「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代の子供達-58u

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匿名ユーザー

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「……おや、「アカシックレコード」か。実に懐かしいねぇ」

 恐らく、そう口にした当人は、本当に何気なくそう言っただけなのだろう
 そもそも、あの「組織」X-No,0とのスペシャルマッチの現場に「アカシックレコード」などという規格外の都市伝説契約者が本当に参加しているのかどうかは不明である
 だが、そうだとしても、その可能性が少しでもあるのならば、この場を一刻もはやく離れるべきだ、とそう感じた
 「先生」と呼ばれている白髪赤目の白衣の男が件の言葉を口にしたのは、スペシャルマッチの様子を映し出している画面を見ながらだった
 それだけで、ほんの少しでも「アカシックレコード」の契約者、もしくはそれに類似した能力の持ち主が、この治療室に来る可能性があるのならば
 ここから離れるべきだろう、何かしらの理由で、己について調べられる前に

「……運ばれてくる人数も増えてきたし、俺はもうここを出るが。構わないか?」
「うん?治療は終わっているし、違和感や痛みが残っていないなら、問題ないよ」
「あぁ、どこも痛みは残っていないよ」

 なら良し、と「先生」とやらは笑って、こちらの対戦相手だった女性の診察に入った
 こちらが与えた傷も治療したのだし大丈夫だと思うのだが、「念の為」だそうだ
 恐らく、都市伝説やその使い方の関係なのだろう
 「人肉シチュー」の契約者についても、己の肉体を溶かすと言う使い方をしていたせいか、当人に目立った怪我がなくとも診察していた
 万が一がないようにしっかり診察している、そういうことなのだろう

(…記憶方面を読まれる、と言うことはなかったから、良かったな)

 そうなっていたら、まずかった
 自分が「あの方」の配下であることは、絶対に知られてはいけないのだ

 九十九屋 九十九はす、と治療室を出ると、観客席へと向かって歩き出した
 途中、治療室に知り合いでもいるのかそちらに向かっている少年とすれ違いながら、思案する

(診療所もやっていると言う「先生」とやらの治癒能力がどんなものか見たかったんだが………まぁ、いいか。別の治癒能力者を確認できた。聞いていた話通り、あちらの治癒能力はかなり優秀だな)

 「ラファエル」の契約者、荒神 憐。「ラファエル」の治癒能力に特化した契約者であると言う話は本当だった
 あれは「使える」
 「あの方」が見つかり次第、あの少年を誘惑してこちらに引き込むべきだろう
 治癒能力者が一人いるかいないかで、生存率と言うものは大きく変わる

(あの少年の精神的な弱みもわかった。うまくやれば、「あの方」が見つかる前でもこちらに引き込めるな)

 大きな収穫を得られた
 この情報を、今後に活かさなくては

 観客席が並ぶエリアへと入っていくその時、ふと、冷たい空気を感じたが九十九屋はあまり気にせず観客席へと向かい
 ………自分を見ていた、凍れる悪魔の視線に、気づくことはなかった


 空井 雀がそっと治療室を覗き込むと、そこは忙しさのピークは脱したようだった
 スペシャルマッチの初手で溺れた人達の処置はもう終わったのだろう
 ぐっしょり濡れている服を乾かしている者や、まだ意識が戻らない……と言うより、気絶からスヤァへとモード移行した者がベッドで寝ていたりしているが、慌ただしい様子はない
 そんな中で、雀は自分を戦技披露会へと誘った相手を探す

「……あ、いた」

 憐は、ちょうど溺れた拍子に怪我をした人の治療をしているところだった
 ぽぅ、と掌から溢れ出す白い光が、傷を癒やしていっている
 傷を癒やす様子は以前にも、見た
 以前と違うのは、憐の背中から淡く輝く天使の翼が出現していた事だ
 よくよく見ると、治療室の床や寝台の上に羽根が散らばっている

「おや?怪我人かな?」

 と、何やら女性を診察していたらしい白衣の男性が雀に気づいた
 診察は終わったようで立ち上がり、雀へと視線を向けて

(………あれ?)

 何か
 じっと、「視」られたような
 そんな感覚を、確かに感じた

「……っと、すずっち。来たっすね」

 その感覚は、憐に声をかけられたことで途絶える
 怪我人の治療が終わったらしい。普段通りのへらりとした笑顔を向けてきた

「わが助手の従兄弟よ、もうそろそろ、その翼はしまっても大丈夫だよ。君も疲れただろうし、だいぶ羽根が散らばっているから治癒の力はそれで十分だ」
「ん、そうっす?……あんま疲れてないし、平気っすけど」

 と、白衣の人に言われて憐はすぅ、と天使の翼を消した
 白衣の人の言い分からすると、散らばっている羽根にも治癒の力があるのだろう………ようはこの治療室は今、治癒の力に満ち溢れていると言っていいのかM沿いれない

「そちらの少年、知り合いかい?」
「はぁい。クラスメイトっす」

 へらん、と笑って白衣の男性に答えている憐
 ぱたぱたと、雀に駆け寄ってきた

「大丈夫?忙しくない?」
「ん、平気っすー。俺っちは、「先生」やかい兄のお手伝いしてるだけっすから」

 雀の問いに、憐はへらりと答えてくる
 一応、その顔に疲労の色は見えないが、実際のところはどうなのだろうか

「他のみんなも来ているんだよね?龍哉君や直斗君、神子ちゃんは実況やってるみたいだけど…」
「来てるっすよー。はるっち逹は観客席にいるはずっす。後で合流するっす?俺っちはっもうちょいこっちのお手伝いしてるっすけど………」
「君は、もう休んでも大丈夫なのだけどねぇ」

 白衣の男性が苦笑する
 そうして、こっそりと、雀に話しかけてきた

「……すまんが、少年。後で彼をここからなんとか連れ出してくれるだろうか?」
「え?」
「当人、顔に出さないようにしているが、これだけ治癒の羽根をばらまいたのだからだいぶ疲労している。ヘタをシたら倒れかねんからね」

 それは困る、と
 「あとで怒らられるのは私だからねぇ」と、自分のことだというのにまるで他人事のように言いながら、白衣のその人は苦笑したのだった


to be … ?



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