしているんだよ?」
大王「少年!」
正義「うん、間違いなく神話の都市伝説。キミは一体!?」
???「子どもじゃねぇ!人間のくせに偉そうに!」
奈海「ダメね……完全に自分を天使だと思い込んでる。」
コイン「いつもだったら無視しようって言うところなんだけど、今日は奈海が思い込みをしているんだよ?」
大王「少年!」
正義「うん、間違いなく神話の都市伝説。キミは一体!?」
すると彼は、羽を羽ばたかせ、ポーズを決める。
エロス「ボクは【Ερωσ 】。ギリシャの神の1柱さ!」
大王「ち、またお前達か!」
正義「(弓使いか……。遠距離戦は苦手なんだよなぁ。奈海がいるから大丈夫かな?)」
正義「(弓使いか……。遠距離戦は苦手なんだよなぁ。奈海がいるから大丈夫かな?)」
奈海「エ……ロス?ぇっと、その……か、可哀想な名前ね。」
エロス「あぁ!ボクの事バカにしただろ!お前達人間が意味を変えるからぁ!」
コイン「いや、多分日本人だけだと思うけど。でも、元々の意味もだいたいそうだし。」
エロス「あぁ!ボクの事バカにしただろ!お前達人間が意味を変えるからぁ!」
コイン「いや、多分日本人だけだと思うけど。でも、元々の意味もだいたいそうだし。」
すると、【エロス】は怒り、どこからか矢を束で出し、俺達を狙う。
エロス「ボクを侮辱するとは、許せない!叩きのめしてやる!」
大王「な……何故そうなるんだァアァァ!?」
~数分前/終~
正義「大王、ゴメン。でもあの状況ではどうしようも無かったし……。」
奈海「ほとんど私の責任だよね。大王さんゴメン!」
大王「……もういい、慣れた。」
コイン“「それよりどうするのよ!」”
奈海「ほとんど私の責任だよね。大王さんゴメン!」
大王「……もういい、慣れた。」
コイン“「それよりどうするのよ!」”
そう会話している隙に、【エロス】は矢を取り出し、正義を狙う。
エロス「ゴチャゴチャ……うるさァい!」
連続で3本の矢が、正義達をめがけて飛んでいく。
正義と大王は自力で避け、奈海はコインの能力で突き動かされて避けた。
正義と大王は自力で避け、奈海はコインの能力で突き動かされて避けた。
正義「わっ!」
大王「ちぃっ!」
奈海「きゃあ!」
大王「ちぃっ!」
奈海「きゃあ!」
エロス「ちぇ、全然当たらねぇ……。つまんねぇの。」
正義「くぅ……こうなったら、勇弥くんに助けを……。」
奈海「ぅ、わ、分かったわ。なら……こっち!」
正義「くぅ……こうなったら、勇弥くんに助けを……。」
奈海「ぅ、わ、分かったわ。なら……こっち!」
奈海は目を瞑って考えた後、正義達を路地裏へと導く。
エロス「まさか、逃げられると」
大王「こいつは不意打ちの礼だ。釣りは要らんぞ!」
エロス「え?うわっ!?」
大王「こいつは不意打ちの礼だ。釣りは要らんぞ!」
エロス「え?うわっ!?」
正義達を追いかけようとした瞬間、【エロス】の頭上から大量のゴミが降ってきた。
ゴミの山に【エロス】が埋もれた事を確認すると、大王は軽く笑みを浮かべてその場を去った。
ゴミの山に【エロス】が埋もれた事を確認すると、大王は軽く笑みを浮かべてその場を去った。
エロス「……ゆっるさぁぁぁん!臭ッ!……仮にもボクは神だぞ、もう許さないッ!待っていろ……!」
とてつもない怒りを抱えて、【エロス】はゴミの山から出て、大空へと飛び立った。
