「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 僕は小説が書けない-09

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匿名ユーザー

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――――――かの御方は、比べようもなく尊かった

――――――――かの御方はこの広い大地に種を巻いた

――――――――――かの御方は広い海から人をとる術を授けた

――――――――――――かの御方は誰も手出しできぬ天に財をば積み重ねた


【詩篇“ドオルの賛美歌”より一部抜粋】



    ※    ※    ※


「なんで、なんで貴女が生きているのよ!」

 吸血鬼は絶叫する。

「確かに、間違いなく殺したのに!」

 僕は挑発的に笑う。

「やれるかジルりん?」

「Sir yes sir!」

 カンカンとナイフを打ち鳴らして彼女は高らかに歌う。

「さて今宵ご覧頂くは、切り裂き少女の殺人奇術!
 種も無ければ仕掛けも無し、霧の都を騒がせた、奇怪奇々怪白刃技巧!
 切って驚け見て嘆け、此度の私は一味違う!」

「もう朝だぜ」

「うるちゃい!」

 駄犬である。
 いや犬なんて忠実なもんではない。
 駄猫だ、猫とは概ね賢いがこいつはそうとしか形容できない。

「あなた達よくそこまで遊んでいられる余裕が有るわね」

 吸血鬼の燃える瞳が僕達を射すくめる。
 どうやらしばらく無視して会話を進めてたのがお気に召さなかったようだ。

「だってこうなった以上、あんたに勝ち目は無いからね」

 ジルりんは涼しい顔である。
 僕は今すぐにでもとんずらかましたい気分だ。

「勝ち目は無い? そんな馬鹿な……」

「ところがどっこいお前の負けだよ」

 僕は左腕を吸血鬼に見せつける。

「それは――――なんでそれを貴方が持っているの!
 それは貴方のような只の人間が持っていて良い代物じゃあない!」

 彼女の顔はサッと青ざめる。

「いや目的を果たせてラッキーだったよ
 冥土の土産に僕たちはこれを回収するためにここに来たんだからね」

「やめなさい! 貴方は、いいや貴方たちはそれがどれだけ尊い物なのか理解してないのよ!」

 やっべー……なんだこれ。
 なんなんだこれ。

「……最後の願いをここに」

 僕はわざとらしく左手を掲げる。
 彼女はそれを阻止すべくこちらへ真っ直ぐ駆けてくる。

「ギャルのパンティおーくれ」

 転んだ。
 頭から地面に滑っていった。

 ▽その願いは受理いたしかねます

 つかえねええええええええええええええええ!
 というのはさておき契約効果発動。

「消体無名(アナザー・ジャック・ザ・リパー)」

 僕の姿が一時的にジルりんのものに。
 ジルりんの姿が一時的に僕のものに。
 これは切り裂きジャックの正体が不定であることから生まれた能力だ。
 直感的に理解できる。

「これで終わりだ」

 ナイフをポケットから取り出して、頭に突き立てる。
 頭蓋を割って脳髄を裂いて、壊す。
 そして互いの姿を再び交換してジルりんが次のナイフを一瞬で四肢に突き立てる。
 いくら再生するといっても挿しっぱなしにされた場所ならば再生はできない。
 ところで挿しっぱなしってエロいよね。

「まだこの程度……」

 吸血鬼の女はそう言ってまだ動こうとする。
 だがもう遅い。
 ほぼ無限の再生能力故に、攻撃を喰らうことを厭わないお前では既に詰んでいる。
 契約回路を最大限まで活性化させる。
 心のなかにある意思が、感情が、急速にジルりんへと流れこんでいく。
 自分の中の熱が彼女の中へと吸い込まれている、と書くとエロい。
 それと同時にジルりんの身体から漆黒の濃霧が漂い始める。
 オーバーフローした感情エネルギーが彼女の周囲に漂いはじめたのだ。
 それは傷口の隙間から吸血鬼に入り込んで再生を阻み、逆に彼女の組織を不可逆的に病変させる。
 霧の街の猛毒、いいや呪いだ。

「とどめを刺せ、ジルりん」

「さーいえすさー」

「こんなの、こんなの嘘よぉ!」

 それはそれはあっけなく、僕達の戦いには決着が着いた。
 何気なく左腕を見ると元の人間の腕に戻っている。

 ▽願いを使用なさる際には再びお呼び出しください

 使うときだけ猿の腕になるのか。
 それは便利で良い。


    ※    ※    ※


「……つう訳で建物見てきたらいきなり崩れてあぶねえところだったわ
 じゃあな弟よ、その旨依頼主に伝えるなりもみ消すなりしておけ」

 適当に脚色した話を弟に電話で伝え終えてから携帯を充電器に差し込む。

「結局何なんだろうなこの腕」

 猫屋敷からの帰り道。
 車を運転しながら僕はジルりんにぼやいていた。

「そんな事言われても知らないよ
 隠せるだけラッキーじゃないか?」

 街はすっかり朝の風景で、人々は忙しく行き交っている。

「だな、ジルりんカラオケ行かねえ?
 どうせ今回の依頼は駄目っぽさそうだし」

「カラオケ? 私は歌ったこと無いぞ」

「音痴も音痴でキャラが立つのよ」

「そういう問題かなあ……?」

「ちなみに僕は歌が上手い」

「ハードル上げるなよぉ……」

 ジルとこうして笑っていても、僕の心はどこか晴れなかった。
 あの屋敷に何故あいつが居たのか。
 今回の屋敷の幽霊騒ぎはあいつが起こしたものなのか。
 そもそもこの腕はなんだ。
 使ってしまったからどうしようもないが不安要素が多すぎる。
 この腕が、願いの対価に何を求めるのか、それはまだ説明されてないのだから。

 ▽その情報は秘匿されています

 謎は謎を呼ぶ。


    ※    ※    ※




――――――かの御方は世界を巡り、最後にたどり着いた地で人々に告げた

――――――――運命の仔等よ、もし貴方達が父を疑うことが有るのならば私を思い出しなさい

――――――――――私はこうして世界をめぐりはるばる貴方達の為に父から遣わされてきたのだ

――――――――――――私を遣わしたことが貴方達への何よりの愛情の証しだということを忘れないでほしい

――――――――――――――貴方達が何も忘れない為に私はここで人としての生を終え、魂を天に帰した後も身体だけは貴方達と寄り添うことを誓おう


【詩篇“ドオルの賛美歌”より一部抜粋】


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