うーうーうー♪
少年は、ご機嫌に鼻歌を歌っている
俺はこいつの歩く速度に合わせて、ぶらぶらと歩いていた
将門様の下へ報告に向かう途中、たまたま顔を合わせたのだ
将門様に会いに行くと言ったら、自分も行く!と言って聞かなかった
まぁ、いいだろう
こいつ、なんだか将門様に気に入られているみたいだし
うーうーうー♪
少年は、ご機嫌に、ご機嫌に、歌っていたが
少年は、ご機嫌に鼻歌を歌っている
俺はこいつの歩く速度に合わせて、ぶらぶらと歩いていた
将門様の下へ報告に向かう途中、たまたま顔を合わせたのだ
将門様に会いに行くと言ったら、自分も行く!と言って聞かなかった
まぁ、いいだろう
こいつ、なんだか将門様に気に入られているみたいだし
うーうーうー♪
少年は、ご機嫌に、ご機嫌に、歌っていたが
「……うー?」
…ふと
その歌が止まった
その歌が止まった
「どうした?」
「うー……不吉。不吉の気配。うーうー」
「不吉?」
「うー……不吉。不吉の気配。うーうー」
「不吉?」
…他の都市伝説が
それも、俺たちに友好的ではない都市伝説が、接近しているのか?
こいつは、どうにも霊感的なものが強いらしい
契約した都市伝説の能力とは関係なく、都市伝説の気配を感じ取る事がある
それも、俺たちに友好的ではない都市伝説が、接近しているのか?
こいつは、どうにも霊感的なものが強いらしい
契約した都市伝説の能力とは関係なく、都市伝説の気配を感じ取る事がある
(…まずいな)
こいつには、戦闘能力はない
もし戦闘能力があったとしても、こんな子供を戦わせるなんて嫌である
…きっと、あいつだって、そんな事は嫌がるだろうし
何とか、こいつを護りながら戦わないと
もし戦闘能力があったとしても、こんな子供を戦わせるなんて嫌である
…きっと、あいつだって、そんな事は嫌がるだろうし
何とか、こいつを護りながら戦わないと
「…おびき出すぞ」
「うー!」
「うー!」
人通りの少ない路地へと、足を向ける
てちてち、こいつもそれについてきて
てちてち、こいつもそれについてきて
「うー!ステーキのおにーちゃん、これあげる!」
「ん?…あぁ、ありがとうな」
「ん?…あぁ、ありがとうな」
渡されたのは、幸せの眉毛コアラ
見つけた者に、食べた者に、ささやかな幸運を
一種の保険でもあるそれを、口に放り込んだ
ほのかな甘味が広がる
見つけた者に、食べた者に、ささやかな幸運を
一種の保険でもあるそれを、口に放り込んだ
ほのかな甘味が広がる
「……うー…不吉。近い、近い……うーうー!」
っと、こいつは、ますます、警戒しだした
…相手の能力の影響下に入ったか?
いつ、相手が仕掛けてきてもいいよう、警戒する
…相手の能力の影響下に入ったか?
いつ、相手が仕掛けてきてもいいよう、警戒する
毎度思うが、俺の能力は不意打ち相手にはどうにも相性が悪い
発動まで、時間がかかりすぎるのだ
相手の肌がいい具合にこんがり焼けたら…そこからが、本格的な攻撃なのだから
こちらから不意打ちする分には効果的なのだが、相手から仕掛けられるのは苦手だ
いっそ、他の都市伝説とも契約しちまうかなぁ…
…いやいやいや
それをやると、都市伝説に飲み込まれやすくなるから駄目だ、と言われている
特に、同じようなタイプの都市伝説ならいざ知らず、まったくタイプの違う都市伝説との多重契約は危険だ、とあいつに釘を押されていた
…それは、最後の手段なのだ
………それに………
発動まで、時間がかかりすぎるのだ
相手の肌がいい具合にこんがり焼けたら…そこからが、本格的な攻撃なのだから
こちらから不意打ちする分には効果的なのだが、相手から仕掛けられるのは苦手だ
いっそ、他の都市伝説とも契約しちまうかなぁ…
…いやいやいや
それをやると、都市伝説に飲み込まれやすくなるから駄目だ、と言われている
特に、同じようなタイプの都市伝説ならいざ知らず、まったくタイプの違う都市伝説との多重契約は危険だ、とあいつに釘を押されていた
…それは、最後の手段なのだ
………それに………
……と、その時
俺の隣にいた少年の姿が、消えた
俺の隣にいた少年の姿が、消えた
「-----っ!?」
代わりに現れたのは、男
その手に、鉈を持ち…振りかぶった、体勢で
こちらに向かって、鉈を振りぬいてくる!