奈海「―――もう、追ってこないわね。」はぁ、はぁ
コイン「“大丈夫。”ふぅ、私が検索したスーパー安全ルートだもん!」
正義「じゃあ、早速。……こちら正義、応答願います。」
コイン「“大丈夫。”ふぅ、私が検索したスーパー安全ルートだもん!」
正義「じゃあ、早速。……こちら正義、応答願います。」
正義は腕の『正義注入機』のボタンを押し、勇弥と無線を繋ぐ。
“勇弥「こちら勇弥。丁度いい、今亜空間を切り開く装置を」”
奈海「そんなのはどうでも良いから!えっと、ぇ、え、エロ……。」
“勇弥「はぁ?わざわざ無線で何のッ、まさかお前等……。」”
正義「たぶん違う!【エロス】ってギリシャ神話の神の話を聞きたいんだ。」
“勇弥「あぁなるほど。篭もるなよ、勘違いするから。」”
奈海「だってぇ……。充分変な名前じゃない。」
奈海「そんなのはどうでも良いから!えっと、ぇ、え、エロ……。」
“勇弥「はぁ?わざわざ無線で何のッ、まさかお前等……。」”
正義「たぶん違う!【エロス】ってギリシャ神話の神の話を聞きたいんだ。」
“勇弥「あぁなるほど。篭もるなよ、勘違いするから。」”
奈海「だってぇ……。充分変な名前じゃない。」
改めて、勇弥の解説が始まった。
“勇弥「『キューピッド』って言葉を聞いたら何を思い出す?」”
奈海「え?もしかして『恋のキューピッド』?」
奈海「え?もしかして『恋のキューピッド』?」
“勇弥「実はある神話で【Cupid 】っていう奴がいてな。英語読みでキューピッド。んでそいつと同一視されやすいんだ。
それっぽい要素は無かったか?弓を持っているとか……。」”
正義「うん、弓矢で攻撃してくるよ。」
“勇弥「ならそれで確定だな。『クピド』は自分の持つ金の矢と鉛の矢で悪戯をする、って話だったと思う。」”
奈海「金の矢で射抜いた人同士をカップルにさせる、ってやつ?」
“勇弥「いいや、金は恋愛への欲求が高まる、鉛は恋愛への関心を奪うって能力だ。
男に金の矢を射て、女に鉛の矢を射て、それを傍から見物するのが趣味みたいな奴らしい。」”
コイン「なにそれ、悪い奴じゃん。」
それっぽい要素は無かったか?弓を持っているとか……。」”
正義「うん、弓矢で攻撃してくるよ。」
“勇弥「ならそれで確定だな。『クピド』は自分の持つ金の矢と鉛の矢で悪戯をする、って話だったと思う。」”
奈海「金の矢で射抜いた人同士をカップルにさせる、ってやつ?」
“勇弥「いいや、金は恋愛への欲求が高まる、鉛は恋愛への関心を奪うって能力だ。
男に金の矢を射て、女に鉛の矢を射て、それを傍から見物するのが趣味みたいな奴らしい。」”
コイン「なにそれ、悪い奴じゃん。」
“勇弥「時代が進むごとに、能力の良い所だけが切り取られて『キューピッド』が生まれたんだろうな。
ちなみに、元々は力強い青年とかでイメージされてたんだけど、後に少年化してしまったらしい。
さらに昔は原初の神の一員という結構偉大な奴だったんだが、時代と共に劣化していったみたいだ。」”
ちなみに、元々は力強い青年とかでイメージされてたんだけど、後に少年化してしまったらしい。
さらに昔は原初の神の一員という結構偉大な奴だったんだが、時代と共に劣化していったみたいだ。」”
ふと、正義はある事に気がつく。彼が放った矢の色は金でも鉛でもなかったのだ。
正義「待って、あいつが射た矢の色は緑っぽかったよ。それはどんな矢?」
