「先生」による診察を終えて、アンナはぐぅ、と背伸びしながら観客席へと戻っていっていた
ついでに、「夢の国」が出している屋台で何か買っていこうかと思って、そちらへと足を向けた時だった
ついでに、「夢の国」が出している屋台で何か買っていこうかと思って、そちらへと足を向けた時だった
「アンナ」
「え?……あ、お父さん」
「え?……あ、お父さん」
声をかけられ、立ち止まる
肩まで伸ばされた金の髪は毛先が赤や緑など色とりどりカラフルに染められている……と、言うか、そもそもその金髪自体、確か染めたものだったとアンナは記憶していた
褐色の肌も、日焼けによるもの。元は色白だと聞いている
自分の父親だと言うのに、せいぜい20代後半くらいに見えるのは………何故だろう
飲まれた訳でもないのに妙に若々しい点に関しては、「血筋ではないだろうか」と言うのが祖父の言い分だった。そういえば、祖父も年齢のわりにはだいぶ若く見える
肩まで伸ばされた金の髪は毛先が赤や緑など色とりどりカラフルに染められている……と、言うか、そもそもその金髪自体、確か染めたものだったとアンナは記憶していた
褐色の肌も、日焼けによるもの。元は色白だと聞いている
自分の父親だと言うのに、せいぜい20代後半くらいに見えるのは………何故だろう
飲まれた訳でもないのに妙に若々しい点に関しては、「血筋ではないだろうか」と言うのが祖父の言い分だった。そういえば、祖父も年齢のわりにはだいぶ若く見える
とまれ、アンナを呼び止めたのは彼女の父親である日景 翼だった
「首塚」においては古参メンバーの一人であり、「首塚」首領の平将門の側近の一人でもある
アンナにとっては、誇らしい父親である
「首塚」においては古参メンバーの一人であり、「首塚」首領の平将門の側近の一人でもある
アンナにとっては、誇らしい父親である
「「先生」に診察してもらってきたか?」
「えぇ。遥に言われたから」
「言われる前に行けよお前も。全身溶かしたとなると、何か異常起きる可能性高ぇんだぞ」
「はーい。特に異常感じなかったし、大丈夫だと思ったんだけどな」
「油断はするな、って遥共々、言われてんだろうが」
「えぇ。遥に言われたから」
「言われる前に行けよお前も。全身溶かしたとなると、何か異常起きる可能性高ぇんだぞ」
「はーい。特に異常感じなかったし、大丈夫だと思ったんだけどな」
「油断はするな、って遥共々、言われてんだろうが」
わかってる、と苦笑してみせるアンナ
アンナ当人としては少し心配しすぎでは?とも思うのだが、翼は翼で都市伝説の影響が知らず知らずのうちに強くなっていた事があるそうなので心配なのだろう
…それに、遥の件もあるのだし、心配しすぎくらいがちょうどよいのかもしれない
アンナ当人としては少し心配しすぎでは?とも思うのだが、翼は翼で都市伝説の影響が知らず知らずのうちに強くなっていた事があるそうなので心配なのだろう
…それに、遥の件もあるのだし、心配しすぎくらいがちょうどよいのかもしれない
「とりあえずさ、「先生」が大丈夫、って言ってくれたんだから大丈夫よ。そういうとこで嘘つく人じゃないもの、「先生」は。性格色々問題あるけど」
「……まぁ、たしかにそこは安心か。性格には問題ある奴だが」
「……まぁ、たしかにそこは安心か。性格には問題ある奴だが」
当人が聞いていたら笑いながら抗議しそうな事で父娘同意する
事実、あの「先生」は若干性格に問題があるのだから、仕方ない
事実、あの「先生」は若干性格に問題があるのだから、仕方ない
「私は、これから「夢の国」の屋台で何か適当に買って戻ろうと思ってたけど。お父さんは?」
「俺は、ちょっと話したい奴いるからそいつ探してた………糞悪m,メルセデス見てないか?」
「氷の司祭様?……試合に出てたのを見た以外は、見てないけれど」
「俺は、ちょっと話したい奴いるからそいつ探してた………糞悪m,メルセデス見てないか?」
「氷の司祭様?……試合に出てたのを見た以外は、見てないけれど」
なにせ、あの試合は一瞬で終わった
メルセデスは傷一つついていなかった為、治療室にも行っていないだろう
案外、自分の出番はもう終わったから帰っているかもしれない
メルセデスは傷一つついていなかった為、治療室にも行っていないだろう
案外、自分の出番はもう終わったから帰っているかもしれない
「そうか………わかった。もうちょい探してみる」
「見つけたら連絡する?」
「あぁ。頼んだ………っと、そうだ。お袋も来てるから、見かけたら適当に挨拶しとけ」
「マドカさんも来てたんだ。わかった」
「見つけたら連絡する?」
「あぁ。頼んだ………っと、そうだ。お袋も来てるから、見かけたら適当に挨拶しとけ」
「マドカさんも来てたんだ。わかった」