その手に、鉈を持ち…振りかぶった、体勢で
こちらに向かって、鉈を振りぬいてくる!
「っと!?」
何とか屈んで、その攻撃をかわした
……っぶな!?
あんなもんで切りかかられたら、流石に死ねるぞ!?
どう考えても、敵意あり、殺意あり
敵とみなして、問題ないだろう
……っぶな!?
あんなもんで切りかかられたら、流石に死ねるぞ!?
どう考えても、敵意あり、殺意あり
敵とみなして、問題ないだろう
と、言うより
…少年はどこに消えた!?
少年を探そうとすると、男が、今度は鉈を脳天に向かって振り下ろしてきて
…少年はどこに消えた!?
少年を探そうとすると、男が、今度は鉈を脳天に向かって振り下ろしてきて
っが、と
俺は、何とかそれを白刃取りして防いだ
俺は、何とかそれを白刃取りして防いだ
「なん……なんだよ……手前は……ッ」
頭カチ割られた死体なんて、そんなジェイソンに殺されたような死体になるのは御免だっ!
こちとら、高校の頃からしょっちゅう喧嘩に巻き込まれてきた
鉄パイプやら何やら、色々と頭上に振り下ろされた経験があるのだ
これくらい、防いでやらぁ!
……まぁ、一部は幸せの眉毛コアラの効果のお陰もありそうだが
こちとら、高校の頃からしょっちゅう喧嘩に巻き込まれてきた
鉄パイプやら何やら、色々と頭上に振り下ろされた経験があるのだ
これくらい、防いでやらぁ!
……まぁ、一部は幸せの眉毛コアラの効果のお陰もありそうだが
ちらり、視界の隅に少年の姿が見えた
…良かった、無事なようだ
てちてちと、慌ててこちらに駆け寄ってきている
…それなら
巻き込まない為にも、さっさと終わらせるべきだ!
…良かった、無事なようだ
てちてちと、慌ててこちらに駆け寄ってきている
…それなら
巻き込まない為にも、さっさと終わらせるべきだ!
男は、懐から何か取り出そうとしていた
予備の武器があるのだろう
そんなもん、使わせるかっ!
予備の武器があるのだろう
そんなもん、使わせるかっ!
能力を発動する
対象は、男ではなく…俺が触れている、鉈
別に、対象が人間である必要はない
生物・無生物に問わず、俺が意識すれば、熱する事ができる
この大きさの鉈なら、さほど時間はかからない!
俺が触れている事によって、鉈が熱されていく速度は格段に早まる
熱による痛みを感じたのだろう、男が鉈から手を離して飛びのいた
じゅう、と金属部分が溶けてきた鉈を投げ捨てる
刃の部分が溶け始めていたから、あれはもう使えないだろう
対象は、男ではなく…俺が触れている、鉈
別に、対象が人間である必要はない
生物・無生物に問わず、俺が意識すれば、熱する事ができる
この大きさの鉈なら、さほど時間はかからない!