“勇弥「緑……もしかすると青銅か?だがそんな矢は文献には無い。」”
大王「という事は独自で作ったものだな。単純な攻撃用か。」
“勇弥「普通は契約者がいないとそんな事はできない筈なんだが……。神だからか?」”
奈海「で、弱点は何なの?」
コイン「あるんでしょ?呪文とかにんにくに弱いとかさぁ。」
“勇弥「緑……もしかすると青銅か?だがそんな矢は文献には無い。」”
大王「という事は独自で作ったものだな。単純な攻撃用か。」
“勇弥「普通は契約者がいないとそんな事はできない筈なんだが……。神だからか?」”
奈海「で、弱点は何なの?」
コイン「あるんでしょ?呪文とかにんにくに弱いとかさぁ。」
“勇弥「ん、ねぇよ。」”
奈海&コイン「「えぇっ!?」」
正義「……じゃあどうすれば勝てるの?」
“勇弥「逆に聞くが、本当に勝てそうにないか?」”
正義「……じゃあどうすれば勝てるの?」
“勇弥「逆に聞くが、本当に勝てそうにないか?」”
その言葉を聞いた瞬間、今までの緊張と不安が吹き飛ぶ。
確かに、彼は神ではあるが、外見は子どもである。攻撃もそれほど怖いものではない。
確かに、彼は神ではあるが、外見は子どもである。攻撃もそれほど怖いものではない。
正義「そう言われてみると……。」
奈海「遠距離なら私もいるし……。」
コイン「避けられない訳でもないもんね。」
“勇弥「そういう事。元々戦う神じゃないんだ。落ち着いて戦えば絶対に勝てる。もし困ったらまた連絡してくれ。」”
奈海「遠距離なら私もいるし……。」
コイン「避けられない訳でもないもんね。」
“勇弥「そういう事。元々戦う神じゃないんだ。落ち着いて戦えば絶対に勝てる。もし困ったらまた連絡してくれ。」”
そして、正義が切ろうとした瞬間。
“勇弥「おっと、最後に。『エロス』の元の意味は『性愛』、恋愛とかだな。
さらに、何故かいつの間にかその言葉はイデアの世界を志向する精神的な愛、とかいう
綺麗なものになったらしい。あ、『イデア』についてはまたいつか話してやるよ。」”
さらに、何故かいつの間にかその言葉はイデアの世界を志向する精神的な愛、とかいう
綺麗なものになったらしい。あ、『イデア』についてはまたいつか話してやるよ。」”
と、言い終わると、通信が切れた。
正義「……じゃあ『エロい』って【エロス】から来てるの?」
奈海「わ、私に聞かないでよ。」
大王「おい、そろそろ戦闘の準備をしろ。」
奈海「わ、私に聞かないでよ。」
大王「おい、そろそろ戦闘の準備をしろ。」
エロス「誰がエロいって……?そんな設定をつくったのは人間だろ?」
声を頼りに上を向くと、そこには【エロス】の姿があった。
コイン「あれ……いつの間に。」
正義&奈海「「ごめんなさい。」」
エロス「許すかァ!絶対に殴り飛ばしてやる!」
大王「全く、こんなに怒らせるとは……。とにかくここは……。」
正義&奈海「「ごめんなさい。」」
エロス「許すかァ!絶対に殴り飛ばしてやる!」
大王「全く、こんなに怒らせるとは……。とにかくここは……。」
エロス「だからさっさと出てこい!」
大王「……は?」
彼の罠としか取れない発言に、全員驚きを隠せなかった。
正義「キミが来たらいいじゃん。」
エロス「偉そうに、ボクは神だぞ!」
大王「どう考えても罠だろ。なら、どこから出るか……。」
エロス「いいから普通に出ろ!別にいきなり殴る以外何もしないから!」
