冷え込む帰り道、はらはらと落ち葉が風に舞う
なるほど、11月並の冷え込みである。吐き出す吐息が白く染まる
なるほど、11月並の冷え込みである。吐き出す吐息が白く染まる
「…冬に入るまでに、なんとかなるでしょうか」
「さぁな………向こうがなかなか、尻尾を出さないからな」
「さぁな………向こうがなかなか、尻尾を出さないからな」
はらり、と落ち葉が舞う道を龍哉と直斗は二人で歩いていた
靴底越しに、枯れた落ち葉の感触が伝わってくる
靴底越しに、枯れた落ち葉の感触が伝わってくる
「鬼灯が調べていた面子は、だいぶ削った………ただ、鬼灯が調べきれなかった相手もいるからな」
「すべてが、学校町に来ている訳でもないのでしょうが。残っている相手も少々厄介ですし、調べきれなかった相手がそれと同程度となると……」
「すべてが、学校町に来ている訳でもないのでしょうが。残っている相手も少々厄介ですし、調べきれなかった相手がそれと同程度となると……」
かさり、かさり
落ち葉が踏まれる音が、静かな辺りに響く
夕暮れ時、住宅街にあまり人通りはなく、二人分しか影は伸びない
落ち葉が踏まれる音が、静かな辺りに響く
夕暮れ時、住宅街にあまり人通りはなく、二人分しか影は伸びない
「ただ、そろそろ、向こうも焦れてきているかと、思われるのですが」
「だな………うまく、動けばいいんだが」
「だな………うまく、動けばいいんだが」
事情を知らぬ者が聞いても理解できぬであろう会話をしながら、ゆっくりと進む2つの影
その、影に向かって………別の影が、伸びる
一見、人間の影に見える、しかし、人間ではない影が
その、影に向かって………別の影が、伸びる
一見、人間の影に見える、しかし、人間ではない影が
「………足いらんかえ?」
二人の耳に届いたのは、老婆の声
「足売りババア」の声だった
大きな風呂敷包みを背負ったその老婆は、「足いらんかえ?」と言う質問に対し、「いいえ」と答えると足を一本奪い去り、「はい」と答えれば、余分な足を一本付けられる……そのように伝えられている
「はい」と答えても「いいえ」と答えても悲惨な結末にしかならず、助かるには「私はいらないので、○○のところへ行ってください」と答えると良いとされている
すなわち、今、二人が答えるべき正しい答えはそれだろう
しかし
「足売りババア」の声だった
大きな風呂敷包みを背負ったその老婆は、「足いらんかえ?」と言う質問に対し、「いいえ」と答えると足を一本奪い去り、「はい」と答えれば、余分な足を一本付けられる……そのように伝えられている
「はい」と答えても「いいえ」と答えても悲惨な結末にしかならず、助かるには「私はいらないので、○○のところへ行ってください」と答えると良いとされている
すなわち、今、二人が答えるべき正しい答えはそれだろう
しかし
「………いいえ、いりませんよ」
「足は、二本ありゃあじゅうぶんだ」
「足は、二本ありゃあじゅうぶんだ」
そのように答える二人
足売りババアを、見てすらいない
二人の言葉に、足売りババアはにやり、と気味の悪い笑みを浮かべた
その影が、「伸びる」
足売りババアの下半身は人間のものとは違う、異形のものと化していた
今まで奪ってきた人間の足だろうか。それが、ムカデのように足売りババアの下半身についているのだ
足の本数だけ、下半身はにょろりと伸びており、まさしく百足だ
足売りババアは、二人の足を奪おうとして
足売りババアを、見てすらいない
二人の言葉に、足売りババアはにやり、と気味の悪い笑みを浮かべた
その影が、「伸びる」
足売りババアの下半身は人間のものとは違う、異形のものと化していた