年齢の割には気持ちが若く(父に言わせれば「年甲斐もない若作り」らしいが)、祖母と呼ぶには抵抗がある祖母が来ていると知ってアンナは少しうれしい気持ちになる
きちんと、挨拶しておかなければ
きちんと、挨拶しておかなければ
それじゃあ、と別の道へと歩きだした父を見送り、自分も屋台へと歩きだして
「……そういえば、お父さん。氷の司祭様に何の用事なのかしら」
と、小さく、アンナは首を傾げた
「そうかい。そっちも大変なんだねぇ」
「えぇ、多少は………でも、マドカさんだって、旦那様が社長ともなれば、大変なのでしょう?」
「あたしゃ、会社の経営関連はさっぱりだからねぇ、その方面は一切ノータッチだから」
「えぇ、多少は………でも、マドカさんだって、旦那様が社長ともなれば、大変なのでしょう?」
「あたしゃ、会社の経営関連はさっぱりだからねぇ、その方面は一切ノータッチだから」
楽させてもらってるよ、とマドカが笑う
その様子に、彼女もまた小さく笑った
今でも占い師を続けている彼女だが、夫は「大」がつくレベルの富豪である
彼女は彼女で、それなりに気苦労があるはずの立場だ
果たして、どちらの立場の方がより気苦労が多いか………となると、そこは個人差が出るところになるが
ただ、一つ言えること
それは、二人共立場ある人間の妻であると同時に、自分も旦那も都市伝説契約者である、と言う共通点があり
その様子に、彼女もまた小さく笑った
今でも占い師を続けている彼女だが、夫は「大」がつくレベルの富豪である
彼女は彼女で、それなりに気苦労があるはずの立場だ
果たして、どちらの立場の方がより気苦労が多いか………となると、そこは個人差が出るところになるが
ただ、一つ言えること
それは、二人共立場ある人間の妻であると同時に、自分も旦那も都市伝説契約者である、と言う共通点があり
「近頃は、「狐」とやらの方でむしろ神経尖らせてる感じだねぇ、あの人は」
「あぁ………それは、あの人も同じですね。「薔薇十字団」も関わっている「アヴァロン」と言う場所に、「狐」に誘惑されかけた人が入り込みそうになったとかで……」
「……そういや、うちの人もそんな事を言ってたねぇ………ヨーロッパの方の色んな組織が混乱しかけたそうだね。「レジスタンス」なんて大変だったとか」
「あぁ………それは、あの人も同じですね。「薔薇十字団」も関わっている「アヴァロン」と言う場所に、「狐」に誘惑されかけた人が入り込みそうになったとかで……」
「……そういや、うちの人もそんな事を言ってたねぇ………ヨーロッパの方の色んな組織が混乱しかけたそうだね。「レジスタンス」なんて大変だったとか」
自然と、このような会話になることもある
どちらも亭主がヨーロッパを拠点とする組織とつながりがあるから、余計なのだが
どちらも亭主がヨーロッパを拠点とする組織とつながりがあるから、余計なのだが
「今は日本の、それも学校町に来てるんだろう?あんた、占いは昔通りテントでやってるって言うけれど、大丈夫なのかい」
「えぇ………「薔薇十字団」の方が、警護についてくださっていますので、なんとか。マドカさんは……」
「こっちも、亭主の部下が警護についてくれてるから、なんとか」
「えぇ………「薔薇十字団」の方が、警護についてくださっていますので、なんとか。マドカさんは……」
「こっちも、亭主の部下が警護についてくれてるから、なんとか」
約20年ぶりの、学校町での大事件だ
あちらこちらバタバタとしているし、危険も増える
あちらこちらバタバタとしているし、危険も増える
………マドカにとっての孫も巻き込まれた二度の事件は、彼らにとっては大事件であっただろうけれど、学校町全てを巻き込む程ではなかった
これほどまでに大きな事件は、本当に久しぶりなのだ
これほどまでに大きな事件は、本当に久しぶりなのだ
「……色々、心配ではあるんだけどね」
「あるのですけれどね」
「あるのですけれどね」
戦技披露会、その観客席から試合を見ながら、2人はそっと笑う
「…割合、大丈夫そうなんだよねぇ」
「そうなのですよね」
「そうなのですよね」
なにせ、平和な学校町であっても、これだけの若い契約者が存在している
そして、少し悲しい事ではあるが戦い慣れている
…きっと、大丈夫なのだろう
そして、少し悲しい事ではあるが戦い慣れている
…きっと、大丈夫なのだろう
(………そう、きっと、大丈夫)
大丈夫なのだ
彼女は、そう信じるしか無い
彼女は、そう信じるしか無い
…………たとえ
たとえ、学校町の今後を占ってみた、その際に引いたカードが
いつの間にか混ざっていた、白紙のカードだったのだと、しても
たとえ、学校町の今後を占ってみた、その際に引いたカードが
いつの間にか混ざっていた、白紙のカードだったのだと、しても
もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ
ハムスターのごとく、ご飯を食べているちみっこがいる
赤いはんてんを羽織ったそのチミっ子は、それはそれは美味しそうに、「夢の国」の屋台で買ったパストラミのサンドウィッチを食べていた
その様子に、彼女を膝の上に座らせている赤いマントの男は少しほっとする
ようやく、「夢の国」に対するわだかまりが薄らいできた証拠だろう
そうじゃなければ、「夢の国」が提供する物を口にするのも嫌がっていた可能性が高いのだから
ハムスターのごとく、ご飯を食べているちみっこがいる
赤いはんてんを羽織ったそのチミっ子は、それはそれは美味しそうに、「夢の国」の屋台で買ったパストラミのサンドウィッチを食べていた
その様子に、彼女を膝の上に座らせている赤いマントの男は少しほっとする
ようやく、「夢の国」に対するわだかまりが薄らいできた証拠だろう
そうじゃなければ、「夢の国」が提供する物を口にするのも嫌がっていた可能性が高いのだから
「ん、これ美味しいのです!赤マント、そっちのチョコクロワッサンとスイートポテトパイもよこすのですよ!」
「赤いはんてんよ、買ってきた物を君一人で食べ尽くすつもりかい?あんまり食べすぎると、いくら都市伝説とは言え太………よーし、落ち着こうか、はんてんをひっくり返そうとするのはやめたまえ」
「赤いはんてんよ、買ってきた物を君一人で食べ尽くすつもりかい?あんまり食べすぎると、いくら都市伝説とは言え太………よーし、落ち着こうか、はんてんをひっくり返そうとするのはやめたまえ」
はんてんをひっくり返して「青いはんてん」状態になろうとした赤いはんてんに、そっと要求された物を差し出す赤マント
赤いはんてんは、ぱぁああああ、と表情を輝かせてそれらを受け取ると、またもきゅもきゅもきゅ、と食べ始めた
……このライスブレッドだけでも、奪われる前に食べておこう、と判断し、赤マントはそれを己の口へと運ぶ
赤いはんてんは、ぱぁああああ、と表情を輝かせてそれらを受け取ると、またもきゅもきゅもきゅ、と食べ始めた
……このライスブレッドだけでも、奪われる前に食べておこう、と判断し、赤マントはそれを己の口へと運ぶ
「はむ……に、しても。すげー戦いっぷりなのですよ」
「うむ、そうだな。やはり私は参加せずとも正解であった」
「赤マントだったら、数秒でノックアウトな可能性もあったのです」
「うむ、そうだな。やはり私は参加せずとも正解であった」
「赤マントだったら、数秒でノックアウトな可能性もあったのです」
まぁな、とあっさり答える赤マント
X-No,0ことザンとのスペシャルマッチに参加しようかとも考えたが、結局やめたのだ
今現在、学校町を騒がせている問題の一つである赤マント事件、それに自分が関わっていない事を示すチャンスではあったが、相手が相手なので「役に立てそうにもないな!」と判断して男らしく参加しない事にしたのだ
……なお、余談であるが。赤マントが参加していた場合、転移能力でもって一瞬でザンに接近できる為、一瞬で勝負をつけることができたのだが、赤マントはそれに気づきつつもスルーしていた
根本的に、当人が戦闘に向いていない……ということにしているのだから、仕方ない
X-No,0ことザンとのスペシャルマッチに参加しようかとも考えたが、結局やめたのだ
今現在、学校町を騒がせている問題の一つである赤マント事件、それに自分が関わっていない事を示すチャンスではあったが、相手が相手なので「役に立てそうにもないな!」と判断して男らしく参加しない事にしたのだ
……なお、余談であるが。赤マントが参加していた場合、転移能力でもって一瞬でザンに接近できる為、一瞬で勝負をつけることができたのだが、赤マントはそれに気づきつつもスルーしていた
根本的に、当人が戦闘に向いていない……ということにしているのだから、仕方ない
「「狐」とか、久々に騒ぎが色々あるですからね。あんまし外出歩けないし、こう言う時だけでも思いっきり羽目をはずすですよ。だから、後でまたもうちょっと「夢の国」の屋台の食べ物買いに行くですよ!」
「全くもってその通りだな。我々のような契約者なしの都市伝説はおとなしくしているに限る。で、赤いはんてんよ。その屋台に払う代金だが」
「当然、赤マントが払うのです」
「うん、わかっていたがね!」
「全くもってその通りだな。我々のような契約者なしの都市伝説はおとなしくしているに限る。で、赤いはんてんよ。その屋台に払う代金だが」
「当然、赤マントが払うのです」
「うん、わかっていたがね!」
……まぁ良い、彼女が元気であるのなら
赤マントはそう結論づけて、己の財布が瀕死となる覚悟を決めたのだっ
赤マントはそう結論づけて、己の財布が瀕死となる覚悟を決めたのだっ
to be … ?