正義「……何を考えているんだ……?」
エロス「偉そうに、ボクは神だぞ!」
大王「どう考えても罠だろ。なら、どこから出るか……。」
エロス「いいから普通に出ろ!別にいきなり殴る以外何もしないから!」
正義「……何を考えているんだ……?」
じっと【エロス】を見ていると、奈海はその理由に気付いた。
奈海「……もしかして、羽が邪魔でここに来れない?」
エロス「うっ。」
エロス「うっ。」
正義「なぁんだ。じゃあ大王。あいつの頭上に雲作って。」
大王「了解。」
コイン「正義くん鬼だ!」
エロス「くっそぉ、あ。なんだ、普通に弓で攻撃すれば良いんだ。」
正義「う、気付かれた。」
奈海「気付かないと思ったの!?」
大王「俺も気付かないまま勝てると思った。」
コイン「大王までナメだしちゃった!」
大王「了解。」
コイン「正義くん鬼だ!」
エロス「くっそぉ、あ。なんだ、普通に弓で攻撃すれば良いんだ。」
正義「う、気付かれた。」
奈海「気付かないと思ったの!?」
大王「俺も気付かないまま勝てると思った。」
コイン「大王までナメだしちゃった!」
その会話と、なにより気付かなかった自分に腹が立ち、【エロス】は矢を束ねる。
エロス「じゃあ、さっさと終わらせるよ……。」
大王「流石に、ここではまともに喰らうな。逃げるか?」
奈海「こっくりさんこっくりさん……、っていうか、あれ避けれるの!?」
コイン「“……無理!狭すぎるよぉ!弾も限られてるしぃ。”」
大王「流石に、ここではまともに喰らうな。逃げるか?」
奈海「こっくりさんこっくりさん……、っていうか、あれ避けれるの!?」
コイン「“……無理!狭すぎるよぉ!弾も限られてるしぃ。”」
正義「とにかくここから退避するよ。」
エロス「喰らえェ!」ヒュンッ!ヒュヒュンッ!
正義「ちぃッ!」“ウォール!”
エロス「喰らえェ!」ヒュンッ!ヒュヒュンッ!
正義「ちぃッ!」“ウォール!”
青銅の矢が雨のように降り注ぐ。が、正義は勇弥から貰った札の1枚を『正義注入機』に読み込ませる。
するとかざした手のひらの前に半透明な壁ができ、降り注ぐ矢から正義を守る。
するとかざした手のひらの前に半透明な壁ができ、降り注ぐ矢から正義を守る。
エロス「あ、逃げるな!」
正義達は急いで路地を抜ける。するとそこは人気の無い広い場所だった。
正義「ラッキー。安心して戦えそうだね。」
大王「では、どんな策で行くんだ?」
正義「色々考えたんだけど、矢に気をつける戦い方なら特別な事をしなくて良いんだよ。」
奈海「となると?」
正義「あいつには普通に戦うのがベスト。大王、剣出して。」
大王「なるほど、あんな奴を倒すためにいちいち難しい事を考えていた俺がバカだったという事か。」
大王「では、どんな策で行くんだ?」
正義「色々考えたんだけど、矢に気をつける戦い方なら特別な事をしなくて良いんだよ。」
奈海「となると?」
正義「あいつには普通に戦うのがベスト。大王、剣出して。」
大王「なるほど、あんな奴を倒すためにいちいち難しい事を考えていた俺がバカだったという事か。」
大王は正義との間に黒雲を生成し、そこから剣を2本出す。
奈海は『コインシューター』に十円玉を貯える。
奈海は『コインシューター』に十円玉を貯える。
正義「では。」
奈海「戦闘。」
大王「開始だ!」
エロス「おぉ前ェらァァァ!」ヒュヒュン!