今まで奪ってきた人間の足だろうか。それが、ムカデのように足売りババアの下半身についているのだ
足の本数だけ、下半身はにょろりと伸びており、まさしく百足だ
足売りババアは、二人の足を奪おうとして
すぱぁんっ、と
足を切るための鎌を持っていた腕が、落ちた
足を切るための鎌を持っていた腕が、落ちた
「ぎ………っ!?」
ひゅんっ、と、二振りの刀が宙を舞う
龍哉の扱う「大通連」「小通連」が、くるくると、龍哉の意思に従って動く
龍哉の扱う「大通連」「小通連」が、くるくると、龍哉の意思に従って動く
「直斗、確か、鬼灯さんの情報で」
「あぁ、足売りババアは、いたな。元契約者で、今はもう飲まれて人間やめてるタイプ」
「あぁ、足売りババアは、いたな。元契約者で、今はもう飲まれて人間やめてるタイプ」
くるり、と、ようやく二人は振り返り、足売りババアを見た
「ひとまず、気絶させて。後は「組織」にでも引き渡すか。さほど、重要な情報は持っていなさそうだしな」
「そうですね。何か情報を持っていてくれていたら、その時はその時ですし。「組織」がうまくやってくださるでしょう。以前、こちらで尋問しました「ひきこさん」の契約者よりも、有効な情報を持っていれば、のお話ですが」
「そうですね。何か情報を持っていてくれていたら、その時はその時ですし。「組織」がうまくやってくださるでしょう。以前、こちらで尋問しました「ひきこさん」の契約者よりも、有効な情報を持っていれば、のお話ですが」
二人の会話に、足売りババアは「まずい」と判断した
確かに、己の持っている「あのお方」の情報は重要度は低いかもしれない………しかし、「組織」相手となると、些細な情報ですら渡すにはまずい
ならば、己の命を潰して情報を渡さないのが一番であるのだが、鎌をもっていた腕は落とされてしまった
もう一方の手を伸ばそうとしたが、大きく上半身を持ち上げていた状態だった為、それよりも早く、落ちていた鎌は直斗が踏みしめ、渡さない構え
確かに、己の持っている「あのお方」の情報は重要度は低いかもしれない………しかし、「組織」相手となると、些細な情報ですら渡すにはまずい
ならば、己の命を潰して情報を渡さないのが一番であるのだが、鎌をもっていた腕は落とされてしまった
もう一方の手を伸ばそうとしたが、大きく上半身を持ち上げていた状態だった為、それよりも早く、落ちていた鎌は直斗が踏みしめ、渡さない構え
……逃げるしか、ない
確か、通りに出れば川があった、そこに飛び込んで…………
確か、通りに出れば川があった、そこに飛び込んで…………
「ダメですよ」
龍哉が、「小通連」を手にして駆ける
身をよじって逃げようとする足売りババアの背中へと跳び乗り、その背中を駆け上がった
足売りババアがそれを振り落とすよりも、早く、がっ、とその肩を掴んで
身をよじって逃げようとする足売りババアの背中へと跳び乗り、その背中を駆け上がった
足売りババアがそれを振り落とすよりも、早く、がっ、とその肩を掴んで
「ぎ、ぁ」
ごっ、と刀の柄で、後頭部を殴りつけられて
一度ならば意識を手放さなかっただろう、しかし、数回も殴りつけられれば、元々防御が人間と変わらぬ身、耐え切ることは出来ず、その意識は闇へと落ちて
ずぅんっ、と、辺りに轟音が鳴り響いた
一度ならば意識を手放さなかっただろう、しかし、数回も殴りつけられれば、元々防御が人間と変わらぬ身、耐え切ることは出来ず、その意識は闇へと落ちて
ずぅんっ、と、辺りに轟音が鳴り響いた
「…これで、また一つ、駒は潰した。さぁ、「狐」、どう動く?」
呟く直斗の言葉は、足売りババアにも、ここにはいない「狐」にも、届くことはなかった
to be … ?