俺が触れている事によって、鉈が熱されていく速度は格段に早まる
熱による痛みを感じたのだろう、男が鉈から手を離して飛びのいた
じゅう、と金属部分が溶けてきた鉈を投げ捨てる
刃の部分が溶け始めていたから、あれはもう使えないだろう
てちてちてち
駆け寄ってきた少年は、俺の背後に隠れた
そうだ、これでいい
この男に他に味方がいないとも限らない
こいつが怪我したら大変だ
駆け寄ってきた少年は、俺の背後に隠れた
そうだ、これでいい
この男に他に味方がいないとも限らない
こいつが怪我したら大変だ
「さぁて……形勢逆転だな。覚悟はいいか?」
この男から攻撃してきたのだ
正当防衛というやつである
なんら問題はあるまい
しかし、男は素早く身を翻し、大通りに向かって走り出した
正当防衛というやつである
なんら問題はあるまい
しかし、男は素早く身を翻し、大通りに向かって走り出した
「っ逃がすか!」
その後ろ姿を、慌てて追いかける
…こっちの方がスピードはある
追いつける!
…こっちの方がスピードはある
追いつける!
ピタリ、男は足を止めた
観念したか、それとも、反撃でもしてくるつもりか?
反撃の隙など、与えるものか
能力を発動しようと、男を睨みつけた瞬間…
観念したか、それとも、反撃でもしてくるつもりか?
反撃の隙など、与えるものか
能力を発動しようと、男を睨みつけた瞬間…
「え?」
「へ?」
「へ?」
……んなっ!?
男の姿は、なぜか買い物袋をたっぷりと持ったおばさんと入れ替わっていた
…相手の能力か!?
男の姿は、なぜか買い物袋をたっぷりと持ったおばさんと入れ替わっていた
…相手の能力か!?
急いで、そのおばさんから飛びのき、路地に戻る
関係のない人間を巻き込む戦闘なんざ御免だ
関係のない人間を巻き込む戦闘なんざ御免だ
「うー?逃げられた?」
「あぁ……くそっ、どう言う能力なんだよ、あのおっさん!?」
「うー……逢魔ヶ刻…うーうー!」
「逢魔ヶ刻?……入れ替わりかよ!?」
「あぁ……くそっ、どう言う能力なんだよ、あのおっさん!?」
「うー……逢魔ヶ刻…うーうー!」
「逢魔ヶ刻?……入れ替わりかよ!?」
タチの悪い能力め!
じっと見上げてくる少年に、苦笑した
じっと見上げてくる少年に、苦笑した
「カッコ悪いとこ見せちまったな」
「うー!そんな事ない!ステーキのおにーちゃんカッコ良く戦った!うーうー!」
「うー!そんな事ない!ステーキのおにーちゃんカッコ良く戦った!うーうー!」
白刃取りー!と真似してくる少年
…勘弁してくれ 照れ隠しに、わしゃわしゃこいつの頭を撫でてやる
…勘弁してくれ 照れ隠しに、わしゃわしゃこいつの頭を撫でてやる
「…に、しても、だ。あのおっさんはこっちを襲ってきた訳で…俺達の敵だよな?」
「うー!敵!将門様の敵ー!うーうーうー!」
「うー!敵!将門様の敵ー!うーうーうー!」
そう、敵だ
俺達「首塚」組織に、敵対の意思ありと見ていいだろう
あの男の事も、将門様に報告しないと
俺達「首塚」組織に、敵対の意思ありと見ていいだろう
あの男の事も、将門様に報告しないと
そうだ、あいつにも話しておこう
「組織」の人間だったなら、何か話してくれるかもしれないし
もしそうじゃなかったら、無差別に能力者を襲う危険な奴がいる、と警告できる
あいつの力になれるかもしれないじゃないか
そう考えると、少し嬉しくなって
俺は、少年の手を引いて、将門様の下へ急いだのだった
「組織」の人間だったなら、何か話してくれるかもしれないし
もしそうじゃなかったら、無差別に能力者を襲う危険な奴がいる、と警告できる
あいつの力になれるかもしれないじゃないか
そう考えると、少し嬉しくなって
俺は、少年の手を引いて、将門様の下へ急いだのだった
終