急に上空から青銅の矢が束となって降ってくる。
しかしよく考えれば、その手は何度も見ていた。
しかしよく考えれば、その手は何度も見ていた。
コイン「“カンタン、カンタン。奈海、あっちよ!そこから攻撃ィ!”」
奈海「OK!えぇい!」タタッ ティティーン
奈海「OK!えぇい!」タタッ ティティーン
コインはあっさりと安全地帯を見つけて奈海を誘導し、奈海はそこから2枚の十円玉を打ち出す。
エロス「うわっ。何するんだよいきなり!」
奈海「……あっさり当たっちゃった。」
コイン「“あの子自信過剰だから、あんまり攻撃避けないんだよ。”」
エロス「またボクの悪口か!許さなッ、うわぁ!?」
奈海「……あっさり当たっちゃった。」
コイン「“あの子自信過剰だから、あんまり攻撃避けないんだよ。”」
エロス「またボクの悪口か!許さなッ、うわぁ!?」
【エロス】が急に叫んだと思うと、いきなり降下して地面に落ちた。どうやら羽が動かなくなったようだ。
エロス「ぎゃ!……痛ててて……。何をしたんだ!」
コイン「“呪い成功!今回は『体の一部が動かない呪い』でしたぁ。”」
奈海「っていうか、あの小さな羽で飛んでたんだ……。」
正義「ありがとうコインちゃん。これでボク達も攻撃に参加できる。」
大王「(奈海は誉めないのか……。やはりよく分からん。)」
コイン「“呪い成功!今回は『体の一部が動かない呪い』でしたぁ。”」
奈海「っていうか、あの小さな羽で飛んでたんだ……。」
正義「ありがとうコインちゃん。これでボク達も攻撃に参加できる。」
大王「(奈海は誉めないのか……。やはりよく分からん。)」
正義と大王は【エロス】の前に立ち、剣を構える。【エロス】も引く気はなく、弓を構える。
正義「(弓をはたき落とせば勝ちだ!)てぇぇぇい!」
エロス「ぅ、ま、まだ負ける訳には!」
エロス「ぅ、ま、まだ負ける訳には!」
【エロス】は矢を束ねて弓を引く。散弾銃のごとく飛ぶ矢に、正義はなかなか近づけなかった。
正義「く、近寄れないな……。」
コイン「“呪いは長持ちしないよ!早く何とかしないと!”」
奈海「あぁ、もう!矢でも鉄砲でも降らせなさいよ!」
コイン「“呪いは長持ちしないよ!早く何とかしないと!”」
奈海「あぁ、もう!矢でも鉄砲でも降らせなさいよ!」
正義「だって矢は苦手だし……。」
大王「すまん、生物と複雑な物体は生成できない。」
奈海「あんなに修行がんばってるのにこんな所で弱点発見!?」
大王「遠距離は少女に任せていたんでな。」
大王「すまん、生物と複雑な物体は生成できない。」
奈海「あんなに修行がんばってるのにこんな所で弱点発見!?」
大王「遠距離は少女に任せていたんでな。」
その時、正義は閃いた。
正義「そうだ、いつかのあれで行こう。大王、羊雲!」
大王「羊……、成る程あれか。取りようによっては、これも遠距離攻撃か。」
大王「羊……、成る程あれか。取りようによっては、これも遠距離攻撃か。」
瞬間、【エロス】の上空に黒雲がぽつぽつと生成される。
エロス「何を始める気だ……?」
奈海「あぁ、確かに羊雲。でもどうするの?」
正義「こうするんだよ。あ、危ないから遠くへいっててね。」
奈海「あぁ、確かに羊雲。でもどうするの?」
正義「こうするんだよ。あ、危ないから遠くへいっててね。」
奈海が離れた時を見計らい、正義と大王は自分の知る多くの武器を思い浮かべる。
すると、黒雲から大量の武器が降り注ぐ。
すると、黒雲から大量の武器が降り注ぐ。
エロス「な、なんだこりゃ!?」
大王「仕掛けるぞ少年!」
正義「うん!」
正義「うん!」
【エロス】は頭上から降ってきたハンマーを避ける。と、次は頭上に槍が見えた。
エロス「ちょ、ちょ、ちょっと待てェェェ!」ズザァ!
大王「なかなか滑稽だな、愛の神様。」
エロス「ぐっ。」
エロス「ぐっ。」
正義「おぉい、気を抜いてると!」
正義は空から降ってきた武器を取り、思い切り振り下ろす。
正義「てえぇぇい!」
エロス「えっ、ぎぃやぁぁぁ!?」
エロス「えっ、ぎぃやぁぁぁ!?」
正義の持つ武器が【エロス】の肩に当たると、“パァンッ!”と綺麗な音が鳴った。
正義「ハリセンだよ。びっくりした?」
エロス「……ぉ、ま、え……!」
大王「念のため言っておくが、危ないぞ。」
エロス「……ぉ、ま、え……!」
大王「念のため言っておくが、危ないぞ。」
【エロス】の頭上に、斧が降ってきていた。
エロス「……うわぁぁぁあああ!」
【エロス】は全力で走った。途中で呪いが解けて飛べるようなったらしく、全力で飛んでいた。
やがて、雲のない所まで辿り着いたが、かなり疲れているようだ。
やがて、雲のない所まで辿り着いたが、かなり疲れているようだ。
正義「そろそろ降参する?」
大王「流石にお前をいたぶるほど、俺も悪くは無いんだぞ?」
エロス「く、くっそぉ……。」
大王「流石にお前をいたぶるほど、俺も悪くは無いんだぞ?」
エロス「く、くっそぉ……。」
奈海「惨い気もするけど、あの子のためだと思って、心を鬼に。」
コイン「“鬼と言うより、もはや修羅じゃん。”」
コイン「“鬼と言うより、もはや修羅じゃん。”」
しばらく、【エロス】は黙って落ち込んでいる。ように大王や奈海達には見えた。
エロス「(まぁ、『Σχεδιο 』さえ成功したらいいんだし。今日はここまでにするか。)」
正義「(『計画』?またその言葉が?)」
勇弥「おい正義ィ!大丈夫か!?」
楓「黄昏、助けに来たぞ!」
楓「黄昏、助けに来たぞ!」
その時、後ろの方から勇弥と楓の声が聞こえた。
正義「あ、勇弥くんと十文字さんだ。」
大王「友、会長!こっちはもう片付いたぞ!」
勇弥「なんだ。まぁ、当たり前だよなぁ。」
大王「友、会長!こっちはもう片付いたぞ!」
勇弥「なんだ。まぁ、当たり前だよなぁ。」
すると、やっと【エロス】が立ち上がった。
エロス「とりあえず、この勝負は預けておくよ。」
大王「大人しく負けを認めろ。」
正義「大王、別に勝ち負けはいいじゃん。それよりも……。」
大王「大人しく負けを認めろ。」
正義「大王、別に勝ち負けはいいじゃん。それよりも……。」
正義が話そうとした瞬間、遮るように【エロス】が怒りだす。
エロス「だが!ボクを侮辱する行為だけは許さない!ゴミとか武器とか降らせたり……。」
正義「ゴミ?」
大王「すまない、とっさの処置だったんだ。」
エロス「だから、この怒りだけはッ!ここで清算する!」
正義「ゴミ?」
大王「すまない、とっさの処置だったんだ。」
エロス「だから、この怒りだけはッ!ここで清算する!」
その瞬間、【エロス】は金色に煌めく矢を取り出し、それを射た―――
大王「なっ。」
正義「大王!」
正義「大王!」
ザシュッ
大王「く……。」
楓「大王……様?」
奈海「嘘、大王さんが……。」
正義「なんで、あれぐらいなら、いつも避けてたじゃん……。」
楓「大王……様?」
奈海「嘘、大王さんが……。」
正義「なんで、あれぐらいなら、いつも避けてたじゃん……。」
矢が当たった事を喜んだのか、【エロス】は飛んで喜ぶ。
エロス「ははは、流石のお前もボクの矢は避けられなかったかい!」
コイン「(……もしかして、でも……。)」
大王「ッ……しまったな……。」
エロス「ちなみにその矢は、恋愛感情を高める金の矢だ!さっさと愛に溺れろ!」
コイン「(……もしかして、でも……。)」
大王「ッ……しまったな……。」
エロス「ちなみにその矢は、恋愛感情を高める金の矢だ!さっさと愛に溺れろ!」
すると………………。
大王「…………?」
正義「…………?」
奈海「…………?」
コイン「…………?」
勇弥「…………?」
楓「…………?」
エロス「…………?」
正義「…………?」
奈海「…………?」
コイン「…………?」
勇弥「…………?」
楓「…………?」
エロス「…………?」
……何も起きなかった。
エロス「あ、あれ?ほ、ほら!横の女とか後ろの女とか見ろよ!なんとも思わないか?」
勇弥「……金と鉄を間違えて・・・いないよな。」
奈海「じゃあなんで効いてないの?」
正義「……あ。」
勇弥「……金と鉄を間違えて・・・いないよな。」
奈海「じゃあなんで効いてないの?」
正義「……あ。」
正義はぽんと手を叩く。
正義「大王って、男なの?」
楓「は?何を言っているんだ黄昏。『大王様』なんだから男性だろう?」
勇弥「……いや待て、そもそも【恐怖の大王】って予言に、男性が降ってくるという解釈は無かったと思うぜ?」
奈海「あそっか、隕石とかだったもんね。【恐怖の大王】って。」
楓「は?何を言っているんだ黄昏。『大王様』なんだから男性だろう?」
勇弥「……いや待て、そもそも【恐怖の大王】って予言に、男性が降ってくるという解釈は無かったと思うぜ?」
奈海「あそっか、隕石とかだったもんね。【恐怖の大王】って。」
大王はゆっくりと矢を抜く。
と同時に、上空に黒雲が生成され、そこから金色の矢が【エロス】を狙っていた。
エロス「あ、あのさぁ、ボクの金の矢は生き物に当たっても怪我ができないんだよ。だから」
正義「それは、キミの射た金の矢でしょ?あれは大王がつくった金色の、ただの矢だよ。」
正義「それは、キミの射た金の矢でしょ?あれは大王がつくった金色の、ただの矢だよ。」
エロス「ぅ……うわぁぁぁ!」
【エロス】は急に振り向き、矢を持たずに弦を弾く。
するとその空間が裂け、言葉では表現できない暗くて禍々しい穴が空いた。
するとその空間が裂け、言葉では表現できない暗くて禍々しい穴が空いた。
エロス「今日のところは、は言って、お前達なら、じゃなくて!ぅう、あぁもぉ!ごめんなさぁぁぁい!」
黒雲から矢が降ってくると同時に、【エロス】は穴の中へ飛び込んだ。
大王「待てガキィィィイイイ!」ブォン!
大王は穴の中目掛けて、手に持っていた矢を投げた。
その矢が穴の中に入った瞬間、何事もなかったように穴は消えてしまった。
その矢が穴の中に入った瞬間、何事もなかったように穴は消えてしまった。
正義「おぉー。」パチパチ
奈海「ナイススロー。かな?」パチパチ
大王「あのガキ……次に有ったら覚えていろ……。」
勇弥「まぁ、一件落着、一件落着。」
奈海「ナイススロー。かな?」パチパチ
大王「あのガキ……次に有ったら覚えていろ……。」
勇弥「まぁ、一件落着、一件落着。」
しかし、喜んでいる正義達の後ろで、楓は1人悲しそうに大王を見つめていた。
楓「そんな、大王様は……。“ツンツン”ん?」
楓の横に、コインが笑顔でふわふわと飛んでいた。
コイン「十文字さんが落ち込んでるのってなんか珍しいね。」
楓「コインちゃんか。そうか?……そうかもしれないな……。」
コイン「皆はあぁ言ってたけどさ、私は違うと思うの。だって大王って鈍いところあるし、効果が出るのが遅いのかも。」
楓「でも、それだけでは……。」
コイン「あともう1つ。なんであの時、大王は矢を避けなかったか。」
楓「流石の大王様も、あの不意打ちは避けられなかったんじゃないのか?」
コイン「十文字さん。正義くんも大王も、その程度の訓練ならしているんだよ。」
楓「あ、そういえば……では何故?」
楓「コインちゃんか。そうか?……そうかもしれないな……。」
コイン「皆はあぁ言ってたけどさ、私は違うと思うの。だって大王って鈍いところあるし、効果が出るのが遅いのかも。」
楓「でも、それだけでは……。」
コイン「あともう1つ。なんであの時、大王は矢を避けなかったか。」
楓「流石の大王様も、あの不意打ちは避けられなかったんじゃないのか?」
コイン「十文字さん。正義くんも大王も、その程度の訓練ならしているんだよ。」
楓「あ、そういえば……では何故?」
もう一度笑みを浮かべながら、コインは楓に耳打ちする。
コイン「自分が避けたら、十文字さんに当たってたんだよ。」
楓「え……?あ……。」
コイン「十文字さんの方が、いや十文字さんが油断していたからそう思ってたのかなぁ。
大王に『こっちは片付いたぞ!』って言われたから?」
楓「……反射神経には、自信があったんだけど。」
コイン「まぁ、実際は傷もつかない矢だったんだけど。とにかく、大王は十文字さんの事を傷つけたくないと思っているんだよ。
それが恋愛かどうかは、子どもだから分かんないけど……。」
楓「……コインちゃんありがとう。よし、では帰るか。」
コイン「うん!」
楓「え……?あ……。」
コイン「十文字さんの方が、いや十文字さんが油断していたからそう思ってたのかなぁ。
大王に『こっちは片付いたぞ!』って言われたから?」
楓「……反射神経には、自信があったんだけど。」
コイン「まぁ、実際は傷もつかない矢だったんだけど。とにかく、大王は十文字さんの事を傷つけたくないと思っているんだよ。
それが恋愛かどうかは、子どもだから分かんないけど……。」
楓「……コインちゃんありがとう。よし、では帰るか。」
コイン「うん!」
コイン「あ、相談料は十円玉10枚ね。」
楓「百円玉でいいか?」
コイン「十円玉!」
楓「百円玉でいいか?」
コイン「十円玉!」
Σχεδιο編第2話「悪戯」―完―
コイン「ところで、さ。大王。」
正義「コインちゃん、今は……。」
大王「そこまで子どもじゃないと言っているだろ。なんだ?」
コイン「奈海や勇弥くんの言葉で気付いたんだけどさ。」
正義「コインちゃん、今は……。」
大王「そこまで子どもじゃないと言っているだろ。なんだ?」
コイン「奈海や勇弥くんの言葉で気付いたんだけどさ。」
コイン「なんで大王って人型なの?」
正義「え?」
奈海「え……『大王』だからでしょ。はいおしまい。……よね?」
勇弥「……確かに、【恐怖の大王】は何が降ってくるか、って都市伝説だからな。」
奈海「え……『大王』だからでしょ。はいおしまい。……よね?」
勇弥「……確かに、【恐怖の大王】は何が降ってくるか、って都市伝説だからな。」
【恐怖の大王】とは、人々が『1999年7月に何が起こるか』を想像した結果、誕生した物である。
その結果、『色々なものを黒雲から降らせる力』を手に入れた。しかし……。
その結果、『色々なものを黒雲から降らせる力』を手に入れた。しかし……。
勇弥「この手なら普通、正義がその能力を得て、大王さんなんて存在は生まれないんだよ。」
楓「陰さんやカウントみたいになっていたという事か。」
コイン「私みたいに幽霊とか、【口裂け女】みたいな怪人とかなら話は別だけど。」
楓「陰さんやカウントみたいになっていたという事か。」
コイン「私みたいに幽霊とか、【口裂け女】みたいな怪人とかなら話は別だけど。」
正義「じゃあ、大王は都市伝説に準拠していないの……?」
大王「……。」
大王「……。」
大王はうつむいているようだったが、すぐに頭を上げた。
大王「また、暇な時に話してやる。」
正義「え……?」
コイン「えぇぇー。そんなのやだ!眠れないじゃん!」
大王「少し考えれば、あっさり分かる事だぞ。」
勇弥「……って言われてもなぁ。まさか飲み込まれたとか?」
奈海「え!まさかの大王さん元人間説!?」
大王「さぁな。」
大王「少し考えれば、あっさり分かる事だぞ。」
勇弥「……って言われてもなぁ。まさか飲み込まれたとか?」
奈海「え!まさかの大王さん元人間説!?」
大王「さぁな。」
その顔は、微笑んでいるようにも、しかしどこか悲しそうにも見えた。
それを察したのか、楓はギュッと大王の腕に抱きつく。
それを察したのか、楓はギュッと大王の腕に抱きつく。
楓「大王様。私は大王様の正体なんて気にしませんよ。大王様が大王様のままなら。」
大王「……。」
大王「……。」
――――――俺のまま、か―――